「 Casa BRUTUS 」- ケンチクを学ぶ旅。

いま発売中の「Casa BRUTUS」2025年7月号に・・少しだけ顔出ししております。

嵐の櫻井翔さんが・・日本全国の名建築に自ら足を運びレポートをする建築探訪企画。Casa BRUTUSにて14年以上に渡って続く長期連載「ケンチクを学ぶ旅。」

今回は倉敷にて・・薬師寺主計の大原美術館本館有隣荘、浦辺鎮太郎の倉敷国際ホテル大原美術館分館、児島虎次郎記念館などなどを探訪・・

櫻井さんに・・倉敷美観地区の建築について、浦辺建築と大原家の関係などについて・・ご説明をさせて頂きました。とても感じの良い方で、熱心に話を聞かれる様子が印象的でした。

「倉敷あるく」

2025年3月1日と2日に開催した、倉敷市まちづくり推進課とのイベント「倉敷あるく」・・2日間のワークショップに80名(予定定員の倍)近い・・多くの参加を頂き、ありがとうございました。

(上写真) 打合せを重ねた歴史資料整備室での様子。左側が整備室の山本先生と畑先生。右側がKURASiXの仁科さんと山口さん・・毎回、聞きたい事を目一杯両先生に投げかける状態で・・両先生には本当に色々と感謝感謝ばかりです。
(上写真) 1日目は「外から見る倉敷村」・・宇喜多堤と浜村の歴史から読み解く「座学90分+街歩き90分」のイベント。<会場> 三井アウトレット内 くらしきサークル

(上写真) 2日目は「中から見る倉敷村」・・水夫(かこ)屋敷から読み解く「座学90分+街歩き90分」のイベント。<会場> 美観地区内 倉敷館2階

2日間とも天気良好・・私たちが普段から感じている倉敷美観地区の魅力を、少しでも伝える事が出来ていたならば・・良いのですが。ご参加下さった皆様・・本当にありがとうございました。

「建築探訪179」-Gunma 8

議会棟を西より見る。

隈研吾さん設計の「富岡市役所(2018)」を探訪。2014年の世界遺産登録を契機として・・「富岡製糸場の再編」はもちろん、「TNAの駅」や「手塚さんの会館」などなど・・駅前を中心に”富岡の新たな顔”が、次々と出来ていました。

正面に議会棟、右に行政棟。

第一印象としては開放的で遠慮がなく、あちらこちらと自由に散歩ができる市役所・・長く伸びた庇や分節した建物の雁行配置も・・そういった印象を補強。

議会棟の庇下より行政棟を見る。右手には広々とした広場。

各棟のファサードにリズミカルに配された、隈建築の代名詞のような「木製ルーバー」も大活躍・・分棟/雁行/屋根/庇/格子/回遊・・隈建築に多く見られる、どのキーワードも昔から日本建築が大切にしてきた・・ベーシックな事ばかり。

左の行政棟と右の議会棟に挟まれた小さな広場より北を見る。

大きく持ち出した、深い軒裏は・・下地板である合板をそのまま見せた、公共建築には見えない仕上がり。

行政棟の2階よりエントランスのある東をみる。

緩やかなスロープが巡る、屋根裏を見せた行政棟のエントランスホール・・天井は合板の透かし張り。

「糸が貼られた」不思議な質感の壁も・・富岡の地域性や歴史からアイデアを広げた、オリジナリティのある仕上げでした。

「くらしき近代建築めぐり」

現在、倉敷美観地区で開催されているイベント「くらしきアーキツーリズム 2023」を紹介するテレビ番組・・「くらしき近代建築めぐり」が来週放送されます。アナウンサーさんと共に、地元の建築士として美観地区内にある近代建築を探訪・・

薬師寺主計設計の近代建築である「大原美術館 本館(1930)」「有隣荘(1928)」「児島虎次郎記念館(1922)」「エル・グレコ(1926)」・・

浦辺鎮太郎設計の近代建築である「倉敷公民館(1969)」「倉敷アイビースクエア(1974)」を ・・探訪。

テレビせとうち 11月23日 17:00〜17:30。(または BSテレ東 11月23日 7:12〜7:41)
期間限定でYouTubeで公開中

「建築探訪178」-Gunma 7

TNAの設計による「上州富岡駅 (2014)」を探訪・・世界遺産である富岡製糸場の最寄り駅。線路と駅舎に沿って、長く長く90mも伸びる大屋根と・・テトリスのような煉瓦壁が・・特徴的なデザインの駅舎。

鉄骨柱を挟み込むように積み上げられた煉瓦壁・・を見る。奥行き約9mの屋根は、高さ7mほどまで・・持ち上げられています。

125mm角の柱だけでは、当然、水平力には耐えられないので・・実は煉瓦壁の中に水平力を受ける幅150mmのブレースが隠されています・・ブレースの入っている部分だけ煉瓦の積み方が少し違っているのだけれども・・違いが分かるだろうか。

駐輪場を見る。この駅舎の煉瓦壁の積み方は・・長手と短手が交互で繰り返されるフランス積みなんだけれども・・そうでなくなっている部分にブレースが配置されている・・

長い1枚屋根の下に・・駐輪場や公衆トイレ、交流スペースや情報スペース、改札や待合などなど・・各スペースが配置・・・床も煉瓦として、全体に統一感を持たせています。

何気なく置かれている・・レール断面の文鎮が素敵です。

「建築探訪177」-Gunma 6

アントニン・レーモンドの設計図をもとに・・1952年に建てられた「井上房一郎邸」を探訪。ナチスの迫害から逃れ3年半もの間、日本に滞在していた・・ドイツ人建築家ブルーノ・タウトのパトロンとしても知られる・・井上房一郎氏の自邸。(北側の外観を見る。敷石の先にエントランス、左手に見えるリビングの高窓がチャームポイント・・)

(南側の外観を見る。) 石張りのパティオの向こうにリビング・・東京の麻布に1951年に建てられた「レーモンド自邸兼事務所」を見た井上房一郎氏が、その建物を大層気に入り・・建築家の承諾を得て、図面を提供してもらい、1952年群馬県の高崎市に・・建物を完全再現 !!!!

(パティオから南側の日本庭園を見る。) その後、オリジナルである「レーモンド自邸兼事務所は取り壊されたので・・もはや、こちらこそがレーモンド建築の真髄を伝える貴重な存在となっています。

(リビングを見る。) 「丸柱を挟んだ、2つ割りの丸太方杖」が梁を支える・・レーモンド建築を特徴づける・・アイコニックな構造的表現手法。

(リビングより南側の日本庭園を見る。) アントニン・レーモンドはチェコ生まれの建築家。フランク・ロイド・ライトが帝国ホテルを手掛けた際に、ライトの弟子として来日・・

(パティオに面した寝室を見る。) 帝国ホテルの仕事が終わった後も、レーモンドは日本に留まり・・群馬音楽センターや東京女子大学、リーダーズダイジェスト東京支社やノートルダム清心女子大学・・・などなど数多くの建築を日本に残しました。

(寝室の南側、レーモンドのデザインによる”造付け家具”を見る。) 第二次大戦中はアメリカへ帰国したものの、1947年には再来日。戦後も多くの優れた建築を日本に残し・・1973年85才の時に建築家を引退し、アメリカへ帰国。その3年後ペンシルベニアにて88才で亡くなられました。

「建築探訪176」-Gunma 5

群馬県高崎市、隈研吾さん設計の「森の光教会(2016)」を探訪・・板張りの多角錐が地面から隆起してきた様な建築。多角錐の部分がチャペルで、その左手に付属の披露宴会場&レストラン・・インパクトがある建物の外観と、建物周辺に植えられた植栽が・・殺伐とした敷地周辺の雰囲気を刷新していました。

巾120mm@200、厚18mm程度の杉材ルーバーで覆われた外観・・ルーバーの下にはもちろん本当の外装材である金属材やALCがあります。植栽に埋もれてしまいそうな可愛らしいサイン・・
外観を覆う・・不燃剤を含浸させた杉板を近くから見る。屋根が地面に着きそうな高さまで葺き下ろされています。こちらの隈建築でもそう感じましたが・・街なかに挿入された多角形ボリューム建築というのは、なかなかの存在感・・
披露宴会場とチャペルの間にある、屋根と壁が複雑な角度で入り込んだ・・チャペルエントランスへと到る、屋外用スペースを見る。
チャペルの内部・・壁と壁、壁と天井の隙間から光が差し込む・・100人収容のチャペル。正面壁の奥側へのわずかな傾きと、祭壇へと至る花道の微妙な傾斜が・・空間に拡がりを与えている様に思えます。
天井も壁も杉材張り。右手の下地窓のようなスリット窓の向こうには水盤が見えます。それぞれの傾きを持った多角形各面の・・接する部分に取られた”透かし”が、この空間のポイントの様に思えました。

併設のフレンチレストラン「Restaurant CHEZ TAKA takasaki」・・折り紙を貼り付けたような天井デザインが特徴的なスペースも、隈研吾さんのデザイン・・群馬建築行脚の疲れを癒やすため・・しばしの休息として”ランチ”を頂きました。

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「建築探訪175」-Gunma 4

1961年に建てられた、チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド設計の「群馬音楽センター」を探訪。折版構造による約60mもある大きなスパンを活かした、五角形デザインの北面ファサードを見る・・しかしながら到着したのは夕刻・・陽が落ちてきました。

翌朝、あらためて探訪・・気持ちの良い晴天。平面的には “扇形”・・切り取られた1枚のピザのような形をしています。(左側に見えているビルは高崎市役所。)
西面から建物の横顔を見ると・・この建物の大きな特徴である “鉄筋コンクリート折版構造” の様子がよく分かる。一辺が4mほどの折版11組による構成・・壁の構成がそのまま屋根の構成へとつながっていきます。(つなぎの梁が構造美的にはない方が明快に見えますが・・)
1階のロビーを見る。2階のホワイエへとつながる大階段のデザインがダイナミック・・ロビーとホワイエを彩る大きく鮮やかな・・壁画のデザインも建築家によるもの・・床の “テラゾー” もいいい感じです。
事前の下調べなしで、突然来たのですが・・運良く使用中のホール内部を見学ができました。外部の構成を活かした内部空間のありようが素敵・・2000人収容の音楽ホール。
コンクリート打放し“と “ベニヤ板” による天井のデザインを見る。コンクリート打放しの部分は折版屋根の下端が室内に顔を見せた状態・・・ベニヤ板の部分は折版屋根の下端と下端の間をふさぐような形・・・その隙間に仕込まれた間接照明が・・稲妻のような感じでホール全体を覆っていてカッコイイ・・音響的にも非常に優れたホール。

ブルーノ・タウトを日本に招聘した事でもよく知られる、地元出身の著名な実業家”井上房一郎”が創設した群馬交響楽団の拠点として、活用されてきた音楽ホールですが・・昨年駅前に”新しいホール“が完成した高崎市・・こちらのホールの使い方が気になるところ。

「建築探訪 174」- Gunma 3

昨年、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞も受賞され、米寿も迎えられた・・日本を代表する建築家・・磯崎新さん設計の「ハラミュージアムアーク」を探訪・・・東京品川にある「原美術館」の夏季分館として、自然に囲われた群馬県山麓に1988年オープンした木造美術館。ギャラリー上部のトップライトが特徴的・・すべての壁面に窓はなく、ギャラリーの採光は全てトップライトから取られている。

左右翼状に伸びる、ヴォールト屋根の板張りボリュームが特徴的・・・竣工から30年以上が経っていますが、(きちんとメンテナンスが行なわれていて ) 綺麗です
周辺には観光用牧場やゴルフコースなどがある・・なんとものどかなロケーション。古くからの湯治場として知られる「伊香保温泉」や、古刹「水澤寺」も・・すぐ近く
黒く塗られた・・下見板張りのボリュームに挟まれた中央部・・ステージとエントランス。広い敷地の中には様々な屋外展示の彫刻作品が点在しています
納屋を思わせる様な・・杉板、下見板張りの外壁を近くで見る。黒色に染色塗装・・壁上部のアールが効いています
エントランスロビーから中央のステージ部を見返す。床は玄昌石300角、天井は野地板構造用合板あらわしを黒く塗装
中央部のギャラリー・・正方形平面、ピラミッド型トップライト。この時の展示は、原始美術を思わせるミステリアスな木彫がインパクト大な・・「 加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL 」
2008年に開館20周年として増築された部分を見る。学芸員事務室、収蔵庫、特別展示室を既存美術館の隣に増築・・ヴォールト屋根やピラミッド型トップライト、下見板張やスレート屋根など・・増築部分も同建築家により、既存部分と共通する建築ボキャブラリーで、構成
増築部のエントランスから、特別展示室に向かう通路を見る。右手手前が学芸員事務室、右手奥が収蔵庫。天井は既存部分と同じく・・野地板構造用合板あらわしを黒く塗装
学芸員事務室と収蔵庫の間にあるスペースの床に描かれた作品・・フェデリコ・エレーロによる「LANDSCAPE」
「觀海庵」と呼ばれる特別展示室を見る。内部には三井寺光浄院客殿に倣った書院の設えが・・宮大工の高度な伝統技で、入れ子構造のカタチで再現

東京品川にある「原美術館」は2020年12月を持って閉館の予定・・こちらにある「ハラミュージアムアーク」を・・「原美術館ARC」と改称し、こちらに活動拠点を集約されるとの事。

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「建築探訪 173」-Tochigi 6

内藤廣さん設計の「フォレスト益子(2002)」を探訪&宿泊・・・南側アプローチより見る。右手が宿泊棟、左手が展示休憩棟・・弓形平面の建物が大小2棟、アプローチ通路を挟みこんだ形・・地形なりの緩やかな勾配がついた・・タイル敷の通路へと自然に足が向かう。

床のタイルは・・”益子焼”の陶板タイル!!!!!!!!!。きちんと揃っていない目地が・・いい感じです。
左側の板壁の部分が宿泊室。板壁上に走る・・黒っぽい金属材でカバーされた部分は、電気/ガス/水などの配管が通るダクトスペース。回廊の上を覆うガラス屋根下に走る・・ルーバー材が効いています。
上から回廊のデッキ床材、排水溝カバーのゴロタ石、益子焼の陶板タイル。設計の時期が近いからなのか、ビルディングタイプは全く違うけれども・・同じく内藤廣さん設計の「牧野富太郎記念館」を、思い出さずにはいられない雰囲気・・
宿泊室内部を見る。左下に入口扉、その右側に浴室洗面。上部ロフトの窓は回廊に面した南向きのハイサイド窓。巾4m✕奥行6m(上部は7m)・・宿泊室は10室程度。
天井と壁の仕上げは合板のまま・・天井は4/10くらいの勾配で、一番低いところが2.3m、一番高いところは4.8m。

野山に生息する植物や動物が、自分の居場所を見い出していくように、その場所と共存する建築のありのままのあり方を探したい・・時には面白さや新奇さを排除する勇気を持ちたい・・」・・とは内藤廣さんが作品発表の際によせた言葉。