大原美術館ワークショップ 2010

大原美術館のワークショップに参加することになりました。倉敷市出身の建築家・浦辺鎮太郎(1909-91)の設計により1961年に建てられ、近年ではDOCOMOMO(近代建築保存の為の国際組織)の運動趣旨に沿うかたちでDOCOMOMOJapan100選にも選出された・・・「大原美術館 分館」

一般的には見所/魅力が分かりにくいと思われる近代建築・・なおかつ近代建築が世界中に広まり各地域で多様化を遂げた60年代につくられた「大原美術館 分館」は捉えどころの難しい建築。普段は絵画作品を見るための器として目立つ事の少ない”建築そのもの”に作品としてスポットライトを当て・・・その魅力についてお話をさせて頂こうと思います。

2010年1月30日(土)
13:30~15:30

「建築探訪 34」 -Italia 3 /Verona

カステルヴェッキオ美術館

廃墟となっていたヴェッキオ城をヴェローナ市が1924年に美術館として復興するが、戦争での被爆もあり、復旧状態は未完成・・・1958年にカルロ・スカルパの手により復興が再開され、1964年に完了。スカルパの改修作品としては最大規模、スカルパの最高傑作と言ってもよい・・「カステルヴェッキオ美術館」。スカルパ58才の時の作品。 

カステルヴェッキオ美術館

城壁と塔に囲まれた・・14世紀後半にカングランデ2世により建築された城。ヴェローナは15世紀以降、ナポレオンのイタリア進攻によりヴェネツィア共和国が亡びるまでは長い間、ヴェネツィアの支配下にありましたが、それまでの中世中期は幾つかの有力貴族が支配権をめぐり熾烈な闘争・・その模様がシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」のモデルにもなりました。 

カステルヴェッキオ美術館
1階展示室-東端

同じ大きさの展示室が東から西へ4室繋がっています。奥へと続いていくアーチ開口、一番奥の格子戸のある開口から出ると・・有名な “騎馬像のあるスペース”が在ります。 

カステルヴェッキオ美術館
1階展示室-中

古い建物を新たな機能の為に転用・・新旧要素の対比。古い部分の保存、新しい部分の挿入、あるいは古いものの切除・・機能的・形態的必然性や歴史的必然性・・取捨選択を行えるだけの視点/思想・・スカルパには改修作品がとても多いのだが、改修の仕事は難しそうだ・・「新旧要素の対比」とは言葉では平易だが、実際に巧くバランスを取ってデザインする事は大変だ・・ 

カステルヴェッキオ美術館
1階展示室-西端

展示作品と展示室が離し難い一体のものとして計画される事により・・絶妙な空気感を作り出しています。(どの古い建築写真を見ても、この展示状態) 

カステルヴェッキオ美術館
騎馬像のあるスペースを見上げる

展示を巡る動線の大事な位置につくられた・・棟と棟の間に生まれたこのスペースがとにかく秀逸・・このカングランデの騎馬像の展示方法・展示位置を含め、棟から棟へ移る際に1階からは見上げ、階上では見下ろし、渡り廊下では近づき・・様々な視点からこの空間/騎馬像を感じられる・・中世的赤レンガ壁と細やかなデザインが施された鉄骨柱梁&手摺等金属製部材&コンクリートとの対比。

カステルヴェッキオ美術館
騎馬像のあるスペースを見下ろす

ヴェローナはいい街でした・・田舎すぎず、都会すぎず、古い街並みもよく残っており。毎年6~8月にはローマ時代の円形劇場などで野外オペラや演奏会などが行われているそうですが・・・楽しむ間もなく夕方にはヴェローナを後にしてミラノへ向かい出発・・

ショールーム

先週末はショールームを何軒か廻りました・・
(上左写真)はイームズなどのモダンデザイン家具でミッドセンチュリーデザインの最盛期をリードした「ハーマンミラー」
イームズが生み出した大量生産時代に適した新しい素材/構造による画期的デザインの名作家具は50年以上経った今でも色褪せる事はありません・・半世紀を超えてなお人々に愛される家具というのはただ見た目が美しいだけでなく、とても使い易く/座り心地の良い椅子だ・・という事を実感。

(上右写真)はカッティングシートのメーカーで「中川ケミカル」
カッティングシートとは簡単に言えば色柄の付いたフイルムシート・・看板サインの切文字として使ったり、ガラスに貼ることで摺りガラス調やミラー調にして視線を調整したりなど使い道はイロイロ・・・「MYクリニック」の玄関部ガラス面に貼る素材を確認
ここのショールームのカッティングシートの貼り方が素敵でした(デザインはエマニュエル・ムホーさんというフランス人のデザイナー)、ほぼ1月毎程度で yellow-red-green-biue-blackと色調が変わっていくそうだ

工事中の根津美術館

(上写真)南青山にある輸入家具メーカー「Cassina」さんを見た後にブラリとしていると・・隈研吾さんが手掛けられていた「根津美術館」の改築がほぼ出来上がっていました!・・言い方は変だが “鉄でつくった木造建築”という感じ
美術館が再OPENしたら所蔵品(国宝)である尾形光琳の「燕子花図屏風」などが公開されている時に見に行きたいなぁ・・

「建築探訪 29」 -Kagawa 4

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 (’91)」(設計:谷口吉生) はとても素晴らしい美術館・・ 個人的にはかなりお気に入りの建築。
(上写真)ファサードを見る。黄色い彫刻は「星座」 右のは「シェルの歌」
普通ならばホテルやデパートが建つ駅前というロケーションや街に対して・・駅前から美術館まで一体がひと続きとなったデザインとした事、屋外彫刻を配したこのガランとしたスペースを設けた事、子供の落書きの様に自由なインパクトのある大壁画を設けた事、このファサードの大きな構え方・・・・ どこにでもある様な均質化した駅前とは違った “美術館がある駅前” という新しい場所性/風景を生み出す事に・・成功しているように思えます。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
入口部分を見る。大きなファサードとは一転して、入口はとても小さい・・花崗岩の床、コンクリート打放しの壁、大理石の壁画壁、アルミパネルの庇。左側の階段は、建物の長手を貫き、3階の最奥にある屋上広場までつながっている “大階段”。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
小さな入口を抜け、エントランスホールに入る・・ここも高さを抑えた空間。その先への広がりを予感させる、3段だけ上がったスペースへと自然と引き寄せられる。床/巾木はライムストーン、壁/天井は塗装仕上げ
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
上階の展示室へと繋がる階段と吹抜け。
幾何学的な理性が支配する、抽象的で洗練されたデザインスタイルは、”ザ・モダン” と言ってもいいと思うのだが・・ 次なる空間へのつながりが常に期待させられる様な空間構成を、建物にてリアルに感じていると・・ そのデザイン思想の根幹には “日本的感性” が強く浸透しているように思えま
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
9m以上はある、天井が高い2階展示室を見る

「この美術館の設計は時間がなくて完全に煮詰まっていない所が多いのだが、それがかえって建築を大らかな感じにしていて、そこが良かったのだ」と谷口吉生さんは仰っているのだが・・ どこがどこがという感じ・・細かな所まで完璧主義が貫かれた、あいかわらずの精緻極まりない谷口建築の見事さ・・ 

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
2階展示室の全体を見渡す

設計者である谷口吉生は猪熊弦一郎から「日本の建築はこまごまとして、スケールが小さい・・スケール感だけは大きくして欲しい。大きなスケール感がある建築で、光がよければ、あとは一切任せる」と言われ・・ “大きなスケール感”を出す為の、「プロポーションの決定」や「素材の使い方」に設計の多くの時間をかけたそうだ。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
 “大階段” の2階部分を見る。置いてある彫刻は「草」

「建築にはいろいろな様式・・賑わしては消える流行の様式・・しかし最終的に建築の良し悪しを決めるのは、やはりプローポションと光と素材、あるいはスケールとテクスチャーなど基本的なこと・・ 」 by 谷口吉生

猪熊弦一郎美術館では「子供から入場料を取ってはいけない。少しでも取ってしまえば、よほどでないと来られなくなる。タダなら学校の帰りだろうと何だろうと、いつも寄ることが出来る。そういう風に見て貰わなくちゃいけない・・」との猪熊弦一郎さんの意見から、高校生以下は入場無料となっています。こんなに素敵な美術館に、倉敷からは1時間くらいで行けるので・・ LUCKYです。

「建築探訪 28」 -Ehime 3

坂の上の雲ミュージアムと菅井内科

愛媛建築探訪のメインであった・・安藤忠雄さんが設計され、昨年OPENしたばかりの 「坂の上の雲ミュージアム」 (上写真左)
5度傾斜したカーテンウォールの外壁に覆われた三角形平面の建築・・大きな池のあるピロティを眺めながら長いスロープを上がって 2階エントランスにいたります・・・エントランスの踊り場から建物裏を覗くと見えたのが・・ (上写真右)うねるカラフルなバルコニー腰壁が積層したただならぬ外観の建物・・・
(大御所”ANDO”先生のミュージアムはさすがにキチッと出来てました・・)

菅井内科

(上写真左)店舗が並ぶ通りからは、階段でかなり上がるかたちになるがこちらがメインアプローチのようだ・・「菅井内科」は長谷川逸子さんが1980年に設計された建築・・うねる壁面、軽く舞うパンチングメタル、華やかな色彩・・・過剰な装飾をまとい、押しが強く、理由もなく明るい・・ポストモダン建築時代の到来を予感させる・・
1986年「東京都庁舎」コンペで丹下健三が1等を勝ち取った年、もうひとつの話題コンペであった「湘南台文化センター」を”第二の自然”というコンセプトで見事に勝ち取った女性建築家(日本では女性建築家が大きな公共建築を手掛けるのはこれが初? だと思います)・・・長谷川逸子の80年代初期の作品・・

「建築探訪 21」 -Osaka/大阪城南西

NHK大阪放送会館+市立歴史博物館

大坂城公園南西部から「NHK大阪放送会館+市立歴史博物館」(’01)・・設計はシーザー・ペリ&日本設計&NTTファシリティーズの共同設計(シーザー・ペリは大阪では中之島の「国際美術館」(’04)も設計でお馴染み)・・・左棟タイル張りの建物が博物館、右側ガラス張りの建物がNHK・・”建築的”にはそんなに印象には残らないのですが・・

何か”子供心”をくすぐるものがある・・・アニメの1シーンに出てきそうな感じがするキッチュとも見える全体シルエット・・ロボットの胴体を思わせるようなNHK棟ガラス張り部の膨らみ(ガラス両側部が腕のように見えるし・・)、2棟の間に挟まれた”地球儀”・・・近未来特撮ものの「防衛軍本部」として出てきそうだ・・なんて馬鹿な事を思うのは私だけでしょうか?

週末、大阪でお世話になった皆様、本当に色々ありがとうございました。

「建築探訪 19」 -Shimane 3

島根県立古代出雲歴史博物館

槇文彦さん設計の 「島根県立古代出雲歴史博物館」(’07) を探訪・・
訪れた日は残念ながら曇り、写真映りが悪いです。 (上写真) 南庭のメインアプローチ通路から見る。庭が正面ガラスボックスのエントランスホールを挟んで北庭まで続いています。

島根県立古代出雲歴史博物館
敷地奥になる北庭から見る
左側本館の外部主仕上材の “赤錆び色(コールテン鋼) ” がよく効いています
ランドスケープのデザインは三谷徹さん
島根県立古代出雲歴史博物館
3層吹き抜けのエントランスホール・・ 3階展望テラスから2階カフェテラスを見る

突当たりのX型柱(筋交い)で大きな気積のエントランスホール部の水平力(地震時の横からの力)を負担している。エントランスホール部には柱がないようです・・サッシの縦材が垂直力を受ける柱として兼用されているよう・・サッシ縦横材は一見普通のサッシ材(中空のアルミ材)に見えるが、全て押出鋼材(無垢鋼材)で出来ている・・凄いです。

槇文彦さんは日本を代表する建築家・・・東大-ハーバード大院-同大準教授-東大教授という素晴らしいノーブルな経歴・・建築学会賞/毎日芸術賞/高松宮殿下記念世界文化賞/UIAゴールドメダル/建築界のノーベル賞と言われるプリッツカー賞を含め(日本人では師匠である丹下健三についで2人目、その後の安藤忠雄で日本人は計3人)・・受賞多数。

“正統派/モダニズム建築の継承者”といわれてきた槇さんの作品は 「端正」「上品」「ハイセンス」・・という言葉がピタリとはまるが・・ミースの建築スタイルに代表される様な極端なシンプルイズムを磨き上げた初期モダニズム建築の表層/スタイルだけにただ憧れて真似する多くの”モダニズム風”建築家とは一線を画した・・・「モダニズムは百年間 常に在った・・モダニズムとは、技術/環境の変化を許容をしながら、空間/形態のあり方を変えても在り続ける強靱なシステム」と仰るように・・・硬直した見せ掛けのファッション(コンクリート打放しやホワイトボックスという様なアイコンで商品化されたデザイナーズマンションのように、形骸化したファッションとなってしまったモダニズム)としてのモダニズムではなく、適応/許容/変化/成長するものとしてモダニズム建築を探究/実践されてきた・・・槇さんも80才・・スパイラル(’85) 京都国立近代美術館(’86) テピア(’89) ザルツブルグ会議場案(’92) 慶應大藤沢大学院(’93) などの”メタリック”な作品が続いていた頃の作品が特に好きで・・大学生の時、お願いして少しだけ槇事務所にてバイトさせて頂く事が出来たのは・・LUCKYでした。

「建築探訪 11」 -Okayama 3

林原美術館

岡山市内には日本近代建築の巨匠-前川國男(1905-86)設計の現存する建築が3件・・ (上写真) は「岡山美術館(現 林原美術館)」(’63)。中庭を囲んだ回遊性のあるロの字型プランの小規模な美術館・・後期 前川建築を象徴する手法「打込みタイル」に至る前・・「レンガ積み外壁」が印象的な建築。

近代建築を代表する外装手法を自らの失敗の中から見直し・・前川が辿り着いたのが「打込みタイル」でした。耐久性という・・合理的側面からの試行錯誤から辿り着いた素材が、ガラス/金属/コンクリートという近代建築を象徴する工業的素材ではなく、大昔からある”焼き物”という材料だったのです。

林原美術館
前川は最初この美術館の外壁を”備前焼”で考えていたそうだが・・このボロボロの煉瓦は、四国の観音寺というところの窯にあった・・多少ねじれた様なクズを集めさせた物との事・・

「打込みタイル」という手法の発見だけでなく、前川らしい空間/建築が生まれたのも、後期70年以降の「埼玉県立博物館」(’71)や「熊本県立美術館」(’77)や「福岡市美術館」(’79)といった60才を過ぎてからの作品群ではないでしょうか。前川の師匠であるコルビュジェが「ロンシャンの教会」を完成させたのが68才、「ラ・トゥーレット修道院」が73才。建築家は60才を過ぎて頃から やっと自分らしさを建築で表現できるくらいになるのだろうか・・

「建築探訪 07」 -Kanagawa 2

神奈川県立近代美術館

「神奈川県立近代美術館」(’51) へ行って来ました・・戦後まだ間もない、占領下という状態の中で建てられた、日本で最初の公立近代美術館。(上写真) 北西を向いた建物正面を見る。鉄骨造の軽快さが建物外観にも現れている。建物高さは10m。建物を押さえる様にグルリと廻した、鼻隠しの波型アルミ板が効いてます。

神奈川県立近代美術館

設計者である坂倉準三(1904-69)といえば、近代建築の巨匠 ル・コルビュジェ のもとで学んだ、3人の代表的な日本人弟子 (前川國男、坂倉準三、吉坂隆正) のうちの一人。(上写真) 上部外壁はアスベストボード(1200×1800) を、巾50mmのアルミ目地金物で押さえている。下部外壁は大谷石積み。

神奈川県立近代美術館

坂倉準三は若干33才にして、戦前の設計コンペで勝ち勝ちとった「パリ万博 日本館」(’37) の成功で、若くして一躍注目の建築家となり・・ 戦後のこの「神奈川県立近代美術館」の指名設計コンペでは、前川國男を含む他の4案を抑えて見事当選。(上写真) 建物中央に設けられた吹抜けの中庭を見る。

神奈川県立近代美術館
池に面したテラスを見る。2階床は池まで大きく張り出し、それを支えている柱は池中の石上にその脚を下ろしている。(柱は池の下まで伸びて、池中繋梁で柱同士及び建物本体としっかり連結されている)
神奈川県立近代美術館
左側の池に面したテラスと、右側の中庭に挟まれた彫刻室を見る

「神奈川県立近代美術館」と「パリ万博 日本館」には共通するデザイン要素も多く・・ “露出した細い鉄骨柱”  “持ち上げられた直方体”   “流動する空間”  “建築的プロムナード” といった手法は、共通した設計言語として両建物に現れている・・ 建物中心の吹抜/中庭から、池に面したピロティ下のテラスへの繋がりは、ダイナミックでありながら繊細でもある、魅力的な空間となっていました。

「建築探訪 05」 -Kochi

牧野富太郎記念館

「牧野富太郎記念館」(’99) 設計: 内藤廣 へ行って来ました。
高知市内からバスで20分ほど、高知出身の植物分類学の父・牧野博士の業績を顕彰するため、1958年に開園。1999年に教育普及/研究の拠点として”記念館”が新設。記念館には立面らしい立面はありません、丘陵地の地勢と一体化したような、湾曲したクロワッサンのような大きな屋根に覆われた建築・・

牧野富太郎記念館
テラスより中庭を見る。大きな屋根を支えているのは鋼製柱。大きな屋根が浮いている感じ
牧野富太郎記念館中庭
中庭を見る。大きな屋根の軒下空間がぐるり。「海の博物館」(’92)で注目されて以来、「素形」というコンセプトと共に大活躍の建築家/内藤廣さん・・近代以降の建築家が避けがちな “屋根” という建築要素を避ける事なくデザイン・・とても大きな屋根が、フレキシブルで、自由な感じ・・

内藤廣さんは“風”というメタファでこの建築を説明・・「近代主義の空間意識とは周囲の環境から孤立する”閉じた箱”であり、地球上どこにでも行け る宇宙船の様なものなのだと・・近代建築が多くの人々にとって希望となり得ないのは近代建築が、孤独で臆病に “閉じて” いるからなのだと、”閉じた箱”ではなく、内と外を繋いでいく方法を建築は見出していかなければいけないんだと・・」 「 重力と風  (’99/12 新建築) 

(上左) 建築家ヨーン・ウッツォンが描いた日本建築のスケッチ。屋根が浮いてます!
(上右) 唐招提寺の立面。屋根が立面の2/3
(下左) 伊勢神宮の立面。屋根と床で立面の80%
(下右) 桂離宮の立面。屋根と床で立面の70%

伝統的な日本建築において、屋根が立面に占める面積の多さには驚かされます・・「近代以降の建築には屋根がない」。屋根がないというのは間違いで、正確に言うと「陸屋根」という事だが・・近代以降の建築家は屋根を嫌い、屋根が在るという事は前近代的で・・屋根がないのがカッコイイのである。
しかしそれは今でも「カッコイイ感じの建築」にとって、屋根のハードルはわりと高い。屋根は”踏み絵”に近いローカルで、前近代的なイコン。とりあえず、四角く白く、ホワイトボックスにしておけば・・誰でも簡単に「カッコイイ感じ」が出来るのだから・・寺院や伝統的な民家の、大きな屋根への憧憬を想い起こさせる、見事な “大屋根” の建築・・牧野富太郎記念館は、very goodでした。