深澤直人 「TWELVE 365」

TWELVE365

大人になってもサンタがやって来ると・・・嬉しい🎅

今年は深澤直人のデザインウオッチ「TWELVE365」。
基本的には初期モデル好きなのですが・・カレンダー/曜日/秒の表示がない先行モデルの「TWELVE」よりも、今回は後モデルである「TWELVE365」。
こちらの方がどこか愛らしい感じが・・・時をあらわす数字を排し、そのかわりに12角形としたフレーム内で時を視認できるデザインが特徴。本体部分と一体となったベルトの独特なディテールもgoodです。

ビル・スタンフ&ドン・チャドウイック 「Aeron Chair」

少し遅いサンタクロース🎅がプレゼントを置いていきました・・
1994年、スタンフ&チャドウイックによりデザインされた・・エルゴノミクスデザインチェアの代名詞・・数々の賞を受賞した・・・ハーマンミラー社の「アーロンチェア」。
背/座面を独自の方法で編んだペリクルと呼ばれる快適な座り心地をもたらす素材。身体の動きを適切にサポートするキネマットチルトという独自のメカニズム。・・・ワークチェアの傑作。

「苔のむすまで」 杉本博司

「苔のむすまで」 杉本博司著

「苔のむすまで」 杉本博司著。
杉本博司は1948年生まれの写真家・・・博物館の展示品である再現ジオラマを本物のように写真で撮影した「ジオラマ」シリーズ、世界各地の海を同じ構図で繰り返し撮り続けた「海景」シリーズ、映画上映中の時間中ずっとフイルムを露光し 真っ白なスクリーンを撮影した「劇場」シリーズ、世界の記念碑的なモダニズム建築を無限大の倍で焦点のぼけた姿で撮影し続けた「建築」シリーズなどの作品で知られ・・・世界各地の美術館で個展を開催し、国際的に活躍&さまざまな賞を受賞し、つい先日も高松宮殿下記念 世界文化賞を受賞され話題となりました・・・「苔のむすまで」は杉本博司さんの初評論集。
(上写真)表紙写真は、「建築」シリーズの「World Trade Center」(1997)

 「Villa Savoye」 (1998) from the series of Architecture

「・・建築物は建築の墓なのだ。建築家の思い浮かべた理想の姿が現実と妥協した結果が建築物なのだ。無限の倍の焦点を当ててみると、死んでも死にきれなかった建築の魂が写っている・・・私が写真という装置を使って示そうとしてきたものは、人間の記憶の古層・・・我々はどこから来たのか、どのようにして生まれたのか思い出したい・・」by杉本博司

ヴィム・ヴェンダース・・の3本

Wim WendersのDVD

ドイツ人映画監督、ヴィム・ヴェンダースのDVD3枚を大人買い!!・・・若い頃に見てとても感動した大好きな映画・・

(上写真-左) ライ・クーダーの音楽+見渡すかぎりの荒野。全てを捨てて黙々と歩き続ける男の映像で始まり・・ ライ・クーダーの音楽+夜のハイウェイ。車でひとり孤独に走り続ける男の映像で終わる「パリ、テキサス」(’84) 

(上写真-中) ビデオで撮られた即興的な映像+フィルムで撮られた優しい映像の対話と・・ ヴェンダース+ヤマモトヨウジ、巨匠二人のジャンルを越えた対話が・・美しい「都市とモードのビデオノート」 (’89) 。

(上写真-右) モノクロとカラーにより、壁崩壊前のベルリンを舞台に撮られた見事な映像美と・・ 劇中語られるドイツ語の詩の美しい響きが忘れられない「ベルリン・天使の詩」(’87) 。

80年代のヴェンダースは最高でした・・

「Optimum」

Optimum

「デザインの原形」を読む・・2002年に開かれた展覧会の本。
プロダクトデザイナー深澤直人によって選ばれた、50点以上の品々・・共通するキーワードはOptimum。“Optimumとは「最適条件、最適度」” 。

機能性が即シンプルな形へと繋がる画一的な単純化した合理主義ではなく、これ見よがしの個性が主張する目立ちたがりデザインでもなく・・・モダニズムの新しいフェイズとしての新合理主義とでも言ったような流れ。

深澤さんの言う「時代を経ても古びない原典性に基づくデザイン」、「人の行為/生活/身体性に溶け込んでしまっている必然を探し出すようなデザイン」・・・とはどんなものなのか?

「壁掛式CDプレイヤー」(2000)  Design by 深澤直人
換気扇のようなカタチ、紐を引くと回転し音楽が流れる。「壁に掛けて&紐を引く」・・これまでのCDプレイヤーと、少し違う行為を引き出される
「Aluminum Group Chair」(1958)  Design by チャールズ・イームズ
しなやかな筋肉のような鋳造アルミフレームとそれが支える薄い座/背との組合わせが美しい・・50年経っても古びない普遍的存在感が原形性を醸し出す
「Kartio」(1958)  Design by カイ・フランク
“グラス”と言われた時に誰もが絵に描くようなベーシックな形のグラス・・しかし、ただのシンプルグラスとは何かが違う・・カタチ/厚み/重さ・・絶妙なバランスの複合

「オリジナリティとは作者の個性や主観的意思の表れ・・・原形は作者が探し出した必然である・・急な登山道で誰もが無意識につかまってしまう木の枝や岩の角のような、成るべくして成った存在・・・原形になりうるデザインは緩やかな身体の変化の速度に歩調を合わせている気がする・・」  
by Naoto Fukasawa

未来の建築 !!

2008年4月に出版されたこの本・・「原初的な未来の建築」 
最注目の若手建築家の”初作品集”・・・実作品の写真は少なく、コンセプトをあらわすための図面と模型写真を中心に・・10のキーワードで掲げる未来の建築への予感を、簡潔な文章で語っていく構成・・

藤本壮介さんは1971年生まれの37才の建築家・・分かり易いコンセプトとともに挑戦的/刺激的な計画案で30代の若手建築家の中では飛び抜けた存在として2000年頃から注目されていました・・

第1章の始まりからして・・コルビュジェの有名な「ドミノシステム(1914)」(1920年代の白い住宅シリーズの基礎となる原理)の図と、自身のマニフェストとも言える原理的な計画案「N house(2000)」を見開きページに並置するという大胆さ(上右図)・・大物だぁ・・気持ちいいくらい”未来の建築”にまっしぐら・・

(下左図)「T House(’05)」・・妙な奥まりのような部屋が並ぶ住宅
(下中図)「安中環境アートフォーラム(’03)」・・必要に応じて必要な場所が出来て、外形を成すという計画案
(下右図)「青森県立美術館(’00)」・・森と同じような生成ルールから生まれる建築

共通するのは・・全体性ありきではなく「部分の集積」で建築を構成していくという原理。
1本の木から構成される森のような or 小さな部分が集積した集落のような or 形がなく常に過程にある洞窟のような・・分節できない「局所的な関係性の繋がり」から生まれる 「弱い全体」・・そんな緩やかな自然の多様性を再構築したような・・「部分の秩序」による「弱い建築」・・・藤本壮介さんが未来に問いかける・・新しい建築の原理。

近代という”強い/大きな秩序”にとって替わる “弱い/部分の秩序”による 「新しい建築の原理」を打ち立てようとする藤本壮介さん・・大学卒業直後の1994年からどこの設計事務所に勤めることもなく・・デビュー作となる「聖台病院作業療法棟(’96)」「聖台病院新病棟(’99)」から・・「しじま山荘(’03)」 「伊達の援護寮(’03)」 「授産施設(’04)」 「Thouse(’05)」 「7/2 house(’05)」 「登別のグループホーム(’06)」 「情緒障害児短期治療施設(’06)」 「house O(’07)」・・・

掲げた原理が見事に実現とは・・まだまだ言い難く。実現した建築も10にも満たないが・・意欲的な計画案はこれからどんどん実現されていくだろうし・・・現在のスター建築家とは一味違った・・・”原初的な未来の建築” が生まれるか否か・・

「僕はコルビュジエやミケランジェロのような建築家になりたい」 by 藤本壮介

レオス・カラックス 2/3

Leos CaraxのDVD

近くの大型家電量販店の改装セール・・・在庫DVDが割引で売られていた中に・・・「汚れた血」(仏’86)監督:レオス・カラックスを発見・・GET!!

デビュー作「BOY MEETS GIRL」(’83)に続くカラックスの第2作・・サイレント的喜劇めいたシーン/映画史への愛/印象的な一夜の長い長いシーン/悲劇的ラストシーン/登場人物達のすれ違い/美しい映像/ヒロインは監督の恋人・・・と第1作との共通項も多く・・・監督の分身である ドニ・ラヴァン演じる主人公”アレックス”が宿命的な愛を求めるが 思いは通じないという構図も同じ・・・しかしモノクロの第1作よりもカラーである第2作の方が映像はさらに美しい(やや人工的すぎる感はあるが)・・

「映画を撮る事=愛する人を撮る=自己の確立」という映画と現実の生活が一体となり切り離せない関係にあるカラックスが第3作(’90)以降・・極端な寡作になっている事はカラックスファンとしては寂しいかぎりです・・

主人公アレックスがD・ボウイの曲に合わせて夜の街を走るシーン/アレックスの元彼女(ジュリー・デルピー)がバイクに乗って走るシーン/アレックスが思いをよせるジュリエット・ビノシュがラストで走り出すシーン・・・そんな 登場人物達の疾走するシーンが印象的 ・・  「 疾走する愛を信じるかい ? 」  「 充分生きたと言えるのかい ? 」  と恥ずかしいくらい真っ直ぐな問いを投げ掛けてくる・・主人公アレックス (=監督:カラックス) の力溢れる若さ・・ 忘れる事の出来ない心に残る懐かしい 1本 。

「Tokujin Yoshioka Design」

吉岡徳仁作品集

今お気に入りの本・・「吉岡徳仁 作品集」。ファイドン社の日本語版・・写真の質と文章はイマイチだが、装丁が素敵。吉岡の代表作である「Honey-pop」(2001) の菱形がモチーフ。一見すると真白い表紙に見えますが・・ 菱形模様を浅く型押し、菱形内部を艶ありクリアコーティングしている凝ったデザイン。
世界的にも注目のプロダクトデザイナー吉岡徳仁の10数年に及ぶプロジェクトを網羅した内容はウレシイ・・ 一般的にも良く知られている携帯電話の「Media Skin」(2005)をはじめ・・・照明器具「ToFU」(2000)、 腕時計「TO」(2005)、 透明椅子「Kiss Me Goodbye」(2004)・・等々 。倉俣史朗と三宅一生・・ 傑出した世界的デザイナー2人に学んだ吉岡徳仁 。

「形をアレンジしても新鮮に見えない・・ 」
と彼が言う様に・・形をデザインする仕事であるはずのデザイナーが「”形ではない”デザイン」をコンセプトとして掲げている。素材そのもの、現象そのもの、コンセプトそのものをデザインとして視覚化しようとする彼のデザイン手法は “日本料理のような” とも形容される。・・海外メディアでは”マテリアルボーイ”と紹介されることも・・

「最初の椅子で歴史に残るようなものを・・」 と言う彼が2001年に初めて作った、お菓子を包むパラフィン紙で出来た椅子・・「Honey-pop」 (上写真)は、見事に世界中の美術館でコレクション入りとなりました。
「コンセプトと素材が決まれば・・形は単純なもので良い」  
 by 吉岡徳仁

レオス・カラックス 1/3

Leos CaraxのVHSビデオ

レンタルショップで「BOY MEETS GIRL」(’83) 監督:レオス・カラックスを100円で購入しました・・ ビデオからすっかりDVD に変わり・・レコードからCDにあっさり変わってしまったように・・ 1万円以上していた映画ビデオがいまやワゴンセールで100円だ・・

夢想家で自意識過剰な青年の1日(夜~夜)を描いた青春映画。孤独で切ない現代の若物の心を等身大で描いた、やや自伝的な・・ 今あらためて見るとやや気恥ずかしくもなるが、大学生になったばかりの頃 初めてこの映画でレオス・カラックスに出会った時は・・ もの凄く共感を持って見ていたような気がします・・1960生まれのカラックスは16才で学校を辞めて、この映画の脚本を書き始め・・練り直しながら22才で書き上げ・・ 100万フランの制作資金援助を国から貰い、わずか8週間・・ “夜のパリ” という状況でそのほとんどが撮り上げられました。

映画は友人の裏切り/恋人達の別れから始まり・・ 登場人物は皆孤独、みんなの気持ちがすれ違い・・特に主人公アレックスのコミュニケーションは誰に対しても不自然で一方的・・ その極みが映画全体の半分近くを占めるパーティーシーン・・ 楽しいはずのパーティでも客は皆つまらなさそうに黙っている・・ そしてアレックスが “初めて” ヒロイン/ミレーユに会い、キッチンで告白(?)するのだが・・ 恋人との不仲状態でショックを受けたばかりで、話しをする気もないミレーユに・・アレックスは一方的に喋る喋る喋る・・ 恋/映画/自分について・・最後には「運命だ!!愛し合おう!!」と。登場人物は、皆悲しく淋しそうなのだが・・ 映画全体にはシュールな寓話のような雰囲気が漂う映画・・ 

サイレント映画とゴダールを溺愛するカラックスが夢見るように作った・・ 独特の映像美による、儚い寓話的世界。劇中では監督自身の分身である主人公アレックスに「2度人生をやれるほど案がある!」と強く語らせたのとは対照的に・・ カラックスが極めて寡作なのは、「 映画を撮る = 自らの世界の確立 」 と言えるまでに、映画を愛し 肉体化した・・ “早熟すぎた天才” ゆえの苦しみからだろうか。

タウトの画帖 「桂離宮」

ブルーノタウト桂離宮

先日古本屋さんで購入した「桂離宮」(1943) 。心惹かれたのは、巻末の・・タウト筆による、”スケッチ&メモ” が付いていたから。

ブルーノ・タウトは1880年生れのドイツ人建築家。アールヌーボーの熱狂の後、”ドイツ表現派”の建築家として1910年代には活躍を始め。クリスタルをイメージした”ガラスと鉄”による「ガラス・パビリオン」(1914)や、「アルプス建築」(1919)と称した幻想的なドローイングの仕事や、ベルリンでの大規模なジードルンク(労働者の為の衛生的な住宅団地)を手掛けた1920年代の活躍で、よく知られた、ヨーロッパの一流建築家。

ブルーノタウト桂離宮

その “ヨーロッパの一流建築家” が1933年5月3日に、亡命者として敦賀に船で着いた翌日(タウト53才の誕生日)に・・桂離宮を訪れ・・非常に感激賞賛・・「言葉に出来ないほど美しく、涙がこぼれてくる、パルテノンに比すべきもの・・円熟の極地と小児のごとき純真無邪を具えている・・」とKATSURAを賞揚し・・日本美の最高表現と、認め評したのは・・有名な話。

ブルーノタウト桂離宮

この画帖は1934年5月7日に1年振りに・・4時間半じっくり再拝観した、強い感銘をそのまま一気に筆で・・(5月8日と9日の2日間で)完成させたそうです。描写力の高い写真や、精緻な文章による解説ではなく・・荒々しいとも言える筆による表現は、彼の興奮した感動をそのまま描写したいという、想いが伝わってきます。タウトのスケッチに描かれている見学順序は、今の特別拝観コースとほぼ同じ・・

ブルーノタウト桂離宮

この画帖の出来には・・本人も深く大満足・・出版を念願していたが、生前には果たされず。彼は1936年10月には3年半の日本滞在を終え、トルコに向かい。1938年トルコにて客死。そして1942年に出版されたのがこの本。
「IN KATSURA DENKT DASAUGE」 (桂離宮では眼が思惟する)

ブルーノタウト桂離宮
KATSURAへ再訪する2日前に・・タウトは小堀遠州の忌日に、大徳寺孤篷庵へ赴き・・遠州の墓に花を供え、“偉大な建築家”に敬意を表したそうだ・・
ブルーノタウト桂離宮
出版は・・”第三版 昭和18年4月10日” とあり。帰ってから・・よくよく見ていると “裝幀 龜倉雄策”とあり、亀倉さん戦前の仕事による・・本だった事を発見し、感激!