「建築-新しい仕事のかたち」

松村秀一先生の「建築-新しい仕事のかたち」を読む・・
1970年頃から40年近くにわたり、年間100万戸を切る事のなかった日本の新築住宅の着工件数は・・ここ数年100万件を超える事はなくなり・・今後も100万件を超える事はないそうだ。その様にして建てられてきた新築住宅の数は、とても膨大で(実に6000万戸)・・いまやその数は日本人1人あたり0.48件。つかわれなくなった住宅・・空家の戸数は800万戸。日本の総住宅数の1/7以上が空家となっている状態・・膨大な数の「箱」を戦後つくり続けてきた結果、日本にはいま多くの余剰空間が溢れているという事だ。

松村先生のこの本では・・日本でいま余りに余っている「箱」を、迷惑な物とは考えず、むしろそれは資産なんだと・・“空間資源”という資産として、この膨大なストックをいかに活用するべきかという・・お話が数々の具体例とともに紹介されています。箱を場として再生する仕事・・その可能性は充分に期待を持てるという事のようだ。
「箱物」という”ハードなモノづくり”においては、理想的な “現実との接触” を持ち得なかった日本の建築業界が・・「場」という”ソフトなモノづくり”においては、理想的な“つくる回路”を取り戻せる事に・・期待をしたい。

「建築探訪 129」-Finland 20 / ALVAR AALTO 15

アルヴァ・アアルト設計の「アルヴァ・アアルト・ミュージアム (1973)」を探訪。ユベスキュラ教育大の南・・勾配のついた敷地に建つ、窓の少ない外観の建物。正面まで辿り着くと・・竪繁げなその壁の構成が目を引く。建物正面にあたる南側外観は三面鏡を開いた様な外壁の構えだが、アシンメトリー&折れ点での微妙な段差・・シンプルそうに見えて、細かな工夫が見られる・・外観のデザイン。(上写真 南側外観を見る)  

竪繁げの・・壁詳細を見る。いつもいつもの蒲鉾型タイルと、横長フラットな磁器タイルによる組合せ。外壁右上の壁から浮いている”飾り”は、ルーバーの様ですが・・   なんかKITTEのサインに似てたりします? 
いつもとは違う、平タイルと組み合わせた・・蒲鉾型タイルの使い方
控えなエントランス扉・・大理石の袖壁のラインも、斜めにピューッといってグッグッっ・・といい感じでアアルトらしいデザイン

全体の平面形は一言二言では説明できない様な多角形。平面構成においては、この建物より少し前に計画が始まっていた「ラハティの教会」にも通じるものがあります・・展示や祈りの為の大きな主空間 + 諸室や設備の為の小さな機能空間が適宜適所で従属・・というカタチ。全くの自由にも見える多角形の平面構成も・・実は敷地の高低差に適応させようとした設計の工夫だったり・・

2階の展示室を見る。大きなハイサイドから落ちる光で満たされた空間・・光を受ける面の “傾斜した木製壁” が内部空間のチャームポイント。所々がルーバー状になっている2段構成のうねる木製壁面・・この印象的なデザインは、言わずと知れた「NY博 フィンランド館」からのデザイン!!
“傾斜した木製壁” の詳細を見る
このミュージアムの”展示ケース”が、何ともgood。ピロティ状になったグレーな箱が幾つも並んでいて・・その箱には図面やスケッチ、写真や模型など様々な物がコラージュ・・貼り付けてあったり、直接描かれていたり、凹んでいたり・・何とも手作り的な感じさえも有るんですが、とても楽しげな・・”展示ケース”
右側の展示ケースには・・ヘルシンキより東へ300km、ロシアとの国境線近くの小さな町”イマトラ”に有る(今回の旅では見に行く事ができませんでしたが)・・「ヴォクセンニスカの教会(’58)」の断面模型が貼り付けられています
展示ケースの中にアアルトデザインの有名な照明器具や・・「NY博 フィンランド館 (’39)」のインテリア模型 !!!

ピューッといってグッグッといい感じのカウンターがある・・1階のカフェを見る。残念ながら、ゆっくりとここでお茶する時間も・・このカフェの窓から見えるくらいすぐ側にある同じくアアルト設計の「中部フィンランド民俗博物館(1962)」をゆっくりと堪能する時間もなく・・次の探訪場所へと出発・・

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さよなら「ホテルオークラ東京」

“ホテルオークラ東京”の最後の日です・・
“日本美を体現した近代建築の名空間”の終幕
53年間、多くの人をもてなしてきた「ホテルオークラ東京」が建替え・・
昨日(2015/8/31)を持って閉館
建替えに関しては、日本国内だけではなく、海外からも惜しむ声はたくさん。2度と体験できなくなった “あのオークラの空間” ・・本当に残念
2015年8月31日、グランドフィナーレの会場

節目節目の機会には、家族の思い出の背景として在った場所・・最後の日に宿泊できた事に感謝。

美の館

サイン工事・・ステンレスの切文字。「美の館」ではありません
ある意味、美の館ではありますが・・
この大原美術館のマークは・・かの芹沢銈介に師事し、90才をこえても今なお、現役の染色工芸家として活躍されている柚木沙弥郎さんの手によるものだそうです・・柚木沙弥郎さんは、芹沢銈介さんに弟子入りするまでの数年間、大原美術館に勤めていたそうです・・70年近く前の話
現状・・こんな感じで、やや寂しい & 分かりにくい・・

こんな感じに。マークや文字は、これまで美術館でずっと使われてきたもので・・デザイン的にはとてもとてもgoodだと感じていたので。 t/rim designにて行ったのは、レイアウト/素材/ディテールの監理調整だけですが。柚木さん作の大原マークは・・以前からとてもチャーミングだと思っていたので・・ 通常の使い方よりもバランス的には、大原マークをやや大きめにしてみました。

小住宅・・

自分から選んだのではないシチュエーションが、外せない条件となった時 ( 建築の設計行為とは大抵の部分がそういう状態なのかもしれませんが )、これまでとは違う自分でも思っていなかった様な応答が出てくる契機って・・ありますよね。
何ヶ月か前に提案させて頂いた計画案・・斜めに走る光のラインが印象的な「坪庭兼通り土間」が住まいの中心となった小さな住宅も、そんなひとつ。

「建築探訪 128」-Finland 19 / ALVAR AALTO 14

アルヴァ・アアルト設計の「ユヴァスキュラ教育大学(1951-76)」の・・「食堂棟(’53)」を探訪。左手にチラリと見えているのが「講堂/講義棟」・・
煉瓦壁の基壇+大きな高窓・・という構成の西側外観を見る。グッグッと高さを抑えられた1階と伸びやかな2階の・・バランスがgoodな感じ
2階食堂の内観を見る。外観から見えた大きな高窓の部分は、梁露わしの木製トラスで支えられた片流れ屋根・・食堂の空間自体(屋根も含めて)・・L字型になっていて・・2階食堂は中庭を囲ったプラン・・上写真の右手には中庭
高窓と壁の比率は、ほぼ半々くらい。西側に向いて、これだけの高窓・・日本だと夏は熱すぎて耐えられないだろうけど・・冬とても寒く、日照時間も短い、北欧では・・これくらいでgoodなんでしょうね
こちらは大きな食堂とは分けられ・・別室となっているスペース。教職員などが使用すると説明されていたような・・置いている家具もやや立派かな ?
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サンプル・・

SUS切文字とは、ステンレス板をレーザーで切り抜いて作るのですが・・サインに使用する文字が「明朝」や「ゴシック」などで、ラインがハッキリとしているものならば・・心配はnothing。しかし今回は「手書き文字」をSUS切文字として使用。再現具合がやや心配・・1文字だけサンプルを作って頂き、出来具合を確認・・・とてもgoodでした。仕上げはウレタン焼付け塗装。

ノベルティ・・

今日・・現調(これから計画する建物や計画地の現場調査)に伺わせて頂いた際・・作業中、Oさん宅の物置倉庫の中で発見したもの・・一目見た瞬間「オモシロイ!!」・・これが何の焼き物か分かりますか?
ヒントは「岡山県 前川國男」
再現された屋上の造形は・・師匠であるル・コルビュジエを思わせる?・・
裏面には「昭和三十二年三月十九日、新県庁舎落成記念」・・これは関係者向けのノベルティなんだろうか? (岡山県だけに備前焼!!)  
Oさんから「いいですよ、持って帰って下さい。」と・・ありがとうございます、Oさん!!  嬉しいです!!

こちらは「アアルト自邸」に置かれていた焼き物・・銀行のお客様向けのノベルティ(貯金箱)です。そのモデルとなっている建物は、分かりますか?・・かなり大胆な(オモシロイくらいの・・)デフォルメがされていますが・・答えはこちらで間違いないとは思いますが・・ 

「建築探訪 127」-Finland 18 / ALVAR AALTO 13

1959年に出来た「講堂/講義棟」の外観を見る

アルヴァ・アアルト設計の「ユヴァスキュラ教育大学(1951-76)」を探訪・・ヘルシンキを早朝に出発、長距離列車に揺られること2時間半・・ニコライ1世により1837年に開かれた人口13万人ほどの町 “ユヴァスキュラ”に到着。
大学キャンパス全体の配置は・・「講堂/講義棟」「図書館棟」「ゼミナール棟」「プール/体育館棟」「体育学部棟」「学生宿舎/食堂棟」などなどの各建物が、中央にあるグランドを中心にぐるりとU字型に囲う形。

「講堂/講義棟」建物外観の足下を見る。赤煉瓦、銅板、少し高さに変化をつけた開放的な開口部・・
町の中心部からてくてくと歩いていくと、緩く登った道の先に見えてくる・・左手の赤煉瓦ヴォリュームから屋根が突き出たカタチの建物が「講堂」。右手の水平に庇が伸びた低めヴォリュームの部分が「図書館棟」。その間にあるのが「講義棟」
「図書館棟」を正面より見る。庇と赤煉瓦のヴォリューム・・
講堂エントランスの扉を見る・・引手と一体になっている細桟の斜めデザインがgood・・戦前、初期アアルト建築の記念碑的な作品としても良く知られている・・「ヴィープリの図書館(1935)」を思い出さずにはいられない・・扉デザイン!!
「講堂」のエントランス/ホワイエはアアルト作品集では何度も眼にしていた・・あの空間。(上写真)玄関扉を入った左手に休憩スペース・・その向こうには松林が広がる・・
大理石の白い床に、いつもいつもの “アアルトタイル” を巻いた独立柱・・非常に開放的で明るいホワイエ空間
段々となった、細かい縦繁パターンが施されたリズミカルな格子天井・・階段を上がると講堂
こちらも、アアルトの作品集では何度も眼にする・・よく知られたあの空間!!  講堂と講義棟の間にある・・アアルトらしい長円型のトップライトが並んだ・・大階段のある吹抜け空間。正面奥のホール出入口へと向かう・・
大階段のある吹抜け空間・・を見返す。白い大理石/プラスターと赤煉瓦、素材の切替と空間の構成が響いています・・壁面に付いている照明器具、上下配光型ブラケットの形がオモシロイ・・
右下に見える・・ホール出入口を抜けて、建物裏より建物を見返す・・裏ヴォリュームに変化をつけた赤煉瓦だけのファサードの・・ポツンと隅に設けられた、白い縁取りの開口部・・が効いています
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