「建築探訪 112」-Finland 4 / ALVAR AALTO 2

アアルト大学本館

「アアルト大学 本館」(1964)を探訪。右手の突出した部分はオーディトリアム。本館全体の平面形は一言では説明し難い・・水平的に広がりのある構成で、とても大きく伸びやかに配置されていて・・上写真で見えているのは南側から見える・・ほんの一部・・

アアルト大学本館

残念ながら本館は部分的に改修工事中。本館メインエントランスのある西側付近はご覧の様な状態。本館のオーディトリアムは見る方向によって様々な表情を見せます・・形としては、丸いバームクーヘンを1/4よりやや大きい扇形平面に切って、中心側からカジった様なカタチ。(上写真) 北西より見る・・突出したオーディトリアムヴォリュームの足元がメインエントランス。

アアルト大学本館
ぐるりと廻って、東側の入口まで来ました。正面ピロティ部が東側入口。右手にはホリゾンタルに広がる教室群。窓はもちろん”アアルトらしい” ・・木製の水平連続窓
アアルト大学本館
南側より見る。左手ヴォリュームの・・ピロティ部に東側入口。正面の教室群は・・奥&右手に向かって広がっていきます
アアルト大学本館
マッシブな煉瓦のヴォリュームを支える “金属板貼り”の丸柱・・前述の図書館と、同じ建築的要素による構成ですが、竣工したのはこちらが先です
アアルト大学本館
ピロティ内を見る
アアルト大学本館
玄関扉を見る。縦に並べて付けられたドアハンドルは、もちろんアアルト自身のデザインによるオリジナルの “アアルト引手“・・ この後どこのアアルト建築に行っても、玄関扉には・・ほぼこのドアハンドルが付いていました。
アアルト大学本館
風除室内を見る。低く低く押さえられた天井高。正面壁には黒い “アアルトタイル”
アアルト大学本館
近くで見る “アアルトタイル”
アアルト大学本館
東側エントランス付近から1階ロビーを見る。リブな天井が段々・・”アアルトタイル巻き” の丸柱・・どれもアアルトらしい構成要素の数々
アアルト大学本館
アアルトらしい天井付きの照明器具が並んでいる・・廊下
アアルト大学本館
2階ホワイエへと続く階段詳細を見る。後ろが工事中のオーディトリアム・・残念ながらチラリとも中は見れず。劇的な4本の帯状スカイライトからの光に満ちた、垂直的な広がりのある、扇形平面の空間はどんな感じだったろうか・・残念
工事関係者の人に注意されない様に・・遠慮しながら、本館建物内をブラブラ・・
アアルト大学本館
図書館側よりオーディトリアムを見る。芝生が広がる広場では、学生さんが休憩中。フィンランドではどこでも芝生に寝転がって、日光浴をしている人が多い。冬が長い北欧では、陽射しを避けて木陰へ・・という人は少なかったです

「建築探訪 111」-Finland 3 / ALVAR AALTO 1

アアルト大学図書館

遂にやって来ました・・ アアルト建築は以前に一度訪れた事はあるのですが、やはり(アアルトの母国である) 本場フィンランドで見る方が、アアルト建築の真髄に触れられる気がするからなのか・・気持ちとしては 初アアルト建築 !!! 
1949年のコンペで、フィンランドを代表する世界的な建築家アルヴァ・アアルト(1998-76) が勝利・・本館、講堂、図書館、学生寮、体育館、実験棟、発電施設、生協棟などからなる・・「アアルト大学(元 ヘルシンキ工科大学)」を探訪・・ (上写真) 1969年完成、図書館の外観を南側から見る。  

アアルト大学図書館

北西側から外観を見る。地上2階 地下2階の建物。事務的なスペースは地上部1階にまとめて、階高を高く取った2階に閲覧室を配置。2階の閲覧室は西側の階高が一番高く、東側に向かって段々と階高が下がっていきます。北西側から見ている上写真では、1階に較べて2階は倍以上の高さがある事、2階の階高が手前から段状に奥(東)へと下がっていっている事が・・よく分かります。黒い石張りの下層部でやや抑えて、上層煉瓦ヴォリュームをやや浮かした感じ・・ 

アアルト大学図書館
東側から外観を見る。こちら側から見ると、2階の階高は西側よりかなり下がった事が分かります。帯状デザインで立面に動きを出している部分・・煉瓦を部分的に白くペイントしているのかと思いましたが、白大理石が張られています
アアルト大学図書館
東側から外観を見る。この辺りは地盤面が下がっているので、地上3階。この後たびたび出会った “アアルトらしい窓” ・・「縦長換気窓+嵌殺し」の連続で構成された木製水平連続窓・・は煉瓦腰壁との構成がgoodです
アアルト大学図書館
東側外観の詳細を見る。窓と窓の間の・・プチ壁は角波金属板張り、水切りも同材、木製窓とともに・・クラフト感が出ててgoodです。煉瓦+木+金属・・どのアアルト建築にも共通する、アアルトらしい素材感
アアルト大学図書館
図書館はキャンパス全体の南側エッジ・・バス停もすぐ側にある、人の往来も多い所に位置しています。(上写真) 図書館のメインエントランスへ向かうアプローチを見る。建物の長手軸に対して真直角ではなく、微妙に角度を振っているアプローチ軸
アアルト大学図書館
金属板張りの丸柱が並ぶ、キャノピー下のメインエントランス
アアルト大学図書館
ガラス張りのエントランスから、光がたくさん差し込んで・・とても明るい 1階のメインロビーを見る。右手には2階閲覧室へと至る、緩やかな階段
アアルト大学図書館
階段を上がると、2階フロアの中心部分。ハイサイド窓から差し込む大量の光が照らす、曲折した大きな天井面が占有する空間・・正面には貸出カウンター
アアルト大学図書館
2階フロアの中心部分から左側(東側)を見ると・・ ポチ丸の天窓が並んでいるその向こうには、天井高を抑えた閲覧室。奥の方には東面の水平連続窓に面した読書カウンター席。(これだけ天窓とハイサイド窓が多い空間なので、水平連続窓が必要? って気もするが・・) 
アアルト大学図書館
2階フロアの中心部分から右側(西側)に位置する・・ 2階フロアで天井高が一番高い、ハイサイド窓とストライプ状天窓がある閲覧室。こちらの室はガラス壁で間仕切られていて・・自習室のような感じ。 
アアルト大学図書館
建物の長手軸方向であるハイサイド窓に対して、微妙に角度を振っている書棚の配置が・・アアルトらしい
アアルト大学図書館
背丈程の高さまで、”アアルトタイル” が巻かれた丸柱
アアルト大学図書館
天井面の単調さを補いながら、空調などの設備機器を隠している・・天井ルーバーは室内の音響効果にも良いのかな。窓際に吊られた照明器具・・もちろんアアルトのデザイン

日本で見られるアアルト建築の資料としては「a+u(1977)」「SD(1983)」などの作品集がよくまとまっていて便利なのですが・・ひとつの建物に対する写真や図面などの数量は限られ、写真も白黒だったり解像度も低かったり・・30年以上前の古い作品集をいくら凝視しても、なかなか湧いてこなかった・・ アアルト建築のリアリティや空気感を、現地に立って初めて・・心身に深々と感じる事ができ・・ 本当に大満足。😭😭😃😃👏🏻👏🏻

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「建築探訪 107」-Sweden 10 / Stockholm

ストックホルム市庁舎

北欧ナショナルロマンチシズムを代表する作品。ラグナール・エストベリの設計による「ストックホルム市庁舎」(1923) 。
(上写真) 湖越しに東側外観を見る。100mを超える大きな塔が聳え立つ外観が印象的な市庁舎。どこかの市庁舎と雰囲気が似てる ?

ストックホルム市庁舎
中庭へアプローチ・・正面アーチの向こうには湖に面した広場。右手の階段を上がると・・”青の間” へと繋がるエントランスホール
ストックホルム市庁舎
湖に面した広場へと続くアーケード。力強いアーチと木製格天井
ストックホルム市庁舎
(左) 文字で覆い尽くしたデザインの扉 (塔入口) ・・ goodです
(右) 塔の頂部へと至る、長い長い階段の・・踊り場

建物内の見学は時間が決まっているので・・それまでやや時間があったので、塔を登ってみました。しかし、これが非常に大変で、やや後悔 ・・なんと塔の頂上までは階段です 。EVは在るそうなんですが、この日は動いていないそうで・・

ストックホルム市庁舎
塔頂部より西側を望む。写真手前が中庭、その向こうが ”青の間”、左手に湖際広場
ストックホルム市庁舎
ノーベル賞の祝賀晩餐会の舞台としても有名な「青の間」。ストックホルム観光の重要スポットという事もあり、見学者は多い・・見学は時間制で、専門のスタッフ1人が20人程度をまとめて案内するかたちになっています。「青の間」なのに青くない! ・・その理由は、もともとはレンガの上に仕上げとして “青い漆喰” を塗る予定だったからだそうです・・
ストックホルム市庁舎
石やレンガや木材といった昔からある材料を多用し、郷土性を強く意識した建築表現

この市庁舎と同じ頃に完成したこちらの建築と比べると・・ 同時代の著名建築家による最新の建築でも、これだけ作品傾向には巾があります・・ 1920~30年頃というのは、建築史の教科書的には「モダニズム」という新しい建築様式が完成へと至る大きな転換期ですが・・ その流れは決して単調なものではなく・・特に、近代化という中央ヨーロッパの大きな流れからは周辺であったからこそ・・自国の文化や風土に根差した表現にこだわった北欧だからこそ・・「ナショナルロマンチシズム」という建築様式は北欧で大きく花開いた様に思われます。

トックホルムウォーターフロント
市庁舎のすぐ側に出来たスウェーデンの現代建築・・「ストックホルム・ウォーターフロント」。ホテル、オフイス、会議場、劇場などが入った複合施設。設計は White Arkitekter Ab、2011年竣工の作品
トックホルムウォーターフロント

金属製ルーバー曲面の重なりが綺麗です・・見る角度によって表情を変えていきます。湖や湾に囲まれた水資源豊かな都市であるストックホルムの周辺環境を意識したデザインなんでしょうか・・ 隣国フィンランドの建築家、巨匠アルヴァ・アアルトの建築的主要モチーフである “うねる様な形” の現代的な解釈の様でもあります。

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「建築探訪 105」Sweden 9 / Stockholm

森の火葬場

「森の火葬場」は・・ 1920年に出来た「森の礼拝堂」、1925年に出来た「復活の礼拝堂」に続いて1940年に完成した・・ 「森の墓地」の主要施設。

「森の火葬場」は、3つの礼拝堂と火葬場や納骨堂を含む建物。設計者であるグンナール・アスプルンドの遺作ともなった作品。

(上写真) “睡蓮の池” に面した、垂直水平性を強調したデザインの・・ 大きなポーティコ(柱で囲まれた玄関空間)を見る。

森の火葬場
ポーティコ内より見る。中央部には吹抜けと彫刻。木製の屋根を支える、規則正しく配された石張りの柱。大きな屋根の下、広い敷地内を見渡せる絶好のビューポイント・・ 
森の火葬場
ポーティコ内から “睡蓮の池”、その向こうにある “瞑想の丘” を見る。散歩などで来られている方もここで気持ち良さそうに休憩されていました
森の火葬場
ポーティコから中庭を通って、待合室と至ります。施設内の3箇所の礼拝堂には・・ それぞれの待合室があり、それぞれの中庭に面した構成となっています
森の火葬場
中庭に面した明るい待合室内を見る。程よく高さが抑えられた・・礼拝堂に至る前の・・ 待合で待つ人々の気持への配慮が感じられる・・優しい空間
森の火葬場
森の火葬場
背丈程の板張り壁の高さと質感・・大きめのアールで塗り廻された漆喰塗り壁・・均等に可愛らしく吊られた照明器具、腰窓の高さ・・ 落ち着いた、居心地の良い待合空間でした
森の火葬場
建物内に3室ある礼拝堂のうち、もっとも広い礼拝堂・・「聖十字架礼拝堂」の内部正面を見る。床は祭壇に向かって緩やかに下っています
森の火葬場
森の火葬場
床だけでなく・・腰壁や手摺台など石材で出来ている所は・・全てこの 「コツコツ仕上げ」!!  
森の火葬場

礼拝堂後部にある格子扉は、電動で地下に降下するらしい・・ 格子扉の向こうはポーティコ。格子扉を開くと、礼拝堂~ポーティコ~睡蓮の池~瞑想の丘まで内外一体となった空間になるらしい・・ 見たかったなぁ

「建築探訪 104」Sweden 8 / Stockholm

t/rim designの、今年の年賀状にも使っていた建築・・ 「ストックホルム市立図書館(1928)」。設計はグンナール・アスプルンド(1885-1940)。一度見たら忘れられない原初的な幾何学形態による外観構成が目を引く (ブレーやルドゥーと言った18世紀の”幻視的建築家” のドローイングを思い起こさせずにはいない) ・・ 古典性を感じさせる堅固な外観でありながら、次なる時代のオーダーである”モダニズム性” も共存した・・アスプルンドの代表作。「図書館建築」としても一番と言っていいくらいに有名な作品 。(上写真) メインアプローチより建物正面(東面)を見る。

正方形平面の基壇に円筒形が載っている様にも見える外観ですが・・ 正確に言うと、基壇部は正方形平面ではなく”ロの字型平面” をしていて・・その”ロの字”の内側に嵌り込んだ円筒形が、1階から建ち上がっているカタチとなっています ・・ 飛び出した円筒形部分の高さは、基壇部の高さとちょうど同じくらいの高さに見えます。(上写真) メインアプローチからは反対側となる西面より見る。

外観を見ていても、内観を見ていても・・アスプルンドの作品というのは、たんに古典性でもないし、たんに近代性でもない ( 年代的にはコルビュジェやミースと言った近代建築の大巨匠とほぼ同年齢で・・ 大巨匠達がスパッと近代以前のものを断ち切った様に、時代の潮流としてはモダニズムが隆盛を極めようとしていた時期 )・・近代性と古典性の両者をうまく共存させようとしていた建築家。
(上写真) 黒い漆喰塗りの壁で囲まれたエントランスホール、装飾レリーフは何故かエジプトな感じ・・この建築は内部外部共に装飾はエジプト様式・・どうしてなんだろう?

エントランスホールより階段を上がると、見えてくる・・ 
有名すぎる “あの空間” !!! 
円筒形空間の壁面を覆い尽くす書棚・・ 吹抜け上部の縦長ハイサイド窓から差し込む光・・空間の中央に吊り下げられた照明器具・・ 非日常的とも言える円周式書庫に包まれた空間・・ 90年近くも前の建築とは思えない、今もぜんぜん元気な感じの空間。白い壁面部の波波が効いています。

圧巻の眺め。グルグルと廻りながら本を捜して、登っていく・・ 本好きの人が好きな本を探して廻り続ける? ・・ 図書館員からすれば、常に館内を一瞥でcheckできる管理しやすいパノプティコンな空間形式?。アスプルンドが管理面の効率性からこの様な室を設計したのか、または単に “完璧に本に囲まれた” ある種本好きには堪らない空間として設計したのかは・・分かりませんが、 一度見たら忘れられない・・圧倒的な空間。 

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「建築探訪 100」-Sweden 5 / Stockholm

セントマークス教会

シーグルド・レヴェレンツ(1885-75) の代表作・・「セント・マークス教会(1960)」。(上写真) 白樺の木立を背景に佇む・・赤褐色煉瓦に覆われた教会・・L字型をした建物の出隅部付近、礼拝堂アプローチから外観を見る。右側の高い部分が礼拝堂、左側の低い部分には教区ホールや学習室などが配置されています。アール壁の足元左側が礼拝堂への入口。

セントマークス教会
外壁は煉瓦煉瓦煉瓦・・全て同一の素材で出来た煉瓦の塊な訳ですが。近くでよく見ると、色々な形と大きさの煉瓦があり・・煉瓦組みにも色々と細やかな変化が・・派手やかさのない落ち着いた色あいの赤煉瓦・・
セントマークス教会
目地の詰め方がダイナミック!!  煉瓦のエッジが見えなくなるくらいの・・煉瓦のハッキリとした四角をぼやっとさせる様な目地の塗り方・・ざらついた大きめの目地は、煉瓦とは段差がなく・・同一面の仕上げ
セントマークス教会
いよいよ礼拝堂に入り・・祭壇方向を見る。暗いです!!! 写真で見るよりずっとずっと暗いです!!!  限られた開口から差し込んでくる光と煉瓦に囲まれた重厚な空間は・・さながらロマネスクの教会の様でもあります。しかし・・いい建築です。いい空間です。見に来て良かった・・
セントマークス教会
礼拝堂の天井は非常に特徴的な形をしています。変化をつけて短手に架け渡されたシャープな鋼製梁と、その間に架けられたヴォールト状の煉瓦天井の反復がつくる大小の波・・重たい煉瓦が波打つ・・印象的な天井
セントマークス教会
礼拝堂の中央部から側廊側を見る・・石灰岩の床、赤煉瓦の壁天井、木材による扉や家具・・この建築の竣工年である1960年という時期を考慮すれば、かなり古めかしい仕上がり様とも言えますが・・ 厳選された素材による構成は美しい
セントマークス教会
とても50年程前に出来た建築とは思えない・・もっと昔からここに在った様な感じ・・時代性を超えた存在感がある建築・・ (上写真) やや天井が低い側廊部の正面を見る。雁行して建ち並ぶ煉瓦壁の間・・縦長窓から強い光が差し込んできます
セントマークス教会
側廊部にスタッキングされていた椅子。T字型の背と座面が一体になった成形合板の作りは・・アルネ・ヤコブセンのデザインによる「T-chair」。70年代に入るとT-chairは廃番になっていたそうなので・・竣工当時のものだろうか?  建築によくマッチしています
セントマークス教会
祭壇横の窓を見る。窓枠が消えた開口部は、ガラスがない様に見せる納まり・・光が綺麗に差し込んできます。シーグルド・レヴェレンツという建築家について、詳しい資料や書籍はそんなに多くはなく・・建築家自身の著書などもあまり眼にした事もないのですが・・レヴェレンツという建築家はきっと寡黙で、無駄な事は口にせず、黙々と仕事に没頭している様なタイプの人だったんだろうなと・・ 訪れた建築の印象だけからの勝手なイメージ・・
セントマークス教会
教区ホールのエントランス部には大きな木製の庇。右側の中庭を挟んで建っているのは教区事務棟・・ もっともっと紹介したい部分や興味深い詳細は色々と在るんですが・・ とりあえず、これくらいで
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「建築探訪 99」-Sweden 4 / Stockolm

森の墓地ビジターセンター

森の墓地 内にある・・「ビジターセンター」(1923) で休憩。もともとは墓地管理のためのサービス用の建物・・1998年に改修され、カフェテリアと展示スペースとして利用されています。ピラミッド型のとんがり屋根を並べた愛らしい外観・・大屋根を冠した、ややノスタルジックなデザインは・・森の礼拝堂 にも通じます。

森の墓地ビジターセンター
外観の形がそのまま内部空間になっているカフェテリア。板張りの内装やペンダント照明が今時な感じ・・日本で最近多く見られる北欧デザインショップっぽい・・というか北欧です
森の墓地ビジターセンター
展示スペース。設計者であるグンナー・アスプルンドや、シーグルド・レーヴェレンツに関するもの・・もちろん世界遺産でもあり、計画開始から25年という長い年月を掛けて完成した力作・・ “森の墓地” に関する模型やパースなども展示されています。

「建築探訪 96」-Tokyo/ 青山 3

塔の家
道路の向かいにあるワタリウム美術館側より、西南側外観を見る

青山の外苑西通りに面した “小さな住宅” ・・ 写真左のマンションは「そこまで近く建てるか!!!」と驚くほどの近接ぶり・・この「塔の家」(1966) を設計されたのは東孝光さん。

塔の家
(左) 西側より外観を見上げる。地下1階、地上5階の計6層からなる住宅・・駐車場も1台分を確保・・ 敷地面積は、なんとわずか6坪ほど!!! 
(右) 南側より外観を見上げる。左手の街路樹は、この家の為に植えられた様に・・いい感じで建物に寄り添っています。
塔の家
建物の外壁を触る・・

この建物は内外共にコンクリート打放し仕上げ。内外コンクリート打放しの住宅といえば、すぐに安藤忠雄さんの名前を思い浮かべますが・・安藤忠雄さんが「住吉の長屋」で一躍名を知られる様になるよりも10年も前の作品・・ ANDO建築の代名詞である磨き上げられた様な、均一なコンクリート打放しも綺麗ですが・・この東さんの荒々しい肌理のコンクリート打放しも・・ 味があってgoodです。

(左)  竣工した1966年頃の様子・・まわりにはまだ高い建物もなく、まさしく「塔の家」・・ 
(右) 各階のプランを見る

5階の子供部屋はベッドの大きさから図ると3帖程度、4階の寝室も4.5帖程度、2階の居間も4.5帖程度・・家族3人、延20坪程度の家、内部には仕切りはなく、階段を介して縦に繋がった1室空間・・やや広い階段の踊り場に住んでいる様な・・約50年前に生まれた究極の都市住宅。必要最小限で都市に生きる・・”TOKYO”でしかありえない住宅・・余分なものを持たずに都市で暮らす・・現代にも通じる、こんな潔さが心地良いです。

「建築探訪 95」-Sweden 3 / Stockholm

復活の礼拝堂

森の墓地」の共同設計者であるシーグルド・レヴェレンツが設計した「復活の礼拝堂」(1925) ・・墓地内では「森の礼拝堂」に続いて2つ目に出来た礼拝堂。

(上写真) 礼拝堂へと向かうアプローチより北面を見る 。

復活の礼拝堂
礼拝堂へと向かうアプローチ

礼拝堂へと向かうアプローチを振り返ると・・一直線に道が開けています。その軸線の突き当たる先には “瞑想の丘” があり、その先には墓地入口があります。墓地入口から歩いて来る人は・・丘を超えて、背の高い樹々に覆われた長い小路を、遠くから見える小さな礼拝堂の、その姿を一直線に見つめながら・・かなりの距離を歩い来る事になります。

復活の礼拝堂

正面から見ると、コリント式の柱が12本並んだポーチ・・かなり古典的な神殿風の意匠なんですが・・横に廻って西面を見ると・・礼拝堂の本体となる建物の外観は比較的シンプルフラットな感じで・・無装飾の大きなヴォリュームがポーチ部分とは対比的で面白い・・屋根は置屋根の様に見えます。

復活の礼拝堂
長方形平面の礼拝堂内部・・シンメトリーな空間。突き当り中央に棺台。右手にある南窓から良い感じで光が差し込んで来ていました。

「建築探訪 94」-Sweden 2 / Stockholm

森の礼拝堂

森の墓地」にある礼拝堂・・ 柿葺きの大きな屋根が印象的な「森の礼拝堂 (1920) 」は墓地内にある5箇所の礼拝堂の内、最初に出来た・・最小の礼拝堂。

森の礼拝堂
大きな寄棟屋根で覆われた建物の・・半分近くは列柱に支えられた半屋外のポーチ部分・・ その姿はヴァナキュラーな農家ともどこか似ている感じ・・
森の礼拝堂
軒先には黄金の天使像・・ 棟には丸太・・
森の礼拝堂
高さを抑えたポーチ部・・ 支える柱はシンプルなトスカーナ式
森の礼拝堂
約10m角の正方形平面の礼拝堂内部。中央に棺台。床は棺台に向かって微妙に勾配が付いています・・

この建築の見どころでもある・・一度見たら忘れられない内部空間・・高さを抑えたドリス式の8本柱で支えられた・・白く塗り込められた半球型の天井・・ そこに居る人々やそこで過ごす時間を覆い尽くす、空間を支配するその大きな半球の頂部には・・トップライトからの抑制の効いた光が・・清らかな静かな追悼の空間は・・アスプルンド初期の代表作。