「建築探訪 04」-Hiroshima/呉

呉市庁舎/市民会館

週末、「呉市庁舎/市民会館 (’62)」を探訪・・ 設計は坂倉準三建築研究所。
濃青色タイル張りの二つの円筒形 ( ひとつは空に向かって螺旋状曲面を延ばす市民会館ホール。もうひとつは議会場。 ) と 水平要素(ブリッジ や 議会場の大きな庇 )の対比が美しかったです・・さすがの “コルビュジエ的な感じ” 。

呉市庁舎/市民会館
螺旋状曲面を空へと延ばす市民会館ホールを見る。
今は白く見える部分は、もともとは “コンクリート打放し” の様でした・・ある時ペンキで白く塗られました・・”濃青色タイル円筒形”と”打放し”の対比はすごく綺麗だったろうな・・
呉市庁舎/市民会館
大きな庇が効いている議会場を道路より見る

建物は全体的に傷み汚れが目立ち、あまりメンテされてない様な感じ。50~60年代の有名作品には “打放し建築” が多い。完成時の写真のイメージを頭に入れ見学に行くと・・”打放し建築” のひどい汚れ様/傷み様/ペンキ塗りされた様にガッカリする事は何度もあり・・プランや形が変わったわけではなく、ペンキを塗られただけなんだけれども、建物の印象としては・・全く違うものにすら見えてしまう・・ 色と素材と形 のバランスは非常に緊密なのだから・・ こんな時には竣工時の姿を当時の資料などから想像してみます・・

〈追記〉2017年解体

「建築探訪 03」 Kagawa 3

香川県立体育館

「香川県立体育館」(’64) 設計:丹下健三 に行ってきました。
高松市中心からバスで10分、少し歩くと見えて来ました・・住宅街に舞い降りた和風宇宙船の様なインパクトのある姿は、周囲の平凡な街並みからは完全に浮いていました・・50年ほど前に地方都市につくられた市民施設。当時日本を代表する建築家による新しい表現。今は細々と使われメンテは最低限でやや使いこまれ古びた感じ・・出来た当初はその過激な表現と高い理想と過剰な情熱で注目を集めた話題作が、今は静かな住宅街の中で寡黙に立尽くしています。

香川県立体育館
“舟底”になる大きなアールの天井に覆われたエンスランスホールは素敵でした。剣持勇の椅子以外は何も置かれてない、ポスター1枚も貼られていない、ガランとした建築空間だけがある竣工写真の様な状態でした
香川県立体育館

一つの作品としては非常に高いレベルにある大建築家の作品なのだが、周囲とはいつまでも馴染めなかった転校生のような寂しさ・・HP局面の吊り屋根・観客 席床の格子梁・それらを支える大側梁大柱による構造のダイナミックな構成による表現は同年竣工した丹下健三のピ-クと言ってもいい「東京オリンピックプー ル」を連想させずにはおきません。

「建築探訪 02」 Kagawa 2

香川県庁舎

「香川県庁舎」(1958) 設計: 丹下健三(1913-2005) へついに行きました。
コンクリート構造という近代建築言語による “日本”の直接的表現。近代建築に対する伝統継承問題への解答。モダニズムの地域的成熟。有名すぎる日本近代建築の名作。丹下健三の代表作のひとつでもある建築。
完全な中央コアプラン。外周部12本の柱で大きく持ち上げられた開放的な1階ホール。各階で大きく張り出したバルコニー(庇)。バルコニーを支える小梁のリズミカルな反復。強調された水平性。・・伝統の創造的継承のイコンとして、そのスタイルは・・庁舎建築のお手本として亜流を全国的に普及させていく事となる・・

香川県庁舎

伝統継承を復古主義or折衷主義ともいえる表現に押し止めようとする動きは、1930年代にはコンクリートの建物に瓦屋根を冠した”帝冠様式”などで見られる様なデザインを生みだしましたが・・その様な回顧的な表現では、近代と日本のより良い共存関係への・・明確な解答とはなりませんでした。

香川県庁舎

その問いかけの終点のひとつが丹下健三の「香川県庁舎」だったのではないでしょうか・・明快な平面。簡素な構造。素材美。無装飾。左右非対称。モジュール・・近代と伝統の両方に共通する概念・美意識によるデザイン。

香川県庁舎

1952年広島ピースセンターから1964年オリンピックプールまでの間の丹下作品は本当に眼を見張る様な”英雄的仕事”。今後もこの様な”国家的建築家”が現れる事はない様な気がします。現在国際的なスタ-建築家である安藤忠雄氏や妹島和世さんでも・・及ばない力強さと風格を備えた丹下作品。猪熊弦一郎の壁画、剣持勇の家具も花を添えています。

「衛生陶器のような白い四角い箱ではなく、帝冠様式のような日本式建築でもなく、近代建築と共通性のあるような新しい日本建築の造形を探したい・・」   丹下健三