「建築探訪 88」-Yamagata

土門拳記念館

山形県酒田市にある写真家土門拳の資料保存と展示の為に作られた・・1983年竣工の谷口吉生さんが手掛けられた初めての美術館・・「土門拳記念館」。
(上写真) 池に沿って建てられた長い壁が印象的な・・抽象性の高い外観。ちなみに、池は新たに作られた人口池・・長い壁の右手がエントランス部分。中庭が見える長い壁の開口部の左手に突き出た四角いヴォボリュームが記念室と視聴覚室・・外部から内部まで、中庭を中心として動線がめぐる構成・・池に建物が浮いている姿を池越しに眺めると・・その様は宇治平等院の構成を思い起こさせます・・

土門拳記念館
(左) 長い壁の内側にあるアプローチ空間・・突き当たりには中庭
(右) エントランスまわりの外観を見る

外部内部ともに建物全体の構成は・・日本の伝統的な空間特性が強く意識された・・”見え隠れ” しながら、”奥”を常に感じさせる・・その後の多くの谷口建築につながっていく大きな特徴である・・回遊性が強く意識された構成。建築の意匠表現は・・来訪者と周辺環境との関わりや、鑑賞者の作品鑑賞を・・妨げる事のない様、極力抑えた簡潔なものとする事を意識されたそうです。

土門拳記念館
(左) 外壁の出隅詳細を見る。外壁はポルトガル産花崗岩(シェニート・モンチーク)JP仕上げ
(右) 縦長の窓を見る。下はFIXで上部が排煙用で開くのかなぁ・・コールテン鋼のようです。厳選された質の高い素材の選択も谷口建築らしい・・  
土門拳記念館
(左) エントランスホールを見る。奥に中庭。
(中・右) エントランスホールに置かれている椅子の詳細・・ ケアホルム的なんだけど、ケアホルムではないよね? 誰のデザインだろうかこの椅子は?

しかしもう30年前の作品なんですねぇ・・古さを感じさせない建築ですよね。やっぱりモダニズム建築のシンプルさというのは持続的な永遠性・・クラシックな感覚に支えられているんだなぁ・・と改めて思いました。

「建築探訪 87」-Tokyo/ 富ヶ谷

東京キリストの教会

槇文彦さん設計の「東京キリストの教会」(1996) 。山手通りに面したガラスのファサードが印象的な建築・・この持ち上げられ、上部に向かってやや広がったガラスの箱は・・断熱や騒音への配慮から、ペアガラスのダブルスキン構造になっています。つまり外部に面したガラス面の内側に、室内に面したもうひとつのガラス面が設けられています・・その間は1m程。外部側ガラスの表面には日射軽減の目的で、セラミック焼付けのドットパターンが施されています。

東京キリストの教会
2階礼拝室を見る。内部側のペアガラスには、ガラス間にファイバーティッシュが挟まれており・・ そのおかげで、西側から差し込んでくる強い日射光は拡散光となり・・室内を柔らかな光が満たしています。天井高さは約10m。教会建築にふさわしい精神性の高い光の空間
東京キリストの教会

建物が面する山手通りは道路拡幅で40mもある非常に大きな道路となり・・ 遮るもののない西日と道路騒音に対するためのアイデア・・ ガラスの2重壁・・昼は室内を光で満たし、日が暮れてからは光の壁として街を灯す・・この建築のアイデンティティ・・槇さんらしい現代的なシンプルで明るい建築・・でありながらも、杉板型枠によるコンクリート打放し仕上げや、木製建具、床や壁に用いられたシラカバ材など・・質感が強い素材を多く用い・・教会という場所に適した・・温かみのある建築にまとめられていました。

「建築探訪 86」-Tokyo /本郷

東京大学・福武ホール

本郷通りから東大赤門をくぐって、すぐ左・・東京大学の創立130年を記念してつくられた・・安藤忠雄さん設計の「東京大学・福武ホール」(2008) を訪れる。この日は天気が曇りで写真映りがイマイチ・・キャンパス内の通りに面して建つ細長い建物。この建物の一番のポイントとなっているのは・・通りと建物を遮っている、とて~も、長~い壁、その長さは100m近く!!!  深い長大な庇と長い壁、そしてその背後の緑との対比・・効いています。(上写真) 東側外観をキャンパス内通りより見る。サッシ面からの室内奥行は7.65m。サッシ面から壁までも7.65m。

東京大学・福武ホール

この長い壁には “考える壁” という名前がついています。壁の高さは3.6m(コンクリート打ち放しパネル4枚分)・・人の背の高さの2倍・・ちょうど歩いている人の目線高さくらいに長~い横スリットが設けられています。この細長い横スリットが在る事がチャームポイント・・単なる壁では終わらない、何かしらの関係が壁の向こうとこちらで生まれていてgoodでした。

東京大学・福武ホール
スリットから通りを覗くとこんな感じ・・建物は地上2階、地下2階。大階段が大きなオープンスペースとなっているのは・・いかにもANDO建築らしい構成。晴れていたら・・劇的なイイ写真になりそうな感じでしたが・・残念
東京大学・福武ホール
地階の廊下よりオープンスペースを見る。サッシの方立の間隔は900mm・・コンクリート打ち放し面と同じモジュールで統一されていてgoodです
東京大学・福武ホール

歴史を感じるゴシック風の重厚な建物が中心となったレンガ色のキャンパスの中・・コンクリート打ち放しのANDO建築はやはり異質でしたが・・ 古い建物の中、統一感ばかり重視して・・”古い風の建物”を建てるのではなく・・ 新しい刺激としてANDO建築は有効に働いている様に感じました。
(上写真) 庇下までの高さ6.3m。サッシ面からの庇出は5.4m。

「建築探訪 85」-Tokyo/ 浅草

浅草文化観光センター

隈研吾さんの設計の「浅草文化観光センター」(2012)。建物は観光案内所や会議室や展示ホールといった機能。(上写真) 雷門前より北側外観を見る。ここ10年くらいずっと・・トレンドに敏感な建築家や建築学生が好んで用いる・・”家形”をアイコン的に扱ったデザインの建築。さしずめ淺草寺の7重の塔といった感じなんでしょうか・・

浅草文化観光センター

7つの家形を積み重ねた様なインパクトのある外観・・グローバルに活躍する建築家らしい現代的な建築デザイン・・竪格子で外装を覆ってしまうデザインは、吉永小百合が出演していたアクオスのTVコマーシャルでお馴染みとなった”竹の家”や、栃木にある”広重美術館” から続く・・隈研吾さんが得意としている手法。狭い敷地に建つ細長いビル建築なのですが・・積み重なった屋根の存在が周辺との関係性を繋ぎ止めている様にも思えます。軒がある・・とくに軒を低く構えた建物というのは・・どこか人を迎え入れてくれる雰囲気がある・・この建物は軒が重なっているので、低いのか高いのかハッキリは分かりませんが・・
(上写真) この写真を撮っている方向の背後には、浅草の有名な観光名所である浅草寺・・観光客のみなさんは、雷門と一緒に記念撮影。雷門を背にして建物を撮影しているのは建築関係・・

浅草文化観光センター
(左) 最上階の喫茶室を見る。外観を道路から見上げていた時から気になっていたのですが、最上階の天井は市松状に空いていて開放感UP
(右) 喫茶室からは仲見世、その奥の浅草寺まで綺麗に見渡せます。この日は天気がいまいち・・
浅草文化観光センター
(左) 喫茶室から展望テラスに出ると、東京スカイツリーやスタルクの「スーパードライホール」が見えます
(右) 展望テラスから続く屋外階段で7階の展示室へ・・
浅草文化観光センター
外装を覆っている木のルーバーを近くで見る・・思っていたより大きい。木のルーバーは不燃処理が施された杉。先端は見付けを15mmとギリギリまで絞っていますが、根元では90mmもあるので、シッカリとした感じ
浅草文化観光センター
吹抜けで1階ロビーとつながる2階展示室。各階の天井は、外観で見られる家形の勾配屋根と・・同じ傾斜となっている事も大きなポイント
浅草文化観光センター
(左) 天井材の杉(t=30@300)にも不燃処理が施されています。天井板は高圧木毛セメント板t=20。
(右) 各階にあるサイン。建物断面を現したグラフィック表示・・現在いる階のみをアクリルで立体表示していて、goodな感じ

「建築探訪 84」-Tokyo/ 神宮外苑

TEPIA

神宮球場と秩父宮ラグビー場の間、明治神宮外苑の緑を背景に公園のパビリオンの様に建っている・・ 槇文彦さん設計の「TEPIA」(1989) 。竣工後まもなく、大学生の時に訪れ・・ それから20年以上も経っていますが・・ とても綺麗でした。「TEPIA」の別名は “機械産業記念館” …機械情報産業に関わる展示イベントや会議、セミナーやエキシビジョンの為の施設。
(上写真)道路より西側外観を見る。面と線による構成のデザインは・・オランダの建築家リートフェルトの「シュレーダー邸」が強く意識されています。

TEPIA

細かい部分までデザインされた存在感のある・・屋外階段が建物北側の広いオープンスペースの余白を埋めるチャームポイント。このオープンスペースの向こうは神宮球場。建物本体のアルミパネル出隅の処理も凝ってます。建物足下のサインも素敵です、写真では分からないのですが表面材がステンレスメッシュ、建物サイン計画はデザイナーの矢萩喜従郎さん。

TEPIA

この建物の良さは・・厳密な線により規制された面の強い垂直性。面と面の関係にさえ緊張感を感じる・・その建物全体を覆っている精度の高いアルミパネルがつくる壁面の存在感。シャープなエッジが効いた庇の水平性。目地の微妙な分割と組合せ。
(上写真) 建物の西壁面を見上げる。立面は1450mmグリッド。「とにかく建物のどこを見ても隙がない」・・その端正な外観の裏側に隠された高度で複雑な納まり・・上質な素材による美しいディテール・・職人魂さえ感じる・・非常に精度の高い工事・・ 

TEPIA

一見するとシンプルモダンで・・即物的/工業的な感じの外観からして、工事がやり易い様にも思える・・しかしこの建物は非常にレベルの高いジャパニーズクラフトマンシップがなければ・・出来ない建築。槇さんは竣工当時、この作品に関して「・・80年代日本の建築生産、施工態勢が有する技術水準とクラフトマンシップ・・この極めて高いレベルが到底、永久に持続するとも思われない・・TEPIAのような建物は貴重な時代の証としての意味をも有する・・」と言われてました。(上写真) 建物南面とオープンスペースを見る。屋外階段からも2階喫茶へ直接アプローチできますが、この階段手摺に設置されているフラワーポットは喫茶さんの趣味?・・・

TEPIA

内部に入っても、その仕上がり精度の高さや、上質なクラフトマンシップ的な素材感は変わらない・・床は大理石、壁はアルミパネルや石張り、家具はオリジナルデザインやカッシーナ・・照明器具や消火栓、EVの操作パネルまでも・・オリジナルでデザインされている・・内外通してどこを見てもハイレベルな建物です・・ (上写真)3階ホール前のロビーを見る。コルビュジェのLC7がずらりと並んでいました。
槇建築は一貫して正統モダニズムの系譜・・しかし、その槇さんの長いキャリアを見通した時にも・・時代ごとの作風の違いは感じるわけで・・TEPIAはやはり80’sな感じが強く漂っている・・ 華やかで潤沢でポジティブな80’sという時代。

「建築探訪 83」-Tokyo/ 青山 2

フォーラムビルディング

谷口吉生の設計による「フォーラムビルディング」(2011)・・ 青山通りに面した12階建ての賃貸オフィスビル・・ 一見シンプルなビルに見えるのだけれども、ただならぬシンプルさの感じが漂っています。何と言ったら良いのだろうか・・ 詳細納まりや予算や構造や法規など他・・様々な面倒な事をあまり考えずに、頭の中でイメージしたような理想形が・・ 現実としてポンと建っているような・・
(上写真) 北東側の外観を見る。外装はブラスト処理のステンレス板 t=5mm、高透過の耐熱強化Low-E複層合わせガラス。

フォーラムビルディング

しかしそれは逆で・・考えて考え抜いて、ここまで・・ 非現実的とも感じられる程の精緻な完成度の高さが・・ 頭で描いたままの様な、理想通りの姿とも感じさせているのだと思います・・ 1階以外は縦も横も同じ3600mmグリッドで揃えた建物、柱梁はどちらも見込み見付け寸法が同じ400mm・・ これはなかなか出来そうで出来ない事・・普通に見えている事が実は全く普通でない・・隙のないクールでシャープな谷口建築。 ・・なんとなくカッターネオ に似てる?
 (上写真) ピロティを見る。周囲に対して開放的な1階まわり、右手にエントランス。

フォーラムビルディング
北西側より外観を見る・・ デザインの要素としては、柱梁とガラス開口の2つしかない訳で・・ ひたすらにベストなプロポーションを追求する事に全力を注いだかの様な建築・・もちろん原寸モックアップにて検討されたそうです・・  左側の控えめに上品に建っているビルは、吉村順三の設計による「青山タワービル」(1970) 。
フォーラムビルディング
外部空間と連続性のあるピロティ下、エントランスを見る。半蔵門線の外苑前駅を降りるとすぐという好立地の建物。右手の小さな通りの向こうに見える竹林は「梅窓院 (隈研吾の設計) 」へのアプローチ
フォーラムビルディング
エレベーターの表示もとてもシンプル・・確かに矢印マークがなくても分かるしね・・上は上だし、下は下なんだから、これで事は足りているよね

「建築探訪 62」-Naoshima

海の駅なおしま

SANAA (妹島和世+西沢立衛) の設計による「海の駅 なおしま」(2006)。フェリーが直島に着くと、眼に飛び込んでくる・・ ひとつめの作品。大屋根の下に、イベントホール/券売所/休憩室/待合室/事務室などの機能を配置したフェリーターミナル ・・しかし見るからに、ただならぬ感じの様子・・・  柱が細い !!!!!!! ・・・高さが4m以上もあるのに直径85mm !!!!! 

海の駅なおしま

70m×52mのこんなに大きな屋根なのに・・こんなに細い柱なのに・・ グリッドスパンが 6.75m !!! ・・ 屋根厚は 155mm !!!  

海の駅なおしま
(左) 壁は鏡面に仕上げて、存在感を薄めています
(右) 梁同士の接合部はもちろん、柱と梁の接合部も・・ 余計なものが一切ないスッキリした見事なディテール。地面に突きさしたままの様な柱と床面の取り合いも・・何気ないですが・・ なかなか出来ない
海の駅なおしま
床には緩やかな勾配が付いています・・ 遮るものの存在が消されて、大きく薄い屋根に覆われただけの場所があるだけ・・嘘の様に見事な見事な抽象空間
SANAAによる「空」
島の中にあるアート作品。SANAAによる「空」
直島フェリーターミナル横の広場
フェリーターミナル横の広場にある、オレッキエッテのような椅子・・これもSANAAによる作品
右奥には草間彌生さんの「赤かぼちゃ」
ベネッセハウス
(左)この日の宿泊は「ベネッセハウス」・・ 安藤忠雄さんの設計により1992年に出来たホテルを備えた現代美美術館 。もう20年以上も経ちました、ここから様々なプロジェクトが始まっていったわけですね・・
(右) テラスで気持ち良く朝食。前日に岡山で買っておいた 岡山木村屋のパン と 煎れたてのコーヒー
直島nendo

直島をフェリーで離れる時に見送ってくれたのは・・ nendoによる、光るコーンのインスタレーション作品・・ キレイでした。

「建築探訪 61」-Tokyo/六本木

国立新美術館

黒川紀章(1934-2007) による設計の「国立新美術館」(2007) を探訪・・
フラクタル曲面の大きなガラスの外壁に、エントランス部となる円錐型の風除室が突き刺さった・・ ダイナミックで明快なデザイン手法は黒川さんらしい。国立新美術館は収集品を持たない企画展・公募展のための美術館。

国立新美術館

建物の主だったファサードとなる南面はほとんどが水平のガラスルーバーで覆われています。写真では分かりませんがガラスルーバーにはドットパターンが施されているので、垂直の縦材とともに日除けとして日射軽減の役割を果たしています。大きく膨らんでいる外壁部は、内部にある “逆コーン” と呼ばれるスペースの形が曲面に現れています。

国立新美術館
1階エントランスロビーを見る。大アトリウムの中に2つの “逆コーン”。手前の逆コーンの上部にはレストラン(3F)、奥の逆コーンの上部にはカフェ(2F)があります。逆コーンの中には・・階段やエレベータ、トイレや設備シャフトなどが納められています
国立新美術館
手前の逆コーンを見上げる。ちなみに3階のレストランとは ポール・ボキューズ のブラッスリー 。ランチでもディナーでも眺めが良く、気持ちの良さそうなスペース
国立新美術館
2階カフェがある逆コーンを見下ろす

建物の主要な用途となり面積の大半を占めている展示スペースは、この大アトリウムの後ろに巨大な箱として存在はしているのですが・・ フラクタルな三次元幾何学を用いたアトリウム空間に円錐や逆コーンが浮遊した空間には・・モダニズムの直線幾何学でデザインされた空間とは全く違った空気感が在りました・・ 黒川さんが長年唱えられてきた”生命の時代”の建築が表現されているのでしょうか・・黒川紀章さん最晩年の秀作。

「建築探訪 58」-Tokyo/上野

東京国立博物館法隆寺宝物館

谷口吉生さん設計の「東京国立博物館 法隆寺宝物館」(1999) を探訪。
建物は上野公園内の奥の方・・すぐ側には父である谷口吉郎が設計した「東京国立博物館 東洋館」(1968) があり・・父子の建築による競演。展示品である法隆寺の300点にものぼる貴重な宝物は・・明治初めの廃仏毀釈で中で仏教への風当りがとても強くなった際、法隆寺を荒廃から救う目的で皇室に献納され、戦後国有となったものだそうです。
(上写真) 谷口さんの好きな “門構え” の構成によるファサードを見る。展示室である箱ヴォリューム、エントランスであるガラスのヴォリューム、そして大きな庇・・この3つの要素を対称形とせずに、ずらしながら奥行感を付けながら・・の雁行的な構成がgoodです。建物前の池もファサードを引き立てていますよね・・

(左) 門構えの大庇は、側面までグルッと廻るL字型
(右) 大庇下の鳥籠のような細かい線材によるガラススクリーン部を見る。池超しに建物を眺めながら、何度か方向を変え、池の中を渡る様にして建物へと至る
半屋外的な庇下の空間。下部のみは見通しを通し、上部は密で細かな間隔とした雪見障子的な感じのガラススクリーン (下部ガラスは高透過強化ガラス t=10のFIX) 。上部の縦桟は30mm×145mm @180mm、30mmの見付けで150mmの空き。この縦桟はガラスの前面にある格子ではなく、サッシそのものなんですね・・
エントランスホールを見る。石張り(ライムストーン ジュライエロー水磨き t=50!! )の右手壁が展示室・・ 床は花崗岩(ベルファーストブラックバーナー仕上げ t=30!! ) 。このガラスBOX空間を支えているスチール柱梁は100×200mmの無垢材!!  

大庇部と、ガラス箱部と、石張りの展示室部と、分かり易い3つのヴォリューム構成による組立て。シンプルで機能的、無駄のない、厳選された素材と部材による、見事な谷口さんの建築は・・作品集などの写真で見るよりも、実際の方がずっといい・・写真では見えにくい繊細なディテール、写真では分かりにくい素材のテクスチャー、現場でしか感じられないヴォリュームやスケール、周囲環境との関係性 などなどが・・きっとよくよく丁寧に検討されているからなんだと思う。表現を抑えた抽象形のプロポーション、素材の実在性、光とヴォリューム・・建築の基本とも言える要素が大切に考えられている・・この建物はとても素敵。

「建築探訪 57」-Hiroshima 2

広島市環境局中工場

谷口吉生さん設計の「広島市環境局中工場」(2004) を探訪。美術館建築の名手が ”ゴミ焼却場” を手掛けると、こんなにもスタイリッシュになるんだ・・

(上写真左) 広島市の中心から、湾岸へと伸びる大きな道路の都市軸に対して、直角に配された直方体ヴォリューム・・道路はそのまま建物内部へと吸い込まれて通路へと繋がり、その通路は建物向こう側の湾岸まで突き抜けていく。
(上写真右) 湾岸側まで突き抜けてきた通路。外壁はステンレス製の波型板張り

広島市環境局中工場
建物内の通路を見る。通路はガラス張りのギャラリーになっています。ガラスの向こうでは焼却炉、排ガス処理設備、灰溶鉱炉といった巨大な機械たちが働いています
広島市環境局中工場
透明なガラスに貼られた透明な文字、ecoriumのm部分

ガラス張りのギャラリー部は、「ecorium」と呼ばれる環境展示施設のミュージアム・・建物全体のサイン計画、ロゴデザイン、イラストや文字といった展示説明デザイン、などなどは全て著名なデザイナー/アートディレクターである 八木保さんが手掛けられたそうです。