天神山文化プラザの・・下見。

今年8月3日~7日の間に、”岡山市の天神山文化プラザ” で開かれる「建築家のしごと展3」の打合せで・・「しごと展」の委員長である平野建築設計室の平野毅さんと・・”天神山文化プラザ” を伺う。
昨年同様・・建築探訪担当はt/rim design。言うまでもなく・・”天神山文化プラザ”は、日本近代建築の巨匠”前川國男”の設計による、近代建築の秀作。 

非常に丁寧な対応で、時間をたくさん掛けて・・天神山文化プラザのスタッフの方が、普段では見られない箇所まで色々と・・案内して下さり。貴重な話も色々と伺う事が出来・・ただただ楽しかったです。
(上写真)オリジナルの色使いが残っていると思われる、屋上出口を見る。前川國男の師匠であるル・コルビュジエの色彩感覚を感じます・・

建物外部から内部、さらに屋上まで・・前川建築を堪能堪能。この経験を活かして、8月の”建築探訪”が・・より有意義なものとなる様に・・探訪プランをこれから熟考。&前川建築についても・・もっと勉強をしなければ。

「建築探訪 138」-Finland 23 / ALVAR AALTO 18

ラウタタロ

アアルト設計の「ラウタタロ(1955)」を探訪・・ヘルシンキ市内の中心地に建つ8階建ての商業ビル。まだ陽が昇り始めたばかりで、人もまばらな・・早朝に市内を散歩しながらの探訪・・ラウタタロとは”鉄の家”の意味・・建物のクライアントはフィンランド鉄鋼業者連盟。

ラウタタロ

格子グリッドのカーテンウォール、規則正しく並んだ窓・・ガラスに映っている建物の様に、周辺には赤煉瓦のビルが多く・・右隣には、ヘルシンキ中央駅の設計者でも知られる・・エリエル・サーリネンの設計による赤煉瓦のビルも在り。

ラウタタロ
格子グリッド内の1モジュールの構成は、垂壁+換気窓+FIX窓。FIX窓と換気窓を分けるデザインは・・こちらでも、あちらでも、見られる・・いつものアアルトデザイン。
ラウタタロ
道路に面した玄関扉を見る。銅製外壁の質感とオリジナル照明器具の感じが・・goodです
ラウタタロ

訪れたのは、日本に帰国する当日の早朝・・(まだ建物はオープンしていなかったので)表玄関からガラス越しに、中を見る。このメイン階段を上がった2階には・・正円型トップライトが整然と並んだ、有名な”吹抜けホール”が在り・・雰囲気としては、以前にも探訪blogでも紹介した・・アカデミア書店のスペースと似た感じだそうだが(出来たのはこちらがずっと先)・・中に入ってみたかったが・・残念。

「建築探訪 137」-Finland 22 / ALVAR AALTO 17

セイナッツァロの村役場

アルヴァ・アアルト設計の「セイナッツァロの村役場(’52)」を探訪。元々は・・小さな建物ながら会議場、図書館、オフィス部、居住部、店舗部などなどの複数機能が1つの建物の中に構成されていた、人口3000人の湖に浮かぶ小さな島の為に建てられた建築・・現在は役場/図書館の機能のみ。戦前の「白いモダニズム建築」の旗手としての “白いアアルト” から脱した・・戦後の “赤いアアルト” としての出発点となった・・アアルトの代表作。「レンガマッスなヴォリューム」と「大小様々な木製窓」による外観の構成を南西より見る。

セイナッツアロの村役場

ひときわ高いのが会議場部。平面的には「ロの字型の中庭形式」。2層のレンガヴォリュームで2階にある中庭を囲んだカタチ・・ロの字の角、2角を欠込んで外部階段が設置されています。左手の建物出隅に竪ルーバーを設けている部分が図書館棟。微妙というか・・絶妙に調整された全体の不規則な形。ヴォリュームと開口部の”細かな”形態操作で・・アシンメトリーな絶妙バランスに至る感覚がexcellent !!

セイナッツアロの村役場
外部階段を上がり中庭へ至る。右手にエントランス・・木製パーゴラ、木製建具、板金屋根により構成された、ヒューマンスケール&ヒューマンマテリアルな建築・・
セイナッツアロの村役場
高さをグッと抑えた回廊が中庭を囲む。「レンガマッス」な外側ヴォリュームとは対比的・・開放的な中庭の様子
セイナッツアロの村役場
天井高さを抑えたエントランスホール。床素材の切替えが楽しい
セイナッツアロの村役場
エントランスから続く、中庭に開けた明るい回廊

開放的な開口部、レンガ/木板のリズミカルな繰り返し壁面、レンガの腰窓・・黒い柱の存在も効いていて・・何とも居心地が良く、落ち着く空間。腰窓のレンガベンチのスリットは暖房用・・溝下部に設置された暖房器具の熱を窓辺へと導く。

セイナッツアロの村役場
議場へと続く、ハイサイド窓から入る光が印象的な・・階段室を昇っていく。「重量感のあるレンガ壁」と「光を受けた軽やかな木製天井」の対比が・・goodです
セイナッツアロの村役場
「レンガ壁」と「木製天井」と「大きなルーバー窓」が印象的な議場を見る

放射状に伸びた腕木により・・屋根を支える「2つの扇形トラス」の形態が特徴的なのですが、議場内が暗く・・うまく写真は取れませんでした。(照明が点いていない・・停電で・・でも自然光での空間の雰囲気がよく分かるのでgoodです)

セイナッツアロの村役場

ザクッとした言い様ですが、その物言いがピタリとはまる・・”何ともアアルトらしいマテリアルとプロポーション” な・・図書館棟を見る。1階部の大きな横長ガラス窓が・・もともと店舗として計画されたという経緯を物語っています。レンガ壁の目地が少し深めに取っていたり、レンガの仕上がりや色が均一でなかったり・・そんな事も建物の味として効いています。

セイナッツアロの村役場

以前に訪れた「アアルトのアトリエ」を思わせる、光の取り入れ方・天井の形・・もちろんこちらの建築の方が年代としては古いので・・あちらがこちらに似ているのですが。天井高さいっぱいの窓から、たくさん光が入り・・とても明るい図書館棟の2階を見る

大原美術館 分館

大原美術館分館mt

神奈川から来た美大生の甥っ子と「OHARAグランプリ」と「VOCA大原美術館賞の10年」を開催中の大原美術館へ・・建築家/浦辺鎮太郎の設計による大原美術館分館のコンクリート打放し仕上げの庇が、カラフルなマスキングテープでラッピング!!  普段とは全く違う様子!!  これは3/29から始まる、岡山県観光キャンペーンの一環・・「mt × 大原美術館」によるもの・・その他にも美術館の様々なところがラッピング!!

「建築探訪 135」-Yamaguchi 3

山口県立図書館

「山口県立図書館」(1973) を探訪・・設計は鬼頭梓さん。様々な量感がポコポコした外観・・タイル壁に挟まれたサッシュ部が正面入口(西面)。平面的に見ても、様々な室のヴォリュームがポコポコとした形になっています。

山口県立図書館

東側の入口より見る・・正面奥が西側の正面入口。右上に見える大きなトップライトと、このトップライト下にある中央ホール(開架室)が・・建物の中心となります。この微妙な階高設定の・・中央ホールの絶妙な位置付けが、この建築の居心地良さの・・要となっている様な気がします。

山口県立図書館

(左-写真)中央ホールには、スロープでアクセス。(右-写真)中央ホールから2階にも、スロープでアクセス。スロープ横のコンクリート壁が・・いい「ハツリ」具合です。スロープを中心とした建物構成も・・この建築の要。写真では分かり難いですが、天井は格子状ルーバーになっています。

山口県立図書館

2階より見る。中央ホールに面してグルリと廊下が廻っているのですが・・その廊下には様々な読書コーナーが幾つも、趣きを変えながら配置されていて・・very goodです。外部窓に面した机のコーナーや、廊下の腰壁に隠れる様に配されたプチコーナー・・

山口県立図書館

開架書庫の側に配されたベンチソファのコーナーや、光庭に面したラウンジソファのコーナーなどなど・・そして更に、廊下廻りから、まとまった大きさのある各室が・・四方八方へと繋がっていく、広がりのある伸びやかな図書館となっています。

山口県立図書館

図書館建築のパイオニアであり、名手でもある鬼頭さんが手掛けた図書館建築は “訪れた人を暖かく迎え入れる” ・・とても居心地の良い、とてもniceな建築でした!!! ・・が、その本当の良さは、写真や説明文では上手く伝えられない・・体験してみないと、その良さが分からない・・”建築らしい建築” 。

「東京経済大学図書館(’62)」から始まり「山梨県立図書館(’70)」「東北大学図書館(’72)」「山口県立図書館(’73)」、そして「日野市立中央図書館(’73)」・・生涯に30を超える図書館建築を手掛けられた、鬼頭梓さんが言われていた「図書館建築で大切な事」とは・・

山口県立図書館打込みタイル

“図書館員がしっかりしてくれている事が一番大切です”  との事・・デザインに対する主義主張は控え目で、設計方法論にも柔軟な・・鬼頭さんらしい言葉なのではないでしょうか。外壁のタイルは、鬼頭梓さんの 師匠と同じ “打込みタイル” ・・巾450×高150mmという、やや大きめのタイル。

「建築探訪 134」-Finland 21 / ALVAR AALTO 16

アルヴァ・アアルトの夏の別荘

アアルト作品がたくさんある町・・ユヴァスキラの中心から車で20km程離れた場所にて・・自動車道からフィンランドらしい気持ちの良い”白樺の森” に入り・・てくてく歩いて行くと、

アルヴァ・アアルトの夏の別荘
緑の中に現れる、大きな白壁・・「アルヴァ・アアルトの夏の別荘」(1953)を探訪・・建物名の通り、この建物は建築家自身の為のプライベートな建築・・
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
南西向きの大きな壁開口部より、中庭を見る・・この見返しが、この眺め !!
白壁の大きな開口部の真正面には “パイヤンネ湖”!!  
もともとのアプローチは・・ “白樺の森” からではなく、(自身がデザインした!!) ボートで、この湖を渡ってきて・・が本来のアプローチ
アルヴァ・アアルトの夏の家
中庭に面する部分は赤煉瓦 赤煉瓦。プランとしては、ほぼ平屋のL字型コートハウス。この煉瓦の張り方がオモシロイ・・様々なパターンをパッチワークの様に張って・・実験実験。
アルヴァ・アアルトの夏の家
北西側にも・・広い間隔の格子で仕切られた、大きな開口があります。結構な高さの壁です・・綺麗な森と湖に囲われた最高の敷地なのに・・あえて高い壁で囲む。(地元フィンランドの設計事務所の方々も、しげしげと壁面入隅のユニークな煉瓦張りを見られています。)
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
煉瓦だけでなく、タイルでも実験実験・・アアルト自身、この別荘の事を「koe・talo (実験・住宅)」と呼んでいただけは・・あります
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
室内を見る。手前がダイニング、奥がリビング。外観と中庭の大きな作りから一転・・内部は簡素でコンパクトだが、落ち着く作り・・リビングの一部に、上部から吊られた構造の2階があり、そこはアアルトのアトリエスペース・・
アルヴァ・アアルトの夏の別荘
リビングより中庭を見る

同じ時間に見学を申し込んでいたのは、私達を含め3組・・地元フィンランドの設計事務所の方々が10名程と、シンガポールの建築学生さんが2名・・広くはない別荘なので、混み混みな感じで・・ちょっと慌ただしい見学となってしまいました。

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「建築探訪 133」-Yamaguchi 2

山口県立山口博物館

「山口県立 山口博物館(’67)」を探訪・・設計は坂倉準三建築研究所
(上写真) メインアプローチとなる外部大階段の境壁に開けられた不思議な開口・・不正形なカタチに、角度を変えた切り込み・・goodです。

山口県立山口博物館
東側外観、建物正面を見る。もともとは全て・・コンクリート打放し仕上げの建築でしたが、今は一部分を残してタイル張りとなった建物外観。アプローチは右手にある外部大階段を上がった2階から
山口県立山口博物館
建物正面である東側外観とは、ガラッと雰囲気の変わる・・北側外観を見る。北側の外壁仕上げはボード張り・・硬軟強弱の付け方が・・goodです
山口県立山口博物館
1階ピロティ部を見る。左手奥に見えている屋外大階段・・いまは鉄骨造ですが、もともとはコンクリート造、打放し仕上げ・・だった様です
山口県立山口博物館
1階ピロティ部、ビビットな天井の色彩。もともとのデザインがこの色であったのか・・どうかは分かりませんが・・goodです
山口県立山口博物館
1階ピロティ部より敷地奥を見る。敷地奥には春日山・・敷地の環境条件から導き出されたという建築形態のイメージは “敷地に架け渡された橋”