「建築探訪 130」-Osaka/茨木

光の教会

安藤忠雄さん設計の「光の教会」(1989)・・竣工からもう四半世紀!!!  学生の頃、大阪在住だったからなのか・・建築専門のメディアだけでなく一般向けの雑誌TVでも・・度々眼にする事が多かったANDOさん・・「建築家といえば=安藤忠雄」。関西ローカルの放送だったのか?・・この教会の建築工事に追ったTV番組もありましたよね。

(下写真)18×6×8mの箱に、壁1枚だけ挿入という・・シンプルな構成

90年代に入ると公共建築などの大規模な作品にANDO建築はシフトしていくが・・建築史上、不朽の名建築と言っても過言ではない東邸(’76)同様・・とても小さく/とても質素だけれども・・厳選/熟考/純化された・・素材、ディテール、空間構成、光、記憶・・見えないものをカタチへと変える、建築家/安藤忠雄の力が遺憾なく発揮されたであろう・・珠玉の小建築。  
(上写真 左上) 開口部そのものが十字架という・・アイデアがこの建築の要。

(下写真)十字架の開口部詳細。もちろんガラスが嵌まっていますが・・ANDOさん的には、ガラスは入れたくなかったそうです・・

光の教会

「あそこガラス入れたら、なんか・・ん~難しいな。ないほうがええな」
「別になくってもええの違うかなぁ。ちょっと寒いだけやろ。」
「そらちょっと寒いわなぁ。だけどきれいや、なんか」
「ガラスないほうが。パーっとするで」

上記の言葉は、平松剛著「光の教会-安藤忠雄の現場」より・・さすがに「世界のANDO」な発言!! 大胆な提案!!・・光の教会(’89)、こどもの館(’89)、ライカ(’89)、タイムズ(’91)、水御堂(’91)、姫路文学館(’91)、大手前(’92)、六甲2(’93)・・80年代後半~90年代前半、竣工したばかりの(力作揃いの)ANDO作品を数々探訪していた学生時代が・・懐かしい限りです。

「建築探訪 129」-Finland 20 / ALVAR AALTO 15

アルヴァアアルトミュージアム

アルヴァ・アアルト設計の「アルヴァ・アアルト・ミュージアム (1973)」を探訪。ユベスキュラ教育大の南・・勾配のついた敷地に建つ、窓の少ない外観の建物。正面まで辿り着くと・・竪繁げなその壁の構成が目を引く。建物正面にあたる南側外観は三面鏡を開いた様な外壁の構えだが、アシンメトリー&折れ点での微妙な段差・・シンプルそうに見えて、細かな工夫が見られる・・外観のデザイン。(上写真 南側外観を見る)  

アルヴァアアルトミュージアム
竪繁げの・・壁詳細を見る。いつもいつもの蒲鉾型タイルと、横長フラットな磁器タイルによる組合せ。外壁右上の壁から浮いている”飾り”は、ルーバーの様ですが・・   なんかKITTEのサインに似てたりします? 
アルヴァアアルトミュージアム
いつもとは違う、平タイルと組み合わせた・・蒲鉾型タイルの使い方
アルヴァアアルトミュージアム
控えなエントランス扉・・大理石の袖壁のラインも、斜めにピューッといってグッグッっ・・といい感じでアアルトらしいデザイン

全体の平面形は一言二言では説明できない様な多角形。平面構成においては、この建物より少し前に計画が始まっていた「ラハティの教会」にも通じるものがあります・・展示や祈りの為の大きな主空間 + 諸室や設備の為の小さな機能空間が適宜適所で従属・・というカタチ。全くの自由にも見える多角形の平面構成も・・実は敷地の高低差に適応させようとした設計の工夫だったり・・

アルヴァアアルトミュージアム
2階の展示室を見る。大きなハイサイドから落ちる光で満たされた空間・・光を受ける面の “傾斜した木製壁” が内部空間のチャームポイント。所々がルーバー状になっている2段構成のうねる木製壁面・・この印象的なデザインは、言わずと知れた「NY博 フィンランド館」からのデザイン!!
アルヴァアアルトミュージアム
“傾斜した木製壁” の詳細を見る
アルヴァアアルトミュージアム
このミュージアムの”展示ケース”が、何ともgood。ピロティ状になったグレーな箱が幾つも並んでいて・・その箱には図面やスケッチ、写真や模型など様々な物がコラージュ・・貼り付けてあったり、直接描かれていたり、凹んでいたり・・何とも手作り的な感じさえも有るんですが、とても楽しげな・・”展示ケース”
アルヴァアアルトミュージアム
右側の展示ケースには・・ヘルシンキより東へ300km、ロシアとの国境線近くの小さな町”イマトラ”に有る(今回の旅では見に行く事ができませんでしたが)・・「ヴォクセンニスカの教会(’58)」の断面模型が貼り付けられています
アルヴァアアルトミュージアム
展示ケースの中にアアルトデザインの有名な照明器具や・・「NY博 フィンランド館 (’39)」のインテリア模型 !!!

ピューッといってグッグッといい感じのカウンターがある・・1階のカフェを見る。残念ながら、ゆっくりとここでお茶する時間も・・このカフェの窓から見えるくらいすぐ側にある同じくアアルト設計の「中部フィンランド民俗博物館(1962)」をゆっくりと堪能する時間もなく・・次の探訪場所へと出発・・

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さよなら「ホテルオークラ東京」

ホテルオークラ東京
“ホテルオークラ東京”の最後の日です・・
“日本美を体現した近代建築の名空間”の終幕
ホテルオークラ東京
53年間、多くの人をもてなしてきた「ホテルオークラ東京」が建替え・・
昨日(2015/8/31)を持って閉館
ホテルオークラ東京
建替えに関しては、日本国内だけではなく、海外からも惜しむ声はたくさん。2度と体験できなくなった “あのオークラの空間” ・・本当に残念
ホテルオークラ東京
2015年8月31日、グランドフィナーレの会場

節目節目の機会には、家族の思い出の背景として在った場所・・最後の日に宿泊できた事に感謝。

「建築探訪 128」-Finland 19 / ALVAR AALTO 14

ユヴァスキュラ教育大学

アルヴァ・アアルト設計の「ユヴァスキュラ教育大学(1951-76)」の・・「食堂棟(’53)」を探訪。左手にチラリと見えているのが「講堂/講義棟」・・

ユヴァスキュラ教育大学
煉瓦壁の基壇+大きな高窓・・という構成の西側外観を見る。グッグッと高さを抑えられた1階と伸びやかな2階の・・バランスがgoodな感じ
ユヴァスキュラ教育大学食堂
2階食堂の内観を見る。外観から見えた大きな高窓の部分は、梁露わしの木製トラスで支えられた片流れ屋根・・食堂の空間自体(屋根も含めて)・・L字型になっていて・・2階食堂は中庭を囲ったプラン・・上写真の右手には中庭
ユヴァスキュラ教育大学食堂
高窓と壁の比率は、ほぼ半々くらい。西側に向いて、これだけの高窓・・日本だと夏は熱すぎて耐えられないだろうけど・・冬とても寒く、日照時間も短い、北欧では・・これくらいでgoodなんでしょうね
ユヴァスキュラ教育大学食堂
こちらは大きな食堂とは分けられ・・別室となっているスペース。教職員などが使用すると説明されていたような・・置いている家具もやや立派かな ?
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「建築探訪 127」-Finland 18 / ALVAR AALTO 13

ユヴァスキュラ教育大学
1959年に出来た「講堂/講義棟」の外観を見る

アルヴァ・アアルト設計の「ユヴァスキュラ教育大学(1951-76)」を探訪・・ヘルシンキを早朝に出発、長距離列車に揺られること2時間半・・ニコライ1世により1837年に開かれた人口13万人ほどの町 “ユヴァスキュラ”に到着。
大学キャンパス全体の配置は・・「講堂/講義棟」「図書館棟」「ゼミナール棟」「プール/体育館棟」「体育学部棟」「学生宿舎/食堂棟」などなどの各建物が、中央にあるグランドを中心にぐるりとU字型に囲う形。

ユヴァスキュラ教育大学
「講堂/講義棟」建物外観の足下を見る。赤煉瓦、銅板、少し高さに変化をつけた開放的な開口部・・
ユヴァスキュラ教育大学
町の中心部からてくてくと歩いていくと、緩く登った道の先に見えてくる・・左手の赤煉瓦ヴォリュームから屋根が突き出たカタチの建物が「講堂」。右手の水平に庇が伸びた低めヴォリュームの部分が「図書館棟」。その間にあるのが「講義棟」
ユヴァスキュラ教育大学図書館
「図書館棟」を正面より見る。庇と赤煉瓦のヴォリューム・・
ユヴァスキュラ教育大学講堂
講堂エントランスの扉を見る・・引手と一体になっている細桟の斜めデザインがgood・・戦前、初期アアルト建築の記念碑的な作品としても良く知られている・・「ヴィープリの図書館(1935)」を思い出さずにはいられない・・扉デザイン!!
ユヴァスキュラ教育大学講堂
「講堂」のエントランス/ホワイエはアアルト作品集では何度も眼にしていた・・あの空間。(上写真)玄関扉を入った左手に休憩スペース・・その向こうには松林が広がる・・
ユヴァスキュラ教育大学講堂
大理石の白い床に、いつもいつもの “アアルトタイル” を巻いた独立柱・・非常に開放的で明るいホワイエ空間
ユヴァスキュラ教育大学講堂
段々となった、細かい縦繁パターンが施されたリズミカルな格子天井・・階段を上がると講堂
ユヴァスキュラ教育大学講堂
こちらも、アアルトの作品集では何度も眼にする・・よく知られたあの空間!!  講堂と講義棟の間にある・・アアルトらしい長円型のトップライトが並んだ・・大階段のある吹抜け空間。正面奥のホール出入口へと向かう・・
ユヴァスキュラ教育大学講堂
大階段のある吹抜け空間・・を見返す。白い大理石/プラスターと赤煉瓦、素材の切替と空間の構成が響いています・・壁面に付いている照明器具、上下配光型ブラケットの形がオモシロイ・・
ユヴァスキュラ教育大学講堂
右下に見える・・ホール出入口を抜けて、建物裏より建物を見返す・・裏ヴォリュームに変化をつけた赤煉瓦だけのファサードの・・ポツンと隅に設けられた、白い縁取りの開口部・・が効いています
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「建築探訪 126」-Finland 17 / ALVAR AALTO 12

コッコネン邸

アルヴァ・アアルト設計による「コッコネン邸(1969)」を探訪。コッコネン邸の・・主であるJoonas Kokkonen氏(1921-96)はアアルトの友人であり…フィンランドではシベリウスにつぐ有名な作曲家。
(上写真)東側外観を見る。黒く塗装された板張りの外観・・有機的な形をした白い庇が特徴的。大きな構成としては3つのヴォリュームからなる扇型プランの木造平屋建てのアトリエ付き住宅・・玄関とリビングがある中央部、右手にプライベート部、左手にアトリエ(音楽室)部。裏側となる湖の見える西庭には(北欧住宅には必須の)・・サウナ小屋も有り。

コッコネン氏が亡くなった後は、市がコッコネン邸を買い取り・・現在は市の許可を受けた音楽家夫婦が建物を管理。

コッコネン邸
建物中央部となるリビング部分を見る。リビング部分は・・プライベート部とアトリエ部を繋げつつも隔離する干渉的な空間になっています。フィンランドでは日本と同様に・・家の中では靴を脱いで生活
コッコネン邸
グランドピアノのあるアトリエを見る

コッコネン邸は音楽家の為の住宅・・アトリエの音響の素晴らしさを味わって欲しいとのことで・・プチコンサートが始まる。現在の管理者でもある・・ピアニストの奥様とオペラ歌手のご主人による3曲。シベリウス作の一曲、コッコネン作の一曲、そしてアアルトが愛したイタリアの歌曲。レパートリーとしてはgood。フィンランド語なので、言葉はよく分かりませんが…2人の会話で、曲間に笑いが絶えない…夫婦漫才のような掛け合いが行われていたのだろうか・・

コッコネン邸
アトリエからリビング方向を見る。正面の引込戸は鉛入りの防音戸・・アトリエスペースを居住スペースから分け、コッコネン氏は作曲に集中していたのでしょう・・天井に張られた布は残響や照明を和らげる工夫
コッコネン邸
トップライトのあるダイニングを見る。奥様お手製のスイーツでもてなしてくださいました

左手の方が奥様・・今回ブログに使用した写真には、必ず管理者の方が写っています。というのも・・写真の撮影が可能かどうかを尋ねると、「僕達が写っていたらOK!」との事ですので・・建築を紹介する写真としては分かり難いアングルが多かったかも・・

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「建築探訪 125」-Finland 16 / ALVAR AALTO 11

ラハティの教会

アルヴァ・アアルト設計による「ラハティの教会」を探訪。教会の設計は1969年から始まるのだが・・教会の完成は、アアルトが亡くなった3年後の・・1979年。”ラハティ”はヘルシンキから北へ100kmほどのところに位置する、人口10万人ほどの町。駅を降りて、市内中心の通りを少しブラリと歩くと・・小さな丘の上に教会が見えてきました・・ 都市軸に対し真正面で受けずに、僅かにファサードを振って構えています。

ラハティの教会
石段を上がって・・南側外観を見上げる。窓を十字架型に配置しているところから “十字架教会”とも言われているそうです・・左下に重厚なエントランスの扉。大きな壁面には折れ線が1本・・正面に見えているヴォリュームは大階段のあるエントランスホール・・
ラハティの教会
東側外観を見る。建物煉瓦とは素材を変えて・・聳え建つ鐘楼はコンクリート打放し・・煉瓦壁から突き出た大きなハイサイド窓が、そのまま片流れの屋根となり・・礼拝堂を覆っている構成・・内部空間が楽しみ・・
ラハティの教会
十字架型に配置された窓のある・・エントランスホールを見る。楔型多角形をした平面形。高~く長~く続く大階段は2階バルコニー席へと続く動線・・彫りが深い窓から差し込む光が綺麗です
ラハティの教会
扉を開けて礼拝堂の中へ・・シンメトリーに席を配した平面形は、正三角形の角を落とした様なカタチをしています・・その頂点に祭壇。左右のアシンメトリーなハイサイド窓が・・いかにもアアルト!!
ラハティの教会
祭壇に突き刺さるように伸びる、両側の大きな梁が・・扇を広げた様な屋根を支える・・
ラハティの教会
この壁の凹みに張り付いている”ギタギタした板”はデザイン? 反射板? 反響板? ・・役目はハッキリしませんが、これが無いと・・この壁面は寂しい・・よく効いています
ラハティの教会
祭壇の右手壁に・・大きなオルガン。この日の教会は、私達以外には誰もいない”貸し切り”状態でしたが・・途中にオルガニストが入って来られて演奏の練習を始められ・・なんとも不思議な音楽・・
ラハティの教会
1階より礼拝堂の後部・・2階席を見る。2階席の上部からは、ハイサイド窓から取り込んだ光が・・粗めのルーバー越しに落ちる
ラハティの教会
光に満たされた真っ白い空間の中で、床面と長椅子座面の黒が・・シックに効いています
ラハティの教会
2階席より礼拝堂の天井面を見る。この大梁の “面の取り方” がgoodです。ただの四角い梁のままならば、靜寂な祈りの空間が無作法で台無しになってしまうところを・・梁側面から底面にかけて”2つのR面”を取り込んで、繊細なプロポーションで・・デザイン処理!! &ハイサイド窓からの光をやさしく受けて・・
ラハティの教会階段
前面に大きめの木材を張った、階段段鼻のデザイン・・goodです
ラハティの教会手すり
丸型と楔型が繋がったような・・階段手摺のデザイン・・goodです
ラハティの教会
教会に展示されていた模型・・上空からみるとこんな形の建物。屋根面にも2本の大梁のラインがしっかりと見えます。アルヴァ・アアルトが生涯に手掛けた教会建築は、改修を除けば6つ。その内フィンランド国内にあるのは、ヴォクセニスカ(’59)、セイナヨキ(’66)、そして・・ 
ラハティの教会
最晩年、円熟期アアルトが亡くなるまで手がけていた、アアルト自身にとっては未完の作品となってしまった・・このラハティ(’79)の3つ。念願だったアアルト教会建築の初体験。天気良好、建物内は貸し切り状態、フリーで堪能・・満喫満喫
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「建築探訪 124」-Finland 15 / ALVAR AALTO 10

フィンランディアホール

アルヴァ・アアルト設計の「フィンランディア・ホール(1971)」を探訪・・南北に長~い建物、東側の道から建物外観を見る。敷地は東側から西側へと少し上がっている傾斜地・・東側からのアプローチは1階が車、2階のペデストリアンデッキから人・・この東側の道を南にまっすぐ戻ると・・「キアズマ」に突き当たる。階段が東側のエレヴェーションの控え目なアクセント。

フィンランディアホール
北側から建物外観を見る。上部に大きく突き出たヴォリューム部分が劇場。外壁は白大理石・・石の巾には大小変化をつけている・・近づいて見えるディテールの楽しみ
フィンランディアホール
西側の道路(マンネルヘイム通り)から建物外観を見る。こちら側にメインエントランスがあります。左手・・片流れ屋根の”変形台形型”のヴォリュームが1750席の劇場部分。建物全体も有機的な平面形をしていて・・一言では説明し難いカタチなのですが・・あえて言うならば「握り柄のある打製石斧」・・不規則で定まりのない流動的なカタチは・・”アアルト好み”
フィンランディアホール
西側外観を見る。ヴォリュームが分かれている部分の左手が劇場/室内楽ホール棟、右手が会議棟。長く伸びる水平庇が効いています
フィンランディアホール
西側外観の会議棟部分を見上げる。ひだひだ多面体のカーテンウォール(ガラス窓)がチャームポイント。外壁はよく見ると、1枚1枚の石に微妙に”むくり”が付いている・・これはアアルトの意図したデザインではなく・・素材の特性による経年変化と思えます。(古い作品集に見られる外観写真では、今とは逆に白大理石は反っている・・オリジナルの外壁は凍害による反りや傷みなどの問題から、張替えられ・・今度は特殊加工を施し・・しかし逆に”むくり”・・)
フィンランディアホール
西側エントランスキャノピーを支える柱。ちょっとしたデザインディテールが洒落てます・・こういった小さな部分の工夫を見ていると・・建築家の “力の入れ具合” が良く見えてきます
フィンランディアホール
西側のメインエントランスを見る。低く抑えて、広く招き入れる感じです
フィンランディアホール
西側からエントランスロビーに入りました。ぐっと抑えています、壁のアアルトタイルが効いています
フィンランディアホール
天井高さを抑えた・・エントランス空間から、ホワイエのあるメインフロアへと上がってゆく・・流動性を感じるインテリアとアプローチ。床は大理石、壁は大理石とアアルトタイル
フィンランディアホール
エントランスロビーの東側に面する部分。家具も照明も・・もちろんアアルトデザイン。突き当りの壁・・アクセントになっているタイルは、もちろんアアルトタイル
フィンランディアホール
ロビーからお手洗いに入る部分。ヴォリュームのあるアアルトタイル壁で衝立
トューリョ湾
建物の北端には「トューリョ湾」が近接・・
トューリョ湾
「トューリョ湾」越しに建物を望む・・中央の白い建物がフィンランディア・ホール。ヘルシンキはフィンランドの首都であり、同国最大の都市(都市域の人口で100万ちょい)ですが・・上写真の様に高い建物はあまり無く、湾と緑の中に都市が広がった様な・・本当に程良い感じの都市。(ただ冬は寒いし、長いんだろうけど・・訪れたこの季節は最高!!でした)
「フィンランディア・ホール」はアアルトの手による 「ヘルシンキ都市センター計画 (上図)として出来た最初(で最後)の建物。”計画”によるとトューリョ湾の水辺にはフィンランディア・ホールを基点として幾つもの公共建築(会議場、オペラハウス、美術館、図書館等)が建ち並ぶ予定でした・・
水辺だけでなく「カンピ地区のオフィスビル」までも、アアルトは考えて・・
雁行する矩形ヴォリュームを並べた建物が「カンピ地区のオフィスビル」、写真の手前がヘルシンキ中央駅・・

水面に映える公共建築群の姿が、対岸を走るヘルシンキ中央駅へと向かっていく列車から綺麗に一望される計画でした・・ また駅とフィンランディア・ホールの間には多層型の巨大な扇状広場(広場の下は駐車場)を設ける計画でもありました・・

手前が扇状広場。左下にフィンランディア・ホール
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「建築探訪 123」-ISE SIMA

志摩観光ホテル

村野藤吾の設計による「志摩観光ホテル」を訪れる・・ 正面に見えるのは本館。本館が竣工した1969年当時は全体で200室を擁し・・国内最大規模のリゾートホテルだったそうです。屋根と軒が重層する外観が特徴的。

志摩観光ホテル
真珠養殖の発祥地でもあり、リアス式海岸が織り成す景勝地としても知られる・・英虞湾に面して建つホテル。左側、建物下にあるのが英虞湾・・しかし天気がやや悪い
志摩観光ホテル
本館の1階ロビーを見る。松材による力強い天井の意匠。突き当りの奥にレストラン「ラ・メール クラシック」
志摩観光ホテル階段
本館の1階ロビーにある階段を見る。ちょっとした部分にまで・・アールや面取りを施す・・細やかなディテールへの気配りが、心地良い ・・村野藤吾さんの建築
志摩観光ホテル
本館2階のロビーを見る。村野さんオリジナルデザインの障子・・ソファやテーブルといった家具・・いかにも村野調なインテリア
志摩観光ホテル
本館2階のラウンジ「アミー」を見る。1973年の映画「華麗なる一族」のロケが行われた場所としても有名。昭和天皇はじめ、今の天皇陛下・皇后陛下や、皇太子殿下・同妃殿下、秋篠宮殿下・同妃殿下・・ モナコのグレース王妃夫妻などなど・・皇室関係の方々が泊まられる事でも知られているホテル・・ 竹をギッシリと並べた天井が壮観
志摩観光ホテルラ・メールクラシック
藤田嗣治や小磯良平の絵画も壁に並ぶ・・本館1階にあるレストラン「ラ・メール クラシック」
志摩観光ホテル
戦後初の純洋式リゾートホテルとして、1951年に開業した建物である旧館を見る。開業当時は25室。開業した年の秋には昭和天皇も・・ご宿泊。旧館の奥にあった増築部(1960)は、今は撤去されていて・・在りません
志摩観光ホテル
旧館の建物自体は・・設計者である村野藤吾が戦時中に設計した「鈴鹿海軍工廠 航空隊将校 集会場(1943)」の木材を移築して、建てられたもの
志摩観光ホテル
開業当時の趣きを今も残す、旧館のロビーを見る。旧館部分は、今はホテルとしては使用はされていませんが・・内部は公開されており、自由に見て廻る事が出来ます
志摩観光ホテル
太い柱梁が露わしとなった高さのある空間・・旧館の和食レストラン「浜木綿」。これだけのスペースを何も使わずに維持されて・・見学の為に公開して頂けるとは・・感謝
志摩観光ホテル
ここも・・現在はもちろん営業していないが、今にもシェフが出て来そうな雰囲気・・旧館にある鉄板焼き「山吹」のインテリアを見る。ここの障子もオモシロイ・・そして天井も・・さすがの村野デザイン
ホテルには夕方、到着。窓から英虞湾を見下ろす。英虞湾に沈む夕陽は、このホテルの大きな魅力の1つなのだが・・残念(曇り)。ならば、このホテルの・・もう1つの大きな魅力である・・食事に期待 !!
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「建築探訪 122」-Finland 14 / ALVAR AALTO 9

電力公社ビル

ヘルシンキ市内のカンピ地区に建つ、アルヴァ・アアルト設計の「電力公社ビル」(1968)。平面形は中庭VOIDを囲んだ・・”ロの字型”の変形。既存棟ヴォリュームに対して、その3倍にあたるヴォリュームの新築棟を付け加えるという・・難しい増築による計画。
(上写真)左手に少し見えている赤煉瓦の部分が既存棟で、それより右側の黒っぽい金属張りの部分が増築棟。 屋上の積み重ねられた水平庇で新旧部の接続をうまく融和・・とても大きなオフィスビルです。

電力公社ビル

明るく見えますが、この写真は晩御飯を食べた帰り・・PM9時頃に撮った写真。見学する予定には入れてなかったけれど・・この日の目的である飲食店から、泊まっているホテルに帰るまでのルートで偶然にも発見!!  
(上写真) 規則正しく割付けられた “アアルト窓” が気持ちいい感じ。

電力公社ビル
外壁は金属製の・・いわゆる “波板” 。アアルトはフィンランドを代表する国民的建築家で・・世界的にも評価の高い近代建築家・・彼の手掛けた建築が、フィンランドに多数有るのは当たり前なんですが・・

しかしそれにしても・・ヘルシンキ市内だけでも、見るべき(ゆっくり見たい)建築がたくさん。中も見たかったなぁ・・残念。ちなみに、この日は北欧に来て5日目・・パサパサした北欧の食事にもそろそろ飽きてきて・・

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