新しいとか・古いとか・ではなく

上写真は、岡山市に昨年建てられた「Junko Fukutake Terrace」、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞された、日本を代表する建築家により設計された最先端の現代建築。下写真は倉敷市に江戸時代に建てられた「大原邸」、倉敷格子や庇付き切妻屋根などの倉敷らしい意匠をそなえた、倉敷を代表する町家。「先鋭的な現代建築」と「伝統的な民家」・・非常に対照的な建築ではありますが、どちらが良いとか悪いとかではなく・・どちらも素晴らしい・・

造られた年代も、工法も、素材も、手法も、大きく異なってはいますが・・どとらにも「心を動かす何かが在る」と思っていて・・先鋭なモダンデザインだからとか、歴史や都市の文脈に適ったデザインだからとか・・そういう事で建築の評価をしているのではなく・・もっと何かしら直感で私達は建築の良し悪しを判断している様に思える・・緑と一体となった建物の佇まいが美しいのか、垂直材の整然とした並びが気持ち良いのか、抑制の効いた色彩と表現が日本的で共感しているのか・・簡単な答えを明確に説明できるはずもないのですが・・

ひとつ言えるのは・・その建物で生活をしている人、その建物に時々訪れる人、その建物を遠巻きに眺めている人々が、建築と共に長い時間を過ごしえたという事、今までもこれからもその人々の原風景となりえた/なりえるだろうとという事、”豊かな風景”として記憶されるだけのポテンシャルがあるという事。

「人々の風景として豊かである」という事には「古いも新しい」もない・・その建築が持っている価値観や根底にある本質、込められた知性やユーモアが本当に正しく豊かなものであるかどうか・・そういう事が大切なのではないでしょうか。

「建築探訪 137」-Finland 22 / ALVAR AALTO 17

セイナッツァロの村役場

アルヴァ・アアルト設計の「セイナッツァロの村役場(’52)」を探訪。元々は・・小さな建物ながら会議場、図書館、オフィス部、居住部、店舗部などなどの複数機能が1つの建物の中に構成されていた、人口3000人の湖に浮かぶ小さな島の為に建てられた建築・・現在は役場/図書館の機能のみ。戦前の「白いモダニズム建築」の旗手としての “白いアアルト” から脱した・・戦後の “赤いアアルト” としての出発点となった・・アアルトの代表作。「レンガマッスなヴォリューム」と「大小様々な木製窓」による外観の構成を南西より見る。

セイナッツアロの村役場

ひときわ高いのが会議場部。平面的には「ロの字型の中庭形式」。2層のレンガヴォリュームで2階にある中庭を囲んだカタチ・・ロの字の角、2角を欠込んで外部階段が設置されています。左手の建物出隅に竪ルーバーを設けている部分が図書館棟。微妙というか・・絶妙に調整された全体の不規則な形。ヴォリュームと開口部の”細かな”形態操作で・・アシンメトリーな絶妙バランスに至る感覚がexcellent !!

セイナッツアロの村役場
外部階段を上がり中庭へ至る。右手にエントランス・・木製パーゴラ、木製建具、板金屋根により構成された、ヒューマンスケール&ヒューマンマテリアルな建築・・
セイナッツアロの村役場
高さをグッと抑えた回廊が中庭を囲む。「レンガマッス」な外側ヴォリュームとは対比的・・開放的な中庭の様子
セイナッツアロの村役場
天井高さを抑えたエントランスホール。床素材の切替えが楽しい
セイナッツアロの村役場
エントランスから続く、中庭に開けた明るい回廊

開放的な開口部、レンガ/木板のリズミカルな繰り返し壁面、レンガの腰窓・・黒い柱の存在も効いていて・・何とも居心地が良く、落ち着く空間。腰窓のレンガベンチのスリットは暖房用・・溝下部に設置された暖房器具の熱を窓辺へと導く。

セイナッツアロの村役場
議場へと続く、ハイサイド窓から入る光が印象的な・・階段室を昇っていく。「重量感のあるレンガ壁」と「光を受けた軽やかな木製天井」の対比が・・goodです
セイナッツアロの村役場
「レンガ壁」と「木製天井」と「大きなルーバー窓」が印象的な議場を見る

放射状に伸びた腕木により・・屋根を支える「2つの扇形トラス」の形態が特徴的なのですが、議場内が暗く・・うまく写真は取れませんでした。(照明が点いていない・・停電で・・でも自然光での空間の雰囲気がよく分かるのでgoodです)

セイナッツアロの村役場

ザクッとした言い様ですが、その物言いがピタリとはまる・・”何ともアアルトらしいマテリアルとプロポーション” な・・図書館棟を見る。1階部の大きな横長ガラス窓が・・もともと店舗として計画されたという経緯を物語っています。レンガ壁の目地が少し深めに取っていたり、レンガの仕上がりや色が均一でなかったり・・そんな事も建物の味として効いています。

セイナッツアロの村役場

以前に訪れた「アアルトのアトリエ」を思わせる、光の取り入れ方・天井の形・・もちろんこちらの建築の方が年代としては古いので・・あちらがこちらに似ているのですが。天井高さいっぱいの窓から、たくさん光が入り・・とても明るい図書館棟の2階を見る

「建築探訪 136」-Nara 2/ 慈光院

慈光院高林庵

「慈光院 高林庵」(奈良県大和郡山市)を探訪・・内外部が一体となった、見事な書院造の空間。小堀遠州の亡きあと、将軍家の茶道指南も務めた、石州流の元祖 片桐石州が・・両親の菩提を弔うために1663年に建てた寺院が慈光院。書院へ増築された二畳台目の茶室が高林庵
(上写真)さつきの刈込み・・大きい!!

慈光院高林庵

日本を代表する建築家の一人、篠原一男は・・「数学を志していた自分が、奈良京都で日本建築の美しさに接した事で・・建築家になる決意を決めた」と、初期の著書「住宅建築(’64)」に書かれていました・・・その幾つかの建築の中に、この「慈光院」もありました。
(上写真)13帖敷きの書院主室を見る。正面に南向きの1間の床、その横に1間の出書院、柱は4寸角大面取り、長押は無し・・格式張らない・・さり気ない佇まいの書院。

慈光院高林庵

訪れた日はとても暑い1日でしたが、とても心地の良い空間でした。この様な外部(自然)と内部(人間)が一体となる日本建築の在り方は・・(強固な石壁で外部から内部を隔絶しようとする、西洋建築の考え方とは大きく異なる)・・日本文化の根幹的思想をよく表わした構成。
(上写真)大和盆地を借景とした東庭を見る。東から南へと廻る鍵の手型の広縁。軒先と縁先が作り出すフレーミングの効果で・・庭の美しさが更に際立ちます。

慈光院高林庵

「襖や建具を全て開け放した一室空間が・・広縁へと繋がった空間構成は、日本建築の住空間の美しさの典型のようだ。(by西澤文隆) 」・・
(上写真)東庭より見る。建築も庭も、とても控え目な作りは、石州流の茶の精神そのまま・・なんでしょうか。

慈光院高林庵

客をもてなす為の、床の間(上写真のいちばん左)が客座(上写真の右手)ではなく点前座(中柱のすぐ左)にある「亭主床」のつくり。径が50mmほどの中柱は櫟(クヌギ)皮付、天井直前での屈曲が絶妙!!!  壁止めである節3つの横竹がgoodです。天井は杉杢、黒竹の棹縁は床差し。

西澤文隆さんによると、茶室建築の別格は密庵(伝小堀遠州)、待庵(千利休)、如庵(織田有楽)・・その国宝三席の次に来るのが、西翁院(藤村庸軒)と高林庵(片桐石州)との事・・

慈光院高林庵

慈光院の書院と茶室は、石州の作風に触れる事の出来る唯一の遺構・・一見目に留まる様な目立つ意匠もなく、平凡そのものとも取れる石州の作風ですが・・”作為を一切消した、わざとらしさを表わさない表現” には・・現代デザインの流れと共感できる部分も多いのでは。
(上写真右)出書院東南にある手水鉢「角ばらず」・・goodです。
(上写真左)客座の2帖部を見る。外壁2面の巾一杯、開放的で伸びやかに・・高さをずらして連続する横長連子窓。

「建築探訪 135」-Yamaguchi 3

山口県立図書館

「山口県立図書館」(1973) を探訪・・設計は鬼頭梓さん。様々な量感がポコポコした外観・・タイル壁に挟まれたサッシュ部が正面入口(西面)。平面的に見ても、様々な室のヴォリュームがポコポコとした形になっています。

山口県立図書館

東側の入口より見る・・正面奥が西側の正面入口。右上に見える大きなトップライトと、このトップライト下にある中央ホール(開架室)が・・建物の中心となります。この微妙な階高設定の・・中央ホールの絶妙な位置付けが、この建築の居心地良さの・・要となっている様な気がします。

山口県立図書館

(左-写真)中央ホールには、スロープでアクセス。(右-写真)中央ホールから2階にも、スロープでアクセス。スロープ横のコンクリート壁が・・いい「ハツリ」具合です。スロープを中心とした建物構成も・・この建築の要。写真では分かり難いですが、天井は格子状ルーバーになっています。

山口県立図書館

2階より見る。中央ホールに面してグルリと廊下が廻っているのですが・・その廊下には様々な読書コーナーが幾つも、趣きを変えながら配置されていて・・very goodです。外部窓に面した机のコーナーや、廊下の腰壁に隠れる様に配されたプチコーナー・・

山口県立図書館

開架書庫の側に配されたベンチソファのコーナーや、光庭に面したラウンジソファのコーナーなどなど・・そして更に、廊下廻りから、まとまった大きさのある各室が・・四方八方へと繋がっていく、広がりのある伸びやかな図書館となっています。

山口県立図書館

図書館建築のパイオニアであり、名手でもある鬼頭さんが手掛けた図書館建築は “訪れた人を暖かく迎え入れる” ・・とても居心地の良い、とてもniceな建築でした!!! ・・が、その本当の良さは、写真や説明文では上手く伝えられない・・体験してみないと、その良さが分からない・・”建築らしい建築” 。

「東京経済大学図書館(’62)」から始まり「山梨県立図書館(’70)」「東北大学図書館(’72)」「山口県立図書館(’73)」、そして「日野市立中央図書館(’73)」・・生涯に30を超える図書館建築を手掛けられた、鬼頭梓さんが言われていた「図書館建築で大切な事」とは・・

山口県立図書館打込みタイル

“図書館員がしっかりしてくれている事が一番大切です”  との事・・デザインに対する主義主張は控え目で、設計方法論にも柔軟な・・鬼頭さんらしい言葉なのではないでしょうか。外壁のタイルは、鬼頭梓さんの 師匠と同じ “打込みタイル” ・・巾450×高150mmという、やや大きめのタイル。

「建築探訪 134」-Finland 21 / ALVAR AALTO 16

アルヴァ・アアルトの夏の別荘

アアルト作品がたくさんある町・・ユヴァスキラの中心から車で20km程離れた場所にて・・自動車道からフィンランドらしい気持ちの良い”白樺の森” に入り・・てくてく歩いて行くと、

アルヴァ・アアルトの夏の別荘
緑の中に現れる、大きな白壁・・「アルヴァ・アアルトの夏の別荘」(1953)を探訪・・建物名の通り、この建物は建築家自身の為のプライベートな建築・・
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
南西向きの大きな壁開口部より、中庭を見る・・この見返しが、この眺め !!
白壁の大きな開口部の真正面には “パイヤンネ湖”!!  
もともとのアプローチは・・ “白樺の森” からではなく、(自身がデザインした!!) ボートで、この湖を渡ってきて・・が本来のアプローチ
アルヴァ・アアルトの夏の家
中庭に面する部分は赤煉瓦 赤煉瓦。プランとしては、ほぼ平屋のL字型コートハウス。この煉瓦の張り方がオモシロイ・・様々なパターンをパッチワークの様に張って・・実験実験。
アルヴァ・アアルトの夏の家
北西側にも・・広い間隔の格子で仕切られた、大きな開口があります。結構な高さの壁です・・綺麗な森と湖に囲われた最高の敷地なのに・・あえて高い壁で囲む。(地元フィンランドの設計事務所の方々も、しげしげと壁面入隅のユニークな煉瓦張りを見られています。)
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
煉瓦だけでなく、タイルでも実験実験・・アアルト自身、この別荘の事を「koe・talo (実験・住宅)」と呼んでいただけは・・あります
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
室内を見る。手前がダイニング、奥がリビング。外観と中庭の大きな作りから一転・・内部は簡素でコンパクトだが、落ち着く作り・・リビングの一部に、上部から吊られた構造の2階があり、そこはアアルトのアトリエスペース・・
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
リビングより中庭を見る

同じ時間に見学を申し込んでいたのは、私達を含め3組・・地元フィンランドの設計事務所の方々が10名程と、シンガポールの建築学生さんが2名・・広くはない別荘なので、混み混みな感じで・・ちょっと慌ただしい見学となってしまいました。

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山陽新聞に・・

山陽新聞の朝刊に、先週まで「倉敷市立美術館」で行なわれていた建築展・・
「建築家のしごと2」にて行なった、ワークショップの様子が載っています・・2日間のワークショップには、両日ともに定員(30名)一杯まで参加して頂き、本当に有難うございました。近代建築の秀作「旧倉敷市役所(1960)」の “建築としての魅力” を、少しでも知って頂く機会に・・参加/協力して頂いた方々に感謝感謝です。

読売新聞に・・

読売新聞の、今日の朝刊に・・
来週から「倉敷市立美術館」で始まる、私たちも参加している建築展・・「建築家のしごと2」で、行なうワークショップについて取上げて頂きました。(自分達の写真が思っていたより大きくてビックリ!! )  皆さま予約の上、是非ご参加下さい~。

「建築探訪 133」-Yamaguchi 2

山口県立山口博物館

「山口県立 山口博物館(’67)」を探訪・・設計は坂倉準三建築研究所
(上写真) メインアプローチとなる外部大階段の境壁に開けられた不思議な開口・・不正形なカタチに、角度を変えた切り込み・・goodです。

山口県立山口博物館
東側外観、建物正面を見る。もともとは全て・・コンクリート打放し仕上げの建築でしたが、今は一部分を残してタイル張りとなった建物外観。アプローチは右手にある外部大階段を上がった2階から
山口県立山口博物館
建物正面である東側外観とは、ガラッと雰囲気の変わる・・北側外観を見る。北側の外壁仕上げはボード張り・・硬軟強弱の付け方が・・goodです
山口県立山口博物館
1階ピロティ部を見る。左手奥に見えている屋外大階段・・いまは鉄骨造ですが、もともとはコンクリート造、打放し仕上げ・・だった様です
山口県立山口博物館
1階ピロティ部、ビビットな天井の色彩。もともとのデザインがこの色であったのか・・どうかは分かりませんが・・goodです
山口県立山口博物館
1階ピロティ部より敷地奥を見る。敷地奥には春日山・・敷地の環境条件から導き出されたという建築形態のイメージは “敷地に架け渡された橋” 

「建築探訪 132」-Fukuoka

福岡市美術館

「福岡市美術館 (’79)」を探訪・・設計は前川國男。32m角×高さ12mの”タイル張りの四角いヴォリューム” の展示棟を見上げる・・上部から斜め張り、縦張り、横張り・・全体の構成としては、この “タイル張りの四角いヴォリューム” が4つ、L型に雁行しながら配置・・その間を大きなエスプラナードやエントランスロビーで、繋ぐカタチ。”タイル張りの四角いヴォリューム” には、寄棟屋根が乗っていますが・・地上からは見えません。

福岡市美術館
北側のエスプラナード(散策路)より見る。福岡市民の憩いの場である、大濠公園の美しい環境を眺めながら、大きくゆったりした階段で・・大きな屋外彫刻作品に出会ったりしながらブラブラ・・2階エントランスロビーへ
福岡市美術館
南側のエントランスを見る。こちらから建物にアプローチする人は、2層分の建物を見ながら・・1階エントランスロビーへ
福岡市美術館
北側のエスプラナード部の2階より、中庭の大きな開口を見る。中庭の向こうにはエントランスロビーの吹抜けが見えます、その向こうに南側エントランス・・ヴォールト(蒲鉾型アーチ)状の屋根天井は、コンクリート打放しの “斫(はつ)り” 仕上げ
福岡市美術館打ち込みタイル
(左) コンクリートヴォールトの天井で抑えられた、落ち着きのある2階エントランスロビーを見る。(右)外壁の詳細を見る

前川國男こだわりの「打込みタイル」・・これは「釉薬」のかかった「磁器質」で「PC版」・・「前川國男の打込みタイル」は年代を経てバージョンアップ・・。

「建築探訪 131」-Yamaguchi

山口県立美術館

「山口県立美術館(1979)」を探訪・・設計は鬼頭梓(1926-2008)さん。エントランスへと向かう・・建物正面&広場がスパッと迎えてくれます。煉瓦ヴォリュームの南北に細長い美術館は、鬼頭さんの師匠である前川國男の「熊本県立美術館 (’77)」を思い起こさせる・・

山口県立美術館
煉瓦積みの壁面の中に・・コンクリート打放しの楣(まぐさ)が効いています
山口県立美術館
建物正面の下部を見る

ピロティ下の建具は当初のものではなく・・フレームレスな現代的なガラス建具にリニューアルされていましたが・・上部煉瓦ヴォリュームとガラスの対比感が当初よりも強まっていて・・goodなんではないでしょうか。(開館30年を期に2012年に大改修)

山口県立美術館
ピロティ部に増築された・・ショップ部を見る。ガラスの角に穴を開けて、支持金物のみでガラス面を固定して支える・・DPG工法による、フレームレスなスッキリデザイン
山口県立美術館
玄関を入った正面の1階ロビー・・大きな開口(西面)。ロビーから1段上がった場所にはカフェ。その向こうの外部は屋外展示場。来館者はロビー正面の壁に突き当たり、目的別に左右(南北)に別れていく・・
山口県立美術館ロビー
1階ロビーから、大きな長い斜路(北側)を上がり展示室へ・・そこからさらに斜路で上階の展示室へ

左右対称で南側にも同じカタチで斜路が配置されている。この美術館の建築構成の要は、やはりなんと言っても・・建物中央に配置された斜路。(斜路が建築構成の要となっている建築といえば、鬼頭さんの師匠の師匠による・・この作品!!)

山口県立美術館ロビー
1階ロビーを見る

階段は一切使うことなく、斜路だけにより展示室を巡る構成は・・気分の断続を強いられる事なく各展示室を歩き回れる連続性を・・鬼頭さんが重視された様です。美術館設計にあたり・・萩焼きの窯元や香月泰男のアトリエ、市内の古い社寺・・様々な”山口”の場所を、訪ね歩き・・”山口”の美術館を模索されたそうです。

山口県立美術館カフェ
カフェを見る

今は深澤直人デザインの椅子が並ぶ、おしゃれなスペースですが、もともとはこの場所もロビーだった様です。美術館設計の経験がなかった鬼頭さんは・・その不安を師匠(前川國男)に相談したところ・・前川が鬼頭に与えたアドバイスとは・・「何も教える事はない、物と人に聞け!!」・・物とは美術品、人とは学芸員。

山口県立美術館ミュージアムショップ

師匠である前川と同じく、建築家の職業倫理観に厳しかった鬼頭の言葉。
「デザインの自由は、常にクライアントと社会のために行使されるという限界を超えることは許されない」・・建築家のエゴやデザイン至上主義への戒め、社会/生活/人間/建築の関係性を増進する為のデザイン・・