先日古本屋さんで購入した「桂離宮」(1943) 。心惹かれたのは、巻末の・・タウト筆による、”スケッチ&メモ” が付いていたから。
ブルーノ・タウトは1880年生れのドイツ人建築家。アールヌーボーの熱狂の後、”ドイツ表現派”の建築家として1910年代には活躍を始め。クリスタルをイメージした”ガラスと鉄”による「ガラス・パビリオン」(1914)や、「アルプス建築」(1919)と称した幻想的なドローイングの仕事や、ベルリンでの大規模なジードルンク(労働者の為の衛生的な住宅団地)を手掛けた1920年代の活躍で、よく知られた、ヨーロッパの一流建築家。
その “ヨーロッパの一流建築家” が1933年5月3日に、亡命者として敦賀に船で着いた翌日(タウト53才の誕生日)に・・桂離宮を訪れ・・非常に感激賞賛・・「言葉に出来ないほど美しく、涙がこぼれてくる、パルテノンに比すべきもの・・円熟の極地と小児のごとき純真無邪を具えている・・」とKATSURAを賞揚し・・日本美の最高表現と、認め評したのは・・有名な話。
この画帖は1934年5月7日に1年振りに・・4時間半じっくり再拝観した、強い感銘をそのまま一気に筆で・・(5月8日と9日の2日間で)完成させたそうです。描写力の高い写真や、精緻な文章による解説ではなく・・荒々しいとも言える筆による表現は、彼の興奮した感動をそのまま描写したいという、想いが伝わってきます。タウトのスケッチに描かれている見学順序は、今の特別拝観コースとほぼ同じ・・
この画帖の出来には・・本人も深く大満足・・出版を念願していたが、生前には果たされず。彼は1936年10月には3年半の日本滞在を終え、トルコに向かい。1938年トルコにて客死。そして1942年に出版されたのがこの本。
「IN KATSURA DENKT DASAUGE」 (桂離宮では眼が思惟する)