「建築探訪 44」-Osaka/上本町

シェラトン 都ホテル大阪

村野藤吾の遺作のひとつである「都ホテル大阪」(1985)に行ってきました。
*現在は「シェラトン 都ホテル大阪」です。

シェラトン 都ホテル大阪

(上写真左) 北西から外観を見る。千日前通りに面したファサードは、そびえる巨大な壁面といった感じだが・・他の普通のビルとはやはり違う・・どこか優しい品のある様な”姿”が美しいのだが・・写真ではうまく雰囲気が伝わらない。遠眼には分からない様な、少し少しの細かなデザイン処理が・・雰囲気の違いを生み出しているんだと、思います (写真は曇りだったので イマイチ)。

(上写真右) 近くで見ると壁面はゆるやかに波打っています。このわずかな波状のうねりが非常に効果的・・村野さんらしい凝った壁面デザイン。外壁はアルミ鋳物パネルで・・中央部の突出したパネルと、その両サイドの細かなRのついた溝でデザインされた細長いパネルと、大小のパネルによる構成。細長いパネルだけは頂部で中央パネルより長く伸びて、屋上の手摺支柱となっています。(写真では分かりづらい)

シェラトン 都ホテル大阪
(左) 窓部を室内から見ると・・外壁が突出しているところは、ちょうど窓下の空調機がある部分となっています
(右) 窓下の換気窓は打ち倒しで少しだけ開きます。その外側には・・ きちんと外壁材が張られています
シェラトン 都ホテル大阪
建物基部を支える地面から生えてきたような力強い、大きく太い柱の列柱・・の様に見えますが、実はこれは地下用給排気シャフ
シェラトン 都ホテル大阪
駅ターミナルからホテル側を見る。建物のつなぎとなっている部分に架かるキャノピーが綺麗です・・ 昨日触れた「千代田生命本社ビル」に似てます。  (上写真右) ホテル側から見る
近鉄新本社ビル上本町ターミナルビル

上本町にはホテル以外にもいくつかの村野作品があります。(村野さんと近鉄は戦前からつづく長い関係)
(上写真右) ホテルの手前は「上本町ターミナルビル」(1973)。これは外装リフォームが近年された様子・・ もともとは薄いステンレスサッシュのポチ窓が規則正しく綺麗に並んだ壁面デザインでしたが・・。
(上写真左) 「近鉄新本社ビル」(1969) 。奥にホテルが見えてます。サッシュと壁面を同一面で納めた・・おなじみの村野デザイン。

村野建築の魅力は・・モダニズムデザインが基本となっているのだけれども・・キチンと全体姿が3層構成だったり、規則正しいポチ窓だったり、細部ディテールがやや装飾的で凝ってたり・・と随所に、様式建築的/古典的/日本的/伝統的なテイストが加えられ・・一言では言い切れないような、絶妙なデザインのバランス感覚の巧みさと上品さにあるように思います。

「建築探訪 43」-Tokyo/目黒

千代田生命本社ビル

村野藤吾設計の「千代田生命 本社ビル」(1966) に行って来ました。
(上写真左) 低層棟側から高層部本館を見る。池を挟んで高層部本館と低層棟をわけたプランとなっています。左側はエントランス棟。
(上写真右) 低層部茶室内から本館を見る。外壁を覆うのはアルミ鋳物の I型ルーバー。

千代田生命本社ビル
エントランスホールを見る。外部の喧噪から執務空間を遮る「静謐な空間」のはずが・・作品集で何度も見て、期待していた空間が・・何かイメージしてたのとは違う??

2003年より目黒区総合庁舎として使われているので・・企業本社ビルだった頃とはやはり雰囲気がずいぶんと違っていると思われる・・ 建物全体に緊張感がないような気が・・ 張り紙サインや植木鉢、さまざまな備品等、余計なものが多く・・ちょっとした事でデリケートな空間は煩雑な印象になってしまう・・公共の建物なので仕方なしか・・ こうして村野建築が生き残っている事に感謝。

千代田生命本社ビル
村野建築の見所といえば階段!! ・・村野さんの階段は綺麗で有名。旧千代田生命本社ビルの階段も作品集で何度も見ていた・・ こうやって実際に見る階段は、確かに流麗なラインがとても綺麗。しかし、これも何か違う??  線が多い??
千代田生命本社ビル
(左) 手摺が一段増えているようだ・・ もともとは下の手摺だけのはず。高さが低く危険とされたのか・・一段付け加えられ、その手摺の支柱から持ち出しアームで腰部にアクリル板がつけられている・・もともとは横桟だけのはず。これも横桟1本では危険という事か・・しかし、これはなかなか手の込んだ追加だ
(右) お客用玄関の大きなT字型キャノピーを見る。これもラインが綺麗。ディテールの端々までデザイン力がいき届いている感じ・・ ランダムに林のように建った柱足元が真直ぐではなく、アールをつけ地面から生えてきた様な取り合い・・ 村野さんのいつものディテール、GOODです。敷石表面のテクスチュアもGOODです

「建築探訪 42」-Tokyo/虎ノ門

ホテルオークラ東京

「ホテルオークラ東京』(1962)  設計:谷口吉郎ほか設計委員会
日本の意匠/素材を軸とした、モダナイズされた伝統美によるホテル建築/空間。(上写真左) 本館西側-正面玄関側から見る。なまこ壁/陶板壁/菱形格子/格天井などなど随所に見られる和の意匠。
(上写真右) 本館北側-宴会棟側玄関から見る。西側からは6層、ぐるっと廻ったこちら側からは10層に見えるのは・・敷地の高低差が大きいので。

ホテルオークラ東京
ホテルオークラ東京といえば、この本館ロビー空間・・ 落着きと趣きがあり、ジャパニーズスピリッツを強く感じさせるロビー空間としては他に類を見ない完成度・・ 竣工から50年も経っているのに、古さを感じさせない・・谷口吉郎による秀逸な日本的空間・・
ホテルオークラ東京
垂直水平が軸となったロビーのデザインは、柱梁フレームによる日本の伝統的な空間美を意識・・障子の拡散光が満ち、障子下部からは緑がのぞく・・ 静かで落着いたロビーにはゆったりとした空気感・・外国からのお客様がとても多いです
ホテルオークラ東京
(左) “麻の葉”文様の格子組みがキレイ
(右) 一度見たら忘れられない、この空間にピタリとはまった照明器具
ホテルオークラ東京
(左) 花弁のような形をした椅子、それに合わせた漆塗り机・・ もロビー空間にピタリと決まり・・GOODです
(右) 宿泊室より東側外観を見る。各層毎にしっかりと伸びた庇は・・外装設計を担当した建築家/小坂秀雄らしいデザイン

〈追記〉2015/8/31閉館建替え

「建築探訪 41」-Tokyo/青山

根津美術館

表参道の南端・・ 青山の広い森のような敷地に建つ・・隈研吾さん設計の「根津美術館」(2009) を見に行って来ました。天気はあいにくの小雨。
(上写真) 西-駐車場側より見る。シンプルな切妻屋根だが・・屋根の先端が鉄板製で非常に薄くなっていてシャープなのがさすが・・この屋根先の薄さがこの建築の一番のチャームポイント。

根津美術館
ポーチ部を見る。壁面はリン酸処理の鉄板、軒裏は高圧木毛セメント板、梁は鉄骨露わしと・・工業製品的な素材感を生かした構成がGOOD
根津美術館
40m近くある長い・・露地的なアプローチ部を見る。右側の道路を隠す竹林と丸竹を小間返しで張った壁に挟まれ、2間近くある深い庇下・・包まれる様な軒下空間。この深い庇下空間を可能にしているのは天井面の三角鉄プレートの片持ち梁のおかげ
根津美術館
(左)竹林が植えられた道路側より見る
(右) 1階展示室は庭園に対して大きく開いた開放的な空間。竹練付け板の間に、照明器具や空調設備が仕込まれていて・・キレイな納まりの天井面
根津美術館
(左)南-庭園側より見る。棟/けらば/軒先の役物を一切排したシンプルな瓦葺き屋根 ・・ 大屋根の建築は、やはり軒の低さが美しさのポイントですよね
(右) 美術館と庭園を挟んで建つ、離れのカフェで・・ お茶して帰りました

式年遷宮

五十鈴川

伊勢神宮の魅力は・・
「何ごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」という西行が伊勢神宮を訪れた際に詠んだという歌に・・ 集約されている様に思われます。 本殿はもちろん数々の別社、長い参道や五十鈴川、背後の広い森も含めた・・ 敷地一帯のそのすべてのあり様が、人々を惹き付けて止まない伊勢の大きな魅力の源。
(上写真) 宇治橋を渡り参道を進み、まずは五十鈴川にてお清め。

伊勢神宮外宮
外宮前を見る。一面苔むして緑になった萱(かや)葺き屋根と黒ずんだ檜(ひのき)板塀が、まわりの樹々と一体化していて・・goodです。
伊勢へ参る時はもちろん・・ 外宮と内宮の両方へ詣でます。もちろん時間に余裕があれば「荒祭宮」「風日祈宮」「多賀宮」「土宮」「風宮」 ・・ などなどの周辺にある別社へも参りたいところです・・
伊勢神宮内宮
来年の式年遷宮に向けて・・新しい建物を建てる準備が始まっている内宮を見る

白い覆いがこれから建てる方で、その右手に現在の本殿がある。現在の本殿と全く同じ建物をすぐ横に建てて、古い方は取り壊す・・この「式年遷宮」は世界にも例を見ない特異な建築システム。「常若」という概念・・1300年以上前から、20年毎に建物を建替え続け・・ 来年で62回目・・ 62回×20年=1240年 (途中20年以上もあり)。・・ 凄いの一言につきる、本当にスゴイ。
本殿だけでなく、他の別社や宇治橋等もすべて建替え。装束神宝(馬具/武器/楽器/文具/日用品等々)も1000点以上が一流の職人により20年に一度一新される・・ その準備は何年も前から始まっています。準備された檜は1万本・・今回の式年遷宮の為の総額予算は550億。

(上写真右) 伊勢神宮の建物は神明造という建築様式・・ 弥生時代の高床式穀倉がルーツと言われています。すべてが檜の素木造で、屋根は萱葺き・・ 建物を支える全ての丸柱は地中に足下を直接埋める “掘立柱”。配置にやや違いはあるが、本殿のかたちは外宮も内宮もほぼ同じ。

「建築探訪 40」-Tokyo/目白台

東京カテドラル聖マリア大聖堂
目白通りより南側外観を見る

日本建築界の大巨匠・丹下健三の設計による「東京カテドラル聖マリア大聖堂」(’64)に行って来ました。1964年といえば東京オリンピックの年で・・もちろん丹下健三の最高傑作といってもよい「代々木国立屋内総合競技場」も竣工した年。
しかしこちらも負けずに素晴らしい・・ 十字型平面を覆う幾何学的な美しいHPシェル曲面による大屋根(大壁?)のみによるシンプルかつダイナミックな構成・・「代々木国立屋内総合競技場」と「東京カテドラル聖マリア大聖堂」・・同じ年に大傑作が2つも。
丹下さん51歳・・ 1952年の「広島ピースセンター」から始まった丹下健三絶頂期の終焉を飾る作品なのでは・・ 

東京カテドラル聖マリア大聖堂
(左) 西側より外観を見る。天気はあいにくの曇り雨
(右) 外装曲面の仕上材はステンレス材。近くで見るとこの様な大きなリブ形状をしており、表面はエンボス加工が施されています。5年程前に大改修されてキレイに (もともとのステンレスであるSUS304よりは、改修されたステンレスであるSUS445は・・光沢感が鈍いそうだ・・改修前の方が明るく軽快とのこと)
内部は撮影禁止なので、書籍より。外観構成がそのまま内部に現れた・・力強く、ダイナミックで、ストイックで、厳粛で・・ 素晴らしい祈りの空間となっています

倉敷の壁 #3

美観地区内、川沿いの大通りから一本入った通りの塀。竹でつくられた塀なのですが・・ 長い/太い & 細い/短い・・ の繰り返しによるデザインがGOOD・・ これは倉敷の町屋で多く見られる “倉敷格子” のデザイン・・ 
「倉敷格子」とは、主として町屋の1階正面部分の柱間に嵌め込まれる格子で・・ 親竪子の間に、上端を切りつめた細くて短い子を2本あるいは3本入れるかたちで・・形式的には親付切子格子と称されます。京都では糸屋格子とも称されます。

柱間に嵌め込まれた「倉敷格子」の場合・・ 格子内側には上吊り式の開閉式板戸・・  “符錠戸”を入れます。
(上写真)は出窓形式の、小さめの「倉敷格子」

「建物探訪 39」 -Hiroshima/三原

三原市芸術文化センター

「三原市芸術文化センター」(’07)  設計:槇文彦(1928-)
(上写真)東側芝生広場より見る。押し潰した半球型のホール屋根が特徴的な外観、鏡餅みたいです。建物中央部に1200席の多目的ホール、その背後にフライタワー、芝生広場に面したガラスBOX部がホワイエ、左側2層BOX部が事務室/楽屋/練習室等・・外観とプランが合致した明解な構成。

三原市芸術文化センター
(左) ホワイエの中庭を見る。ホワイエには大きな中庭が設けられています。左上部にはホール屋根が見えます
(右)中庭よりホワイエ、その向こうには芝生広場が見る

外部と連続したとても開放的な構成は、このホワイエがコンサート等が催されている意外の時にも、色々な市民活動に利用される場所として考えられているからだと思います。この日は平日で何の催しもない時でしたが、ホワイエは開放されていて出入りは自由、とても暑い日でしたが・・空調も効いていたのでひと休憩。

三原市芸術文化センター
芝生広場と連続した開放的なホワイエ

「独りのためのパブリックスペース」とはこの建物を設計した時の槇さんの論文題・・ 美術館で誰にも邪魔されず好きな作品と静かに対面できるように・・都市で独り佇む事ができる余裕と優しさのあるパブリックスペースが、日本の都市には少ないと嘆かれる槇さん・・訪れたこの日、広いホワイエでは男性が独りで本をずっと読んでいました。

「建築探訪 38」 -Osaka/梅田再開発 2

富国生命ビル

先日はいろいろと用事で大阪へ・・(上写真は)オープンしたばかりの建替えられた「富国生命ビル」。設計/施工は清水建設・・デザインアーキテクトには「フランス国立図書館」の設計で有名なフランス人建築家ドミニク・ペロー・・・力強く根を張った樹木の姿から着想、建物壁面は周囲を映す鏡面の「樹皮」・・・だそうだ。デザインアーキテクトという立場では、実際どれくらい細かく設計に関わっているかは計り知れませんが・・ 「ブリーゼタワー」に引き続き梅田に外国人建築家による”おしゃれな”高層ビルが完成しました。

富国生命ビル
ランダムにデザインされた凹凸のあるガラス面・・下の方は大きく上にいくほど小さくなっている・・正面には色のついたガラス、小口には鏡と、面により使い分ける事で複雑に周囲の建物がガラス面に映り込んでいる・・・そんな姿がペロー氏の言う “樹木”のイメージなんでしょうか・・・完成度は精緻とまでは行きませんが・・・こういうランダムなリズムのデザイン・・嫌いではないです・・

用事の1つ・・知人の方がモデルコンテストにてグランプリを受賞 !! 
大阪城で催された展示会場に見に行って来ました。この模型が凄い・・細部までの執念的な作り込み&美しさに感動しました。

どこから凝視しても手抜きのない精緻さ・・素晴らしい。建築もこうでなければ・・・「細部に神がやどる」とは近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの言葉。

倉敷の壁 #2

日本郷土玩具館の海鼠目地
数年前に塗り直されたばかりの・・キレイな海鼠目地

筋違の海鼠目瓦張は倉敷をイメージしやすい分かり易い・・アイコン。
柱梁が外部に露出している民家とは違い、倉というのは外壁の土塗り壁で木部を厚く覆うことで、火災にあっても壁の外面には被害が及んでも柱梁までには及ばない耐火性を考えた「土蔵造」という構造になっています。
漆喰で塗り込められた太い格子が入った窓は、土蔵造の倉の窓としてよく使われている「奉行窓」といわれる窓形式。