「酒津の家」- 配筋

コンクリート基礎の鉄筋・・コンクリートを打設する前に、鉄筋の種類/間隔/直径などをチェック。

岡山県建築住宅センターの検査も受けて・・無事終了。防湿シートの下には水滴がいっぱい。リブのついた異型鉄筋の表面には「SD295A、D10」というJISの規格である、刻印が打たれているのが見えますでしょうか・・SD295Aとは”鉄筋の強度別種類など”を表す記号、D10とは”鉄筋直径”を表す記号。

基礎立ち上がりの鉄筋。少し前までは、木製の立ち上がり型枠もよく見ましたが・・最近は金属製型枠が主流。前後しながら重なっていく鉄筋同士は、ズレない様に”結束線”という細い材でしっかりと繋ぎ止めていきます、繋いだ結束線が型枠に触れない様に”しまう”のがポイント・・次はいよいよコンクリート打設です。

作品紹介はこちら

「酒津の家」- 掘削

掘削工事が始まりました。「建物を支える基礎の形」に地面を掘っていきます・・地面を掘ると”施工済みの杭“が見えてきます。基礎は「ベタ基礎」という底板全面がコンクリートになっている基礎・・地面全体をコンクリートで覆うので、地面からの湿気やシロアリなどの侵入を防ぐ事が出来る・・しっかりとした基礎の形式です。この後は防湿シートを敷いて、捨てコンを打って、鉄筋の配筋工事へと進んでいきます。

現場へは・・倉敷駅前から続く”水路沿いの道”を自転車で10分程なのですが、その道中にある”交番のような町の集会所”・・が興味深い。5本の道路が交わる中心に建っていて・・屋根の形を含め、築年数なりのいろんな良い味が出ているんですが・・もちろん一番興味深いのは「水路の上に建っている」こと・・橋の上に建物が建っているんですよね・・

作品紹介はこちら

「建築探訪 149」-Aichi 3

名古屋大学豊田講堂

「名古屋大学 豊田講堂」を探訪・・89才のいまも建築家として活躍されている槇文彦さん・・32才にしての実質的なデビュー作!!!  。トヨタ自動車の寄付により1960年に完成。地下鉄の階段を上がると・・目の前にある大きな広場の向こうに、アシンメトリーな建物の西側正面が見える。ゲートのない開放的なキャンパスの「門」として、その建物の姿はまさに「門」という字の直喩的表現を思わせる。(ちなみにトヨタ自動車さんは、求められた予算に対して、自ら「その2倍の寄付金を出す」と申し出たそうです・・)

名古屋大学豊田講堂

10年程前に、同じくトヨタ自動車の寄付により、大規模な改修工事が行われ・・とてもgoodな建築の状態。50年近くの年月を経て、同じ設計者の手による、良質で本格的な改修工事・・”docomomo japan100″にも選出されている日本近代建築を代表する建築の・・この様な保存/維持/活用は、とても素晴らしい事だと思います。

名古屋大学豊田講堂

“コンクリート打放し”の場合・・改修で「建物の雰囲気」が損なわれる事が多いのですが、コンクリートの質感やプロポーションに丁寧な配慮がなされ・・50年近く風雨に晒され、木目は消え、外壁表面には砂が浮き上がってしまっている状態で・・かなり劣化していた”コンクリート打放し”も・・「杉板本実型枠による極薄増打ち」という手の込んだ改修手法などが用いられたおかげで・・建物の雰囲気が損なわれる様な事は・・ありませんでした。

名古屋大学豊田講堂

リフレッシュされた姿を、改めて見ていると・・「白いBOXの浮いている感」や「ピロティと打放しによる構造的表現の力強さ」に・・メタボリズムやブルータリズムなどの、60年代的な建築表現の新鮮さを・・再感。

名古屋大学豊田講堂

建物正面右手・・大階段とピロティを見る。建物ヴォリュームに対しての、柱の細長感が際立つ・・西陽を浴びて、ちょっとジョルジョ・デ・キリコ的な感じ・・柱は正方形ではなく長方形。すこしでも正面からの見え寸法を抑えようという工夫。槇さんの建築は決して声高に主張しすぎない・・熟慮された控え目な表現が・・心地良いです。

名古屋大学豊田講堂

この建物を設計中だった当時・・2年に渡り、世界中を建築視察旅行していた槇文彦さんは・・インドで仕事をしていたル・コルビュジエのアトリエを訪ね・・この建物の設計図面を見て貰ったそうだ・・その時のコルビュジェからの言葉は・・「柱を大事にしなさい」との事。

名古屋大学豊田講堂アトリウム

増築され大きく変わった内部を見る。槇さんらしい階段がgoodです。このアトリウムのスペースは、もともと外部だった所、右手が既存部・・

名古屋大学豊田講堂アトリウム

改修工事により別棟だった建物が、アトリウムを介して一体化。外部だったとは思えない、さすがの改修。右手の壁は、もともと外壁だったという事・・既存部の豊田講堂を南北面で支えている、特徴的な「コの字型耐震壁」がアトリウム空間で、存在感を示しています。

名古屋大学豊田講堂アトリウム

アトリウムより外部へと繋がる、”透け感”がgoodな出入口部分を見る。槇さんの建築・・やっぱりgoodです、品があります。たまたまですが、岡山県出身だという・・施設スタッフさんが、突然来訪している私達2人のために・・照明を点灯して下さり、親切に建物内も色々と案内して下さりました・・感謝感謝。

「酒津の家」- 杭打ち

昨年より計画を進めていた「酒津の家」が着工。敷地は・・岡山の主要水系である高梁川から繋がる配水池や、大正時代に造られた歴史ある(学会の土木遺産にも指定されている)樋門などもあり、桜の名所でも知られ・・四季を通じて倉敷市民に親しまれている”酒津公園“の近く・・落ち着きのある、とても恵まれた環境の敷地。

昨日より始まった”杭打ち工事”・・「湿式柱状改良工法」と呼ばれる地盤補強工事。すぐ横に設置されている機械で「混合された固化材」を、ドリル先端まで圧送・・ドリルで地面を上下しながら掘り進み、固化材を地面に注入/混合/撹拌・・機械の大きさから比較すると、作業自体は・・とても静かです。

南側の大きなテラススペースも含め・・建物本体を基礎下で、均等にしっかりと支持できる様に・・1.5~2.0m程度の間隔で、杭長4.0~4.5m程度の杭を・・45本施工します。10本/日くらいのペースで進みます。

作品紹介はこちら

カズオ・イシグロ

カズオイシグロ

「A Pale View of Hills (遠い山なみの光) 」・・遠い夏、戦後まもない長崎で出会った”あの母娘”がそうであった様に・・僅かな光を薄闇のなか探し求める様に生きてきた主人公が、半生を思い返すかたちで”日本の記憶”を語る・・カズオイシグロのデビュー長篇。作品全体を覆うイシグロ作品の空気感と小津安二郎の映像を思い起こさせる日本的雰囲気が・・印象的な作品でした。

「Never Let Me Go (わたしを離さないで) 」・・幼い頃から一緒に育った親友たちとの日々に思いを馳せながら・・夢見ていた僅かな希望が絶たれ、残酷で不条理な現実を”提供者”として、ただ受け入れるしかなく・・全てのものを奪われながらも、限られた人生を”記憶を支えに”・・生きる主人公達の姿が忘れられない、精緻な描写で描かれるノスタルジックなSF作品、カズオイシグロの代表作。

「Never・・」を読んでいる途中からずっと・・雨のなか白い鳩を抱いて逝ってしまった、あのレプリカントの美しい姿を思い出さずにはいられませんでした・・フィクションだからこそ伝わる真実/心情・・小説力について再認識。

Micro Bike

90年代初め、スウェーデン生まれの自転車・・Micro Bike

Micro Bike

2005年の引っ越し以来、13年倉庫にしまったままでした・・自宅も事務所も大阪市内だった頃は、大活躍だった自転車。その理由は・・「たたむのも、開くのも、わずか3秒!!! 」という、そのトランスフォームの速さ・簡易性

Micro Bike
水平に伸びる「上下アルミ角パイプ」がポイント・・
Micro Bike
上下のアルミ角パイプが「くの字」に折れる訳ですが・・
Micro Bike
折れ方がポイント。「前後の軸がずれる様な形」で折りたたまれます・・
Micro Bike

「前後の軸をずらして」アルミ角パイプが「斜めになった状態で折りたたまれる」・・という機構が、3秒という速さコンパクトさを生み出しています。

動画サイトで珍しいもの(発売当時のCM)を発見!!! 購入してから20年以上経ってはいるが・・丈夫な造りの自転車で、状態は良いし、デザインもgoodなので・・・暇が出来たら、少し整備して、また乗ってみようと計画中。

「建築探訪 148」-Aichi 2

一歩亭

程良く高さを抑えた塀の向こうに見える佇まい、豊田市美術館の敷地内にある「一歩亭」。設計は美術館と同じ・・モダンデザインだけでなく数寄屋デザインも巧みな・・谷口吉生さん。広間と立礼席のある茶室建築・・妻面の真下部分がメインエントランス。

一歩亭

南側外観を見る。柱に支えられた、薄い庇下・・両引分け戸のメインエントランスが見えます。非常に寡黙・・無駄のない佇まい。

一歩亭

線材によるシンプルな構成美が・・goodです。床の石材は、美術館でも多く使われているグリーンスレート。

一歩亭
建物をぐるりと囲う軒下空間、いい感じです・・
豊祥庵
折れ曲がりながら伸びていく・・東側の軒下空間。右手に別棟の茶室あり(三畳台目と一畳台目の席がある”豊祥庵”)
一歩亭
東側外観を見る。水平に低く伸びる日本的な佇まいがgoodです。メインエントランスのある南側の軒下空間が・・そのまま東側まで廻ってくる・・
一歩亭
軒先を見る・・板金(唐草)と板(広小舞)の間が、空いてるのが興味深い
一歩亭
一歩亭立礼席
立礼席を見る

豊田市美術館を訪れた際には、見落としたくない谷口吉生さんの数寄屋建築・・ジャパニーズ・モダンの最高峰を設計した父親ゆずりの巧みさ。

「建築探訪 147」-Aichi

豊田市美術館

開館から22年経っても・・”いつまでもモダン”な「豊田市美術館」。”美術館博物館”建築のマイスター・・谷口吉生さんによる設計。高台となった大きな人工池に面して配された「直方体の建築」。右手の本館とテラスを挟んで、左手に建つ別棟は”高橋節郎館”。その他、別棟で茶室建築(もちろん谷口吉生さんの設計)も有ります。長大な門型フレームが効いています。

豊田市美術館

谷口吉生さんのミュージアムと言えば・・「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「土門拳記念館」「東京国立博物館宝物館」「ニューヨークMoMA」「京都国立博物館平成知新館」などなど。セラ、ルウィット、ビュレンなどの外廻りに置かれたミニマルな彫刻作品もgoodです。西側より見る・・門型フレームの向こうに、左よりアルミ張り、ガラス張り、石張りと、素材を変えた直方体が綺麗に並ぶ。

豊田市美術館

谷口さんの好きなグリーンスレートの石で覆われた・・大きな門型フレームで区切られたエントランスコートを見る。広い敷地に施された、外構デザインはシンプルですが、手が込んでいます・・デザインは世界的なランドスケープデザイナーのピーター・ウォーカー。

豊田市美術館

エントランスが、いつも控え目な谷口建築・・(エントランスは写真中央部に見える庇部のところ)大きな外部空間から建物内に入る時、ググッと一度スケールを絞り込むのは・・谷口さんの好きな手法。

豊田市美術館

エントランスコートを見る。この日は快晴、スクエアな建築のエッジが際立ちます。”東山魁夷展”の開催中ですが・・右手の四角い壁面に貼られた展覧会用のサイン、これが建物とどうも調和していない様な・・

豊田市美術館

建物を覆う”ガラスの大壁面”。しかしながら、谷口建築はいつもいつも・・どこを見に行っても、気持ちいいくらいに・・”キチッと“納まっている。

豊田市美術館

2階通路部を見る。内側から見た”ガラスの大壁面”・・もちろん内外の2重ガラスで構造体を囲った壁です。2階の通路部分は、コスースの壁面グラフィックと、ホルツァーの電光掲示板を、設えた常設のギャラリースペース。

「建築探訪 146」-Gifu 2

羽島市庁舎

大スロープ、水平に重ねられた高欄手摺と大きな開口部、屋上に載せられた凸凹屋根、聳える火の見櫓・・坂倉準三建築研究所の設計による「羽島市庁舎(1958)」を、今年の5月に・・探訪。羽島市は坂倉準三の故郷、実家は近くにある有名な造り酒屋(千代菊)・・北側から見る。坂倉の庁舎建築といえば、呉市庁舎旧枚岡市庁舎

羽島市庁舎

建物の東側には・・高く聳える”火の見櫓のような”望楼と、4Fまで繋がる折り返しの大スロープ。この角度から見ると、各建築的要素の構成による、建物のダイナミックさがよく伝わる。

羽島市庁舎

この建築の大きな特徴・・2Fのメインエントランスへと繋がる、建物を南北に貫く、大きな斜路。坂倉さんの建築と言えば・・建物をプロムナード的に巡っていく階段やスロープといった物の・・存在感や独立感 が際立っています。有名な1937年のデビュー作である「パリ万博日本館」もそう!!。

羽島市庁舎

南側の立面を見る。建物の廻りには小さな池が張り巡らされ・・坂倉準三の傑作である「カマキン」にも通じる、水辺と建物の関係性。屋上に突出物を載せるデザインは師匠ゆずりで・・いかにも「コルビュジェ」!!。

羽島市庁舎

坂倉の設計による東急文化会館呉市庁舎が撤去され・・そしてまたこの建物も”サヨナラの危機”(今月初めに新庁舎建設工事の公募型プロポーザル」の公告が羽島市より発表)・・個人的に思い出のある大阪の枚岡市庁舎も危なそうだし・・近年次々と撤去されていく坂倉建築・・。今は使われていない、折り返しながら4階まで上がる大スロープを見る。

羽島市庁舎

大スロープ横にある、望楼への入り口部に目がとまる・・壁面と開口のバランスが何ともgood・・それを際立たせているのが、この型枠の割付け・・

羽島市庁舎

昔の”コンクリート打放し”は・・コンクリートを流し込む為の木製型枠が、大きな1枚のパネルではなく・・フローリングのような板材を貼りあわせた物・・しかし、この割付けはとても手が込んでいて、goodです。

「建築探訪 145」-Okayama 5

Junko Fukutake Terrace

大きなイチョウ並木に沿う様に、街にそっと置かれた建物の配置と・・周辺に対してシームレスに繋がっていく開放的な佇まいが・・印象的な「Junko Fukutake Terrace」。岡山大学キャンパス内に建てられたカフェ・・”地域に開かれた施設”の姿は、建物の寄贈者であり、残念ながら今年の2月に亡くなられた、故福武純子さんの思いから

Junko Fukutake Terrace

長手の立面を見る。断面的な「屋根のうねり」が、この建築のチャームポイント。水面の揺らぎの様に・・流れる屋根のラインが、とても素敵な建築。小さな建築ですが・・よくよく見ると、さすがのプリツカー賞建築家による建築・・という感じで凄いです。

Junko Fukutake Terrace
林立する細い柱」も、この建築のチャームポイント
Junko Fukutake Terrace
大きな樹木を避けながら”うねった屋根”は、平面的にもアメーバーのような不定形・・建物の構成としてはシンプルだが、工事は難しそうだ
Junko Fukutake Terrace
外部の屋根は「12mmの鉄板にフッ素樹脂塗装」のみ。1/50の断面図で作図をしたら、屋根の厚みの作図部分は「0.24mmの線が1本」だけという・・嘘のような断面図になってしまいます
Junko Fukutake Terrace
カフェ客席より、厨房やトイレなどが入ったコア部を見る。内部天井の仕上げはプラスターボード張り。床の仕上げはコンクリートに撥水剤のみ
Junko Fukutake Terrace

自然に人が入ってこられる、地域の一部となった、まちなかの公園のような大学のカフェ・・日本を代表する建築家ユニットSANNAの設計により、2014年に完成した現代建築の秀作。