「建築探訪 155」-クリエイティブTOWN岡山 その1

岡山県営住宅中庄団地

いまから25年ほど前「クリエイティブTOWN岡山」という事業が、県で行われました・・当時の岡山県知事が、熊県で行われていた”アートポリス”という街づくりの・・的文化性に感銘を受けられ、岡田新一さんにコミッショナーを依頼するところからから始まり・・その事業の第一号として完成したのが・・この「岡山県営中庄団地」。
(上写真)第3期の中より見る。デコンストラクション風?・・”90年代的”な橋がチャームポイント

岡山県営住宅中庄団地
1期の西側外観を見る

建築景観や建築文化の向上を目的とした事業「クリエイティブTOWN岡山」・・そのスタートとなる、第1期部分(1992)の者に指名されたのが・・丹田悦雄さん。

岡山県営住宅中庄団地
1期の西側外観を見る

道路と河に沿って50m近く・・1期から3期まで、何棟もの住棟が曲折しながら連結していく全体の配置・・その全体に渡って「ペデストリアンデッキ」が・・棟間を縫う様に貫ぬいている。ややラビリンス的な構成が特徴・・全体性がハッキリしていて、誰でもその構成が一目瞭然なステレオタイプなマンションとは、一線を画したプラン。その”一見さんお断り的”な雰囲気に距離感を感じる人も多そうですが・・

岡山県営住宅中庄団地
1期の東側外観を見る

穴の開いた鮮やかな彩色衝立壁と、コンクリート打放しの組み合わせが80年代的(早川邦彦の80年代後半の”ラビリンス”や”アトリウム”を思い出さずにはいられません・・)。パラパラと多様なエレメントが混在&連節しているデザインも80年代的な空気感・・でgoodです。

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の東側ペデストリアンデッキを見る

各戸が自由に植栽を並べられる、余裕のある通路幅を確保・・

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の東側ペデストリアンデッキから西側ペデストリアンデッキへと抜ける棟間のスリット部を見る

パラペットに架かる”丸い屋根”がgoodです・・

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の西側ペデストリアンデッキを見る

各戸の玄関先にペデストリアンデッキに向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・のがチャームポイント。

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の西側ペデストリアンデッキを見る

中空に架かる橋を渡ると・・1階に降りる事なく、そのままデザインの全く違う住棟へと移動が出来ます・・いくつもの「スリット」「ブリッジ」「ペデストリアンデッキ」を抜けて1期から2期へと巡る・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の3階通路を見る

各戸が向かい合わせになっている屋外通路・・1階に見えますが、これは3階・・中廊下型になっているのですが、屋根がないので、”開放廊下”な感じ。こちらの住棟・・第2期部分(1996)の設計者は阿部勤さん・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の3階通路を見る

こちらの住棟も同様・・各戸の玄関先、通路側に向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の中庭より見る

地上の住棟間中央部を、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通する・・上空には、3階レベルの住棟間通行に使用されるブリッジが架かる。各戸の玄関先にはコンクリートの衝立壁、植栽やパーゴラなどが設えるられています。

岡山県営住宅中庄団地
2期の中庭より見る

2期から3期へと渡るブリッジ・・このブリッジは道路上を跨いでいます。3期の中央部には、この地域では珍しい・・高層棟が聳え立つ。

岡山県営住宅中庄団地
2期と3期の間に架かるブリッジより見る

こちらの住棟・・第3期部分(1998)の設計者は遠藤剛生さん・・一目で遠藤さんの集合住宅だ!!という感じ。設計者である遠藤さんの地元である関西では、この様なスタイルの「遠藤さん集合住宅」は・・あちらこちらで見かけます。

岡山県営住宅中庄団地
3期の中層階通路より見る

こちらの3期も2期と同様・・住棟間地上部には、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通。1期から3期に渡る広い敷地、デザイナーが異なる住棟間を・・2つの全く異なるルートで探訪してみました・・

岡山県営住宅中庄団地

1つ目は、地上部の敷地全体を貫通する遊歩道のような中庭スペースから。

2つ目は、全ての住棟を繋ぐ空中迷路のようなペデストリアンデッキから。

実際に住んでいる人達と、僅かな時間だけ滞在する来訪者とでは・・感想を述べる視点の深度が異なるとは思いますが・・「愉しい集合住宅」でした。

岡山県営住宅中庄団地

探訪の最後に・・”3期の高層棟”から、全体を見渡して・・みました。手前に、3期(南側)から2期の住棟へと渡るブリッジが見えます。上空からだと・・2期の切妻家型の「うねる様な配置」と「3階開放廊下」の感じが・・よく見えます。その奥には「1期」が見えます。

岡山県営住宅中庄団地
3期から東側を見る

「岡山県営住宅中庄団地」は・・通常の県営住宅とは全く違う作り・・他にはない個性的な住環境。判子で押した様な・・どこかで見た様な、どこにでもある住環境ではなく・・ここにしかない住環境が愉しい・・”建築の経済効率的な側面”からだけではない、建築への評価/チャレンジ・・「クリエイティブTOWN岡山」のような意欲のある街づくりの事例が・・今後またいつか・・継続していく事を期待したいです。(正面の奥に見えている一群は「倉敷市営中庄団地」。)

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