「建築探訪 115」-Finland 7 / ALVAR AALTO 4

アアルト大学ショッピングセンター

アアルト大学(前ヘルシンキ工科大学)探訪の最後は・・「ショッピングセンター」(1961)。上写真の奥には、キャンパスの象徴である講堂が見えています、その左手には図書館。ここはキャンパスへの入口となる場所です。矢印のようなユニークな形をした、建物の白い壁面を・・南側より見る。

アアルト大学ショッピングセンター
ちょっと視点を下げると・・軒先が緩いアールの連続となっている事が分かります
アアルト大学ショッピングセンター
西側の建物正面から見る。生協のような感じで、幾つかの店舗が入っています。銅板葺き屋根のタテハゼが、それぞれのスパンで放射状に広がっていて・・何かの模様の様に見えます。この建物のちょっとオモシロイ雰囲気を作リ出しているのは・・ 屋根の微妙なニュアンスの付け方・・

軒先が緩やかなアールになっている事と同時に、屋根自体も短手に・・緩やかなムクリを付けています。スパンごとのリズムを強調している縦線2本(縦樋?)も効いています。白い壁面と対比させる様に、軒裏/建具/腰壁の色は黒色とし・・バランスの良い落ち着いた調子がgoodでした。

「建築探訪 113」-Finland 5 / ALVAR AALTO 3

アアルト大学学生寮

アアルト大学本館から、北東に500mほど離れた場所に位置する「アアルト大学 学生寮」(1966)を探訪。 (上写真)東南面の中央部あたりを見る。ポチポチと並ぶ、学生各室の窓・・アアルトらしい「大きなハメ殺し窓+小さな縦長の換気窓」の組合せ、換気窓をやや短くして・・動きのあるデザインに整える。1階部分をやや控えて、2階以上の煉瓦ヴォリュームをやや浮かした感じに見せるデザインも・・他の建物と同じアアルトの好む手法・・

アアルト大学学生寮

東面から南面にかけて、うねりながら伸びる長い立面 (長いので半分しか写っていません)。長い東南側立面の・・ 南半分となる 「うねっている壁」がアアルトらしくて素敵! (上写真) 右手で東向きだった各部屋の窓は、左手に行くにつれて・・うねりながら南向きに。南側から見ると6階建て。

アアルト大学学生寮
東南側立面を見る。”うねる壁” は東南面の南半分のみで、一度分節(プラン的には個室間の共用部)が入って・・東半分は真っ直ぐ
プランでみると「レの字型」・・図面上が北。大きな平面構成としては、2本の棟が中央のホールを抱え込んだカタチ。北から南に伸びる直線部の棟と、南から北東に向けて伸びるハネ部の棟・・ワンフロアで50室程度の学生寮。いわゆるアアルト建築に見られる有名な「扇形デザイン」の系譜・・

中廊下型と片廊下型のMIX・・もし自分が寮生で入るとしたら、やはり図面下の “うねっている”部分がいいかなぁ・・13室/50室。図面で見ての通り、どの部屋も四角ではなく歪んでいますが・・これくらいの歪みだと、部屋に入ればそんなに違和感がない程度の歪みの様な気もします。(残念ながら、中は見られませんでしたが・・)

アアルト大学学生寮
メインアプローチとなる北側道路より見る。2つの棟に挟み込まれた1階ホールが見えます。北側から見ると4階建て・・南北軸方向でかなりレベル差のある敷地に配置された建築
アアルト大学学生寮
「レの字」の折れ部分を見る。うねった壁の終点となる部分・・右側がうねった部分、ここも一度分節(プラン的には個室間の共用部)が入って・・真っ直ぐな部分へと繋がる

「建築探訪 112」-Finland 4 / ALVAR AALTO 2

アアルト大学本館

「アアルト大学 本館」(1964)を探訪。右手の突出した部分はオーディトリアム。本館全体の平面形は一言では説明し難い・・水平的に広がりのある構成で、とても大きく伸びやかに配置されていて・・上写真で見えているのは南側から見える・・ほんの一部・・

アアルト大学本館

残念ながら本館は部分的に改修工事中。本館メインエントランスのある西側付近はご覧の様な状態。本館のオーディトリアムは見る方向によって様々な表情を見せます・・形としては、丸いバームクーヘンを1/4よりやや大きい扇形平面に切って、中心側からカジった様なカタチ。(上写真) 北西より見る・・突出したオーディトリアムヴォリュームの足元がメインエントランス。

アアルト大学本館
ぐるりと廻って、東側の入口まで来ました。正面ピロティ部が東側入口。右手にはホリゾンタルに広がる教室群。窓はもちろん”アアルトらしい” ・・木製の水平連続窓
アアルト大学本館
南側より見る。左手ヴォリュームの・・ピロティ部に東側入口。正面の教室群は・・奥&右手に向かって広がっていきます
アアルト大学本館
マッシブな煉瓦のヴォリュームを支える “金属板貼り”の丸柱・・前述の図書館と、同じ建築的要素による構成ですが、竣工したのはこちらが先です
アアルト大学本館
ピロティ内を見る
アアルト大学本館
玄関扉を見る。縦に並べて付けられたドアハンドルは、もちろんアアルト自身のデザインによるオリジナルの “アアルト引手“・・ この後どこのアアルト建築に行っても、玄関扉には・・ほぼこのドアハンドルが付いていました。
アアルト大学本館
風除室内を見る。低く低く押さえられた天井高。正面壁には黒い “アアルトタイル”
アアルト大学本館
近くで見る “アアルトタイル”
アアルト大学本館
東側エントランス付近から1階ロビーを見る。リブな天井が段々・・”アアルトタイル巻き” の丸柱・・どれもアアルトらしい構成要素の数々
アアルト大学本館
アアルトらしい天井付きの照明器具が並んでいる・・廊下
アアルト大学本館
2階ホワイエへと続く階段詳細を見る。後ろが工事中のオーディトリアム・・残念ながらチラリとも中は見れず。劇的な4本の帯状スカイライトからの光に満ちた、垂直的な広がりのある、扇形平面の空間はどんな感じだったろうか・・残念
工事関係者の人に注意されない様に・・遠慮しながら、本館建物内をブラブラ・・
アアルト大学本館
図書館側よりオーディトリアムを見る。芝生が広がる広場では、学生さんが休憩中。フィンランドではどこでも芝生に寝転がって、日光浴をしている人が多い。冬が長い北欧では、陽射しを避けて木陰へ・・という人は少なかったです

「建築探訪 111」-Finland 3 / ALVAR AALTO 1

アアルト大学図書館

遂にやって来ました・・ アアルト建築は以前に一度訪れた事はあるのですが、やはり(アアルトの母国である) 本場フィンランドで見る方が、アアルト建築の真髄に触れられる気がするからなのか・・気持ちとしては 初アアルト建築 !!! 
1949年のコンペで、フィンランドを代表する世界的な建築家アルヴァ・アアルト(1998-76) が勝利・・本館、講堂、図書館、学生寮、体育館、実験棟、発電施設、生協棟などからなる・・「アアルト大学(元 ヘルシンキ工科大学)」を探訪・・ (上写真) 1969年完成、図書館の外観を南側から見る。  

アアルト大学図書館

北西側から外観を見る。地上2階 地下2階の建物。事務的なスペースは地上部1階にまとめて、階高を高く取った2階に閲覧室を配置。2階の閲覧室は西側の階高が一番高く、東側に向かって段々と階高が下がっていきます。北西側から見ている上写真では、1階に較べて2階は倍以上の高さがある事、2階の階高が手前から段状に奥(東)へと下がっていっている事が・・よく分かります。黒い石張りの下層部でやや抑えて、上層煉瓦ヴォリュームをやや浮かした感じ・・ 

アアルト大学図書館
東側から外観を見る。こちら側から見ると、2階の階高は西側よりかなり下がった事が分かります。帯状デザインで立面に動きを出している部分・・煉瓦を部分的に白くペイントしているのかと思いましたが、白大理石が張られています
アアルト大学図書館
東側から外観を見る。この辺りは地盤面が下がっているので、地上3階。この後たびたび出会った “アアルトらしい窓” ・・「縦長換気窓+嵌殺し」の連続で構成された木製水平連続窓・・は煉瓦腰壁との構成がgoodです
アアルト大学図書館
東側外観の詳細を見る。窓と窓の間の・・プチ壁は角波金属板張り、水切りも同材、木製窓とともに・・クラフト感が出ててgoodです。煉瓦+木+金属・・どのアアルト建築にも共通する、アアルトらしい素材感
アアルト大学図書館
図書館はキャンパス全体の南側エッジ・・バス停もすぐ側にある、人の往来も多い所に位置しています。(上写真) 図書館のメインエントランスへ向かうアプローチを見る。建物の長手軸に対して真直角ではなく、微妙に角度を振っているアプローチ軸
アアルト大学図書館
金属板張りの丸柱が並ぶ、キャノピー下のメインエントランス
アアルト大学図書館
ガラス張りのエントランスから、光がたくさん差し込んで・・とても明るい 1階のメインロビーを見る。右手には2階閲覧室へと至る、緩やかな階段
アアルト大学図書館
階段を上がると、2階フロアの中心部分。ハイサイド窓から差し込む大量の光が照らす、曲折した大きな天井面が占有する空間・・正面には貸出カウンター
アアルト大学図書館
2階フロアの中心部分から左側(東側)を見ると・・ ポチ丸の天窓が並んでいるその向こうには、天井高を抑えた閲覧室。奥の方には東面の水平連続窓に面した読書カウンター席。(これだけ天窓とハイサイド窓が多い空間なので、水平連続窓が必要? って気もするが・・) 
アアルト大学図書館
2階フロアの中心部分から右側(西側)に位置する・・ 2階フロアで天井高が一番高い、ハイサイド窓とストライプ状天窓がある閲覧室。こちらの室はガラス壁で間仕切られていて・・自習室のような感じ。 
アアルト大学図書館
建物の長手軸方向であるハイサイド窓に対して、微妙に角度を振っている書棚の配置が・・アアルトらしい
アアルト大学図書館
背丈程の高さまで、”アアルトタイル” が巻かれた丸柱
アアルト大学図書館
天井面の単調さを補いながら、空調などの設備機器を隠している・・天井ルーバーは室内の音響効果にも良いのかな。窓際に吊られた照明器具・・もちろんアアルトのデザイン

日本で見られるアアルト建築の資料としては「a+u(1977)」「SD(1983)」などの作品集がよくまとまっていて便利なのですが・・ひとつの建物に対する写真や図面などの数量は限られ、写真も白黒だったり解像度も低かったり・・30年以上前の古い作品集をいくら凝視しても、なかなか湧いてこなかった・・ アアルト建築のリアリティや空気感を、現地に立って初めて・・心身に深々と感じる事ができ・・ 本当に大満足。😭😭😃😃👏🏻👏🏻

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「建築探訪 73」-France 3 /Bazoches-sur-Guyonne

メゾン・カレ

パリから40km程離れた小さな町へ・・やや道を登りながら林の中を抜けると、頂きには・・ 北欧フィンランドの巨匠アルヴァ・アアルト(1898-1976) 設計の「メゾン・カレ」(1959) が見えてきました。周りを樹々に囲まれ、西側(右手)には芝生の斜面が広がる気持ち良い敷地。
(上写真)アプローチより北西面を見る。一直線に切り取られた三角妻面が明快でgood、斜め要素に付け加えられた水平庇が効いています。

メゾン・カレ
南面外観の西端部を見る

戦前アアルトの代表作「パオミオのサナトリウム」(1933) や「ヴィープリの図書館」(1935) のような”白い四角い”・・いわゆるインターナショナルスタイルと言われるモダニズム建築からは大きく変容した、戦後アアルトらしい素材感がある自由な構成・・斜め屋根/石/レンガ/木製ルーバーといった地域性を感じさせるモダニズム。

メゾン・カレ
南面外観の中央部を見る

白ペイントレンガと木部の対比が効いています。中庭を囲う様に張り出した部分は水廻り、その中央部に主寝室が2室、この右手にはゲストルームが1室・・1階の南側に3寝室が並んでいます。戦後アアルトの出発点となった「セイナッツァロ村役場」(1952) を思わせるひな壇状の斜面。

メゾン・カレ
玄関ホールよりリビングを見る
リビングには西向きの大窓が設けられ、庭の眺めを取り込んだ空間となっています。敷地の斜面なりに沿うように、ゆったりとした階段を7段(踏面300mm、蹴上120mm)ほど降りてリビングへ
メゾン・カレ
リビングを見る
優しい感じでありながらも洗練され簡潔・・ 北欧の建築家らしいアアルトのデザイン。ソファ/テーブル/照明器具/カーペット/カーテン/ドアノブにいたるまで・・ 全てアアルトのデザイン
メゾン・カレ
東面に取られた窓から、サンサンと陽が差し込む・・明るいキッチン
メゾン・カレ
キッチン横、同じく東面に大きく窓を取った室。庭の奥に見えるのはプール棟
メゾン・カレ
主寝室を見る

住まい手であったルイ・カレ氏はパリで、ピカソやマティスなどの作品を扱う有力な画商・・アアルトに設計の依頼がきたのも共通のアーティストの友人を介して・・竣工パーティにはブラック、カルダー、コクトー、ジャコメッティ、ギーディオン、コルビュジェ・・ 華やかな顔ぶれが並んだそうだ。アアルトの建築の多くはフィンランドに在り・・地域や風土に根ざした作品として良く知られ・・フィンランドの地にあってこそと思ったりもしますが、フランスで見る事が出来た・・”初めてのアアルト建築” はなかなかgoodでした。