「建築探訪175」-Gunma 4

1961年に建てられた、チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド設計の「群馬音楽センター」を探訪。折版構造による約60mもある大きなスパンを活かした、五角形デザインの北面ファサードを見る・・しかしながら到着したのは夕刻・・陽が落ちてきました。

翌朝、あらためて探訪・・気持ちの良い晴天。平面的には “扇形”・・切り取られた1枚のピザのような形をしています。(左側に見えているビルは高崎市役所。)
西面から建物の横顔を見ると・・この建物の大きな特徴である “鉄筋コンクリート折版構造” の様子がよく分かる。一辺が4mほどの折版11組による構成・・壁の構成がそのまま屋根の構成へとつながっていきます。(つなぎの梁が構造美的にはない方が明快に見えますが・・)
1階のロビーを見る。2階のホワイエへとつながる大階段のデザインがダイナミック・・ロビーとホワイエを彩る大きく鮮やかな・・壁画のデザインも建築家によるもの・・床の “テラゾー” もいいい感じです。
事前の下調べなしで、突然来たのですが・・運良く使用中のホール内部を見学ができました。外部の構成を活かした内部空間のありようが素敵・・2000人収容の音楽ホール。
コンクリート打放し“と “ベニヤ板” による天井のデザインを見る。コンクリート打放しの部分は折版屋根の下端が室内に顔を見せた状態・・・ベニヤ板の部分は折版屋根の下端と下端の間をふさぐような形・・・その隙間に仕込まれた間接照明が・・稲妻のような感じでホール全体を覆っていてカッコイイ・・音響的にも非常に優れたホール。

ブルーノ・タウトを日本に招聘した事でもよく知られる、地元出身の著名な実業家”井上房一郎”が創設した群馬交響楽団の拠点として、活用されてきた音楽ホールですが・・昨年駅前に”新しいホール“が完成した高崎市・・こちらのホールの使い方が気になるところ。

「建築探訪 163」- Saitama

埼玉会館

雨降るなか・・前川國男の設計による「埼玉会館(1966)を探訪・・浦和駅から歩いて5分程、様々な建物に囲われた繁華な都市的エリアに建っています。大小のホールや集会室事務室などからなる地下3階/地上7階・・この建築の主要なテーマはエスプラナード(東側道路から見る)

埼玉会館

東側道路から階段を上り、エスプラナードと言われる・・建物に囲われた遊歩道的広場に出る・・右手に集会室事務室などが入る高層棟、左手に大ホールの上部ヴォリューム。エスプラナードの床下は大ホールのホワイエ。

埼玉会館

大ホールのエントランスから南側道路へと繋がる、もう1箇所のエスプラナードを見る(ここのエスプラナードの床下は資料室やエントランスロビー)。左手の階段を上がると、先ほどのエスプラナードへと繋がっています・・

埼玉会館

エスプラナードの床下となる・・大ホールのホワイエを見る。建物ヴォリュームの大きな部分を地下に埋め込み・・建物の屋上にエスプラナードを創出・・囲われながらも開かれ、2方向の周辺道路からアクセスが容易な・・「都市の遊歩道広場」を街に・・生み出している建築。

埼玉会館打ち込みタイル

前川建築の代名詞である「打ち込みタイル」。埼玉会館の打ち込みタイルは、横目地が強調される目地形状とアールの大きな役物タイルが特徴的。打ち込みタイルも建設時期や作品の違いによって・・タイルの色艶、細かなディテールなど・・様々です。

埼玉会館

エスプラナードは、都市の遊歩道的広場・・それは単なる通り道ではなく、人々が吹き溜まる、都市の潤いとなる場所・・趣のある打込みタイルの外壁や精緻な床のデザインパターン・・意匠を凝らしたスツールや大階段が・・建築とその外部空間に、色を添えていました。

「建築探訪 159」- Okayama 6

津山文化センター

雪の降る1月に、岡山県津山市に・・「津山文化センター(1965)」を探訪。設計者である“川島甲士”さんの事は・・私達の年代でも、あまり詳しくは知らない建築家だが(ただ不勉強なだけかもしれませんが・・)、60年代には大変活躍された方のよう・・しかしとにかく、この建築がスゴイ!!。こんな建築がほかにあるだろうか・・という特徴的な外観。四角錐が逆さまに・・地面に突き刺さった様な形。

津山文化センター

「斗栱で全体が構成されているのが、この建築の最大の特徴!!!」。斗栱(ときょう)とは、日本の伝統建築に見られるアイコニックなエレメントで・・軒が支える荷重を柱に伝える「柱上にある組物」の事を言う。「斗(ます)」と「肘木(ひじき)」で構成されている斗栱を・・抽象化して、リデザイン・・構造は著名な構造設計家である”木村俊彦”さん。

津山文化センター

1段、2段、3段と、深い軒が三重に・・だんだんと前方にせり出していく、日本の伝統的な建築に見られる独特な形を・・コンクリートでリデザイン。こちらもこちらも、そうですが・・「60年代、コンクリート構造による日本建築再解釈の流れ」にある代表的な建築・・川島甲士さん40才の作品。

津山文化センター

“斗栱で構成された逆四角錐”の本館横にある・・四角いヴォリュームは「展示館」。

津山文化センター

展示館の外壁が凄い!!。外壁のウネウネとした模様は・・コンクリート表面を削って作られた”レリーフ”(これだけコンクリートを斫るのに、いったい何日くらい掛かるのだろうか!!)。デザインは・・緻密な線と混沌とした色彩の作品で知られる、著名グラフィックデザイナー”粟津潔”さん・・

津山文化センター

1960年代に提案/実現された理想高く力強い・・世界にも影響を与えた、日本生まれの数少ない建築運動・・黒川紀章、菊竹清訓、大高正人、槇文彦、丹下健三、磯崎新 等々が参加していた・・メタボリズムの運動にも参加されていた粟津さん・・35才の作品!!。

津山文化センター

3階の廻廊部分を見る。屋内だけでなく、屋外まで天井がラワンベニヤ・・サッシの向こう側の「斗栱」が近くで詳しく見られます・・斗栱はプレキャストコンクリート製。

津山文化センター

立体的に格子を張り巡らせた様なデザインの・・照明器具がgoodです。

津山文化センター

1階のホワイエを見る。床は黒モルタルブロック300角。タイルが張られた”アートな壁面”は、少し傾いています・・壁面のデザインは津山出身の陶芸家/白石齊さん(しらいしひとし)によるものです。この日の建物探訪ツアーの案内人が・・実は白石さん。

津山文化センター

鉄板を折り曲げたパーツによる”アートな壁面”・・こちらも白石齊さんの作品。

津山文化センター

フラットな屋根の一部をめくり上げた様なトップライト・・屋上へと至る階段を見る。

津山文化センター

屋上は雪、雪、雪・・前方の石垣は津山城(明治の廃城令で石垣以外は全てなくなってしまいましたが、森蘭丸の弟である森忠政が築いた大変立派なお城だったそうです)。

逓信省出身の建築家である川島甲士(かわしまこうし 1925-2009)さん・・他の代表作には「宮崎県婦人会館(’65)」「西都原考古資料館(’68)」「宮崎県営国民宿舎・青島(’70)」「松源寺(’69)」などなど・・があるそうです。

「建築探訪 144」- Gifu

みんなの森ぎふメディアコスモス

伊東豊雄さん設計の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を探訪。市役所、市民会館、裁判所、税務署、警察署などが集まる岐阜市の中心市街地に建つ、2015年7月にOPENした・・2階全フロアを占める図書館を核に、1階には市民のためのギャラリーやホール、スタジオや交流センター、コンビニやスタバなどなども入った・・とても大きな複合施設。80m×90mという方形を2層重ねた、シンプルな構成の建物。

みんなの森ぎふメディアコスモス
建物の周囲には・・並木道、せせらぎ、デッキテラス、広場なども設けられていて・・とてもいい感じ
みんなの森ぎふメディアコスモス
1階エントランスホールを見る。床面に描かれた、各スペースへの方向を示す「丸サイン」が、視認性が高い&分かり易く・・goodです
みんなの森ぎふメディアコスモス
建物の中核である、図書館スペースのある2階へ・・大きな傘が!!!
みんなの森ぎふメディアコスモス

全く壁のない、80×90mのワンルームの開架エリアに・・いくつもの「”グローブ”と呼ばれる巨大な傘」が、天井から吊られている、2階の眺めが圧巻です。そしてこの「うねっている木製天井」・・厚さ2cmの板で組み上げた「三角格子」を積層させたという天井!!!!! 凄いです!!!!!

みんなの森ぎふメディアコスモス
“傘”はポリエステル製の布で出来ていて直径は8~14m
みんなの森ぎふメディアコスモス
机中心のコーナー、ベンチ中心のコーナー・・性格やしつらえの異なる、それぞれのコーナーを覆う・・デザインの異なる”傘”が11個!!!
みんなの森ぎふメディアコスモス
起伏のある床がオモシロイ・・小さな子供のいる親子中心のコーナー
みんなの森ぎふメディアコスモス
こんなに大きな傘ですが・・柱など下部からの支えはなし。本当に、上から吊っているだけ
みんなの森ぎふメディアコスモス
籐で編まれたgoodな椅子が並んだ・・視聴覚コーナー
みんなの森ぎふメディアコスモス
2階カウンターのコーナー。外周に面した席も、たくさん用意されています。(下)1階、円形テラスに面したコーナーには、畳床もあり
みんなの森ぎふメディアコスモス

とにかく、広い建物の内外あちらこちら・・変化のある様々な居場所に、たくさんの席と活動の場を、用意されていたのが・・印象的でした・・閉館時間も21時(閉館日は月1回)という、市民利用(岐阜市民は40万程で倉敷市と同規模・・)を優先した開館。”みんなの森”というだけは、ありました。

「建築探訪 142」-Finland 27 / ALVAR AALTO 21

フィンランド文化の家

フィンランドでの”アアルト建築巡り”も、いよいよ最終・・天気は良好、休日の午前中につき (残念ながら内部は見られませんでしたが)・・歩いている人も車も、ほとんど無く・・外部をじっくりと建築鑑賞。アルヴァ・アアルトの設計により、ヘルシンキ市内に1958年に建てられた「文化の家」・・道路に面した「長い庇」の奥に、仕上げ/形態/機能の異なる「2棟の建物」が並置・・

フィンランド文化の家

多目的ホールとして使われている、左手の建物の出隅を見上げる。他のアアルト建築でもあまり見かけない「大きくアールを取った正方形レンガ」がとても印象的な建物・・写真では平面形はイメージし難いと思いますが・・アアルトの十八番である「アシンメトリーな扇形の有機形態」をしています。断面的にも面白く、起伏のある山のような屋根・・で覆われた建物であります。

フィンランド文化の家
アアルトの名前と工事年が書かれた「プレート」が張られています・・木製窓、レンガ壁、板金パーツ・・のバランスが、なんともいい感じです
フィンランド文化の家
建物の出隅部詳細を見る。今回の”アアルト建築巡り”でも何度も実感させられた事・・建物に触れる事が出来るくらいの至近距離で見る方が・・アアルト建築はとても楽しめるという事・・この素材感を感じられる距離でマテリアルを味わい・・再び全体形を思い返して、再び納得・・という感じが楽しい。
フィンランド文化の家
2棟の間にある、中庭からレンガ棟を見る。今回の”アアルト建築巡り”で幾つも幾つも見てきた・・ “アアルト窓“、”アアルト窓“、”アアルト窓“・・ この建物は、もともとは「フィンランド共産党本部」として建てられたそうです
フィンランド文化の家
中庭から、右手にある「オフィス棟」を見る。金属板と水平連続木製窓の繰り返し・・中庭に面した、2棟のつなぎ部分が管理部門のエントランス
フィンランド文化の家
有機的で不正形な「レンガ棟」とは、著しく対比的な・・キューブで水平連続窓な「オフィス棟」。本当に、別々の施設かと思える程に、ひとつの建物で、意匠も形態も素材も異なった2棟が中庭を挟んで建つ構成が・・ユニークな建築
フィンランド文化の家
オフィス棟を見上げる。銅板がいい感じで経年変化しています。やはり・・金属は金属らしく、そういう素材とディテールの扱い方が・・goodです
フィンランド文化の家
オフィス棟の木製窓を見る。北欧では、この様な規模のオフィス系建築でも木製窓・・断熱係数の優位性を考えれば、もちろん金属よりも木材ですが・・木材も板金材も「正面からビス納まり」だが、以外と気にならない・・
フィンランド文化の家

20件を越えた、今回のフィンランドでのアアルト建築探訪の最後・・”アアルト窓” にタッチしてお別れ。でも、まだまだ行きたかったけれど、行けなかった・・アアルト建築はいっぱい。またいつか “アアルト建築巡り” ・・にフィンランドを訪れたいものです。

「建築探訪 124」-Finland 15 / ALVAR AALTO 10

フィンランディアホール

アルヴァ・アアルト設計の「フィンランディア・ホール(1971)」を探訪・・南北に長~い建物、東側の道から建物外観を見る。敷地は東側から西側へと少し上がっている傾斜地・・東側からのアプローチは1階が車、2階のペデストリアンデッキから人・・この東側の道を南にまっすぐ戻ると・・「キアズマ」に突き当たる。階段が東側のエレヴェーションの控え目なアクセント。

フィンランディアホール
北側から建物外観を見る。上部に大きく突き出たヴォリューム部分が劇場。外壁は白大理石・・石の巾には大小変化をつけている・・近づいて見えるディテールの楽しみ
フィンランディアホール
西側の道路(マンネルヘイム通り)から建物外観を見る。こちら側にメインエントランスがあります。左手・・片流れ屋根の”変形台形型”のヴォリュームが1750席の劇場部分。建物全体も有機的な平面形をしていて・・一言では説明し難いカタチなのですが・・あえて言うならば「握り柄のある打製石斧」・・不規則で定まりのない流動的なカタチは・・”アアルト好み”
フィンランディアホール
西側外観を見る。ヴォリュームが分かれている部分の左手が劇場/室内楽ホール棟、右手が会議棟。長く伸びる水平庇が効いています
フィンランディアホール
西側外観の会議棟部分を見上げる。ひだひだ多面体のカーテンウォール(ガラス窓)がチャームポイント。外壁はよく見ると、1枚1枚の石に微妙に”むくり”が付いている・・これはアアルトの意図したデザインではなく・・素材の特性による経年変化と思えます。(古い作品集に見られる外観写真では、今とは逆に白大理石は反っている・・オリジナルの外壁は凍害による反りや傷みなどの問題から、張替えられ・・今度は特殊加工を施し・・しかし逆に”むくり”・・)
フィンランディアホール
西側エントランスキャノピーを支える柱。ちょっとしたデザインディテールが洒落てます・・こういった小さな部分の工夫を見ていると・・建築家の “力の入れ具合” が良く見えてきます
フィンランディアホール
西側のメインエントランスを見る。低く抑えて、広く招き入れる感じです
フィンランディアホール
西側からエントランスロビーに入りました。ぐっと抑えています、壁のアアルトタイルが効いています
フィンランディアホール
天井高さを抑えた・・エントランス空間から、ホワイエのあるメインフロアへと上がってゆく・・流動性を感じるインテリアとアプローチ。床は大理石、壁は大理石とアアルトタイル
フィンランディアホール
エントランスロビーの東側に面する部分。家具も照明も・・もちろんアアルトデザイン。突き当りの壁・・アクセントになっているタイルは、もちろんアアルトタイル
フィンランディアホール
ロビーからお手洗いに入る部分。ヴォリュームのあるアアルトタイル壁で衝立
トューリョ湾
建物の北端には「トューリョ湾」が近接・・
トューリョ湾
「トューリョ湾」越しに建物を望む・・中央の白い建物がフィンランディア・ホール。ヘルシンキはフィンランドの首都であり、同国最大の都市(都市域の人口で100万ちょい)ですが・・上写真の様に高い建物はあまり無く、湾と緑の中に都市が広がった様な・・本当に程良い感じの都市。(ただ冬は寒いし、長いんだろうけど・・訪れたこの季節は最高!!でした)
「フィンランディア・ホール」はアアルトの手による 「ヘルシンキ都市センター計画 (上図)として出来た最初(で最後)の建物。”計画”によるとトューリョ湾の水辺にはフィンランディア・ホールを基点として幾つもの公共建築(会議場、オペラハウス、美術館、図書館等)が建ち並ぶ予定でした・・
水辺だけでなく「カンピ地区のオフィスビル」までも、アアルトは考えて・・
雁行する矩形ヴォリュームを並べた建物が「カンピ地区のオフィスビル」、写真の手前がヘルシンキ中央駅・・

水面に映える公共建築群の姿が、対岸を走るヘルシンキ中央駅へと向かっていく列車から綺麗に一望される計画でした・・ また駅とフィンランディア・ホールの間には多層型の巨大な扇状広場(広場の下は駐車場)を設ける計画でもありました・・

手前が扇状広場。左下にフィンランディア・ホール
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「建築探訪 107」-Sweden 10 / Stockholm

ストックホルム市庁舎

北欧ナショナルロマンチシズムを代表する作品。ラグナール・エストベリの設計による「ストックホルム市庁舎」(1923) 。
(上写真) 湖越しに東側外観を見る。100mを超える大きな塔が聳え立つ外観が印象的な市庁舎。どこかの市庁舎と雰囲気が似てる ?

ストックホルム市庁舎
中庭へアプローチ・・正面アーチの向こうには湖に面した広場。右手の階段を上がると・・”青の間” へと繋がるエントランスホール
ストックホルム市庁舎
湖に面した広場へと続くアーケード。力強いアーチと木製格天井
ストックホルム市庁舎
(左) 文字で覆い尽くしたデザインの扉 (塔入口) ・・ goodです
(右) 塔の頂部へと至る、長い長い階段の・・踊り場

建物内の見学は時間が決まっているので・・それまでやや時間があったので、塔を登ってみました。しかし、これが非常に大変で、やや後悔 ・・なんと塔の頂上までは階段です 。EVは在るそうなんですが、この日は動いていないそうで・・

ストックホルム市庁舎
塔頂部より西側を望む。写真手前が中庭、その向こうが ”青の間”、左手に湖際広場
ストックホルム市庁舎
ノーベル賞の祝賀晩餐会の舞台としても有名な「青の間」。ストックホルム観光の重要スポットという事もあり、見学者は多い・・見学は時間制で、専門のスタッフ1人が20人程度をまとめて案内するかたちになっています。「青の間」なのに青くない! ・・その理由は、もともとはレンガの上に仕上げとして “青い漆喰” を塗る予定だったからだそうです・・
ストックホルム市庁舎
石やレンガや木材といった昔からある材料を多用し、郷土性を強く意識した建築表現

この市庁舎と同じ頃に完成したこちらの建築と比べると・・ 同時代の著名建築家による最新の建築でも、これだけ作品傾向には巾があります・・ 1920~30年頃というのは、建築史の教科書的には「モダニズム」という新しい建築様式が完成へと至る大きな転換期ですが・・ その流れは決して単調なものではなく・・特に、近代化という中央ヨーロッパの大きな流れからは周辺であったからこそ・・自国の文化や風土に根差した表現にこだわった北欧だからこそ・・「ナショナルロマンチシズム」という建築様式は北欧で大きく花開いた様に思われます。

トックホルムウォーターフロント
市庁舎のすぐ側に出来たスウェーデンの現代建築・・「ストックホルム・ウォーターフロント」。ホテル、オフイス、会議場、劇場などが入った複合施設。設計は White Arkitekter Ab、2011年竣工の作品
トックホルムウォーターフロント

金属製ルーバー曲面の重なりが綺麗です・・見る角度によって表情を変えていきます。湖や湾に囲まれた水資源豊かな都市であるストックホルムの周辺環境を意識したデザインなんでしょうか・・ 隣国フィンランドの建築家、巨匠アルヴァ・アアルトの建築的主要モチーフである “うねる様な形” の現代的な解釈の様でもあります。

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「建築探訪 103」-France 13 / Paris

ポンピドゥーセンター

いまや見慣れたかも知れぬ、観光地としても多くの人が訪れる、パリの有名な総合文化施設・・「ポンピドゥー・センター」(1977) 。建築家は・・レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースの2人組。いまや共に超大御所の建築家となった2人も、1971年のコンペ当時にはピアノ34才、ロジャース38才。(上写真) 南側外観の足下を見る。柱から持ちだされたクラフト感ある独特な形状をした・・鋳鉄製ゲルバレット梁の長さは8m。

この建築は・・何と言っても、この外観のインパクトが凄い・・建物を支える構造である鉄骨柱梁が剥き出しなだけでなく、電気・水道・空調などの設備配管まで剥き出しになっている建物・・・普通は内側にあって見えない(見せない)部分が、全部表に出てきている(人間で例えるならば、内蔵や骨格が全部見えている状態?)・・  無論その外観に反感を抱く人も少なからず・・

ポンピドゥー・センターのすぐ横にあった教会に入ってみました。・・この様な昔ながらの建物がたくさんあるパリの街並み・・ そこに突然現れた “いつまでも工事中” の様にさえ見えるポンピドゥー・・・
ポンピドゥーセンター
西側の広場とは反対側、通りに面した東面ファサードを見上げる。設備のダクトやパイプだらけの外観・・しかも、わざわざ目立つ色でその存在感を強調し・・古い街並みを挑発さえしているかの様な感じ・・
ポンピドゥーセンター
建物の東南角を見上げる。40年近く前にして、この前衛的外観 !!・・・パリ市民からすれば、竣工当時は工場にしか見えなっかただろう・・ よくぞこの計画案を選択したものだ・・審査会の委員長がジャン・プルーヴェだったという事も大きかったのだろうか・・
ポンピドゥーセンター
最上階まで続く “ガラスチューブエスカレーター” と、巨大な “展覧会のお知らせ” が眼を引く・・広場側の西面外観を見る (こちらの建物となんとなく雰囲気が似ています) 。広場の床は建物側に向かって傾斜が取られており、自然と視線や足が建物へと向かう・・ 6階建て、巾166m、奥行き60m・・サッカー場が縦に積んで6面も取れる。

“ハイテック” と呼ばれた・・「レイト・モダン建築」 はどうしても「過度」に見えてしまう・・マテリアルやテクノロジーを装飾的にさえ見える様に強調したその姿は・・ やはり”SF的” なんだけれども、その”SF的orマンガ的”な感じが楽観的でgoodですよね。その源流とも言えるアーキグラムのイラストの中に見られる様な・・硬直したモダニズムが描く都市とは違う、終わる事なく無限に自由に変転伸展していく都市のイメージは”まだまだ”実現は難しいだろうがオモシロイ・・  ポンピドゥーもアネックスなどを作らずに、パリの街並みの中でその本体をどんどん増殖伸展させていってはどうなんだろうか・・

ポンピドゥーセンター
建物内部を見る。建物の短手を横断するスティールトラスのスパンは48m。彩色された梁や設備配管もインテリアとして映えている?  ・・ 現代美術館、研究図書館、デザインセンターなどの機能がつまった巨大な建物の内部空間は柱が1本もない無柱空間、どんなイベントにも対応できる可変性の高いフレキシブル空間

「建築探訪 101」-Sweden 6 / Stockholm

ペーター・セルシングの設計による「ストックホルム文化会館」(1974) 。ストックホルムの中心部に位置する・・図書館、シアター、スタジオ、ギャラリー、カフェなどが集まる複合文化施設。ダイナミックな三角形のフロアパターンの広場。

交通の便も良い市内の中心に在りながら・・広々していて、市民がゆるりと過ごしている公共の施設・・どこか「せんだいメディアテーク」と似ている感じがします。
近年の北欧図書館建築は面白い建物が多い・・ここは建物は古いが、内装にはそんな雰囲気も少しあったり・・カラフルで、楽しげで、いろいろな居場所や家具が設えられているのが・・共通する特徴。
真っ直ぐじゃない本棚・・サインがgoodです。
エスカレーターホールに置かれたアート。幾つかあるギャラリーも無料で楽しめたり、ストリートチェスをする人が集まっているホールがあったり、ダンススタジオがあったり、屋上はビアガーデン的になっていたり・・何でも在りな施設でした。
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「建築探訪 90」-Tokyo/ 上野 4

東京文化会館

前川國男の設計による「東京文化会館」(1961) を探訪。
(上写真) 東北隅より外観を見る。とにかく庇が大きい !!! ・・・庇下まで7m。庇の厚みは4.5m。庇出は5m・・ヒューマンスケールを超えている様にも思える大きさ・・庇の上には集会室や会議室もあるのだが・・部屋がある事も大ホールや小ホールの大きなボリュームも、大きな庇の存在によって全く気付かないくらい・・角は大きくアールを取り、大きくせり出した・・人々を迎え入れる “大庇” の建築。

東京文化会館
東面の関係者用入口まわりを見る。右上に小ホールの屋根がちらりと見えています・・「日本建築学会賞」「DOCOMOMO 100選」。この前年に竣工している「京都会館」とも共通するところも多い感じですが・・こちらの方が力強くてドラマチック。前川国男のエネルギーを感じます・・前川國男の代表作のひとつ。
東京文化会館

建物自体は竣工から50年以上が経ち・・普通なら痛み等が気になる時期だが (それどころか管理側である施設や行政によっては取壊しや理不尽な改修がなされても不思議ではない) ・・・状態はきわめて良好な感じ。メンテや改修が、建物を尊重して行われているからなのだろうか・・(上写真) 東面の竪繁のルーバーを見る。ルーバーはプレキャストコンクリート製。

東京文化会館
エントランスロビーより入口方向を見る。天井の 星が散りばめられた様な 照明器具の・・ランダムな配置がgoodです
東京文化会館
1階エントランスロビーから2階小ホールへと上がって行くスロープを見る。手摺りのヴォリュームな感じがgood
新建築 1961年6月号
出来たばかりの東京文化会館が表紙となっている「新建築 1961年6月号」

上空から見ると、地上からでは大庇の存在でよく見えない・・大庇上部の様子がよく分かる。右側の六角形部が大ホール、左側の勾配屋根部が小ホール。写真の右下に写っているのが コルビュジェの「国立西洋美術館」。左上に写っているのが吉田五十八の「日本芸術院会館」、その左横に上野駅。