「建築探訪 166」-Tochigi

ちょっ蔵広場

宇都宮から2駅、宝積寺駅を降りると・・このどっしりとした壁が街の顔として出迎え・・隈研吾さん設計の「ちょっ蔵広場(2006)」を探訪。この壁がこの建物のチャームポイント・・既存建物(米蔵)の外壁をこの壁に置き換えた”改修”・・”ただ石を積上げただけ”・・なんだけど、さすがの隈建築・・

ちょっ蔵広場

ホールの西面を見る。”への字型”に切り出した大谷石を・・ただ積上げただけ。奥に見えるのが、同じく隈研吾さん設計の「宝積寺駅」。石という材料で壁面を作ると、建物の表情はどうしても固いものになってしまいますが・・大谷石という柔らかさのある石材を使用する事と・・さらに穴を開けた壁とする事で・・石張りの建物にしては、異例の柔らかさ。

ちょっ蔵広場

ホールの北面を見る。壁の後ろはトイレなどのスペースに繋がる通路部分。西面の”への字”は均等なんだけど、北面の”への字”は徐々に”への字”の角度が・・変わっていくのが絶妙・・石は重たく閉ざしているモノのはずなのに・・”透けている石壁”という着想が・・goodですよね。

ちょっ蔵広場

「ポーラスな大谷石”への字”壁」のデザインの要点は・・この石を支えているスチールプレート。正面からは全く見えないが・・スチールプレートを水平に通しで設置、その上に大谷石を積む、そしてまたその上にスチールプレート・・という繰り返しで、この不思議な”ポーラスな石壁”のデザインが・・成立。

ちょっ蔵広場

こちらはホールの向かいにある「多目的展示場」。壁はホールと同じ手法で・・天井は壁のデザインモチーフが連続していく感じ・・天井部分はもちろん石ではなく、平板的な材料をグラフィカルに切り欠き加工したものでした。

「建築探訪 164」- Kagawa 7

豊島美術館

このムニュっとしたコンクリートの殻・・2010年にできた「豊島美術館」・・とにかく凄い空間&建築・・アーティスト内藤礼との協働によるワンルームの半屋内外空間・・・素晴らしかった!!!!!!!!!!!!。
(10年程経っているのでコンクリート屋根の”フッ素樹脂塗装”がそろそろ再塗装の必要有りでしょうか・・)

豊島美術館

建築設計はSANAAの西沢立衛さん・・・シームレス!!!!な、どこにも継ぎ目のない40×60mの一塊のコンクリートシェル!!!!!!。(どうやって???こんな建築を作るんだ???という印象とは裏腹に、施工過程は意外と原始的で、人力勝負だったりもするので、ビックリ!!。) 
残念ながら内部撮影禁止なので・・こちらを

豊島美術館カフェショップ

美術館に隣接したこちらのカフェショップは、美術館のミニチュアのような類似型の空間でおもしろい・・・訪れた日は、多くの外国人・・・瀬戸内海の小さな島という、不便な場所に在る美術館ながら・・海外の旅先として、足を伸ばしてでも訪れたい魅力がここには在るのでしょう・・建築とアートと自然が調和連続した・・ダイナミックな唯一ここにしかないという・・アートな場所。

「建築探訪 160」- Tokyo/ 下石神井

ちひろ美術館・東京

内藤廣さん設計の「ちひろ美術館・東京」(2002)を探訪・・東側外観を見る。アプローチ道路に面した東側外観は・・両翼を大きく広げた・・Wellcome!!な感じがgoodです。周辺は一般的な住宅が建ち並んでいる様なエリア・・もともとは作家である”いわさきちひろ”さんの・・自邸の一部を使って始められた美術館の建て替え・・

ちひろ美術館・東京

アプローチ道路から外観正面を見る。左右の2棟で挟み込む形・・2棟の間に駐車場、中庭、カフェテラスを配置。配置計画にも影響を与えている、建て替え前からある”大きなケヤキ”の存在が、建物を引き立てる・・右手の1階にエントランス。

ちひろ美術館・東京

建物上部がフッ素樹脂塗装のSUS鋼板竪はぜ葺き。下部はコンクリート打放し。

ちひろ美術館・東京

100mm間隔/9mm角のダブルの・・格子塀が素敵です。

ちひろ美術館・東京のカフェ

北棟1階のカフェより、中庭越しに南棟を見る。住居系の地域に建つ美術館・・(法規的な規制もある事からなのですが)ヒューマンスケールなヴォリュームによる構成が・・落ち着きます。リラックスできるアットホームな美術館・・

ちひろ美術館・東京

建物中央の連結ブリッジ部を見る。北棟2階の展示室2を出て、南棟2階の図書室へと向かう部分・・中庭に面した大きな開口を介して、建物全体との繋がりを常に感じられる空間構成がgoodでした。

ちひろ美術館・東京

中央連結部の1階、中庭に面したカフェテラスを見る。基本的には以前の建物や庭の配置を踏襲しているそうだ・・多角形の小さなヴォリュームに分けた複数の棟を、中庭のある中央部で連結した、とても複雑な形の平面が・・多様な居心地を作り出していて・・とても魅力的。

ちひろ美術館・東京館内サイン
上の館内サインは来館者が使用するエリアのみの表示なので、建物全体を正確には表していません

踏襲したからこその”形”なんだろうか・・新規から考えた形では、こうも自然に感じのいい不定形は作れなさそうな気がします・・。

「建築探訪 158」- Kurashiki

カモ井加工紙工場

岡山県倉敷市にある、おしゃれなマスキングテープの会社としてよく知られているカモ井加工紙の工場・・とても広い敷地の中に、切妻屋根が何棟も並んだ風景・・どこにでもある様な古ぼけた工場群の一角が・・見事なリノベーションで“おしゃれな工場”に生まれ変わりました・・設計はTNA。

カモ井加工紙工場

まず最初にリノベーションされたのが、右側の建物・・もともとの建物のスケルトンである柱梁の間を”モルタル塗りの新しい外壁”で埋めた2階部分と、全てガラス張りとした1階部分と、で構成された・・”工場資料館(2012)”。次にリノベーションされたのが、左奥の建物・・腰回り全てを“半透明中空ポリカーボネート複合板”で覆った・・”第二製造工場倉庫(2013)”。

カモ井加工紙工場

次に新築されたのが、右側の建物・・外壁全体を半透明中空ポリカーボネート複合板で張られた四角い建物が・・”mt新倉庫(2016)”。同じポリカーボネート製の外壁でも・・新倉庫の方が透明感が高い様に見えます。2棟のリノベーションと1棟の新築・・

カモ井加工紙工場

“3棟共”に共通しているのは・・工場や建物の歴史、これからの在り方、敷地や周辺を含めたコンテクスト、などなどを丁寧に読み込みながらも・・その解答が驚くほどシンプル!!。外観はもちろん・・プランや構造、マテリアルやディテールも含めて・・驚く程の見事な”シンプリシティ”。(上写真)「第二製造工場倉庫」と「mt新倉庫」の間の通路が・・未来チックに見えてgoodです。

カモ井加工紙工場
工場資料館の1階を見る。屋内だけど広場のようなスペース

“もともと”から開いていた2階床の開口に向けて・・1階床から8本の新設柱(100角の無垢材)が伸びる。余計な物を一切排除していきながら、既存部分の存在感を際立たせる・・とてもシンプリシティな発想ながら、精緻な設計により・・見事なリノベーション。

カモ井加工紙工場
工場資料館の2階を見る。様々な資料が置かれた展示室

1階床に突き刺さった8本の細長い柱で・・支えられた2階の屋根が「見事に浮いています!!」・・広い広い工場敷地の中で、この2階だけ・・空気感の違う”新しい場所性”が獲得されていました・・素敵な展示室。(もともとは鉄骨スレート葺きの切妻屋根!!)

「建築探訪 156」-クリエイティブTOWN岡山 その2

倉敷市営中庄団地
第1期を見る

緩やかな・・起伏のある緑化された敷地の中を、幾つものスロープやブリッジが巡る・・風景が印象的。高低差のある敷地でありながら「よう壁による”ひな壇造成”」という安易な手法を選択しなかった事が・・計画地全体にとても伸びやかなイメージを与えている「倉敷市営中庄団地」を探訪。第1期部分(2000)の設計者は・・新居千秋さん。

倉敷市営中庄団地
第1期を見る

徒歩で、表側から訪れた印象では・・駐車場や駐輪場が、あまり目立たない感じ・・各棟の近接した場所に分散して・・その様なスペースを配置・・goodでした。

倉敷市営中庄団地
第1期を見る

十二分に採光確保ができる・・住棟間隔が公営ならではの”ゆとり”。バルコニー部が目立たないデザインも・・goodな感じ。スロープやブリッジで敷地内を巡っていると・・なんか愉しい感じ。地上レベルの遊歩道を歩いていると・・弧を描いたスロープが頭上をかすめて横断していきます・・

倉敷市営中庄団地
第1期を見る

住棟のヴォリュームは細かくスリットで分節・・そのスリット部毎に各戸へのアプローチ階段を設置する事により・・建物が与える圧迫感を減じたヒューマンスケールなヴォリュームに落とし・・各部に”抜け”を作り出しています。

倉敷市営中庄団地
第2期を見る

第1期同様「緩やかな起伏のある敷地」と「スロープ&ブリッジが巡る風景」が印象的。第2期部分(2004)の設計者は・・元倉真琴さん。

倉敷市営中庄団地
第2期を見る

隣棟間隔の広い各棟を各層ごとの水平ブリッジで繋ぐという・・集合住宅の形としては”あまり見ない感じ”が・・goodでした。

倉敷市営中庄団地
第2期を見る

水平に積層されたブリッジの存在感がハンパない!!・・少し”イタリアン・アバンギャルド“な感じで・・”テラー二“っぽい?

倉敷市営中庄団地
第2期の西側5棟を見る

2期の敷地は、道路により「東側8棟と西側5棟」に分断されているのが、やや残念な感じでしたが・・判子で押した様な、どこかで見た様な、どこにでもある住環境ではなく・・ここにしかない住環境が愉しい・・”建築の経済効率的な側面”からだけではない、建築への評価/チャレンジ・・「クリエイティブTOWN岡山」のような意欲のある街づくりの事例が・・今後またいつか・・継続していく事を期待したいです。

「建築探訪 155」-クリエイティブTOWN岡山 その1

岡山県営住宅中庄団地

いまから25年ほど前「クリエイティブTOWN岡山」という事業が、岡山県で行われました・・当時の岡山県知事が、熊本県で行われていた”熊本アートポリス”という街づくりの・・建築的文化性に感銘を受けられ、岡田新一さんにコミッショナーを依頼するところからから始まり・・その事業の第一号として完成したのが・・この「岡山県営住宅中庄団地」。
(上写真)第3期の中庭より見る。デコンストラクション風?・・”90年代的デザイン”な橋がチャームポイント

岡山県営住宅中庄団地
1期の西側外観を見る

建築景観や建築文化の向上を目的とした事業「クリエイティブTOWN岡山」・・そのスタートとなる、第1期部分(1992)の設計者に指名されたのが・・丹田悦雄さん。

岡山県営住宅中庄団地
1期の西側外観を見る

道路と河に沿って50m近く・・1期から3期まで、何棟もの住棟が曲折しながら連結していく全体の配置・・その全体に渡って「ペデストリアンデッキ」が・・棟間を縫う様に貫ぬいている。ややラビリンス的な構成が特徴・・全体性がハッキリしていて、誰でもその構成が一目瞭然なステレオタイプなマンションとは、一線を画したプラン。その”一見さんお断り的”な雰囲気に距離感を感じる人も多そうですが・・

岡山県営住宅中庄団地
1期の東側外観を見る

穴の開いた鮮やかな彩色衝立壁と、コンクリート打放しの組み合わせが80年代的(早川邦彦の80年代後半の集合住宅”ラビリンス”や”アトリウム”を思い出さずにはいられません・・)。パラパラと多様なエレメントが混在&連節しているデザインも80年代的な空気感・・でgoodです。

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の東側ペデストリアンデッキを見る

各戸が自由に植栽を並べられる、余裕のある通路幅を確保・・

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の東側ペデストリアンデッキから西側ペデストリアンデッキへと抜ける棟間のスリット部を見る

パラペットに架かる”丸い屋根”がgoodです・・

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の西側ペデストリアンデッキを見る

各戸の玄関先にペデストリアンデッキに向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・のがチャームポイント。

岡山県営住宅中庄団地ペデストリアンデッキ
1期の西側ペデストリアンデッキを見る

中空に架かる橋を渡ると・・1階に降りる事なく、そのままデザインの全く違う住棟へと移動が出来ます・・いくつもの「スリット」「ブリッジ」「ペデストリアンデッキ」を抜けて1期から2期へと巡る・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の3階通路を見る

各戸が向かい合わせになっている屋外通路・・1階に見えますが、これは3階・・中廊下型になっているのですが、屋根がないので、”開放廊下”な感じ。こちらの住棟・・第2期部分(1996)の設計者は阿部勤さん・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の3階通路を見る

こちらの住棟も同様・・各戸の玄関先、通路側に向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・

岡山県営住宅中庄団地
2期の中庭より見る

地上の住棟間中央部を、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通する・・上空には、3階レベルの住棟間通行に使用されるブリッジが架かる。各戸の玄関先にはコンクリートの衝立壁、植栽やパーゴラなどが設えるられています。

岡山県営住宅中庄団地
2期の中庭より見る

2期から3期へと渡るブリッジ・・このブリッジは道路上を跨いでいます。3期の中央部には、この地域では珍しい・・高層棟が聳え立つ。

岡山県営住宅中庄団地
2期と3期の間に架かるブリッジより見る

こちらの住棟・・第3期部分(1998)の設計者は遠藤剛生さん・・一目で遠藤さんの集合住宅だ!!という感じ。設計者である遠藤さんの地元である関西では、この様なスタイルの「遠藤さん集合住宅」は・・あちらこちらで見かけます。

岡山県営住宅中庄団地
3期の中層階通路より見る

こちらの3期も2期と同様・・住棟間地上部には、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通。1期から3期に渡る広い敷地、デザイナーが異なる住棟間を・・2つの全く異なるルートで探訪してみました・・

岡山県営住宅中庄団地

1つ目は、地上部の敷地全体を貫通する遊歩道のような中庭スペースから。

2つ目は、全ての住棟を繋ぐ空中迷路のようなペデストリアンデッキから。

実際に住んでいる人達と、僅かな時間だけ滞在する来訪者とでは・・感想を述べる視点の深度が異なるとは思いますが・・「愉しい集合住宅」でした。

岡山県営住宅中庄団地

探訪の最後に・・”3期の高層棟”から、全体を見渡して・・みました。手前に、3期(南側)から2期の住棟へと渡るブリッジが見えます。上空からだと・・2期の切妻家型の「うねる様な配置」と「3階開放廊下」の感じが・・よく見えます。その奥には「1期」が見えます。

岡山県営住宅中庄団地
3期から東側を見る

「岡山県営住宅中庄団地」は・・通常の県営住宅とは全く違う作り・・他にはない個性的な住環境。判子で押した様な・・どこかで見た様な、どこにでもある住環境ではなく・・ここにしかない住環境が愉しい・・”建築の経済効率的な側面”からだけではない、建築への評価/チャレンジ・・「クリエイティブTOWN岡山」のような意欲のある街づくりの事例が・・今後またいつか・・継続していく事を期待したいです。(正面の奥に見えている一群は「倉敷市営中庄団地」。)

「建築探訪 154」-Aichi 8

両口屋是清東山店

インパクトのある”ガリバリウム鋼板立平葺き”の大屋根が目を引く、名古屋の老舗和菓子店・・「両口屋是清 東山店」を探訪。設計は隈研吾さん。4階建てのヴォリュームを大屋根で包み込んだデザイン。

両口屋是清東山店

大きな軒下のアプローチ部を見る。1階部分は軒が深い開放的なつくり。鉄部の仕上げは、隈建築ではお馴染みの”溶融亜鉛メッキリン酸処理“。

両口屋是清東山店

鉄骨の独立柱が支える開放的なつくりの1階は、販売店舗。折り上げられた木製ルーバーの天井がが2階へと繋がる。

両口屋是清東山店カフェ

2階は飲食スペース。隈建築ではお馴染みの”不燃木製ルーバー“によるデザイン。テーブルや椅子もスチールと木を使ったオリジナルのようです。

両口屋是清東山店

1階アプローチ部の軒裏が”透けて”いて・・2階から1階の庭が”下地窓”的に見えるのが面白い。入って来る時は意外と気付かなかった・・

両口屋是清東山店

もう一度、帰り際に外から見返して・・よくよく目を凝らすと、たしかに軒裏が・・”透けて”います。

「建築探訪 151」-Aichi 5

豊田市生涯学習センター

妹島和世さん設計の・・「豊田市生涯学習センター」(2010)を探訪。愛知県の豊田市と言えば、こちらの建築が有名だが・・この建築もオモシロかった。少し郊外で時間が掛かったが・・愛知県の建築探訪のラストに来て・・goodでした。「フラットに積層する3層」が「上下で微妙にズレている」のがポイント・・外壁はほとんどガラス。

豊田市生涯学習センター

外壁は”うねるガラス”・・厚さ20~24mmの倍強度ガラス!!!。主体構造は鉄骨造。平面形はいわゆる”アメーバのようなグニャグニャとした形”・・”各層で異なる”グニャグニャとした外形ラインに囲われ・・”ほぼ正円形”の各室が各層で漂っている感じ。1階に多目的ホール・図書室・事務所、2階に会議室✕3、3階に講習室✕3、という建物。

豊田市生涯学習センター

外壁だけでなく・・各室を区切る”間仕切壁も曲面ガラス”。さらに階をまたいで連続する部屋もあるので・・この空間の連続感は”写真では実感がない”と思いますが・・断面的な上下の繋がりはこちらの建築に近いが・・開口部や間仕切壁部に「方立て」などが無い分、その効果がとても大きく・・”抜け”と”透け”が、この建物の方が際立っています。

豊田市生涯学習センター

内外にわたり、ガラスの曲面で構成された建物の中で・・白く浮かんだヴォリュームは「トイレやエレベーターが収まっている」スペース。その壁は”9mmの鋼板”で出来ていて・・耐震壁になっているそうだ。「20mmのガラス/外壁」と「9mmの鋼板/間仕切壁」・・1/50の図面で描くと「0.4mm」と「0.18mm」の線・・各階500㎡(150坪)程度の建物だが・・柱は直径100mm程度でスパンは普通の6m前後・・なかなか色々と普通では出来ない構成

豊田市生涯学習センター

3階のテラスより見る。コンクリートパネル敷きの半屋外スペースの中に・・「白い曲面で囲われた丸い部屋」と「ガラス曲面で囲われた丸い部屋」が並ぶ。「不整形グニャグニャ平面」と「フラット床積層」の対比が効果的で・・シンプル単純でありながら、とても現代的で、キレがある・・さすがの”妹島さん”という建物でした。

「建築探訪 148」-Aichi 2

一歩亭

程良く高さを抑えた塀の向こうに見える佇まい、豊田市美術館の敷地内にある「一歩亭」。設計は美術館と同じ・・モダンデザインだけでなく数寄屋デザインも巧みな・・谷口吉生さん。広間と立礼席のある茶室建築・・妻面の真下部分がメインエントランス。

一歩亭

南側外観を見る。柱に支えられた、薄い庇下・・両引分け戸のメインエントランスが見えます。非常に寡黙・・無駄のない佇まい。

一歩亭

線材によるシンプルな構成美が・・goodです。床の石材は、美術館でも多く使われているグリーンスレート。

一歩亭
建物をぐるりと囲う軒下空間、いい感じです・・
豊祥庵
折れ曲がりながら伸びていく・・東側の軒下空間。右手に別棟の茶室あり(三畳台目と一畳台目の席がある”豊祥庵”)
一歩亭
東側外観を見る。水平に低く伸びる日本的な佇まいがgoodです。メインエントランスのある南側の軒下空間が・・そのまま東側まで廻ってくる・・
一歩亭
軒先を見る・・板金(唐草)と板(広小舞)の間が、空いてるのが興味深い
一歩亭
一歩亭立礼席
立礼席を見る

豊田市美術館を訪れた際には、見落としたくない谷口吉生さんの数寄屋建築・・ジャパニーズ・モダンの最高峰を設計した父親ゆずりの巧みさ。

「建築探訪 147」-Aichi

豊田市美術館

開館から22年経っても・・”いつまでもモダン”な「豊田市美術館」。”美術館博物館”建築のマイスター・・谷口吉生さんによる設計。高台となった大きな人工池に面して配された「直方体の建築」。右手の本館とテラスを挟んで、左手に建つ別棟は”高橋節郎館”。その他、別棟で茶室建築(もちろん谷口吉生さんの設計)も有ります。長大な門型フレームが効いています。

豊田市美術館

谷口吉生さんのミュージアムと言えば・・「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「土門拳記念館」「東京国立博物館宝物館」「ニューヨークMoMA」「京都国立博物館平成知新館」などなど。セラ、ルウィット、ビュレンなどの外廻りに置かれたミニマルな彫刻作品もgoodです。西側より見る・・門型フレームの向こうに、左よりアルミ張り、ガラス張り、石張りと、素材を変えた直方体が綺麗に並ぶ。

豊田市美術館

谷口さんの好きなグリーンスレートの石で覆われた・・大きな門型フレームで区切られたエントランスコートを見る。広い敷地に施された、外構デザインはシンプルですが、手が込んでいます・・デザインは世界的なランドスケープデザイナーのピーター・ウォーカー。

豊田市美術館

エントランスが、いつも控え目な谷口建築・・(エントランスは写真中央部に見える庇部のところ)大きな外部空間から建物内に入る時、ググッと一度スケールを絞り込むのは・・谷口さんの好きな手法。

豊田市美術館

エントランスコートを見る。この日は快晴、スクエアな建築のエッジが際立ちます。”東山魁夷展”の開催中ですが・・右手の四角い壁面に貼られた展覧会用のサイン、これが建物とどうも調和していない様な・・

豊田市美術館

建物を覆う”ガラスの大壁面”。しかしながら、谷口建築はいつもいつも・・どこを見に行っても、気持ちいいくらいに・・”キチッと“納まっている。

豊田市美術館

2階通路部を見る。内側から見た”ガラスの大壁面”・・もちろん内外の2重ガラスで構造体を囲った壁です。2階の通路部分は、コスースの壁面グラフィックと、ホルツァーの電光掲示板を、設えた常設のギャラリースペース。