上写真は、岡山市に昨年建てられた「Junko Fukutake Terrace」、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞された、日本を代表する建築家により設計された最先端の現代建築。下写真は倉敷市に江戸時代に建てられた「大原邸」、倉敷格子や庇付き切妻屋根などの倉敷らしい意匠をそなえた、倉敷を代表する町家。「先鋭的な現代建築」と「伝統的な民家」・・非常に対照的な建築ではありますが、どちらが良いとか悪いとかではなく・・どちらも素晴らしい・・
造られた年代も、工法も、素材も、手法も、大きく異なってはいますが・・どとらにも「心を動かす何かが在る」と思っていて・・先鋭なモダンデザインだからとか、歴史や都市の文脈に適ったデザインだからとか・・そういう事で建築の評価をしているのではなく・・もっと何かしら直感で私達は建築の良し悪しを判断している様に思える・・緑と一体となった建物の佇まいが美しいのか、垂直材の整然とした並びが気持ち良いのか、抑制の効いた色彩と表現が日本的で共感しているのか・・簡単な答えを明確に説明できるはずもないのですが・・
ひとつ言えるのは・・その建物で生活をしている人、その建物に時々訪れる人、その建物を遠巻きに眺めている人々が、建築と共に長い時間を過ごしえたという事、今までもこれからもその人々の原風景となりえた/なりえるだろうとという事、”豊かな風景”として記憶されるだけのポテンシャルがあるという事。
「人々の風景として豊かである」という事には「古いも新しい」もない・・その建築が持っている価値観や根底にある本質、込められた知性やユーモアが本当に正しく豊かなものであるかどうか・・そういう事が大切なのではないでしょうか。