G・ガルシア=マルケス

ふだんは読まない「全く知らない作家の小説を“お正月に読んでみる”」・・・今年は1982年のノーベル文学賞受賞者、1928年生まれのコロンビアの作家・・ガルシア=マルケス

“名作”として、そのタイトルは誰もが眼にした事はあるが、まとまった時間でもない限り、なかなか手の出せない分量・・ブエンディア家の7世代にわたる家族の歴史・・彼らが創設した「マコンド」という土地の歴史・・その始まりから終わりまでを“物語った”作品・・

本に添付されている「家系図」を見ながらでないと・・誰が誰なのか、分からなくなってしまいます。5代に渡って、メインキャラの名前は「ホセ・アルカディオ」といった具合。「アウレリャノ」というキャラも5代に渡って同じ名前・・

“魔術的リアリズム”と言われる技法で描かれていく“ファンタジー”。完全に架空の町の話・・現実離れした出来事と登場人物の数々にも関わらず・・もしかしてこれは実在した町の話ではないかと思わす・・現実感。現実以上のファンタジーでありながら、ファンタジー以上の現実。

一癖も二癖もあるブエンディア家一族のエピソード、呪縛から逃れられない一族の悲喜劇・・非日常的な話が当たり前の現実のように語られていく・・分かりやすいようで、分かりにくい物語

陽気で、乱雑で、幻想的な・・南米大陸の空気感だけは、ビシビシと伝わって来る・・(毎年そう思うのだけれども)海外文学の本当の面白さや素晴らしさは、やはり文化圏の壁があり、実際は分かりにくいのだけれども・・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」は・・一種の神話のような物語だった様な気がしました。

アルネ・ヤコブセン 「セブンチェア」

名作アントチェア」のデザインを発展させたかたちの・・ Seven chair (1955) 。アントチェアと比べて、大きく異なるのが・・そのゆったりとした背と座面・・独特な3次曲面のフォルムは・・眺める角度によって、様々な表情を見せます。

発売当初は・・チーク、ローズ、オークなどの突板張りと、白、黒の色彩など、数種のラインナップだけでしたが・・その後、何十種類ものバリエーションやカラーが発売されました・・トリムデザインに在るセブンチェアは、うっすらと木目が見える黒色塗装。

背と座が1枚板で出来ていて、スタッキング可能で、軽くて、持ち運びやすくて・・基本的な考え方はアントチェアと同じ。

セブンチェアのスチール脚は、クロームメッキ仕上げが大半ですが・・このシリーズは脚部も黒色塗装になっている・・めずらしいシリーズ。

成型合板+鋼管脚のみ」という、それまでの椅子とは比べようもない・・傑出した単純さ!!! ・・・このアントチェアのコンセプトを基に・・安定性という、さらなる機能を・・付け加えられ、大ベストストセラーとなった・・アルネ・ヤコブセンの名作。

柳宗理 「エレファントスツール」

トリムデザインにやって来た!!! ビンテージものの「エレファントスツール」。今年没後60年の展覧会で話題にもなっている”民藝運動の創始者で知られる柳宗悦”の御子息・・プロダクトデザイナーの柳宗理が1954年にデザインした小椅子。

座面から脚までワンパーツで構成されたFRP製の一体成型が何とも美しい曲面を描く・・ 67年前のデザインとは思えないモダニティ・・ミニマムデザインの極みながらも、どこかヒューマニズムな可愛らしさが感じられる意匠が素敵。(この椅子自体は1971年製。)

オリジナルのコトブキ社製は、ある時期から生産終了となりますが・・柳宗理のデザインに魅せられたトム・ディクソンが、2001年の頃に数年間、イギリスのHabita社からFRP製で復刻発売・・現在ではドイツのVitra社が(環境上の問題もあり)ポリプロピレン製で発売中。さらに、最近では(デザインの版権期間が過ぎた事もあり)「レプリカ ( ポリプロピレン製のリプロダクトとも呼ばれるジェネリック品 ) 」が、数多くのメーカーから発売されている惨状・・

“素材変更”により「構造的強度」も変わり・・それに伴って、素材の厚みや、脚の広がり方などなど様々なバランスも微妙に変わり・・ 現行のポリプロピレン製が「似て非なるもの」だと言うのは・・言い過ぎでしょうか?

ポリプロピレン製では出せない!! この質量を伴った存在感」は・・FRP製ならでは。3本脚の良いところは、4本脚に比べて、面積的に非常にコンパクトであること!!。3本脚は不安定という話もありますが、この椅子に関しては・・それは全く無く、座面に緩やかな凹みもあり、非常に座りやすい椅子です。

FRPとは「繊維強化プラスチック」の略・・ガラス繊維と樹脂を混ぜて成形・・軽量だけれども、強度のある、自由な曲面デザインが出来る・・のが特徴。

幅475mm ✕ 奥行435mm ✕ 高325mm、FRPの肉厚が約3mm・・現行のVitra社製は幅515mm ✕ 奥行465mm ✕ 高370mmと・・全てのサイズに関して、コトブキ社製よりも・・かなり”大き目”なのです。

黒地に黒文字のシールで、見えにくいのですが・・・裏面にはオリジナルの製造メーカーである「コトブキ社のシール」が残っていました!!

「やはりオリジナルは美しい!!」と感じるのは・・気のせい!! ですか??。この素材ありきで、考え抜かれた・・このアーチ、このフォルムの美しさ!!

アングルを変えて、下から見上げると・・もはや彫刻作品の様にも見え、建築作品の様にも見え・・・日本のプロダクトデザイン史上に残る傑作椅子。 (オリジナルのカラーラインナップには赤、青、黄、橙、白、黒、グレーなどがあるようです)

ブルレック兄弟「パリセイドチェア」

今回の計画でチョイスした屋外用家具・・・(パリを拠点に活躍するフランス人兄弟デザイナー)ロナン&エルワン・ブルレック「パリセイドチェア」。その名の通り「柵」をモチーフとしたであろうデザインは・・シンプルながらも飽きのこない、どんなシチュエーションにも不思議と馴染む・・まさしく”柵”という名に相応しい、堅牢ながらもニュートラルな存在感のデザイン・・goodです。

家具、照明器具、テキスタイルなどなど、様々なジャンルのプロダクトデザインを・・ヴィトラ、カッシーナ、フロスなどの一流メーカーと共に手掛け・・数多くの秀逸な作品を生み出し続けるブルレック兄弟の作品の多くは・・世界中のデザインミュージアムでパーマネントコレクションになっています。

アリス・マンロー

ふだんは読まない「全く知らない作家の小説を”お正月に読んでみる”」・・・今年は2013年のノーベル文学賞受賞者アリス・マンロー・・

アリス・マンローは、カナダの小さな田舎町に生まれ、自身の故郷に近い場所で創作活動に勤しんだ・・「短編の女王」と称される小説家。大学中退後、図書館勤務、夫と共に書店経営などの経験を経たのち、1968年(37才の時)に発表した初の短編集がカナダでもっとも権威のある文学賞を受賞・・カナダの片田舎を舞台とした、ごく普通の人々の人生の機微を、精緻な短編で書き続け・・2000年代になってからは国外においても多くの文学賞を受賞・・

2010年、アリス・マンロー79才の作品・・「小説のように」は原題が「Too Much Happiness」・・10編からなる短編集。

どこにでも居る様な平凡な登場人物たちの、どこにでも在る様なそれぞれの人生・・そこに見つけた、ほんの僅かな歪みや不在を、見事に丁寧に描き出しています。すべてがわずか30〜40ページ程度の短編・・平凡な日常の中に一瞬顔を覗かせた人生の陰影と深み・・それを見逃すことなく短編に凝縮描写。”チェーホフの後継者”と称される小説家アリス・マンローは存命ではありますが・・2013年82才の時に、筆を置かれました。

オルガ・トカルチュク

ふだん読まない、全く知らない・・作家の小説を「お正月に読む」ということを始めて3年目・・今年は2018年のノーベル文学賞受賞者オルガ・トカルチュクの「逃亡派」

オルガ・トカルチュクの「逃亡派」

BIEGUNI(逃亡派) 」・・1962年生まれ、現代ポーランドを代表する作家の作品で、2018年のブッカー賞を受賞した作品でもあります・・旅と移動をめぐる116の断章が並行的に進んで行くという、何ともストレンジな小説。移動のカタチや目的はさまざま・・“旅と移動”とは“探求と発見”の物語・・

異郷への旅、不安定な非日常、自己発見・・神話の時代から人は常に旅をしている。旅が日常化した現代でも、人は何かを探して旅に出る。不連続、多様混沌、偶発的、拡散的、非線条的な・・不明瞭で割り切れない中欧的世界を・・中欧的な文体/構成/感受性で描かれた紀行文学

「偶然こそが事件の推進力です。中欧の作家の語りに関する断片性への嗜好は、他のどの場所の作家よりも強いと思います。」
by Olga Tokarczuk

パトリック・モディアノ

“お正月休みに読んだ”・・2冊。

“現代フランスの最も偉大な作家”とよばれるパトリック・モディアノ・・2014年のノーベル文学賞受賞者。モディアノ作品の感想を一言で書くと「平易さの中の不在と喪失」・・読み進めても、物語には捉えどころがなく、全体はぼんやりと霞んだまま・・時間と記憶不在と喪失を巡る・・物語。

パトリック・モディアノの二冊

Dans le café de la jeunesse perdue (失われた時のカフェで) 」・・パリ左岸のカフェに現れる謎の女性”ルキ”について・・彼女に魅了された複数の語り手によって、”繰り返し”語られる”不在の記憶”・・各章ごとに、それぞれ異なる語り手で語られる物語を通して感じられる・・悲しみと喪失

Livret de famille (家族手帳) 」・・“生きるとは、ひたすらに記憶を完成しようとすること”アイデンティの欠落不確かな記憶の積み重ね・・モディアノ作品において大きな位置を占める自らの出自・・占領下の時代を生き抜いたユダヤ人である両親の記憶・・自伝的要素が強い物語。

カズオ・イシグロ

カズオイシグロ

「A Pale View of Hills (遠い山なみの光) 」・・遠い夏、戦後まもない長崎で出会った”あの母娘”がそうであった様に・・僅かな光を薄闇のなか探し求める様に生きてきた主人公が、半生を思い返すかたちで”日本の記憶”を語る・・カズオイシグロのデビュー長篇。作品全体を覆うイシグロ作品の空気感と小津安二郎の映像を思い起こさせる日本的雰囲気が・・印象的な作品でした。

「Never Let Me Go (わたしを離さないで) 」・・幼い頃から一緒に育った親友たちとの日々に思いを馳せながら・・夢見ていた僅かな希望が絶たれ、残酷で不条理な現実を”提供者”として、ただ受け入れるしかなく・・全てのものを奪われながらも、限られた人生を”記憶を支えに”・・生きる主人公達の姿が忘れられない、精緻な描写で描かれるノスタルジックなSF作品、カズオイシグロの代表作。

「Never・・」を読んでいる途中からずっと・・雨のなか白い鳩を抱いて逝ってしまった、あのレプリカントの美しい姿を思い出さずにはいられませんでした・・フィクションだからこそ伝わる真実/心情・・小説力について再認識。

Micro Bike

90年代初め、スウェーデン生まれの自転車・・Micro Bike

Micro Bike

2005年の引っ越し以来、13年倉庫にしまったままでした・・自宅も事務所も大阪市内だった頃は、大活躍だった自転車。その理由は・・「たたむのも、開くのも、わずか3秒!!! 」という、そのトランスフォームの速さ・簡易性

Micro Bike
水平に伸びる「上下アルミ角パイプ」がポイント・・
Micro Bike
上下のアルミ角パイプが「くの字」に折れる訳ですが・・
Micro Bike
折れ方がポイント。「前後の軸がずれる様な形」で折りたたまれます・・
Micro Bike

「前後の軸をずらして」アルミ角パイプが「斜めになった状態で折りたたまれる」・・という機構が、3秒という速さコンパクトさを生み出しています。

動画サイトで珍しいもの(発売当時のCM)を発見!!! 購入してから20年以上経ってはいるが・・丈夫な造りの自転車で、状態は良いし、デザインもgoodなので・・・暇が出来たら、少し整備して、また乗ってみようと計画中。

前川國男の本

国立西洋美術館」の世界遺産入りで・・何かと話題の近代建築。世界の近代建築の巨匠は確かにル・コルビュジエですが、日本の近代建築の巨匠といえば、この人以外にいない “前川國男”・・今週のt/rim designは、8月3日より始まる、今年で3回目となる「建築家のしごと展」に向けて、いろいろと準備中・・