いまから25年ほど前「クリエイティブTOWN岡山」という事業が、岡山県で行われました・・当時の岡山県知事が、熊本県で行われていた”熊本アートポリス”という街づくりの・・建築的文化性に感銘を受けられ、岡田新一さんにコミッショナーを依頼するところからから始まり・・その事業の第一号として完成したのが・・この「岡山県営住宅中庄団地」。
(上写真)第3期の中庭より見る。デコンストラクション風?・・”90年代的デザイン”な橋がチャームポイント
建築景観や建築文化の向上を目的とした事業「クリエイティブTOWN岡山」・・そのスタートとなる、第1期部分(1992)の設計者に指名されたのが・・丹田悦雄さん。
道路と河に沿って50m近く・・1期から3期まで、何棟もの住棟が曲折しながら連結していく全体の配置・・その全体に渡って「ペデストリアンデッキ」が・・棟間を縫う様に貫ぬいている。ややラビリンス的な構成が特徴・・全体性がハッキリしていて、誰でもその構成が一目瞭然なステレオタイプなマンションとは、一線を画したプラン。その”一見さんお断り的”な雰囲気に距離感を感じる人も多そうですが・・
穴の開いた鮮やかな彩色衝立壁と、コンクリート打放しの組み合わせが80年代的(早川邦彦の80年代後半の集合住宅”ラビリンス”や”アトリウム”を思い出さずにはいられません・・)。パラパラと多様なエレメントが混在&連節しているデザインも80年代的な空気感・・でgoodです。
各戸が自由に植栽を並べられる、余裕のある通路幅を確保・・
パラペットに架かる”丸い屋根”がgoodです・・
各戸の玄関先にペデストリアンデッキに向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・のがチャームポイント。
中空に架かる橋を渡ると・・1階に降りる事なく、そのままデザインの全く違う住棟へと移動が出来ます・・いくつもの「スリット」「ブリッジ」「ペデストリアンデッキ」を抜けて1期から2期へと巡る・・
各戸が向かい合わせになっている屋外通路・・1階に見えますが、これは3階・・中廊下型になっているのですが、屋根がないので、”開放廊下”な感じ。こちらの住棟・・第2期部分(1996)の設計者は阿部勤さん・・
こちらの住棟も同様・・各戸の玄関先、通路側に向かって「開いた窓」と「縁側的スペース」が設えられている・・
地上の住棟間中央部を、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通する・・上空には、3階レベルの住棟間通行に使用されるブリッジが架かる。各戸の玄関先にはコンクリートの衝立壁、植栽やパーゴラなどが設えるられています。
2期から3期へと渡るブリッジ・・このブリッジは道路上を跨いでいます。3期の中央部には、この地域では珍しい・・高層棟が聳え立つ。
こちらの住棟・・第3期部分(1998)の設計者は遠藤剛生さん・・一目で遠藤さんの集合住宅だ!!という感じ。設計者である遠藤さんの地元である関西では、この様なスタイルの「遠藤さん集合住宅」は・・あちらこちらで見かけます。
こちらの3期も2期と同様・・住棟間地上部には、遊歩道のような中庭のようなスペースが貫通。1期から3期に渡る広い敷地、デザイナーが異なる住棟間を・・2つの全く異なるルートで探訪してみました・・
1つ目は、地上部の敷地全体を貫通する遊歩道のような中庭スペースから。
2つ目は、全ての住棟を繋ぐ空中迷路のようなペデストリアンデッキから。
実際に住んでいる人達と、僅かな時間だけ滞在する来訪者とでは・・感想を述べる視点の深度が異なるとは思いますが・・「愉しい集合住宅」でした。
探訪の最後に・・”3期の高層棟”から、全体を見渡して・・みました。手前に、3期(南側)から2期の住棟へと渡るブリッジが見えます。上空からだと・・2期の切妻家型の「うねる様な配置」と「3階開放廊下」の感じが・・よく見えます。その奥には「1期」が見えます。
「岡山県営住宅中庄団地」は・・通常の県営住宅とは全く違う作り・・他にはない個性的な住環境。判子で押した様な・・どこかで見た様な、どこにでもある住環境ではなく・・ここにしかない住環境が愉しい・・”建築の経済効率的な側面”からだけではない、建築への評価/チャレンジ・・「クリエイティブTOWN岡山」のような意欲のある街づくりの事例が・・今後またいつか・・継続していく事を期待したいです。(正面の奥に見えている一群は「倉敷市営中庄団地」。)