「建築探訪 56」-Kumamoto 4

熊本県立劇場

前川國男の設計による「熊本県立劇場」(1982) を探訪。
(上写真) 表玄関となる西側の外観を見る。西側の表玄関から東側の裏玄関まで、建物を東西に貫通する長いモールが平面構成の主軸となっています。モールの北側にコンサートホール、モールの南側に演劇ホールが配されています。

熊本県立劇場
演劇ホールのホワイエを見る。開放的な大開口窓により、とても明るい
熊本県立劇場
夕刻の光が差し込むコンサートホールのホワイエを見る

はつり仕上げの正面コンクート壁が効いてます。ヘリンボーン調型枠で施工された階段腰コンクリート壁もgoodです。開放的な両ホワイエの様子は、この建物の約30年前に建てられたこちらの作品 から変わらずに共通するところです。

「建築探訪 55」-Kumamoto 3

熊本県立美術館分館

「熊本県立美術館 分館」(1992) を探訪。
スペイン人の建築家、J=A.M.ラペーニャ&エリアス・トーレスによる設計。もともとは渡り廊下で繋がれた図書館とその別館・・そのふたつの建物の鉄筋コンクリート躯体を残し、鉄骨造で増築付加したという・・ 設計も施工も大変そうな計画。
(上写真) 前面道路、南西側から見る。道路を挟んだ西側には熊本城。

熊本県立美術館分館

形態にしても配置にしても、街並みとは少し距離を取り・・ ポツンと建っている様な感じだが・・歴史ある熊本城の迫力ある美しい石垣を前にしても・・ バロセロナの建築家による現代建築なのに・・ 不思議と馴染んでいる感じ。周辺の日本人の手による建築よりぜんぜん馴染んでる・・ 建築が優れたものであれば、国境も時代も関係なく、呼応できるものなんだなぁという事を改めて思いました。
(上写真) 前面道路、北西側から見る。道路側に大きく張り出した庇部は4階喫茶室

熊本県立美術館分館

主な外装の仕上げは石と銅板・・ともに経年して、風化していく材料を選択する事で、対面する熊本城との建築的関係に配慮をした結果となっている様な気がします。
(上写真左) 外壁は熊本県産の合津石。ちょっとざらっとした感じは砂岩かな

熊本県立美術館分館

内装は徹底してナラ練付板で仕上げられています。改築前の図書館はどこでも見かける様な公民館風の役所建築スタイルだったそうです・・ もともとの姿が想像できないまでに内外共に一新・・ 新築よりもはるかに手が掛かったであろうと思われる・・ 図書館から美術館への見事なリノベーションでした。
(上写真左) 4層吹抜けの巨大な縦空間、エントランスホールを2階より見る
(上写真右) 熊本城を望む大きなパノラマ窓がある4階喫茶室で昼食

「建築探訪 54」-Kumamoto 2

熊本県伝統工芸館
東側の庭から見る

菊竹清訓さん設計の「熊本県伝統工芸館」(1983) を探訪。
1階が工房と販売スペース、2階が展示室・・ 四角い建物の中央あたりに、換気/採光/動線の核として両階をつなぐ吹抜けが設けられた建物。大木もある緑に恵まれた敷地と建物の関係や、2階出窓のヴォリュームが・・goodでした。

熊本県伝統工芸館
(左) 東側の庭より見る
(右) 駐車場よりアプローチとなる南側外観を見る

菊竹さんの解説文によると・・ 「日本の伝統的なカタチにみられる “部分の連続” ・・ 決して全体像が一望できず、見え隠れする部分を通じて全体像が想像として形をあらわす・・ そういったカタチの考えにしたがってまとめた・・」との事。

熊本県伝統工芸館
(左) 外壁は「熊本県立美術館」と同じような「打込みタイル」。耳付きの目地を詰めない「打込みタイル」といえば後期の前川建築の代名詞ですが、どうして菊竹建築に? ・・ 両館共にすぐ近く、つくられた時期も同時期、共に県の建物・・ 何か理由があるのだろうか?
(右) 1階より少し歪んだ形をした吹抜け部を見る
くまモン
駐車場で南側外観を撮影していると、車から降りて来たのは・・ くまモン!!   これから伝統工芸館でイベントがあるそうだ・・

「建築探訪 53」 -Kumamoto

熊本県立美術館

熊本城郭の端に建つ、前川國男の「熊本県立美術館」(1977) を探訪。 (上写真) アプローチ側の南側外観を見る。一目では玄関まで見通せない、視線/動線が突き当たっては折れ曲がりながら・・玄関へと至る前川さんらしい”一筆書き”な構成。高さを押さえた建物がさらに樹々に埋もれ、その存在は全く目立たず・・ 1971年の「埼玉県立博物館」から始まった “後期 前川建築” の到達点・・ 前川建築の完成型ともいえる珠玉の建築・・やっと見に来る事が出来ました!!!

熊本県立美術館
エントランスホールで受付けた後、180度振り返ったロビーの眺め。天井いっぱいまでの縦長窓とワッフルスラブ天井の存在感が効いてます。
( 前川さんはコルビュジェの弟子ですが・・なんとなくルイス・カーン的 ?  )
熊本県立美術館
90度右を向いて、ロビーから続く奥行きのある一室空間を見通す。ロビーの向こうには吹抜ホール、そのさらに奥が喫茶室。(左手に展示室)。細長い平面を強調する様に建物奥まで・・ワッフルスラブ天井と大開口が続いていきます。 床レベルは外部からロビーに至るアプローチを通して、あるいは建物内部の移動においても変化が付けられているのですが・・天井と大開口は常に安定した存在になっています。
熊本県立美術館
1階ロビーよりテラス側を見る。天井いっぱいまで開かれた大きな開口による、内外が一体となった開放的な空間。テラスの向こうには大きな樹々がたくさん植えられた緑豊かな公園が広がっています。南北に細長い平面構成、大きな開口部は東に面しています。訪れたのは午後からだったので、直接光が入ってくる時間帯ではありませんでした。
熊本県立美術館
吹抜ホールを地階より見る。落ち着きのある空間・・ 公園に面した大きな開口が、地階分そのまま更に大きくなっています。大きな開口の上下間のところには、ロビーから喫茶室へと続く渡り廊下があります。上部から吊った軽快な鉄骨造による意匠 ( 竣工時の資料にはなかったので、後の改修 ? )。
熊本県立美術館
(右) 後期の前川建築の代名詞である「打込タイル」。耳付きのタイルになっており(写真で分かるかな?) 、目地は詰めていません・・ タイルを後から貼り付けるのではなく、型枠内側にあらかじめタイルを取付けておいて、コンクリートを流し込む工法・・ より耐久性のある強固な外壁となる、前川さんのお気に入りの手法。

前川國男72歳、熟練の域に達した素晴らしい傑作でした。
こちらは前川國男49歳、”前期 前川建築”の傑作。 こちらは岡山にある前川建築。