「建築探訪 89」Tokyo/本郷2

東京大学法学系教育棟

槇文彦さん設計の「東京大学 法学系教育棟」(2004)。正門から入ったすぐ右手、キャンパス内通りと本郷通りに挟まれた・・ 通りと平行に建つ、南北に細長い建物。鉄骨造4階建、外装はすべてガラスのカーテンウォール。天井高さ3.0mの室内と、0.8mの天井裏(床下) の繰り返しがよく分かる・・透明ガラスとブラストガラスを使い分けた・・東側外観をキャンパス内通りより見る。

東京大学法学系教育棟

キャンパス内通りより外観を見る。藤棚を挟んで、手前には安藤忠雄さん設計の「東京大学 福武ホール」(2008) 。大きな樹に囲まれたガラスBOX・・ ヴォボリュームを抑えた、控えめな存在。重厚な建物が多いキャンパス内にあってはやや異質な存在感。

東京大学法学系教育棟
建物内の廊下は細長い建物全体を貫いています・・キャンパス内通りと平行に約65m。床は御影石張り。壁天井はPB t=9.5+12.5 EP仕上げ。サッシ方立ての間隔は0.8m。
東京大学法学系教育棟
1階エントランスと階段を見る。階段の向こうには藤棚が見えます。エントランスと階段は細長い建物の両端に左右対称で配置。

「建築探訪 86」-Tokyo /本郷

東京大学・福武ホール

本郷通りから東大赤門をくぐって、すぐ左・・東京大学の創立130年を記念してつくられた・・安藤忠雄さん設計の「東京大学・福武ホール」(2008) を訪れる。この日は天気が曇りで写真映りがイマイチ・・キャンパス内の通りに面して建つ細長い建物。この建物の一番のポイントとなっているのは・・通りと建物を遮っている、とて~も、長~い壁、その長さは100m近く!!!  深い長大な庇と長い壁、そしてその背後の緑との対比・・効いています。(上写真) 東側外観をキャンパス内通りより見る。サッシ面からの室内奥行は7.65m。サッシ面から壁までも7.65m。

東京大学・福武ホール

この長い壁には “考える壁” という名前がついています。壁の高さは3.6m(コンクリート打ち放しパネル4枚分)・・人の背の高さの2倍・・ちょうど歩いている人の目線高さくらいに長~い横スリットが設けられています。この細長い横スリットが在る事がチャームポイント・・単なる壁では終わらない、何かしらの関係が壁の向こうとこちらで生まれていてgoodでした。

東京大学・福武ホール
スリットから通りを覗くとこんな感じ・・建物は地上2階、地下2階。大階段が大きなオープンスペースとなっているのは・・いかにもANDO建築らしい構成。晴れていたら・・劇的なイイ写真になりそうな感じでしたが・・残念
東京大学・福武ホール
地階の廊下よりオープンスペースを見る。サッシの方立の間隔は900mm・・コンクリート打ち放し面と同じモジュールで統一されていてgoodです
東京大学・福武ホール

歴史を感じるゴシック風の重厚な建物が中心となったレンガ色のキャンパスの中・・コンクリート打ち放しのANDO建築はやはり異質でしたが・・ 古い建物の中、統一感ばかり重視して・・”古い風の建物”を建てるのではなく・・ 新しい刺激としてANDO建築は有効に働いている様に感じました。
(上写真) 庇下までの高さ6.3m。サッシ面からの庇出は5.4m。

「建築探訪 67」-Italia 6 /Como

サンテリア幼稚園

イタリア人建築家 ジュゼッペ・テラーニ(1904-43)による「サンテリア幼稚園」(1937)。ミラノから北へ40km程の町 “コモ” にあります。
(上写真) 芝生の園庭より東側外観を見る。フレームの存在と、建物との距離感がgoodです。風にはためく日除けテントが気持ち良さげ。

サンテリア幼稚園
南側より外観を見る。建物は平屋、階高は高め。平面構成は大きくは北側が開いた”コの字型” で、それに少し建物が伸びやかに成る様な変形をあちこち細かに加えている。同じくコモにあるテラーニの代表作である「カサ・デル・ファッショ」が・・ 非常に単純で、はっきりとした輪郭の建築なのに対し・・ こちらの方はもっと自由な感じで・・ 意図的に輪郭をボカしている様な感じもするくらい。
サンテリア幼稚園
建物南東角の東側外観を見る。”コの字” の角部に細かな変形・・ 一辺を伸展させ角の様に飛び出させて端部に大きな開口、もう一辺には小庇やフレームを付け加え立面に変化を与えています

規則的な構造的枠組みの中で、様々な変化をつけて開口部を操作していく様な手法は・・「カサ・デル・ファッショ」とも共通している部分な気もしますが・・ 「カサ・デル・ファッショ」に感じる回帰的な古典性の様なものは、ここでは感じる事は少なく・・ より自由を獲得した合理主義建築の軽快さが強調されてい様な気もします。「カサ・デル・ファッショ」も見ようによっては、(ムッソリーニ率いるファシスト党の建築だという事を忘れて) 「サンテリア幼稚園」よりもさらに自由な建築に見えて来る様な気もします。

サンテリア幼稚園
遊戯室から中庭方向を見る。透け感が高いテラーニの室内空間・・ 天井いっぱいまでの開口も効果的なのだが・・ 室内に建っている柱の存在と、中庭の向こうに見えるフレームの存在が呼応しているのも・・ 効果UPな感じがします