登り道を歩きつめた頂きの上、視界が開けたそこにあるのは近代建築の金字塔、ル・コルビュジェ設計の「ロンシャンの教会」(1955) 。コルビュジェ68歳の作品・・ 近代建築の大巨匠として、幾何学と機能合理に基づいた、シンプルな四角いモダニズム建築を作っていた戦前の・・ 「建築は住むための機械である」と声高々に宣言していた、30代40代の頃とは作風はガラリと変わり・・ このコルビュジェ後期の傑作は、言葉に例えるのが難しいような、非常に自由奔放なカタチをした建築。(上写真) 南側の外観を見る。いろんな大きさとかたちをした窓がパラパラと27個・・
あえて言うならば、この方位から見た時は・・ ”きのこ” の様な 。しかし見る角度を変えると・・ また印象はガラリと変わります。コンクリート打放しの大屋根と白い曲面壁・・ハイサイド窓で教会内に光を落とし込む、ぬるっとしたカタチの大きな塔。
(上写真) 南東側より外観を見る。
蟹の甲羅がイメージという話もあるコンクリート打放しの大屋根・・ 東側は屋外の礼拝にも使える様な設えになっています。ちょうど中央にある、白い壁から少し突き出た四角い出窓の内側にはマリア像が見えます。
屋根まで伸びる縦長開口部の、上部は光の入りを調整しているルーバー付きの窓、下部には屋外祭壇へ出入りが出来る扉があります。壁と屋根がくっついていないのが分かるだろうか、少し透かして屋根が浮いている状態になっています・・ 室内側から見ると、これがよく効いています。
室内の床は全体的に微妙に傾いています・・ もともとの地形に沿わした様な自然な傾斜がついていて・・ 反対に壁から浮いている屋根は端部へ向かって反り上がっていく・・ 床も屋根も壁も傾いた不定形をした・・ 静けさに満ちた空間の中、様々な光があちらこちらから差し込んできます。
(上写真) 祭壇方向を見る。右手の南側壁に設けられた開口部は “クサビ型” or “メガホン型” をしていて、小さな窓から取り込んだ光を増幅させています。
南側の壁は、壁の下部ほど厚みが増していて・・ クサビ型の開口も場所場所で様々な表情を見せています・・ 静寂の中、見た事のないような光に満たされた空間・・「光と静寂」「重さと軽さ」「曲線と直線」・・ 相反する様々な要素が共鳴した、何とも言えない・・ 詩的な、ここにしかない空間がロンシャンには在りました。
この空間の主役となっている南壁に設けられた、色とりどりの光が差し込んでくる窓・・ 窓は各々でデザインが異なり、色ガラスやペイントにより自由なデザインが施されています・・
「 鍵となるのは光だ。そして光はフォルムを照らし出す。」 「 われわれの眼は、光の下のフォルムを見る為に出来ている。」by Le Corbusier