1961年に建てられた、チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド設計の「群馬音楽センター」を探訪。折版構造による約60mもある大きなスパンを活かした、五角形デザインの北面ファサードを見る・・しかしながら到着したのは夕刻・・陽が落ちてきました。
「建築探訪 163」- Saitama
雨降るなか・・前川國男の設計による「埼玉会館(1966)」を探訪・・浦和駅から歩いて5分程、様々な建物に囲われた繁華な都市的エリアに建っています。大小のホールや集会室事務室などからなる地下3階/地上7階・・この建築の主要なテーマはエスプラナード。(東側道路から見る)
東側道路から階段を上り、エスプラナードと言われる・・建物に囲われた遊歩道的広場に出る・・右手に集会室事務室などが入る高層棟、左手に大ホールの上部ヴォリューム。エスプラナードの床下は大ホールのホワイエ。
大ホールのエントランスから南側道路へと繋がる、もう1箇所のエスプラナードを見る(ここのエスプラナードの床下は資料室やエントランスロビー)。左手の階段を上がると、先ほどのエスプラナードへと繋がっています・・
エスプラナードの床下となる・・大ホールのホワイエを見る。建物ヴォリュームの大きな部分を地下に埋め込み・・建物の屋上にエスプラナードを創出・・囲われながらも開かれ、2方向の周辺道路からアクセスが容易な・・「都市の遊歩道広場」を街に・・生み出している建築。
前川建築の代名詞である「打ち込みタイル」。埼玉会館の打ち込みタイルは、横目地が強調される目地形状とアールの大きな役物タイルが特徴的。打ち込みタイルも建設時期や作品の違いによって・・タイルの色艶、細かなディテールなど・・様々です。
エスプラナードは、都市の遊歩道的広場・・それは単なる通り道ではなく、人々が吹き溜まる、都市の潤いとなる場所・・趣のある打込みタイルの外壁や精緻な床のデザインパターン・・意匠を凝らしたスツールや大階段が・・建築とその外部空間に、色を添えていました。
「建築探訪 159」- Okayama 6
雪の降る1月に、岡山県津山市に・・「津山文化センター(1965)」を探訪。設計者である“川島甲士”さんの事は・・私達の年代でも、あまり詳しくは知らない建築家だが(ただ不勉強なだけかもしれませんが・・)、60年代には大変活躍された方のよう・・しかしとにかく、この建築がスゴイ!!。こんな建築がほかにあるだろうか・・という特徴的な外観。四角錐が逆さまに・・地面に突き刺さった様な形。
「斗栱で全体が構成されているのが、この建築の最大の特徴!!!」。斗栱(ときょう)とは、日本の伝統建築に見られるアイコニックなエレメントで・・軒が支える荷重を柱に伝える「柱上にある組物」の事を言う。「斗(ます)」と「肘木(ひじき)」で構成されている斗栱を・・抽象化して、リデザイン・・構造は著名な構造設計家である”木村俊彦”さん。
1段、2段、3段と、深い軒が三重に・・だんだんと前方にせり出していく、日本の伝統的な建築に見られる独特な形を・・コンクリートでリデザイン。こちらも、こちらも、そうですが・・「60年代、コンクリート構造による日本建築再解釈の流れ」にある代表的な建築・・川島甲士さん40才の作品。
“斗栱で構成された逆四角錐”の本館横にある・・四角いヴォリュームは「展示館」。
展示館の外壁が凄い!!。外壁のウネウネとした模様は・・コンクリート表面を削って作られた”レリーフ”(これだけコンクリートを斫るのに、いったい何日くらい掛かるのだろうか!!)。デザインは・・緻密な線と混沌とした色彩の作品で知られる、著名グラフィックデザイナー”粟津潔”さん・・
1960年代に提案/実現された理想高く力強い・・世界にも影響を与えた、日本生まれの数少ない建築運動・・黒川紀章、菊竹清訓、大高正人、槇文彦、丹下健三、磯崎新 等々が参加していた・・メタボリズムの運動にも参加されていた粟津さん・・35才の作品!!。
3階の廻廊部分を見る。屋内だけでなく、屋外まで天井がラワンベニヤ・・サッシの向こう側の「斗栱」が近くで詳しく見られます・・斗栱はプレキャストコンクリート製。
立体的に格子を張り巡らせた様なデザインの・・照明器具がgoodです。
1階のホワイエを見る。床は黒モルタルブロック300角。タイルが張られた”アートな壁面”は、少し傾いています・・壁面のデザインは津山出身の陶芸家/白石齊さん(しらいしひとし)によるものです。この日の建物探訪ツアーの案内人が・・実は白石さん。
鉄板を折り曲げたパーツによる”アートな壁面”・・こちらも白石齊さんの作品。
フラットな屋根の一部をめくり上げた様なトップライト・・屋上へと至る階段を見る。
屋上は雪、雪、雪・・前方の石垣は津山城(明治の廃城令で石垣以外は全てなくなってしまいましたが、森蘭丸の弟である森忠政が築いた大変立派なお城だったそうです)。
逓信省出身の建築家である川島甲士(かわしまこうし 1925-2009)さん・・他の代表作には「宮崎県婦人会館(’65)」「西都原考古資料館(’68)」「宮崎県営国民宿舎・青島(’70)」「松源寺(’69)」などなど・・があるそうです。
「建築探訪 144」- Gifu
伊東豊雄さん設計の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を探訪。市役所、市民会館、裁判所、税務署、警察署などが集まる岐阜市の中心市街地に建つ、2015年7月にOPENした・・2階全フロアを占める図書館を核に、1階には市民のためのギャラリーやホール、スタジオや交流センター、コンビニやスタバなどなども入った・・とても大きな複合施設。80m×90mという方形を2層重ねた、シンプルな構成の建物。
全く壁のない、80×90mのワンルームの開架エリアに・・いくつもの「”グローブ”と呼ばれる巨大な傘」が、天井から吊られている、2階の眺めが圧巻です。そしてこの「うねっている木製天井」・・厚さ2cmの板で組み上げた「三角格子」を積層させたという天井!!!!! 凄いです!!!!!
とにかく、広い建物の内外あちらこちら・・変化のある様々な居場所に、たくさんの席と活動の場を、用意されていたのが・・印象的でした・・閉館時間も21時(閉館日は月1回)という、市民利用(岐阜市民は40万程で倉敷市と同規模・・)を優先した開館。”みんなの森”というだけは、ありました。
「建築探訪 142」-Finland 27 / ALVAR AALTO 21
フィンランドでの”アアルト建築巡り”も、いよいよ最終・・天気は良好、休日の午前中につき (残念ながら内部は見られませんでしたが)・・歩いている人も車も、ほとんど無く・・外部をじっくりと建築鑑賞。アルヴァ・アアルトの設計により、ヘルシンキ市内に1958年に建てられた「文化の家」・・道路に面した「長い庇」の奥に、仕上げ/形態/機能の異なる「2棟の建物」が並置・・
多目的ホールとして使われている、左手の建物の出隅を見上げる。他のアアルト建築でもあまり見かけない「大きくアールを取った正方形レンガ」がとても印象的な建物・・写真では平面形はイメージし難いと思いますが・・アアルトの十八番である「アシンメトリーな扇形の有機形態」をしています。断面的にも面白く、起伏のある山のような屋根・・で覆われた建物であります。
20件を越えた、今回のフィンランドでのアアルト建築探訪の最後・・”アアルト窓” にタッチしてお別れ。でも、まだまだ行きたかったけれど、行けなかった・・アアルト建築はいっぱい。またいつか “アアルト建築巡り” ・・にフィンランドを訪れたいものです。
「建築探訪 124」-Finland 15 / ALVAR AALTO 10
アルヴァ・アアルト設計の「フィンランディア・ホール(1971)」を探訪・・南北に長~い建物、東側の道から建物外観を見る。敷地は東側から西側へと少し上がっている傾斜地・・東側からのアプローチは1階が車、2階のペデストリアンデッキから人・・この東側の道を南にまっすぐ戻ると・・「キアズマ」に突き当たる。階段が東側のエレヴェーションの控え目なアクセント。
水面に映える公共建築群の姿が、対岸を走るヘルシンキ中央駅へと向かっていく列車から綺麗に一望される計画でした・・ また駅とフィンランディア・ホールの間には多層型の巨大な扇状広場(広場の下は駐車場)を設ける計画でもありました・・
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北欧ナショナルロマンチシズムを代表する作品。ラグナール・エストベリの設計による「ストックホルム市庁舎」(1923) 。
(上写真) 湖越しに東側外観を見る。100mを超える大きな塔が聳え立つ外観が印象的な市庁舎。どこかの市庁舎と雰囲気が似てる ?
建物内の見学は時間が決まっているので・・それまでやや時間があったので、塔を登ってみました。しかし、これが非常に大変で、やや後悔 ・・なんと塔の頂上までは階段です 。EVは在るそうなんですが、この日は動いていないそうで・・
この市庁舎と同じ頃に完成したこちらの建築と比べると・・ 同時代の著名建築家による最新の建築でも、これだけ作品傾向には巾があります・・ 1920~30年頃というのは、建築史の教科書的には「モダニズム」という新しい建築様式が完成へと至る大きな転換期ですが・・ その流れは決して単調なものではなく・・特に、近代化という中央ヨーロッパの大きな流れからは周辺であったからこそ・・自国の文化や風土に根差した表現にこだわった北欧だからこそ・・「ナショナルロマンチシズム」という建築様式は北欧で大きく花開いた様に思われます。
金属製ルーバー曲面の重なりが綺麗です・・見る角度によって表情を変えていきます。湖や湾に囲まれた水資源豊かな都市であるストックホルムの周辺環境を意識したデザインなんでしょうか・・ 隣国フィンランドの建築家、巨匠アルヴァ・アアルトの建築的主要モチーフである “うねる様な形” の現代的な解釈の様でもあります。
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いまや見慣れたかも知れぬ、観光地としても多くの人が訪れる、パリの有名な総合文化施設・・「ポンピドゥー・センター」(1977) 。建築家は・・レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースの2人組。いまや共に超大御所の建築家となった2人も、1971年のコンペ当時にはピアノ34才、ロジャース38才。(上写真) 南側外観の足下を見る。柱から持ちだされたクラフト感ある独特な形状をした・・鋳鉄製ゲルバレット梁の長さは8m。
この建築は・・何と言っても、この外観のインパクトが凄い・・建物を支える構造である鉄骨柱梁が剥き出しなだけでなく、電気・水道・空調などの設備配管まで剥き出しになっている建物・・・普通は内側にあって見えない(見せない)部分が、全部表に出てきている(人間で例えるならば、内蔵や骨格が全部見えている状態?)・・ 無論その外観に反感を抱く人も少なからず・・
“ハイテック” と呼ばれた・・「レイト・モダン建築」 はどうしても「過度」に見えてしまう・・マテリアルやテクノロジーを装飾的にさえ見える様に強調したその姿は・・ やはり”SF的” なんだけれども、その”SF的orマンガ的”な感じが楽観的でgoodですよね。その源流とも言えるアーキグラムのイラストの中に見られる様な・・硬直したモダニズムが描く都市とは違う、終わる事なく無限に自由に変転伸展していく都市のイメージは”まだまだ”実現は難しいだろうがオモシロイ・・ ポンピドゥーもアネックスなどを作らずに、パリの街並みの中でその本体をどんどん増殖伸展させていってはどうなんだろうか・・
「建築探訪 101」-Sweden 6 / Stockholm
ペーター・セルシングの設計による「ストックホルム文化会館」(1974) 。ストックホルムの中心部に位置する・・図書館、シアター、スタジオ、ギャラリー、カフェなどが集まる複合文化施設。ダイナミックな三角形のフロアパターンの広場。
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前川國男の設計による「東京文化会館」(1961) を探訪。
(上写真) 東北隅より外観を見る。とにかく庇が大きい !!! ・・・庇下まで7m。庇の厚みは4.5m。庇出は5m・・ヒューマンスケールを超えている様にも思える大きさ・・庇の上には集会室や会議室もあるのだが・・部屋がある事も大ホールや小ホールの大きなボリュームも、大きな庇の存在によって全く気付かないくらい・・角は大きくアールを取り、大きくせり出した・・人々を迎え入れる “大庇” の建築。
建物自体は竣工から50年以上が経ち・・普通なら痛み等が気になる時期だが (それどころか管理側である施設や行政によっては取壊しや理不尽な改修がなされても不思議ではない) ・・・状態はきわめて良好な感じ。メンテや改修が、建物を尊重して行われているからなのだろうか・・(上写真) 東面の竪繁のルーバーを見る。ルーバーはプレキャストコンクリート製。
上空から見ると、地上からでは大庇の存在でよく見えない・・大庇上部の様子がよく分かる。右側の六角形部が大ホール、左側の勾配屋根部が小ホール。写真の右下に写っているのが コルビュジェの「国立西洋美術館」。左上に写っているのが吉田五十八の「日本芸術院会館」、その左横に上野駅。