「建築探訪 135」-Yamaguchi 3

「山口県立図書館」(1973) を探訪・・設計は鬼頭梓さん。様々な量感がポコポコした外観・・タイル壁に挟まれたサッシュ部が正面入口(西面)。平面的に見ても、様々な室のヴォリュームがポコポコとした形になっています。

東側の入口より見る・・正面奥が西側の正面入口。右上に見える大きなトップライトと、このトップライト下にある中央ホール(開架室)が・・建物の中心となります。この微妙な階高設定の・・中央ホールの絶妙な位置付けが、この建築の居心地良さの・・要となっている様な気がします。

(左-写真)中央ホールには、スロープでアクセス。(右-写真)中央ホールから2階にも、スロープでアクセス。スロープ横のコンクリート壁が・・いい「ハツリ」具合です。スロープを中心とした建物構成も・・この建築の要。写真では分かり難いですが、天井は格子状ルーバーになっています。

2階より見る。中央ホールに面してグルリと廊下が廻っているのですが・・その廊下には様々な読書コーナーが幾つも、趣きを変えながら配置されていて・・very goodです。外部窓に面した机のコーナーや、廊下の腰壁に隠れる様に配されたプチコーナー・・

開架書庫の側に配されたベンチソファのコーナーや、光庭に面したラウンジソファのコーナーなどなど・・そして更に、廊下廻りから、まとまった大きさのある各室が・・四方八方へと繋がっていく、広がりのある伸びやかな図書館となっています。

図書館建築のパイオニアであり、名手でもある鬼頭さんが手掛けた図書館建築は “訪れた人を暖かく迎え入れる” ・・とても居心地の良い、とてもniceな建築でした!!! ・・が、その本当の良さは、写真や説明文では上手く伝えられない・・体験してみないと、その良さが分からない・・”建築らしい建築” 。

「東京経済大学図書館(’62)」から始まり「山梨県立図書館(’70)」「東北大学図書館(’72)」「山口県立図書館(’73)」、そして「日野市立中央図書館(’73)」・・生涯に30を超える図書館建築を手掛けられた、鬼頭梓さんが言われていた「図書館建築で大切な事」とは・・

“図書館員がしっかりしてくれている事が一番大切です”  との事・・デザインに対する主義主張は控え目で、設計方法論にも柔軟な・・鬼頭さんらしい言葉なのではないでしょうか。外壁のタイルは、鬼頭梓さんの 師匠と同じ “打込みタイル” ・・巾450×高150mmという、やや大きめのタイル。

「建築探訪 133」-Yamaguchi 2

「山口県立 山口博物館(’67)」を探訪・・設計は坂倉準三建築研究所。
(上写真) メインアプローチとなる外部大階段の境壁に開けられた不思議な開口・・不正形なカタチに、角度を変えた切り込み・・goodです。

東側外観、建物正面を見る。もともとは全て・・コンクリート打放し仕上げの建築でしたが、今は一部分を残してタイル張りとなった建物外観。アプローチは右手にある外部大階段を上がった2階から
建物正面である東側外観とは、ガラッと雰囲気の変わる・・北側外観を見る。北側の外壁仕上げはボード張り・・硬軟強弱の付け方が・・goodです
1階ピロティ部を見る。左手奥に見えている屋外大階段・・いまは鉄骨造ですが、もともとはコンクリート造、打放し仕上げ・・だった様です
1階ピロティ部、ビビットな天井の色彩。もともとのデザインがこの色であったのか・・どうかは分かりませんが・・goodです
1階ピロティ部より敷地奥を見る。敷地奥には春日山・・敷地の環境条件から導き出されたという建築形態のイメージは “敷地に架け渡された橋” 

「建築探訪 131」-Yamaguchi

「山口県立美術館(1979)」を探訪・・設計は鬼頭梓(1926-2008)さん。エントランスへと向かう・・建物正面&広場がスパッと迎えてくれます。煉瓦ヴォリュームの南北に細長い美術館は、鬼頭さんの師匠である前川國男の「熊本県立美術館 (’77)」を思い起こさせる・・

煉瓦積みの壁面の中に・・コンクリート打放しの楣(まぐさ)が効いています
建物正面の下部を見る

ピロティ下の建具は当初のものではなく・・フレームレスな現代的なガラス建具にリニューアルされていましたが・・上部煉瓦ヴォリュームとガラスの対比感が当初よりも強まっていて・・goodなんではないでしょうか。(開館30年を期に2012年に大改修)

ピロティ部に増築された・・ショップ部を見る。ガラスの角に穴を開けて、支持金物のみでガラス面を固定して支える・・DPG工法による、フレームレスなスッキリデザイン
玄関を入った正面の1階ロビー・・大きな開口(西面)。ロビーから1段上がった場所にはカフェ。その向こうの外部は屋外展示場。来館者はロビー正面の壁に突き当たり、目的別に左右(南北)に別れていく・・
1階ロビーから、大きな長い斜路(北側)を上がり展示室へ・・そこからさらに斜路で上階の展示室へ

左右対称で南側にも同じカタチで斜路が配置されている。この美術館の建築構成の要は、やはりなんと言っても・・建物中央に配置された斜路。(斜路が建築構成の要となっている建築といえば、鬼頭さんの師匠の師匠によるル・コルビュジェのサヴォア邸・・)

1階ロビーを見る

階段は一切使うことなく、斜路だけにより展示室を巡る構成は・・気分の断続を強いられる事なく各展示室を歩き回れる連続性を・・鬼頭さんが重視された様です。美術館設計にあたり・・萩焼きの窯元や香月泰男のアトリエ、市内の古い社寺・・様々な”山口”の場所を、訪ね歩き・・”山口”の美術館を模索されたそうです。

カフェを見る

今は深澤直人デザインの椅子が並ぶ、おしゃれなスペースですが、もともとはこの場所もロビーだった様です。美術館設計の経験がなかった鬼頭さんは・・その不安を師匠(前川國男)に相談したところ・・前川が鬼頭に与えたアドバイスとは・・「何も教える事はない、物と人に聞け!!」・・物とは美術品、人とは学芸員。

師匠である前川と同じく、建築家の職業倫理観に厳しかった鬼頭の言葉。
「デザインの自由は、常にクライアントと社会のために行使されるという限界を超えることは許されない」・・建築家のエゴやデザイン至上主義への戒め、社会/生活/人間/建築の関係性を増進する為のデザイン・・