「建築探訪 78」-France 8 / Le Corbusier 6

サヴォア邸

パリ北西の小さな町ポワシーに建つ・・ 近代史において “最も有名な” と言っても過言ではない・・ル・コルビュジェの「サヴォア邸」(1931) 。コルビュジェが唱え続けた “の5原則” を明確に体現した・・ 理想のヴィラ。計画案としての「ドミノ型住宅」(1914) や「シトロアン型住宅」(1920)、実作としての「ヴォルクソンの住宅」(1922) から始まった、白い四角い住宅ばかりし続けていた・・ コルビュジェの「白の時代」を締めくくる作品。

サヴォア邸
西側より外観を見る。広い芝生の海原に浮かぶ “船” のような・・

コルビュジェの唱えた「近代建築の5原則」とは・・ピロティ/屋上園/自由な平面/水平連続窓/自由なファサード・・1階は細い円柱で持ち上げられたピロティ、正方形平面の2階には四周すべて水平連続窓・・非常に分かりやすい、一度見れば忘れようもない、単純な四角い箱の建物・・ しかし、3階の屋上庭園を囲っている曲面壁の存在が・・外観あるいは建物全体の印象をより豊かなものにする事に、大きく貢献している様な気がします。 

サヴォア邸

保険会社のオーナーであったサヴォア氏の週末住居として10年程は使われていたが・・1940年のドイツ軍進駐により退去。
(上写真)1階ピロティ下の玄関前を見る。建物正面となる北西面の丸柱は、側面の外壁面に揃えられた丸柱よりも・・大きく内側に入り込んでいます。玄関前の上部は2階リビング。

サヴォア邸
(左)1階ピロティ部は自動車が通行する事を考慮して計画されている。やや巾が狭い気もするが・・建物下を通って玄関まで車を寄せて来る計画
(右) 玄関ホール内よりピロティを見る。均等ピッチで縦桟を細かく割り付けたスチールサッシ面は、構造とは縁が切れ・・柱の間を縫うように、自動車の回転半径から導かれたという円弧を描いています・・ 
サヴォア邸
1階玄関ホールを見る・・ 左手に螺旋階段、右手に緩やかに上がって行くスロープ。もちろん訪問者はゆっくりと建築的散策を楽しみながらスロープで2階へ。他の独立柱はすべて丸柱なのに・・ 階段とスロープの間にある独立柱だけはなぜか “大きめの四角柱” ?  
サヴォア邸

1階からのスロープを上がった所・・そしてさらに、2階より3階屋上庭園へ続いて行く屋外スロープが、水平割りのスチールサッシ越しに見える・・ 上へ上へと繋がってゆく断面的方向性が強く意識させられる・・各階の平面中央を貫く、このスロープ空間が・・この建築の要となっています。

サヴォア邸
南側の中庭に対して、大きな開口を設けた2階リビングを見る

外観の印象では、建物の存在感はとても大きく目立つものでしたが・・内部に入ると建物の存在感というのは薄れてしまい・・外部環境を見事に切り取り、呼び込む・・ 光と緑に溢れた、明るく健康的な生活を送る為に、人間の生活を支える道具として・・建物の存在感は控え目なものでした。恵まれた周辺環境のおかげでもあるのですが、水平連続窓がとても効いています。

サヴォア邸
2階中庭を介してリビングを見る

リビングの上には右手の屋外スロープより上がることが出来る3階屋上庭園。1940年の退去以来・・長い間の放置で、荒れた状態となったしまっていたサヴォア邸・・ 1965年にはポワシー市が取り壊しの計画を発表したが・・ 様々な方面からは保存を望む声・・ 救いの手を差し伸べたのは、当時の文化相であったアンドレ・マルローでした。現在は非常にすばらしい保存状態です。

サヴォア邸のシェーズ・ロング
陽当たりの良いリビングの大開口前に置かれた寝は・・デザインされてから90年近く経った今でも製造販売元のカッシーナ社を代表する名作家具・・コルビュジェ自身がスタッフであったシャルロット・ペリアンと共にデザインした・・ “LC4” こと「シェーズ・ロング」(1928) 。 

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