「建築探訪176」-Gunma 5

群馬県高崎市、隈研吾さん設計の「森の光教会(2016)」を探訪・・板張りの多角錐が地面から隆起してきた様な建築。多角錐の部分がチャペルで、その左手に付属の披露宴会場&レストラン・・インパクトがある建物の外観と、建物周辺に植えられた植栽が・・殺伐とした敷地周辺の雰囲気を刷新していました。

巾120mm@200、厚18mm程度の杉材ルーバーで覆われた外観・・ルーバーの下にはもちろん本当の外装材である金属材やALCがあります。植栽に埋もれてしまいそうな可愛らしいサイン・・
外観を覆う・・不燃剤を含浸させた杉板を近くから見る。屋根が地面に着きそうな高さまで葺き下ろされています。こちらの隈建築でもそう感じましたが・・街なかに挿入された多角形ボリューム建築というのは、なかなかの存在感・・
披露宴会場とチャペルの間にある、屋根と壁が複雑な角度で入り込んだ・・チャペルエントランスへと到る、屋外用スペースを見る。
チャペルの内部・・壁と壁、壁と天井の隙間から光が差し込む・・100人収容のチャペル。正面壁の奥側へのわずかな傾きと、祭壇へと至る花道の微妙な傾斜が・・空間に拡がりを与えている様に思えます。
天井も壁も杉材張り。右手の下地窓のようなスリット窓の向こうには水盤が見えます。それぞれの傾きを持った多角形各面の・・接する部分に取られた”透かし”が、この空間のポイントの様に思えました。

併設のフレンチレストラン「Restaurant CHEZ TAKA takasaki」・・折り紙を貼り付けたような天井デザインが特徴的なスペースも、隈研吾さんのデザイン・・群馬建築行脚の疲れを癒やすため・・しばしの休息として”ランチ”を頂きました。

“「建築探訪176」-Gunma 5” の続きを読む

「建築探訪 172」-Gunma 2

高崎駐車場

隈研吾さん設計の「高崎駐車場(2001)」を探訪・・西面より見る。縦ルーバーのデザイン・・ルーバーの素材を2種類(コンクリートとガラス)として、角度をパラパラ・・建物の向こうにはJR高崎線の線路が近接。

高崎駐車場西面
西面を見上げる・・1枚のパネルは結構大きい!!!。4m程はあります。
高崎駐車場
時間帯にもよるのでしょうが・・この時は、ガラスルーバーもコンクリートルーバーも見た感じの印象があまり変わらない。日没後にはガラスルーバーは透けた感じになって・・素材の違いが映えるリズミカルなファサードになるのでしょう・・
高崎駐車場コンクリートルーバー
コンクリートルーバーを近くで見る。奥行きは450mm・・巾は先端で40mm、底辺で150mm程度でしょうか・・近くで測ってみると・・以外に大きくて、驚く!!!。200角程度のT字鋼、上下2箇所で支持。
高崎駐車場ガラスルーバー
こちらはガラスルーバー・・”乳白色”のガスケットのような枠材を4方に廻してガラスを固定・・こちらは通しの縦材2本にて支持。

「道路という土木構築物に付属する・・建築と土木の二重性の間にあるような・・駐車場というビルディングタイプを・・過度に建築化するという怠慢な解を極力回避・・」とは隈さんが作品発表の際によせた言葉。

「建築探訪 170」-Tochigi 5

那須歴史探訪館

隈研吾さん設計の・・「那須歴史探訪館 (2000) 」を探訪。一見したところ、単なる切妻屋根型の建物なのに・・屋根勾配、軒の出、素材感で・・素敵なコンテンポラリー感を醸し出しているのは・・さすがという感じ・・

那須歴史探訪館
シンプルな外観・・サッシュレスが効いています、柱がスチール無垢材なのも効いています・・厚さ12mmのフロートガラスが・・砂利に差し込みそうなくらいにまで伸びていて、外壁巾木なしでギリギリまで、頑張った足元のデザイン・・
那須歴史探訪館
左手にあるのは敷地内の既存蔵、右手には陣屋門・・歴史的なエレメントに挟まれた、エントランス廻りの外観、切妻屋根型の妻面を見る・・・屋根の一面だけを伸ばしているのが、デザインのポイント・・
那須歴史探訪館内部
内部も外観と相似形・・切妻屋根型の展示室を見る。
那須歴史探訪館

窓側には、天井高さいっぱいまでの可動パネル・・藁(わら)で出来たパネル!!!!・・天井も「藁パネル」・・床は芦野石・・見学中は完全に貸切り状態で・・静かさが満ちる中、隈建築を堪能・・・栃木県での建築探訪は隈建築の5連続でした。

「建築探訪 169」-Tochigi 4

馬頭町広重美術館

だんだんと朽ちてきた屋根も、もはや「侘び寂び」な感じで・・素敵な現代建築・・隈研吾さん設計の「馬頭町広重美術館(現・那珂川町馬頭広重美術館)(2000)」を探訪・・竣工からもう20年。防腐不燃処理がされた60✕30mmの杉材によるルーバー屋根・・もちろん屋根本体はその下なので、実際には「屋根カバー」というわけなんですが・・

馬頭町広重美術館
個人的にはこの侘び寂び感のある・・屋根がgoodだと思いますが・・そろそろリニューアルする頃合いなんでしょうか?。北西側からエントランス付近を見る・・この「屋根カバー」が、この建築最大のチャームポイント。
馬頭町広重美術館
北側より見る。北側は一面砂利敷き。表面的な部材と言ってしまっても良い・・屋根カバーが、このプロジェクトの最大要点になっているという点が・・この隈建築の素晴らしさを語っている!!!!! ・・建物の形としては、これ以上ないというシンプルな切妻型・・
馬頭町広重美術館
軒の出が深い!!!!!!! 3m近く出ている感じ・・ガラスから2mほど突き出した先細りの鉄骨(細い!!!先端は50mmくらい?)で・・支えています・・綺麗な納まり!!!!!!・・使い慣れた、生産性の高い、便利でリスクのない・・慣用句だけで建てられた建築にはない・・凄さがありました。
馬頭町広重美術館
玄関へと繋がるアプローチ通路の部分を見る。外側のルーバーと内側のルーバーの間に・・本当の屋根が挟み込まれています・・
馬頭町広重美術館エントランスホール
エントランスホール内部を見る。ガラス壁を挟んで外と内のルーバー天井が、綺麗に繋がっていきます・・床は芦野石・・
馬頭町広重美術館
天井まで立ち上がる格子壁を挟んで・・左側が玄関、右側が展示室へ続く通路・・隈研吾さんの出世作・・”世界の隈研吾”に飛躍していくマイルストーンとなった代表作・・・といっても過言ではない、衝撃のある作品でした。

隈研吾さん曰く「ルーバーがつくる粒子感は広重の浮世絵に通じると感じた・・広重の・・その方法を建築という道具を用いて追いかけていきたいと願ったのである」

「建築探訪 168」-Tochigi 3

石の美術館

隈研吾さん設計の「石の美術館 (2000) 」を探訪・・地元の芦野石(あしのいし)を使ったルーバー&ポーラスな・・外壁デザインがチャームポイント。

石の美術館
道路側より見る。水面に石蔵が浮かぶ・・米の貯蔵のために使用されていた古い石蔵(もちろん芦野石)を、アートやクラフトの展示施設に改修
石の美術館
敷地奥から道路側を見返す。長ぁ〜い・・右手の「ルーバーな塀」は敷地を真っ直ぐに貫き。左手の「ポーラスな塀」はエントランスホールからプラザ・・茶室・・ギャラリーへと、折れ曲がりながら連続していきます
石の美術館
芦野石のルーバー塀・・詳細を見る。40✕120の石材をこま返し。芦野石は栃木県の那須地方で取れる安山岩で・・加工が容易、落ち着きのある表情が特徴の石
石の美術館展示スペース
展示スペースを内部から見る。ポーラスな塀を内側から見ると・・小さな窓がたくさん・・床も壁も、石・・石・・石・・
石の美術館
小さな窓から外部を覗くと・・窓には何も嵌まっておらず、外気がそのまま・・組積造の表情を見せながらもポーラスであるという・・芦野石の連続壁面が・・気持ちいいです
石の美術館ギャラリー
敷地奥のギャラリー内部を見る

各地でデザインされた隈建築の・・原寸模型 (大きさも素材も本物と同じなんだから模型ではなく、1/1のモックアップですね ) が展示!!!!!!!・・・左手には「ちょっ蔵広場」のモックアップ、右手には「レイクハウス」のモックアップ・・・かなり興味深いです。

「建築探訪 167」-Tochigi 2

宝積寺駅

宇都宮駅から2つ「宝積寺駅」で降りる・・見たこともないアグレッシブな天井のデザイン・・構造用ラワン合板と木毛セメント板という、駅舎とは思えない即物的なマテリアルの選択もgood・・・さすがの隈研吾さん設計による、2008年の建築。

宝積寺駅

町の東西も繋いでいる・・線路上に架かる自由通路を見る。左手中央部に改札口。構造用ラワン合板による天井デザインの・・連続が気持ちいい。

宝積寺駅

通路から階段へと・・止まる事なく増殖してゆく、天井のダイアゴナルデザイン。構造用ラワン合板ユニットの隙間には、設備機器を配置。

宝積寺駅

12mm構造用ラワン合板によるデザイン・・変形した蓋のない菱形の箱を・・ひたすらに貼り付け続けるという・・ルールとしてはシンプルな考え方で、マテリアルも素朴なもの・・だけど、さすがにgoodな感じ、ですよね。

宝積寺駅とちょっ蔵広場

天井のダイアゴナルなデザインは・・駅を降りたところにある、同じく隈研吾さん設計の建物とも・・呼応連続していきます。

「建築探訪 166」-Tochigi

ちょっ蔵広場

宇都宮から2駅、宝積寺駅を降りると・・このどっしりとした壁が街の顔として出迎え・・隈研吾さん設計の「ちょっ蔵広場(2006)」を探訪。この壁がこの建物のチャームポイント・・既存建物(米蔵)の外壁をこの壁に置き換えた”改修”・・”ただ石を積上げただけ”・・なんだけど、さすがの隈建築・・

ちょっ蔵広場

ホールの西面を見る。”への字型”に切り出した大谷石を・・ただ積上げただけ。奥に見えるのが、同じく隈研吾さん設計の「宝積寺駅」。石という材料で壁面を作ると、建物の表情はどうしても固いものになってしまいますが・・大谷石という柔らかさのある石材を使用する事と・・さらに穴を開けた壁とする事で・・石張りの建物にしては、異例の柔らかさ。

ちょっ蔵広場

ホールの北面を見る。壁の後ろはトイレなどのスペースに繋がる通路部分。西面の”への字”は均等なんだけど、北面の”への字”は徐々に”への字”の角度が・・変わっていくのが絶妙・・石は重たく閉ざしているモノのはずなのに・・”透けている石壁”という着想が・・goodですよね。

ちょっ蔵広場

「ポーラスな大谷石”への字”壁」のデザインの要点は・・この石を支えているスチールプレート。正面からは全く見えないが・・スチールプレートを水平に通しで設置、その上に大谷石を積む、そしてまたその上にスチールプレート・・という繰り返しで、この不思議な”ポーラスな石壁”のデザインが・・成立。

ちょっ蔵広場

こちらはホールの向かいにある「多目的展示場」。壁はホールと同じ手法で・・天井は壁のデザインモチーフが連続していく感じ・・天井部分はもちろん石ではなく、平板的な材料をグラフィカルに切り欠き加工したものでした。

「建築探訪 154」-Aichi 8

両口屋是清東山店

インパクトのある”ガリバリウム鋼板立平葺き”の大屋根が目を引く、名古屋の老舗和菓子店・・「両口屋是清 東山店」を探訪。設計は隈研吾さん。4階建てのヴォリュームを大屋根で包み込んだデザイン。

両口屋是清東山店

大きな軒下のアプローチ部を見る。1階部分は軒が深い開放的なつくり。鉄部の仕上げは、隈建築ではお馴染みの”溶融亜鉛メッキリン酸処理“。

両口屋是清東山店

鉄骨の独立柱が支える開放的なつくりの1階は、販売店舗。折り上げられた木製ルーバーの天井がが2階へと繋がる。

両口屋是清東山店カフェ

2階は飲食スペース。隈建築ではお馴染みの”不燃木製ルーバー“によるデザイン。テーブルや椅子もスチールと木を使ったオリジナルのようです。

両口屋是清東山店

1階アプローチ部の軒裏が”透けて”いて・・2階から1階の庭が”下地窓”的に見えるのが面白い。入って来る時は意外と気付かなかった・・

両口屋是清東山店

もう一度、帰り際に外から見返して・・よくよく目を凝らすと、たしかに軒裏が・・”透けて”います。

「建築探訪 85」-Tokyo/ 浅草

浅草文化観光センター

隈研吾さんの設計の「浅草文化観光センター」(2012)。建物は観光案内所や会議室や展示ホールといった機能。(上写真) 雷門前より北側外観を見る。ここ10年くらいずっと・・トレンドに敏感な建築家や建築学生が好んで用いる・・”家形”をアイコン的に扱ったデザインの建築。さしずめ淺草寺の7重の塔といった感じなんでしょうか・・

浅草文化観光センター

7つの家形を積み重ねた様なインパクトのある外観・・グローバルに活躍する建築家らしい現代的な建築デザイン・・竪格子で外装を覆ってしまうデザインは、吉永小百合が出演していたアクオスのTVコマーシャルでお馴染みとなった”竹の家”や、栃木にある”広重美術館” から続く・・隈研吾さんが得意としている手法。狭い敷地に建つ細長いビル建築なのですが・・積み重なった屋根の存在が周辺との関係性を繋ぎ止めている様にも思えます。軒がある・・とくに軒を低く構えた建物というのは・・どこか人を迎え入れてくれる雰囲気がある・・この建物は軒が重なっているので、低いのか高いのかハッキリは分かりませんが・・
(上写真) この写真を撮っている方向の背後には、浅草の有名な観光名所である浅草寺・・観光客のみなさんは、雷門と一緒に記念撮影。雷門を背にして建物を撮影しているのは建築関係・・

浅草文化観光センター
(左) 最上階の喫茶室を見る。外観を道路から見上げていた時から気になっていたのですが、最上階の天井は市松状に空いていて開放感UP
(右) 喫茶室からは仲見世、その奥の浅草寺まで綺麗に見渡せます。この日は天気がいまいち・・
浅草文化観光センター
(左) 喫茶室から展望テラスに出ると、東京スカイツリーやスタルクの「スーパードライホール」が見えます
(右) 展望テラスから続く屋外階段で7階の展示室へ・・
浅草文化観光センター
外装を覆っている木のルーバーを近くで見る・・思っていたより大きい。木のルーバーは不燃処理が施された杉。先端は見付けを15mmとギリギリまで絞っていますが、根元では90mmもあるので、シッカリとした感じ
浅草文化観光センター
吹抜けで1階ロビーとつながる2階展示室。各階の天井は、外観で見られる家形の勾配屋根と・・同じ傾斜となっている事も大きなポイント
浅草文化観光センター
(左) 天井材の杉(t=30@300)にも不燃処理が施されています。天井板は高圧木毛セメント板t=20。
(右) 各階にあるサイン。建物断面を現したグラフィック表示・・現在いる階のみをアクリルで立体表示していて、goodな感じ

「建築探訪 83」-Tokyo/ 青山 2

フォーラムビルディング

谷口吉生の設計による「フォーラムビルディング」(2011)・・ 青山通りに面した12階建ての賃貸オフィスビル・・ 一見シンプルなビルに見えるのだけれども、ただならぬシンプルさの感じが漂っています。何と言ったら良いのだろうか・・ 詳細納まりや予算や構造や法規など他・・様々な面倒な事をあまり考えずに、頭の中でイメージしたような理想形が・・ 現実としてポンと建っているような・・
(上写真) 北東側の外観を見る。外装はブラスト処理のステンレス板 t=5mm、高透過の耐熱強化Low-E複層合わせガラス。

フォーラムビルディング

しかしそれは逆で・・考えて考え抜いて、ここまで・・ 非現実的とも感じられる程の精緻な完成度の高さが・・ 頭で描いたままの様な、理想通りの姿とも感じさせているのだと思います・・ 1階以外は縦も横も同じ3600mmグリッドで揃えた建物、柱梁はどちらも見込み見付け寸法が同じ400mm・・ これはなかなか出来そうで出来ない事・・普通に見えている事が実は全く普通でない・・隙のないクールでシャープな谷口建築。 ・・なんとなくカッターネオ に似てる?
 (上写真) ピロティを見る。周囲に対して開放的な1階まわり、右手にエントランス。

フォーラムビルディング
北西側より外観を見る・・ デザインの要素としては、柱梁とガラス開口の2つしかない訳で・・ ひたすらにベストなプロポーションを追求する事に全力を注いだかの様な建築・・もちろん原寸モックアップにて検討されたそうです・・  左側の控えめに上品に建っているビルは、吉村順三の設計による「青山タワービル」(1970) 。
フォーラムビルディング
外部空間と連続性のあるピロティ下、エントランスを見る。半蔵門線の外苑前駅を降りるとすぐという好立地の建物。右手の小さな通りの向こうに見える竹林は「梅窓院 (隈研吾の設計) 」へのアプローチ
フォーラムビルディング
エレベーターの表示もとてもシンプル・・確かに矢印マークがなくても分かるしね・・上は上だし、下は下なんだから、これで事は足りているよね