「建築探訪 154」-Aichi 8

インパクトのある”ガリバリウム鋼板立平葺き”の大屋根が目を引く、名古屋の老舗和菓子店・・「両口屋是清 東山店」を探訪。設計は隈研吾さん。4階建てのヴォリュームを大屋根で包み込んだデザイン。

大きな軒下のアプローチ部を見る。1階部分は軒が深い開放的なつくり。鉄部の仕上げは、隈建築ではお馴染みの”溶融亜鉛メッキリン酸処理”。

鉄骨の独立柱が支える開放的なつくりの1階は、販売店舗。折り上げられた木製ルーバーの天井がが2階へと繋がる。

2階は飲食スペース。隈建築ではお馴染みの”不燃木製ルーバー”によるデザイン。テーブルや椅子もスチールと木を使ったオリジナルのようです。

1階アプローチ部の軒裏が”透けて”いて・・2階から1階の庭が”下地窓”的に見えるのが面白い。入って来る時は意外と気付かなかった・・

もう一度、帰り際に外から見返して・・よくよく目を凝らすと、たしかに軒裏が・・”透けて”います。

「建築探訪 153」-Aichi 7

ブルータリズムの作品で知られる、60年代前後に活躍したアメリカンモダニズムの建築家・・ポール・ルドルフ設計のビルが名古屋市内にある・・1973年竣工の「大栄ビルチング」。もともとはプレハブ住宅の生産販売を主とするデベロッパーの自社ビル。竣工当初に見られた・・池と滝のある地下1階社員食堂から1階ロビー、1階ロビーから2階展示スペースへと・・3つのスペースが吹抜けを介して、通りまで繋がるというダイナミックな空間の様子を・・いまは見る事は出来ませんが・

階段、壁、天井など・・「各部で丸みをつけたデザイン」を多用しているのが印象的でした・・ルドルフ作品と言えば「イエール大学」に見られる、あの力強い構成的な建築のイメージが記憶に残るが・・こちらはもう少し優しい、全面をアルミ丸パイプで覆った、細やかで装飾的とも言える・・印象の建物。竣工当初と大きく違っているのは・・(“あるある”ですが)もともとは「コンクリート打放し&アルミパイプ」で、「グレー&シルバー」の”端正な構成”だったはずが・・いまは「白ペイント&シルバー」に塗装されていたのが・・残念。

「建築探訪 151」-Aichi 5

妹島和世さん設計の・・「豊田市生涯学習センター」(2010)を探訪。愛知県の豊田市と言えば、こちらの建築が有名だが・・この建築もオモシロかった。少し郊外で時間が掛かったが・・愛知県の建築探訪のラストに来て・・goodでした。「フラットに積層する3層」が「上下で微妙にズレている」のがポイント・・外壁はほとんどガラス。

外壁は”うねるガラス”・・厚さ20~24mmの倍強度ガラス!!!。主体構造は鉄骨造。平面形はいわゆる”アメーバのようなグニャグニャとした形”・・”各層で異なる”グニャグニャとした外形ラインに囲われ・・”ほぼ正円形”の各室が各層で漂っている感じ。1階に多目的ホール・図書室・事務所、2階に会議室✕3、3階に講習室✕3、という建物。

外壁だけでなく・・各室を区切る”間仕切壁も曲面ガラス”。さらに階をまたいで連続する部屋もあるので・・この空間の連続感は”写真では実感がない”と思いますが・・断面的な上下の繋がりは「SHIBAURA HOUSE」(2011) に近いが・・開口部や間仕切壁部に「方立て」などが無い分、その効果がとても大きく・・”抜け”と”透け”が、この建物の方が際立っています。

内外にわたり、ガラスの曲面で構成された建物の中で・・白く浮かんだヴォリュームは「トイレやエレベーターが収まっている」スペース。その壁は”9mmの鋼板”で出来ていて・・耐震壁になっているそうだ。「20mmのガラス/外壁」と「9mmの鋼板/間仕切壁」・・1/50の図面で描くと「0.4mm」と「0.18mm」の線・・各階500㎡(150坪)程度の建物だが・・柱は直径100mm程度でスパンは普通の6m前後・・なかなか色々と普通では出来ない構成。

3階のテラスより見る。コンクリートパネル敷きの半屋外スペースの中に・・「白い曲面で囲われた丸い部屋」と「ガラス曲面で囲われた丸い部屋」が並ぶ。「不整形グニャグニャ平面」と「フラット床積層」の対比が効果的で・・シンプル単純でありながら、とても現代的で、キレがある・・さすがの”妹島さん”という建物でした。

「建築探訪 150」-Aichi 4

国宝茶室は3つ・・

利休の”妙喜庵待庵”。遠州好みの”龍光院密庵席”。有楽斎の”如庵”。その内の1つ・・愛知県犬山市にある「如庵」を探訪。

(上写真)少しひしゃげた”禅画の丸”のような・・下地窓の付いた袖壁に囲われた、土縁にある”躙口”より、客は茶室に入る。

茶室の内部に入ると・・
暦の腰張壁」「有楽窓と言われる竹連子窓」「尖頭アーチ状に刳り抜かれた中柱板壁」「ナグリの床柱」などが・・つくる印象的で見事な内部空間!!
室内の写真撮影はNGなので、見て頂く事は出来ませんが・・goodでした。

(上写真)下地窓と連子窓が並ぶ北側外観を見る。申込制の特別拝観による30分ほどの時間ですが、「有楽斎の空間」を堪能・・

こちらは茶室如庵に連なる書院「旧正伝院書院」。玄関上の”むくり破風”・・微妙な緩さがgood。この茶室と書院の主である織田有楽斎は織田信長の弟(織田家の11男)・・

これらの建物は、もとは京都建仁寺に在ったもので、有楽斎が隠居所として起居し・・74才まで平穏な晩年を過ごし、その生涯を閉じた建物。明治の頃には東京麻布に移築・・昭和の初めに神奈川県大磯・・昭和45年に現在の愛知県犬山へと移る。

旧正伝院の玄関床、四半敷きの瓦・・素材の風合いが素敵過ぎる。

旧正伝院の障子、紙の重ね代と桟木のバランス具合が・・素敵です。
如庵と旧正伝院書院は名鉄犬山ホテル敷地内の庭園(有楽苑)の中にあります。

(下写真)鵜飼いで有名な木曽川沿いに、犬山城と並んで建っている「名鉄犬山ホテル(1965)」・・逓信省系の流れを汲む建築家/小坂秀雄による設計。
小坂秀雄の作品と言えば「外務省庁舎(1960)」がよく知られるが・・

ホテルオークラ東京(1962)」の設計にも小坂秀雄は関わっていて・・名鉄、外務省、オークラ、この3つの建物の外観には、なるほど共通する部分が・・名作として名高かったホテルオークラ東京は、残念ながら2015年に無くなってしまいましたが・・

「建築探訪 149」-Aichi 3

「名古屋大学 豊田講堂」を探訪・・89才のいまも建築家として活躍されている槇文彦さん・・32才にしての実質的なデビュー作!!!  。トヨタ自動車の寄付により1960年に完成。地下鉄の階段を上がると・・目の前にある大きな広場の向こうに、アシンメトリーな建物の西側正面が見える。ゲートのない開放的なキャンパスの「門」として、その建物の姿はまさに「門」という字の直喩的表現を思わせる。(ちなみにトヨタ自動車さんは、求められた予算に対して、自ら「その2倍の寄付金を出す」と申し出たそうです・・)

10年程前に、同じくトヨタ自動車の寄付により、大規模な改修工事が行われ・・とてもgoodな建築の状態。50年近くの年月を経て、同じ設計者の手による、良質で本格的な改修工事・・”docomomo japan100″にも選出されている日本近代建築を代表する建築の・・この様な保存/維持/活用は、とても素晴らしい事だと思います。

“コンクリート打放し”の場合・・改修で「建物の雰囲気」が損なわれる事が多いのですが、コンクリートの質感やプロポーションに丁寧な配慮がなされ・・50年近く風雨に晒され、木目は消え、外壁表面には砂が浮き上がってしまっている状態で・・かなり劣化していた”コンクリート打放し”も・・「杉板本実型枠による極薄増打ち」という手の込んだ改修手法などが用いられたおかげで・・建物の雰囲気が損なわれる様な事は・・ありませんでした。

リフレッシュされた姿を、改めて見ていると・・「白いBOXの浮いている感」や「ピロティと打放しによる構造的表現の力強さ」に・・メタボリズムやブルータリズムなどの、60年代的な建築表現の新鮮さを・・再感。

建物正面右手・・大階段とピロティを見る。建物ヴォリュームに対しての、柱の細長感が際立つ・・西陽を浴びて、ちょっとジョルジョ・デ・キリコ的な感じ・・柱は正方形ではなく長方形。すこしでも正面からの見え寸法を抑えようという工夫。槇さんの建築は決して声高に主張しすぎない・・熟慮された控え目な表現が・・心地良いです。

この建物を設計中だった当時・・2年に渡り、世界中を建築視察旅行していた槇文彦さんは・・インドで仕事をしていたル・コルビュジエのアトリエを訪ね・・この建物の設計図面を見て貰ったそうだ・・その時のコルビュジェからの言葉は・・「柱を大事にしなさい」との事。

増築され大きく変わった内部を見る。槇さんらしい階段がgoodです。このアトリウムのスペースは、もともと外部だった所、右手が既存部・・

改修工事により別棟だった建物が、アトリウムを介して一体化。外部だったとは思えない、さすがの改修。右手の壁は、もともと外壁だったという事・・既存部の豊田講堂を南北面で支えている、特徴的な「コの字型耐震壁」がアトリウム空間で、存在感を示しています。

アトリウムより外部へと繋がる、”透け感”がgoodな出入口部分を見る。槇さんの建築・・やっぱりgoodです、品があります。たまたまですが、岡山県出身だという・・施設スタッフさんが、突然来訪している私達2人のために・・照明を点灯して下さり、親切に建物内も色々と案内して下さりました・・感謝感謝。

「建築探訪 148」-Aichi 2

程良く高さを抑えた塀の向こうに見える佇まい、豊田市美術館の敷地内にある「一歩亭」。設計は美術館と同じ・・モダンデザインだけでなく数寄屋デザインも巧みな・・谷口吉生さん。広間と立礼席のある茶室建築・・妻面の真下部分がメインエントランス。

南側外観を見る。柱に支えられた、薄い庇下・・両引分け戸のメインエントランスが見えます。非常に寡黙・・無駄のない佇まい。

線材によるシンプルな構成美が・・goodです。床の石材は、美術館でも多く使われているグリーンスレート。

建物をぐるりと囲う軒下空間、いい感じです・・
折れ曲がりながら伸びていく・・東側の軒下空間。右手に別棟の茶室あり(三畳台目と一畳台目の席がある”豊祥庵”)
東側外観を見る。水平に低く伸びる日本的な佇まいがgoodです。メインエントランスのある南側の軒下空間が・・そのまま東側まで廻ってくる・・
軒先を見る・・板金(唐草)と板(広小舞)の間が、空いてるのが興味深い
立礼席を見る

豊田市美術館を訪れた際には、見落としたくない谷口吉生さんの数寄屋建築・・ジャパニーズ・モダンの最高峰を設計した父親ゆずりの巧みさ。

「建築探訪 147」-Aichi

開館から22年経っても・・”いつまでもモダン”な「豊田市美術館」。”美術館博物館”建築のマイスター・・谷口吉生さんによる設計。高台となった大きな人工池に面して配された「直方体の建築」。右手の本館とテラスを挟んで、左手に建つ別棟は”高橋節郎館”。その他、別棟で茶室建築(もちろん谷口吉生さんの設計)も有ります。長大な門型フレームが効いています。

谷口吉生さんのミュージアムと言えば・・「丸亀市猪熊弦一郎美術館」「土門拳記念館」「東京国立博物館宝物館」「ニューヨークMoMA」「京都国立博物館平成知新館」などなど。セラ、ルウィット、ビュレンなどの外廻りに置かれたミニマルな彫刻作品もgoodです。西側より見る・・門型フレームの向こうに、左よりアルミ張り、ガラス張り、石張りと、素材を変えた直方体が綺麗に並ぶ。

谷口さんの好きなグリーンスレートの石で覆われた・・大きな門型フレームで区切られたエントランスコートを見る。広い敷地に施された、外構デザインはシンプルですが、手が込んでいます・・デザインは世界的なランドスケープデザイナーのピーター・ウォーカー。

エントランスが、いつも控え目な谷口建築・・(エントランスは写真中央部に見える庇部のところ)大きな外部空間から建物内に入る時、ググッと一度スケールを絞り込むのは・・谷口さんの好きな手法。

エントランスコートを見る。この日は快晴、スクエアな建築のエッジが際立ちます。”東山魁夷展”の開催中ですが・・右手の四角い壁面に貼られた展覧会用のサイン、これが建物とどうも調和していない様な・・

建物を覆う”ガラスの大壁面”。しかしながら、谷口建築はいつもいつも・・どこを見に行っても、気持ちいいくらいに・・“キチッと”納まっている。

2階通路部を見る。内側から見た”ガラスの大壁面”・・もちろん内外の2重ガラスで構造体を囲った壁です。2階の通路部分は、コスースの壁面グラフィックと、ホルツァーの電光掲示板を、設えた常設のギャラリースペース。