「建築探訪 92」-Kagoshima

岩崎美術館工芸館

九州のほぼ最南・・鹿児島県指宿市の海から程近い、緑豊かな広い敷地内にある・・槇文彦さん設計の「岩崎美術館」(1978) 。手前は同設計者による「岩崎美術館 工芸館」(1987)。

岩崎美術館
(左) マッシヴで、”凸凹”した感じの東側外観・・ 鉄骨の”➕”で囲まれたBOX部分がエントランス・・エントランスから真っ直ぐに続く・・建物の一番高い部分はメイン階段の採光用・・建物はスキップフロアになっていますが・・基本的に地上1階。建物のイメージは地中海を見下ろすヴィッラ・・
(右) 南側外観を見る。コンクリートBOXの上に載っている両側のガラスBOXは大展示室の採光用トップライト。南側外観には建物を小さく見せている・・ある工夫が施されています・・ 

 “凸凹”と”➕”が、この建築のモチーフ。

岩崎美術館
北側外観を見る

小展示室のコンクリートBOXの上にも採光用の”凸”が載っています・・窓は南を向いているので、こちらからは見えません。杉板型枠によるコンクリート打ち放し・・目地の取り方も細かくデザインされています。マッスなヴォリュームの大胆さに対して、杉板型枠のテクスチャーや目地割りは非常に繊細・・対比的な感じがgoodです。

岩崎美術館
(左) 玄関から入ってすぐのメイン階段を見る。左手に大展示室、奥に小展示室。高さのある吹抜け上部から光が差し込んでいます
(右) 大展示室からメイン階段を見る。左手に小展示室、右手に玄関
岩崎美術館
奥の小展示室へと階段を上がって行く途中の・・コルビュジェの「LC1」が4脚置かれている、中庭に面した休憩コーナー。窓のブラインドと床の敷物は必要なのか・・ない方が建築の構成の素敵な所がより際立つのでは・・
岩崎美術館工芸館
(左) 本館と工芸館を繋ぐ、水面に面した渡り廊下部を見る
(右) 屋根の板金納まり・・タテハゼ先端納まりが鋭い!!
岩崎美術館工芸館
(左) 本館から工芸館へ向かう・・ 杉板型枠コンクリート打放し壁に凹みをつくって・・照明。階段を上がると、水面に面した渡り廊下部です
(右) 壁から持ち出したスチールフラットバーと、細かな面取りを施した木の組合せによる手摺り・・人の手が直接触れる部分のテクスチャーは大事ですよね

「建築探訪 50」-Miyazaki/都城

都城市民会館

どこの工場の設備機械だろうか? ・・ というこの姿。50年ほど前に宮崎県都城市に建てられた・・ れっきとした市民ホール。菊竹清訓さん設計による「都城市民会館」(1966)。

都城市民会館

こんなにインパクトのある建築はなかなかない・・ 独特の形。鉄筋コンクリート造の基壇の上に、鉄骨造の屋根が架かる構成。放射状に並んだ門型トラスが一点で集中する構造形式がつくる外観は・・まるでヤマアラシのよう。コンクリート基壇+鉄骨屋根の構成は同じく菊竹さんの設計による「島根県立図書館」(1968)と共通の手法・・ 変わらない部分(コンクリート造部) と 変わる部分(鉄骨造部) を明確に分けるという・・ この頃の菊竹的メタボリズム建築の思想。当時の菊竹事務所の担当者が内井照蔵さんというのも、内井さんの落着いた作風から思うと驚き。

都城市民会館
(左) 放射状に並ぶ門型トラスがコンクリート基壇の一点に集まっています
(右) 外部階段の手摺も放射状モチーフでデザイン。階段裏のコンクリート打放し木目の本実が渋い。壁のコンクリート打放しも変わった割りつけで、目地は出目地のような感じ・・ こういう細かいところが内井さん的 ?

都城市には新しい文化ホールが近年出来て・・古い市民会館は解体の危機もありましたが、保存運動の末、大学施設として存続が決まったそうです。昨年末に83歳で亡くなられた設計者の菊竹清訓さんも喜んでおられたのでしょうか・・

〈追記〉2019年解体