「建築探訪 157」- Tottori

東光園
東側庭園よりダイナミックな外観を見る

1964年竣工・・菊竹清訓さんの「東光園」を探訪。この建築・・なんと菊竹さん36才での作品!!!。取り壊されて・・もう無くなってしまった名作「出雲大社庁の舎」はその前年・・なんとか保存で存命となった「都城市民会館」がこの2年後・・(どれも菊竹さんが30代で手掛けられた!!)・・60年代までの菊竹建築は本当にアグレッシブ!!!!

東光園
アプローチとなる”建物正面”、西側外観を見る

鳥取県の有名な温泉地”皆生”に建つ、7階建て鉄筋コンクリート造の建物。この建物の大きな特徴・・大きく張り出した上部2層(5階と6階)が・・浮いている(上部から吊られている)構造・・

東光園
西側外観を見上げる

この浮いている上部を支えているのが「大柱」。大小ある4本の柱を組み合わせて「大柱」を作り・・上部の大きな荷重を支えているカタチは・・日本の伝統的な木造建築のいくつか・・「厳島神社の大鳥居」や「出雲大社の心御柱」を、連想させますが・・構造が手段ではなく、その見せ方そのものが目的になっているかの様な・・表現的構造への執念を感じざるを得ない・・

東光園
1階ラウンジを見る

貫梁と添柱によって組まれた・・コンクリート打放しの「大柱」は、室内でも存在感を放っていました・・ラウンジチェアーは剣持勇かな・・

東光園
1階ラウンジを見下ろす

庭のデザインは流政之・・竣工時に並んでいたラウンジチェアーは「ヤコブセンのスワンチェア」でしたが・・

東光園

館内には「菊竹建築の展示コーナー」があり・・東光園の石膏模型も展示されていました・・上部2層の「浮き感」が・・その真下である4階が「吹放しのテラス」になっている事で・・さらに強調・・(HPシェル曲面の)帽子のような屋根を含めた上部3層はまさに”空に浮かぶ天守閣”・・伝統的なものが持つ豊かさであったり、構造表現的なものの過剰さであったり・・並の近代建築とはひと味もふた味も違う・・菊竹さんの近代建築・・

東光園
階段室を外部より見る

階段室は壁面が全てガラス張り・・”床のみが宙に浮いている感じ”・・キャンチレバーな持たせ方で、床板は小口を見せて・・さらに踊り場部分では、外壁面から床を飛び出させて魅せる事で・・”浮いている感”を強調。

東光園階段
階段室を内部より見る

縦繁なサッシ割りのガラス壁面・・手摺り子はナイロンロープ張り、手すり支柱がgood。しかしながら・・この階段室に居ると、ちょっと”酔う”様な感じが・・少し揺れているかな?・・

東光園階段室
階段室を内部より見る

柱面に直接刻み込まれた階数表示が・・goodです。型枠板材のテクスチャーが現れたコンクリート打ち放し面・・goodです。

東光園
大柱を近接して見る

クラックが・・複数、あちらこちらに見えます・・・けっこう大きい!!!。日本近代建築の金字塔である丹下健三の「国立代々木競技場(1964)」と同年に完成した東光園・・この時代「世界のTANGE」として絶頂に達していた丹下さんに喰いさがる事の出来た・・

東光園
最上階の7階部分を外部より見る

最大の若手・・「メタボリズム建築の旗手」菊竹清訓による名作・・東光園。耐震改修も含め、早めの適切なメンテナンスが必要かと・・「出雲大社庁の舎」が取り壊されてしまったいま・・菊竹建築のもうひとつの金字塔「東光園」・・存命の瀬戸際・・なのではないでしょうか!!!

「建築探訪 48」 -Tottori/倉吉

倉吉市庁舎

丹下健三の設計による「倉吉市庁舎」(1957) を訪ねました。
(上写真) 長手側の南外観を見る。日本の伝統的な木造建築に見られる柱梁空間を・・ コンクリートという近代技術でどう表現できるか・・ 規則正しい柱梁の構成、張り出した庇、低層部をぐるりと廻る高欄、コンクリートブロックのスクリーンによる透け・・ コンクリート造における “日本の造形” への試み。 耐震補強の鉄骨フレームがいっぱいで痛々しい。

倉吉市庁舎
短手側の東外観を見る。1段高い屋根の部分は議場。左側にはメインエントランスへと続くアプローチの庇が張り出しています。水平性を強調するかたちで・・ 建物をぐるりと廻る高欄と庇の存在感が効いています
倉吉市庁舎
エントランスホールを見る。スパンの長い小梁が細かく並んだ天井は・・ 同じく丹下健三設計による「旧倉敷市庁舎」(1960) にも共通
倉吉市庁舎
(左)執務空間は中庭を中心とした構成。中庭部も耐震補強の鉄骨フレームでいっぱい・・
(右) 中庭に面した階段のある吹抜け部には水平にも補強が入っていて・・ 鉄骨フレームだらけになっていました・・ 昔の作品集で見る様な空間の感じとは違っているので、残念

丹下健三の庁舎建築は1950年代に集中して手掛けられています・・  1954年の「清水市庁舎」、1957年の「旧東京都庁舎」「倉吉市庁舎」、1958年の「香川県庁舎」 「今治市庁舎」、1960年の「旧倉敷市庁舎」・・ 6つの庁舎建築のうち3つめとなったのがこの倉吉市庁舎・・ この建築で丹下健三は3度目の日本建築学会作品賞を受賞。