○○偽装

昨年は食品に関する様々な偽装がありました・・不自然な加工をされ非常に長持ちし、非常に安価、本物より”本物らしく”見えたりもする・・材料や生産地を偽った食材・・
(上写真左)
工事中の「安江の家」に「フローリング」が搬入されました。ナラ-15mmの無垢材(当たり前ですが木材なので中まで全てナラ)、仕上げは*オスモカラー。
*オスモカラーとは、ドイツ製の自然植物油とワックスをベースに作られた人体や環境にやさしい無公害の木材保護塗料材。表面を樹脂の強い膜でコーティングしてしまう一般的塗料とは異なり、内部に浸透する塗料材なので木材が持つ利点である調湿機能が有効に働く事が出来ます。
(上写真右)
しかし世の中の多くで「フローリング」といえばこちらを差します・・見た目はとてもキレイで、汚れも付かずお手入れ簡単、しかも安価・・厚さ15mmのうち、「表面の2%・厚さ0.3mmの紙のような本物の木」が貼られ、樹脂でツルツルにコーティング・・内部98%はベニヤ・・ベニヤとは薄い板材を何層も接着剤で塗り重ねたもの・・”合板フローリング”は触ると固くて冷たい・・

本物より”本物らしく/立派に” 見えたりもする・・確かに木材には違いないのだが・・これを「ナラのフローリング」です、「カバのフローリング」です、「ケヤキのフローリング」です・・などと言っても良いのだろうか・・

「Optimum」

Optimum

「デザインの原形」を読む・・2002年に開かれた展覧会の本。
プロダクトデザイナー深澤直人によって選ばれた、50点以上の品々・・共通するキーワードはOptimum。“Optimumとは「最適条件、最適度」” 。

機能性が即シンプルな形へと繋がる画一的な単純化した合理主義ではなく、これ見よがしの個性が主張する目立ちたがりデザインでもなく・・・モダニズムの新しいフェイズとしての新合理主義とでも言ったような流れ。

深澤さんの言う「時代を経ても古びない原典性に基づくデザイン」、「人の行為/生活/身体性に溶け込んでしまっている必然を探し出すようなデザイン」・・・とはどんなものなのか?

「壁掛式CDプレイヤー」(2000)  Design by 深澤直人
換気扇のようなカタチ、紐を引くと回転し音楽が流れる。「壁に掛けて&紐を引く」・・これまでのCDプレイヤーと、少し違う行為を引き出される
「Aluminum Group Chair」(1958)  Design by チャールズ・イームズ
しなやかな筋肉のような鋳造アルミフレームとそれが支える薄い座/背との組合わせが美しい・・50年経っても古びない普遍的存在感が原形性を醸し出す
「Kartio」(1958)  Design by カイ・フランク
“グラス”と言われた時に誰もが絵に描くようなベーシックな形のグラス・・しかし、ただのシンプルグラスとは何かが違う・・カタチ/厚み/重さ・・絶妙なバランスの複合

「オリジナリティとは作者の個性や主観的意思の表れ・・・原形は作者が探し出した必然である・・急な登山道で誰もが無意識につかまってしまう木の枝や岩の角のような、成るべくして成った存在・・・原形になりうるデザインは緩やかな身体の変化の速度に歩調を合わせている気がする・・」  
by Naoto Fukasawa

TIVOLI

倉敷駅前にある「倉敷チボリ公園」が昨年末に閉園しました・・岡山県出資の第三セクターによる経営で、本家デンマークの「チボリ公園」をモデルとし園内には庭園と池を中心に観覧車・ジェットコースター・ショップ・レストラン等があり・・倉敷の観光スポットとして期待されていまいたが・・
1997の開園からわずか11年、開園から数年は年間300万人から200万人の来場者数を誇っていまいたが、年々減少していく来場者数を止める事は出来ずに閉園が決定しました。
県民市民のための公園として再利用する事など・・さまざまな跡地利用が提案されましたが具体案はまとまらずに閉園となりました・・残念。

「建物探訪 31」 -Tokyo/丸の内

新丸の内ビルディング

「新丸の内ビルディング(’07)」 
設計:三菱地所 + Design Architect/マイケル・ホプキンス(英)
(上写真)北側の通りから見る。東京駅の向こうに「グラントウキョウノースタワー(’08)」。

明治より始まる丸の内オフィス街の景観はロンドン風/赤煉瓦オフィスビル街から始まり、アメリカ風/大型オフィスビル街へと変わり。そしてここ数年はガラス張りの現代的な新しい高層ビルに次々へと建て替えられ・・東京駅越しの八重洲口側/ヘルムート・ヤーン(米)がデザインアーキテクトを務める「グラントウキョウ」も含め、景観は大きく変貌しています・・・

東京駅から見ると、正面の皇居を結ぶ軸線(行幸通り)を挟んで建つツインタワービルの右側のビルです。デザインの大きな特徴の1つは、建物全体を高層部と低層部に分けている事・・低層部はかつての丸の内の景観を形成していた”31mの軒高さ”に合わせている・・それにより大きな建物と人(街路)の関係が失われる事がない様・・かつての31mという高さのままの基壇(低層部)が人(街路)と連続的な関係を築くようにとのピロティ等も設けて配慮している。もう1つは建物全体も”分節”に注意している事・・都市部で近頃たくさん出来る高層建物のデザインは細やかさのない大味な”箱のまま”が多いのですが・・大きい建物だからこそ細やかな部分・・部材と部材を繋ぐ細かな溝/縦フィン/水平ルーバー/低層部のフレーミングデザイン等・・細やかに分節したヒューマンスケールを見失わないデザインand 陰影のあるデザインが配慮されています。期待せずに見に行きましたが、鉄とガラスを多用した”レトロモダニズムな感じ”は悪くないと思います・・

新丸の内ビルディング
(左)東京駅から見る。その後ろには「東京海上ビル(’74)」by前川國男
(右)行幸通り、皇居側から東京駅を見る。左に「新丸の内ビルディング」 右に「丸の内ビルディング(’02)」

展覧会 2008

東京で展覧会&建築を幾つか 廻って来ました・・
一番のお目当てはミッドタウン(六本木)の21_21 DESIGN SIGHTでの
1.「Second Nature」・・・日本を代表する若手プロダクトデザイナー吉岡徳仁のディレクションによる”デザインの未来”をテーマにした展覧会・・”マテリアルボーイ”とも海外から称された吉岡徳仁の新技術/新素材といったテクノロジーへの興味と、単なる表面的な模倣ではない”自然の原理”といったものへの興味が導く”未来のデザイン”とは・・・メインの大きな展示室の天井全体を”雲の様に覆うインスタレーション”が圧巻でした。
2.「安藤忠雄建築展」 ギャラリー間(乃木坂)・・・安藤忠雄が30年程前に設計し、出世作となった大阪に建っている小住宅「東邸」の原寸(!!)模型・・良く出来ていてビックリ・・ちょうど見に行った時には安藤さんも来られていました
3.「GA JAPAN 2008」 GAギャラリー(千駄ヶ谷)
4.「建築の新潮流 2008-2010」 ヒルサイドフォーラム(代官山)
5.「High-Tech&Tradition展」 東京デザインセンター(五反田)

六本木~千駄ヶ谷~渋谷~代官山~五反田・・・一日掛けて展覧会を見て歩いて廻りandその間に幾つかの建築見学も・・次の日は脚がパンパンでしたが・・いろいろ見る事が出来て、良い刺激になりました。

瀬戸内海

週末、高知S邸の打合せの帰り・・瀬戸大橋から見えた瀬戸内海の夕景。
夕陽がせまり霞んだ内海に・・いくつもの小さな島々が連なり重なる風景は内海ならではの美しさ。瀬戸内海って以外と晴れてすっきりという日が少ないのか・・なかなか快晴で隅々まで見渡せるような日にはまだ出会えません。

屋根

(左上)伊勢神宮外宮/古殿側からみる四重の塀の向こうに茅葺きの屋根
(右上)桂離宮/中書院-楽器の間-新御殿と雁行する柿(こけら)葺きの屋根
(左下)元興寺/飛鳥時代のとても古い瓦も使用されている屋根
(右下)大宮御所 御常御殿/大きく、反りが美しい寝殿造りの屋根

“屋根という建築的要素”は近代建築が始まるまで、古代寺院建築(or先史竪穴住居)から非常に長い期間・・1000年以上という単位で大きくは変化のなかった普遍的と言ってもいい要素のひとつでした・・
近代建築技術の進歩によって初めて”屋根がない”建築が現れ・・それは長い建築史から見ればここ最近20世紀以降の事・・・近代以降、大きな/公共的な建物は鉄筋コンクリート造/鉄骨造でつくられ”屋根がない”ことが当たり前なのですが、昔は逆に建物が大きな/公共的な建物であればある程”屋根が大きい”という事が重要でした・・・
雨が多く湿度の高い日本のような地域では”屋根が大きく&軒が深く”ある事は快適な居住環境を得るためには合理的/機能的な選択です・・・しかしそれだけが理由ならば、「そんなにも大きくなくてもいいだろう」と言うくらい日本建築の屋根は大きく・・・合理/機能だけではなく、そこには象徴的存在としての”大きな屋根”への言葉には成し難い様な「憧憬」のようなものがDNAに刻まれているのではないでしょうか・・・

Jorn Utzon,90,Dies -基壇と屋根

デンマーク人建築家ヨーン・ウッツォンが先週末11/30に亡くなられた・・1918年生まれの90才でした。ウッツォンといえばその名前は知らなくても、彼の建築は誰もが知っている「シドニー・オペラハウス」の”設計者”

1957年の国際コンペで当時無名だったウッツォンの白帆のようなシェル構造屋根がリズミカルに連なる鮮やかな案は見事1等となり「シドニー・オペラハウス」の計画は始まる(すでに落選作の中にあったウッツォン案をエーロ・サーリネンが拾い上げ1等としたのは有名な話)・・・1966年の政権交替により理解あるクライアントは居なくなり・・ウッツォンの極めて個性的な”20世紀を代表するはずだった建築”のプログラム/木製吊天井andプライウッド方立の美しいホール内装/繊細な動きのあるガラス外壁など様々な細部は簡略され(一般の人からすればコンペ案がだいたい実現されれば、細かな部分などまぁ良いではないかと思われるかもしれないが・・建築家にとっては細部まで意図通りに出来なければ自分の作品とはきっと言えないものなのです)・・・ウッツォンは実施設計途中で建築家の責を辞任しデンマークに帰ってしまう・・その後は地元オーストラリア官僚建築家委員会が設計を引き継ぎ、色々ありながらもコンペから16年後の1973年にようやく完成を見るが・・・出来たものはやはり100%ではない・・ウッツォンが最後まで監理していたなら本当に”20世紀を代表する建築”になっていたはず・・残念。

「大きな基壇と大きな屋根」
遺跡を思わせる大きな下部基壇と、ヨットの帆のような円弧シェル屋根群(球体から切り取った弓形シェルヴォールト-タイル打込みのプレキャストコンクリート製)による明快でダイナミックな建築構成・・
ウッツォンは建築要素としての「巨大な水平面(基壇)」がもたらす効果というものについてメキシコの遺跡を訪ねて以来、並々ならぬ魅力を感じていたり・・「基壇と浮遊する大きな屋根」だけの構成による日本建築にも興味を寄せていたり(上写真右はウッツォンのスケッチ)・・・海辺に面したオーストラリアというロケーション/メキシコ遺跡/日本伝統建築/最新技術・・・単純ではない複雑な視野が入り混じった”モダニズム第三世代”らしいウッツォンの建築・・コペンハーゲンにあるもうひとつのウッツォンの傑作 「バウスベアーの教会(1976)」もモダニズム第三世代を代表する素晴らしい建築・・・
ウッツォンさんのご冥福をお祈りいたします。

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プチプレゼン

トリムデザイン設計子供部屋のリフォーム

昨日はプチプレゼン・・子供部屋1室を2室に分ける計画。

子供部屋が「独立した個室」である事が必要な時期は以外と限られた期間です・・お子さんがまだ小さい頃に新築される場合は当分は必要なく・・広い1室の方が良いと思います・・子供さんが大学生になって家を出てしまった際にも、「独立した個室」がいくつかあるよりも・・広い1室がある方が家としてはいろいろと便利だと思います。

高校2年生と中学2年生の姉妹で使っていた1室(上写真左)を(上写真右)のように2室に分ける計画ですが・・壁をつくって分けてしまうのではなく、建具で分けます・・建具であれば工事も簡単(安価)だし、将来外して1室に戻しても良いし、普段は開けておいて必要な時だけ閉じれば良いし・・

いかにも建具ではオモシロクないので・・壁のように大きな(W2600×H2400)・・一見すると何処が開くのか分からないような(両袖引きです)・・建具らしくない建具を薄いグレー3色で仕上げます・・

「建築探訪 30」 -Tokyo/表参道

ディオール表参道

「ディオール表参道(2004)」、設計はいまや日本を代表し、海外での活躍もめざましい・・「金沢21世紀美術館」の設計などで知られる SANAA/妹島和世+西沢立衛

四角/ガラス張り/ミニマリズム/レスイズム・・・いわゆるガラスBOX建築・・近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)の系譜・・今もスタイリッシュな作風の多くの建築家が憧れる・・・ミースの 「完全なガラスの箱のような、なにもない建築をつくりたい」 という夢は・・
「フリードリッヒ街のオフィスビル」というこの1919年に描かれたドローイング(下写真)から始まっています・・90年近く前にミースが描いた夢に今なお多くの建築家が魅了されているのです・・魅了されているというよりも”呪縛”だね