「建築探訪 49」-Ehime/松山

松山ITMビル

伊東豊雄さんが設計された「松山ITMビル」(1993)を探訪・・松山市内の住居地域に建つ専用オフィスビル。
(上写真)3層の吹抜けがあるロビーを見る。北西を向く乳白フィルムを貼ったガラス面は、隣接する建物の存在感と午後から差し込む強い光を効果的に和らげています。抽象的で浮遊感に満たされた空間感や、内外装のシルバーメタリックでインダストリアルな素材感などは・・ 90年代の伊東さんらしい建築。

松山ITMビル
(左) 北西側のエントランスホール外観を見る。右手隣家が非常に近い
(右) 南西側の隣地駐車場から見る。敷地なりの3層カーテンウォール

この頃の自身の作品集に寄せた伊東さんの文章では・・新しい情報テクノロジーや移動システムなどが横暴に拡大し、支配しつつある東京のような都市空間の惨状について・・「・・ノスタルジーに耽るよりも、今日の都市空間に潜む新たな魅力を探る事の方がはるかに意味がある・・ ” マイクロ・エレクトロニック・エイジのイメージ ” をビジュアライズする作業・・エレクトロニックな流れの空間に、エレクトロニックな渦・・かつてのゲニウス・ロキに代わる “情報の場” を巻き起こす試み・・」  伊東豊雄 

「建築探訪 28」 -Ehime 3

坂の上の雲ミュージアムと菅井内科

愛媛建築探訪のメインであった・・安藤忠雄さんが設計され、昨年OPENしたばかりの 「坂の上の雲ミュージアム」 (上写真左)
5度傾斜したカーテンウォールの外壁に覆われた三角形平面の建築・・大きな池のあるピロティを眺めながら長いスロープを上がって 2階エントランスにいたります・・・エントランスの踊り場から建物裏を覗くと見えたのが・・ (上写真右)うねるカラフルなバルコニー腰壁が積層したただならぬ外観の建物・・・
(大御所”ANDO”先生のミュージアムはさすがにキチッと出来てました・・)

菅井内科

(上写真左)店舗が並ぶ通りからは、階段でかなり上がるかたちになるがこちらがメインアプローチのようだ・・「菅井内科」は長谷川逸子さんが1980年に設計された建築・・うねる壁面、軽く舞うパンチングメタル、華やかな色彩・・・過剰な装飾をまとい、押しが強く、理由もなく明るい・・ポストモダン建築時代の到来を予感させる・・
1986年「東京都庁舎」コンペで丹下健三が1等を勝ち取った年、もうひとつの話題コンペであった「湘南台文化センター」を”第二の自然”というコンセプトで見事に勝ち取った女性建築家(日本では女性建築家が大きな公共建築を手掛けるのはこれが初? だと思います)・・・長谷川逸子の80年代初期の作品・・

「建築探訪 23」 -Ehime

今治市庁舎/公会堂/市民会館

愛媛県今治市にある 「今治市庁舎/公会堂」(’58) & 「今治市民会館」(’64) を訪ねました・・・設計は丹下健三。・・3棟の配置/ヴォリュームがつくり出す調和、各棟に変化をつけたデザイン要素のおもしろさ・・あまり期待せずに訪ねましたが、さすが 「世界の丹下健三」・・出来てから50年経っているのですが、”懐かしい近代建築らしい近代建築”・・・清々しい建築でした。
(上写真) 左から公会堂/市民会館/市庁舎

今治市公会堂
公会堂を見る

広島ピースセンター(’52,’55)」 「旧東京都庁舎(’57)」 「香川県庁舎(’58)」とコンクリート建築の柱梁による日本的表現で名建築を生み出してきた40代の丹下さん。1958年の折版構造によるこの建築は、「オリンピックプール(’64)」 「東京カテドラル(’64)」 「香川県立体育館(’64)」 「山梨文化会館(’67)」 等の・・50代の構造表現色の強い丹下さんの新しい展開への繋がりに位置する作品・・ 

今治市民会館
市民会館を見る

コンクリート打放しの大きな屋根庇や、縦リブ&サッシのリズミカルな壁面開口部の割付けによる表現が・・・「ロンシャンの礼拝堂(’55)」 「ラ・トゥーレット修道院(’60)」や一連のインドでの作品など・・コルビュジェ建築の強い影響を感じさせます。

今治市民会館
市民会館の詳細・・内部からみたコルビュジェ的サッシ割りが、綺麗
今治市民会館
市民会館の詳細・・庇部、バルコニー部、壁面など細かなところまでデザインされてます
今治市庁舎
市庁舎を見る

竣工時のコンクリート打放しの姿 (現在は市民会館以外は”吹付け仕上げ”に改修されています・・) を作品集で見ていると・・素材とヴォリュームが産み出す緊張感のある静謐な姿がとても美しい。・・丹下健三45才の作品 (当時の担当スタッフは磯崎新との事) 。・・やはり1950年から70年までの丹下作品は、抜群に造形感覚が敏感で秀逸・・カッコイイ