「建築探訪 124」-Finland 15 / ALVAR AALTO 10

フィンランディアホール

アルヴァ・アアルト設計の「フィンランディア・ホール(1971)」を探訪・・南北に長~い建物、東側の道から建物外観を見る。敷地は東側から西側へと少し上がっている傾斜地・・東側からのアプローチは1階が車、2階のペデストリアンデッキから人・・この東側の道を南にまっすぐ戻ると・・「キアズマ」に突き当たる。階段が東側のエレヴェーションの控え目なアクセント。

フィンランディアホール
北側から建物外観を見る。上部に大きく突き出たヴォリューム部分が劇場。外壁は白大理石・・石の巾には大小変化をつけている・・近づいて見えるディテールの楽しみ
フィンランディアホール
西側の道路(マンネルヘイム通り)から建物外観を見る。こちら側にメインエントランスがあります。左手・・片流れ屋根の”変形台形型”のヴォリュームが1750席の劇場部分。建物全体も有機的な平面形をしていて・・一言では説明し難いカタチなのですが・・あえて言うならば「握り柄のある打製石斧」・・不規則で定まりのない流動的なカタチは・・”アアルト好み”
フィンランディアホール
西側外観を見る。ヴォリュームが分かれている部分の左手が劇場/室内楽ホール棟、右手が会議棟。長く伸びる水平庇が効いています
フィンランディアホール
西側外観の会議棟部分を見上げる。ひだひだ多面体のカーテンウォール(ガラス窓)がチャームポイント。外壁はよく見ると、1枚1枚の石に微妙に”むくり”が付いている・・これはアアルトの意図したデザインではなく・・素材の特性による経年変化と思えます。(古い作品集に見られる外観写真では、今とは逆に白大理石は反っている・・オリジナルの外壁は凍害による反りや傷みなどの問題から、張替えられ・・今度は特殊加工を施し・・しかし逆に”むくり”・・)
フィンランディアホール
西側エントランスキャノピーを支える柱。ちょっとしたデザインディテールが洒落てます・・こういった小さな部分の工夫を見ていると・・建築家の “力の入れ具合” が良く見えてきます
フィンランディアホール
西側のメインエントランスを見る。低く抑えて、広く招き入れる感じです
フィンランディアホール
西側からエントランスロビーに入りました。ぐっと抑えています、壁のアアルトタイルが効いています
フィンランディアホール
天井高さを抑えた・・エントランス空間から、ホワイエのあるメインフロアへと上がってゆく・・流動性を感じるインテリアとアプローチ。床は大理石、壁は大理石とアアルトタイル
フィンランディアホール
エントランスロビーの東側に面する部分。家具も照明も・・もちろんアアルトデザイン。突き当りの壁・・アクセントになっているタイルは、もちろんアアルトタイル
フィンランディアホール
ロビーからお手洗いに入る部分。ヴォリュームのあるアアルトタイル壁で衝立
トューリョ湾
建物の北端には「トューリョ湾」が近接・・
トューリョ湾
「トューリョ湾」越しに建物を望む・・中央の白い建物がフィンランディア・ホール。ヘルシンキはフィンランドの首都であり、同国最大の都市(都市域の人口で100万ちょい)ですが・・上写真の様に高い建物はあまり無く、湾と緑の中に都市が広がった様な・・本当に程良い感じの都市。(ただ冬は寒いし、長いんだろうけど・・訪れたこの季節は最高!!でした)
「フィンランディア・ホール」はアアルトの手による 「ヘルシンキ都市センター計画 (上図)として出来た最初(で最後)の建物。”計画”によるとトューリョ湾の水辺にはフィンランディア・ホールを基点として幾つもの公共建築(会議場、オペラハウス、美術館、図書館等)が建ち並ぶ予定でした・・
水辺だけでなく「カンピ地区のオフィスビル」までも、アアルトは考えて・・
雁行する矩形ヴォリュームを並べた建物が「カンピ地区のオフィスビル」、写真の手前がヘルシンキ中央駅・・

水面に映える公共建築群の姿が、対岸を走るヘルシンキ中央駅へと向かっていく列車から綺麗に一望される計画でした・・ また駅とフィンランディア・ホールの間には多層型の巨大な扇状広場(広場の下は駐車場)を設ける計画でもありました・・

手前が扇状広場。左下にフィンランディア・ホール
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「建築探訪 123」-ISE SIMA

志摩観光ホテル

村野藤吾の設計による「志摩観光ホテル」を訪れる・・ 正面に見えるのは本館。本館が竣工した1969年当時は全体で200室を擁し・・国内最大規模のリゾートホテルだったそうです。屋根と軒が重層する外観が特徴的。

志摩観光ホテル
真珠養殖の発祥地でもあり、リアス式海岸が織り成す景勝地としても知られる・・英虞湾に面して建つホテル。左側、建物下にあるのが英虞湾・・しかし天気がやや悪い
志摩観光ホテル
本館の1階ロビーを見る。松材による力強い天井の意匠。突き当りの奥にレストラン「ラ・メール クラシック」
志摩観光ホテル階段
本館の1階ロビーにある階段を見る。ちょっとした部分にまで・・アールや面取りを施す・・細やかなディテールへの気配りが、心地良い ・・村野藤吾さんの建築
志摩観光ホテル
本館2階のロビーを見る。村野さんオリジナルデザインの障子・・ソファやテーブルといった家具・・いかにも村野調なインテリア
志摩観光ホテル
本館2階のラウンジ「アミー」を見る。1973年の映画「華麗なる一族」のロケが行われた場所としても有名。昭和天皇はじめ、今の天皇陛下・皇后陛下や、皇太子殿下・同妃殿下、秋篠宮殿下・同妃殿下・・ モナコのグレース王妃夫妻などなど・・皇室関係の方々が泊まられる事でも知られているホテル・・ 竹をギッシリと並べた天井が壮観
志摩観光ホテルラ・メールクラシック
藤田嗣治や小磯良平の絵画も壁に並ぶ・・本館1階にあるレストラン「ラ・メール クラシック」
志摩観光ホテル
戦後初の純洋式リゾートホテルとして、1951年に開業した建物である旧館を見る。開業当時は25室。開業した年の秋には昭和天皇も・・ご宿泊。旧館の奥にあった増築部(1960)は、今は撤去されていて・・在りません
志摩観光ホテル
旧館の建物自体は・・設計者である村野藤吾が戦時中に設計した「鈴鹿海軍工廠 航空隊将校 集会場(1943)」の木材を移築して、建てられたもの
志摩観光ホテル
開業当時の趣きを今も残す、旧館のロビーを見る。旧館部分は、今はホテルとしては使用はされていませんが・・内部は公開されており、自由に見て廻る事が出来ます
志摩観光ホテル
太い柱梁が露わしとなった高さのある空間・・旧館の和食レストラン「浜木綿」。これだけのスペースを何も使わずに維持されて・・見学の為に公開して頂けるとは・・感謝
志摩観光ホテル
ここも・・現在はもちろん営業していないが、今にもシェフが出て来そうな雰囲気・・旧館にある鉄板焼き「山吹」のインテリアを見る。ここの障子もオモシロイ・・そして天井も・・さすがの村野デザイン
ホテルには夕方、到着。窓から英虞湾を見下ろす。英虞湾に沈む夕陽は、このホテルの大きな魅力の1つなのだが・・残念(曇り)。ならば、このホテルの・・もう1つの大きな魅力である・・食事に期待 !!
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「建築探訪 122」-Finland 14 / ALVAR AALTO 9

電力公社ビル

ヘルシンキ市内のカンピ地区に建つ、アルヴァ・アアルト設計の「電力公社ビル」(1968)。平面形は中庭VOIDを囲んだ・・”ロの字型”の変形。既存棟ヴォリュームに対して、その3倍にあたるヴォリュームの新築棟を付け加えるという・・難しい増築による計画。
(上写真)左手に少し見えている赤煉瓦の部分が既存棟で、それより右側の黒っぽい金属張りの部分が増築棟。 屋上の積み重ねられた水平庇で新旧部の接続をうまく融和・・とても大きなオフィスビルです。

電力公社ビル

明るく見えますが、この写真は晩御飯を食べた帰り・・PM9時頃に撮った写真。見学する予定には入れてなかったけれど・・この日の目的である飲食店から、泊まっているホテルに帰るまでのルートで偶然にも発見!!  
(上写真) 規則正しく割付けられた “アアルト窓” が気持ちいい感じ。

電力公社ビル
外壁は金属製の・・いわゆる “波板” 。アアルトはフィンランドを代表する国民的建築家で・・世界的にも評価の高い近代建築家・・彼の手掛けた建築が、フィンランドに多数有るのは当たり前なんですが・・

しかしそれにしても・・ヘルシンキ市内だけでも、見るべき(ゆっくり見たい)建築がたくさん。中も見たかったなぁ・・残念。ちなみに、この日は北欧に来て5日目・・パサパサした北欧の食事にもそろそろ飽きてきて・・

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「建築探訪 121」-Finland 13 / ALVAR AALTO 8

アアルト自邸

ヘルシンキ中心部から北西に5kmほど離れた住宅地・・建築家自身の設計による「アアルト自邸」(1936)。(上写真)アクセスとなる道路側より、窓はほとんどない北側外観を見る。漆喰塗りされた煉瓦壁と塀の・・白をベースにして、濃茶色の板張りヴォリュームと木製扉がアクセント的にコラージュ。左手の背丈ほどの塀は、建物本体ではない外構としての塀ですが・・きっと建物と一体でデザインを考えていたのではないかと・・goodです、効いてます。残念ながら足場が架けられていて・・フィンランドはこの時期どこでもメンテナンス中・・

アアルト自邸

煉瓦に塗られた漆喰を補修中・・結構はがれています、何年ぶりに塗り替えているんだろう・・聞きたかったなぁ。屋根は、表から見ると矩形なんだけど、裏から見るとバタフライ型・・専用事務所を近くに建てるまでは、こちらが住居兼用の事務所でした。

アアルト自邸
庭側より南側外観を見る。1階の正方形の大きな窓がダイニング。2階のテラスに面した大きな開口部のところが「プチ・リビング」
アアルト自邸
リビングを見る。本棚の向こうにはダイニング。ソファテーブルの上には、白地に金色の縁取りが上品な・・アアルトデザインの吊り照明器具。庭に向かう開放感のある大きな開口に、小さな腰壁を付ける・・アアルトらしい構成
アアルト自邸
ダイニングを見る。木桟が付いた・・明るめの絶妙な加減の茶壁がチャームポイント。壁色とバランスの取れたアアルトデザインのオリジナル照明器具・・こちらはモダンな感じ、形がオモシロイ
アアルト自邸
ダイニングから南側を見る。大きな窓の向こうには、庭の景色が広がる。北側外観とは一転、開放的な南側。大きな窓の一部に縦長換気窓・・いつもいつもの “アアルト窓” です
アアルト自邸
ダイニングとリビングの間にある造り付けの収納家具・・さきほどの「絶妙な加減の茶壁」と向き合って配色されているのでしょうか・・キレイです。棚上にはアアルトがデザインした、有名なガラスの花瓶が飾られています
アアルト自邸
吹抜けのあるアトリエを見る。机上には図面が何枚も・・今も仕事が行われているかの様な雰囲気。正面奥の階段は書庫に繋がる。正面、アトリエの中2階へと上がる急勾配な階段は・・暖炉の上に設置されていて・・効率的&オモシロイ
アアルト自邸
1階から階段を上がった所、2階の各個室へと至る前に、暖炉とソファのある共用スペース・・動線的には “大きな踊り場” なんだけれども、程良い広さの落ち着く”プチ・リビング “といった感じで・・goodです。ブラインドが設置された南面の大きな腰窓の向こうにはバルコニー
アアルト自邸
2階収納庫・・帽子、コート、鞄・・出掛けてたアアルトが帰ってきている様な・・
アアルト自邸
鞄には「ヘルシンキ行き」のフィンエアーのタグが・・アアルトのサインも!!  アアルトは1976年に亡くなるまで・・40年間、この家で暮らしたそうです
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「建築探訪 120」-Finland 12 / Jyvaskyla

クオッカラ教会

ユヴァスキュラという町にある・・フィンランドの若手建築家による現代建築を探訪。アンッシ・ラッシラ + テーム・ヒルヴィランミ設計による「クオッカラ教会」(2010) 。屋根、壁、鐘楼ともに暗色のスレート張りで統一した外観は彫刻的な佇まい。(上写真) 西側より外観を見る。西側の1階部分には教会の事務スペースを配置・・街と教会のコミュニケーションを促進。

礼拝堂が在る2階メインフロアは外観で見ると、1階事務スペースの上・・ちょうど三角形部分のヴォリュームに配置。平面形は矩形なんだけれども・・微妙に歪んでたり、出入りがあったりしていて(屋根面に現れている折れ線を見ても分かりますが)・・それが単純ではない少し動きのある外形に結びついているのかなぁ・・

クオッカラ教会
外部階段で2階まで上がりアプローチ。軒先のライン、屋根面の折れ線、壁面のくぼみ・・ 真っ直ぐにしてしまいそうな所を、真っ直ぐにしていないのが・・現代的な建築に仕上げるポイントなのかなぁ・・
クオッカラ教会
外壁のスレート張り詳細。以外と厚みは無いんですよね・・ちよっと表面が欠けているところもあったり・・
クオッカラ教会
礼拝堂内、祭壇方向を見る。大きな空間ですが木造です。礼拝堂内は外観の形状そのままの三角形空間ですが・・頂部を丸くした三角形空間。その頂部のトップライトから差しこむ光が効果的。正面祭壇の左側にある側窓も効いています。祭壇正面を飾っているイコンは・・現代アートのようにも見える、若々しい感覚の解釈によるイコン。
クオッカラ教会
屋根を支えているメインは・・頂部を丸くした三角形空間なりに曲げられた集成材木梁。床、壁、天井の内装部分だけに限らず構造材、家具まで・・ほとんど木材。フィンランド建築らしい・・木材を多用した建築。
クオッカラ教会
そして何と言ってもこの “グリッド状フレーム” ・・これが効いています。これも梁と同じく・・頂部を丸くした三角形空間なりに曲げられています・・シェル状の木製格子フレームとなっているのですが、写真で見るよりも厚みがあるので・・きっと構造的にも効いているのでしょうか

床、天井、壁、構造材、家具まで・・そのほとんど木材なんだけれども、漂白っぽいテイストで仕上げされているせいか・・全体としては、しつこさのない気持ちの良い・・現代的な雰囲気になっています

「建築探訪 119」-Finland 11 / ALVAR AALTO 7

アルヴァ・アアルト設計の「アカデミア書店」(1969) を探訪。ヘルシンキ中央駅からすぐ・・賑やかな中心街の角地に建つカーテンウォールのオフィス建築。外観を見て分かる通り、隙間なく隣接する煉瓦造の古いオフィスビル群と・・外形ラインはピタッと揃えられたカタチ。表から見ると地上6階。表から見えない書店部分は3階建て。

窓詳細を見る。銅製のカーテンウォール。左側に隣接する赤煉瓦の建物(サーリネン設計)との関係性には・・アアルトも色々と考慮したんでしょうが・・対比的な感じもしますが、どうでしょうか。

アカデミア書店
玄関扉を見る。この建具は真鍮製だろうか・・なんとも言えない艶光沢がgood、素材の持ち味の勝利・・さらに効いているのが、この丁番・・カッコイイ丁番だ。引手と共にこれもアアルトのオリジナルデザイン物なんだろうか・・
アカデミア書店
以前に紹介した、他のアアルト建築で2連はありましたが・・これは3連の “アアルト引手“。 1つはもちろん、2つでも3つでも使える必要長さにしばられない・・ひとつでショートからロングまで対応できるデザインの引手。
アカデミア書店
この建築のメインは、何と言っても・・この”天窓“。水晶のような形をした”天窓” が・・天井にドラマティックに突き刺さっているんです。上階のぐるりと張り廻された白大理石の腰壁が・・階下から余計なものが見えない様に、視線をうまくコントロール。(上写真)3層吹抜けの空間を1階より見上げる。改装工事中につき1階店内の半分は、仮囲い(上写真の左側)で覆われた状態・・残念。
アカデミア書店
(左) 2階カフェ部分より、建物中央の吹抜けを見る。(右) 2階より “天窓” を見る。水晶のような天窓は3基。
アカデミア書店
2階より “天窓” を見る。ダイナミックで個性的な・・”天窓” はとても大きい。やはり腰壁の存在が効いてい・・2階腰壁よりも3階腰壁が・・セットバックしているのも効果的。
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「建築探訪 118」-Finland 10 / ALVAR AALTO 6

アアルトのアトリエ

ヘルシンキ郊外にある「アアルトのアトリエ」(1962)を探訪・・
建築家アルヴァ・アアルトが自身で設計したアトリエ・・通りから塀越しに建物の東面を望む。中庭を抱え込んだ・・L字型プランの建物。通りに面している部分のヴォリューム(アアルトの仕事部屋)の通り側には窓は無く・・寡黙な表情を見せています。

アアルトのアトリエ
ぐるりと廻ってきて・・スタッフの作業室であるドラフティングルームや食堂、事務室などが並ぶ・・北側のヴォリュームを見る。1階中央部に玄関扉。2階の水平連続窓部はドラフティングルーム
アアルトのアトリエ
煉瓦に白塗装の外壁・・
アアルトのアトリエ
大きな窓面に挟まれた、2階ドラフティングルームを見る。北側に面した右手から、左手の南側ハイサイド窓に向けての傾斜天井
アアルトのアトリエ
傾斜天井と円弧壁で構成された・・アアルトの仕事部屋を見る。奥に行く程だんだん・・部屋の巾が広くなっていく&天井が高くなっています。右手の中庭に面した腰窓と、部屋の突き当り面のハイサイド窓の開口バランスが気持ち良いです。緑の蔦が茂る突き当り面の左側、階段を数段あがった所に出入口扉
アアルトのアトリエ
出入口扉のある所から・・アアルトの仕事部屋を見返す(見下ろす)。アアルトデザインの様々な種類の照明器具が吊られています
アアルトのアトリエ
L字型の建物に囲われた、傾斜のついた中庭を見る。荒削りな石が・・段状に緩やかに円弧を描きながら、屋外劇場の様に・・配置されています。左手がドラフティングルーム、少し窪んだ所で折れて、右手がアアルトの仕事部屋。左手から右手へ向けて、ひと繋がりの1枚屋根は・・どんどん高くなっていってます
アアルトのアトリエ
中庭に面したアアルトの仕事部屋のヴォリュームを近くから見る。大きな円弧を描く壁の足下・・建物基礎部分にも細やかなデザイン、小さな円弧が幾つもつながり・・大きな円弧へと
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「建築探訪 117」-Finland 9 / ALVAR AALTO 5

フィンランド国民年金協会

アルヴァ・アアルト設計の「フィンランド国民年金協会」(1956) を探訪・・
ビジネス地区、三方を道路に囲われた、三角形敷地に建つ、800人の職員が働くオフィスビルとして計画された建物。平面は中庭を囲んだ台形型。
(上写真) 北東より正面外観を見る。道路なりに雁行させた構成と水平連続窓がファサードの特徴。とても大きな建物です。

フィンランド国民年金協会
雁行する外壁を近くから見る。煉瓦壁&金属部材の構成。
フィンランド国民年金協会
水平連続窓の詳細を見る。遠目に見ると帯状の構成なんだけど・・近くで見るとポチ窓でもある・・FIXガラスとFIXガラスの間は換気窓。 アアルト建築ではお馴染みの “アアルトらしい窓” ・・「縦長換気窓+嵌殺し」の連続構成
フィンランド国民年金協会
建物の下層部を抑えた感じにするのも・・他の建物と同じアアルトの好む手法。トーンを抑えた・・石、タイル、銅板、ブロンズによる構成
フィンランド国民年金協会
フィンランド国民年金協会
経年変化して・・なんとも言えない味わいが出てる銅板。比較的小さなモジュールの金属製スパンドレル
フィンランド国民年金協会
北東側、建物正面のエントランス部を見る。”下層部の抑え” がよく効いています。小さな庇の出がある、その下部・・格子、扉✕4、表示板が並んでいるところが玄関
フィンランド国民年金協会
ダイナミックな4つのスカイライトがある「メインホール」・・もともとは、この建物の為にデザインされた造付けの “執務ブース” がずらりと並んでいて・・来館した市民の為の受付相談スペースでしたが・・いまは多目的ホールといった使い方の様です。 オリジナルの “執務ブース” は、別の場所に1台だけ展示されていまいた
フィンランド国民年金協会
(左)スカイライトを見上げる。(右) スカイライトは2重になっていて・・その間の空間に照明器具や日除けスクリーンが設置されている
フィンランド国民年金協会食堂
まだ10時半位なんだけれども・・何故か賑わっている? 食堂。
フレックスタイム制の為、早朝に出勤した人が今頃お昼ご飯を食べるのだそうです。
左側ガラス窓の向こうには中庭。柱はガラス面より控えた位置&テーパーを取った形としているので・・庭に対して開放的な雰囲気の食堂となっています
フィンランド国民年金協会食堂
特注タイル(アアルト建築ではお馴染みなんですが凸状の管状タイル。フィンランドの有名な陶器メーカーARABIA社製)・・”アアルトタイル” を何色か組み合わせた・・ 食堂の壁がgoodでした!!!
フィンランド国民年金協会食堂天井
食堂の天井は・・放熱板の機能がある金属製パネルが張られています
フィンランド国民年金協会
(左) 図書室を見る。整然と天井に並んだ正円形の天窓と、書棚に囲まれ一段窪んだ閲覧室の構成は・・アアルトの初期傑作でもある「ヴィープリの図書館(1936)」を思い出さずにはいられない。(右) 格天井で仕上げられた会議室を見る
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Casa Brutus

ホテルオークラ東京

先日・・「Casa Brutus」1月号を買いました・・
まだ歴史が浅い近代建築はその魅力や価値が、一般的には理解されにくく。それを守る制度もまだ充分でなく・・ 価値のある貴重な建築作品であっても・・資本主義という大きな経済性の波に負けてしまう事は・・少なくありません。

日本の名作近代建築の紹介をする特集号なんですが・・ページを多く取って、表紙を見ても分かる通り、いちばん力を入れているのは・・
「ホテルオークラ東京のロビーは壊さないで!!」というエール。

本館の建替えが決定している「ホテルオークラ東京」(1962)・・特にそのロビー空間は、国内だけでなく海外にも信奉者が多い・・日本近代建築の珠玉と言っても過言ではない空間。失なわれてしまう前に・・ 再訪したいですよね。