「建築探訪 103」-France 13 / Paris

ポンピドゥーセンター

いまや見慣れたかも知れぬ、観光地としても多くの人が訪れる、パリの有名な総合文化施設・・「ポンピドゥー・センター」(1977) 。建築家は・・レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースの2人組。いまや共に超大御所の建築家となった2人も、1971年のコンペ当時にはピアノ34才、ロジャース38才。(上写真) 南側外観の足下を見る。柱から持ちだされたクラフト感ある独特な形状をした・・鋳鉄製ゲルバレット梁の長さは8m。

この建築は・・何と言っても、この外観のインパクトが凄い・・建物を支える構造である鉄骨柱梁が剥き出しなだけでなく、電気・水道・空調などの設備配管まで剥き出しになっている建物・・・普通は内側にあって見えない(見せない)部分が、全部表に出てきている(人間で例えるならば、内蔵や骨格が全部見えている状態?)・・  無論その外観に反感を抱く人も少なからず・・

ポンピドゥー・センターのすぐ横にあった教会に入ってみました。・・この様な昔ながらの建物がたくさんあるパリの街並み・・ そこに突然現れた “いつまでも工事中” の様にさえ見えるポンピドゥー・・・
ポンピドゥーセンター
西側の広場とは反対側、通りに面した東面ファサードを見上げる。設備のダクトやパイプだらけの外観・・しかも、わざわざ目立つ色でその存在感を強調し・・古い街並みを挑発さえしているかの様な感じ・・
ポンピドゥーセンター
建物の東南角を見上げる。40年近く前にして、この前衛的外観 !!・・・パリ市民からすれば、竣工当時は工場にしか見えなっかただろう・・ よくぞこの計画案を選択したものだ・・審査会の委員長がジャン・プルーヴェだったという事も大きかったのだろうか・・
ポンピドゥーセンター
最上階まで続く “ガラスチューブエスカレーター” と、巨大な “展覧会のお知らせ” が眼を引く・・広場側の西面外観を見る (こちらの建物となんとなく雰囲気が似ています) 。広場の床は建物側に向かって傾斜が取られており、自然と視線や足が建物へと向かう・・ 6階建て、巾166m、奥行き60m・・サッカー場が縦に積んで6面も取れる。

“ハイテック” と呼ばれた・・「レイト・モダン建築」 はどうしても「過度」に見えてしまう・・マテリアルやテクノロジーを装飾的にさえ見える様に強調したその姿は・・ やはり”SF的” なんだけれども、その”SF的orマンガ的”な感じが楽観的でgoodですよね。その源流とも言えるアーキグラムのイラストの中に見られる様な・・硬直したモダニズムが描く都市とは違う、終わる事なく無限に自由に変転伸展していく都市のイメージは”まだまだ”実現は難しいだろうがオモシロイ・・  ポンピドゥーもアネックスなどを作らずに、パリの街並みの中でその本体をどんどん増殖伸展させていってはどうなんだろうか・・

ポンピドゥーセンター
建物内部を見る。建物の短手を横断するスティールトラスのスパンは48m。彩色された梁や設備配管もインテリアとして映えている?  ・・ 現代美術館、研究図書館、デザインセンターなどの機能がつまった巨大な建物の内部空間は柱が1本もない無柱空間、どんなイベントにも対応できる可変性の高いフレキシブル空間

「デイサービスセンター」-鉄骨建方

トリムデザイン設計のデイサービスセンター

今日からデイサービスセンターの建方が始まりました・・ 建方とは柱を立て、梁を架け、建物の骨格となる・・骨組みを組み立てる工事。工場で製作した部材をクレーンで持ち上げて、ひとつひとつ組立固定していきます。

鉄骨工場
工場での鉄骨製作の様子です。錆止め塗装を塗る前の鉄骨は迫力があります・・生なスチールのマテリアル感はgoodですが、このままでは直ぐに錆びてしまうので・・ 溶接などの作業が済んだ後に、分厚く塗装をしてしまいます。右奥には塗装が済んで、出荷待ちの柱梁が積まれています。

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「建築探訪 102」Sweden 7 / Stockholm

ストックホルム近代美術館の搬入口

ストックホルムのシェップスホルメン島にある「ストックホルム近代美術館」(1997) 。設計はスペインの建築家、ラファエル・モネオ。
(上写真) やや高台に建っている建物の外観を見上げる。アクセス的には裏となる側から見ています。左下に見えるのは美術品搬入口。

ストックホルム近代美術館
ストックホルム近代美術館
美術館の計画でとても重要な展示室の形態が・・外観にそのまま反映されている事がこの建築の大きな特徴・・「 方形平面+ピラミッド型天井+ルーバー付トップライトの突起 」のアイコン的要素が反復・・ 

展示室の平面的な大小の変化が、外観ヴォリュームとして・・そのまま拡大縮小コピーの様に反映されています。美術館の設計者であるラファエル・モネオは、デンマークの建築家ヨーン・ウッツォンの事務所に勤めていた事もあるそうなので・・ 北欧独特の地勢や気候、建築や光などについて・・詳しかったのでしょうね。
( 上の内部写真と断面図は 「a+u 1998年10月号」より )

ストックホルム近代美術館のロゴ
外壁に描かれたストックホルム近代美術館の有名なロゴは・・ ロバート・ラウシェンバーグが描いた手書きの文字を、そのまま引用して利用するという・・美術館のサイン計画を手掛けたスゥエーデンのグラフィックデザイナー、ヘンリック・ニーグレンのアイデア。
ストックホルム近代美術館のオーニング
オーニング付きサッシのディテールを見る
観光周遊船からのストックホルム近代美術館
観光周遊船から・・湾越しに見えた「ストックホルム近代美術館 」。右側には大小のトップライトが幾つも見える展示室群、左側の長方形ガラス面の部分は海が見渡せるレストラン、その更に左の神殿風の建物のところは美術館と一体となった建築博物館・・とても横に長~い建物です。
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「建築探訪 101」-Sweden 6 / Stockholm

ペーター・セルシングの設計による「ストックホルム文化会館」(1974) 。ストックホルムの中心部に位置する・・図書館、シアター、スタジオ、ギャラリー、カフェなどが集まる複合文化施設。ダイナミックな三角形のフロアパターンの広場。

交通の便も良い市内の中心に在りながら・・広々していて、市民がゆるりと過ごしている公共の施設・・どこか「せんだいメディアテーク」と似ている感じがします。
近年の北欧図書館建築は面白い建物が多い・・ここは建物は古いが、内装にはそんな雰囲気も少しあったり・・カラフルで、楽しげで、いろいろな居場所や家具が設えられているのが・・共通する特徴。
真っ直ぐじゃない本棚・・サインがgoodです。
エスカレーターホールに置かれたアート。幾つかあるギャラリーも無料で楽しめたり、ストリートチェスをする人が集まっているホールがあったり、ダンススタジオがあったり、屋上はビアガーデン的になっていたり・・何でも在りな施設でした。
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「建築探訪 100」-Sweden 5 / Stockholm

セントマークス教会

シーグルド・レヴェレンツ(1885-75) の代表作・・「セント・マークス教会(1960)」。(上写真) 白樺の木立を背景に佇む・・赤褐色煉瓦に覆われた教会・・L字型をした建物の出隅部付近、礼拝堂アプローチから外観を見る。右側の高い部分が礼拝堂、左側の低い部分には教区ホールや学習室などが配置されています。アール壁の足元左側が礼拝堂への入口。

セントマークス教会
外壁は煉瓦煉瓦煉瓦・・全て同一の素材で出来た煉瓦の塊な訳ですが。近くでよく見ると、色々な形と大きさの煉瓦があり・・煉瓦組みにも色々と細やかな変化が・・派手やかさのない落ち着いた色あいの赤煉瓦・・
セントマークス教会
目地の詰め方がダイナミック!!  煉瓦のエッジが見えなくなるくらいの・・煉瓦のハッキリとした四角をぼやっとさせる様な目地の塗り方・・ざらついた大きめの目地は、煉瓦とは段差がなく・・同一面の仕上げ
セントマークス教会
いよいよ礼拝堂に入り・・祭壇方向を見る。暗いです!!! 写真で見るよりずっとずっと暗いです!!!  限られた開口から差し込んでくる光と煉瓦に囲まれた重厚な空間は・・さながらロマネスクの教会の様でもあります。しかし・・いい建築です。いい空間です。見に来て良かった・・
セントマークス教会
礼拝堂の天井は非常に特徴的な形をしています。変化をつけて短手に架け渡されたシャープな鋼製梁と、その間に架けられたヴォールト状の煉瓦天井の反復がつくる大小の波・・重たい煉瓦が波打つ・・印象的な天井
セントマークス教会
礼拝堂の中央部から側廊側を見る・・石灰岩の床、赤煉瓦の壁天井、木材による扉や家具・・この建築の竣工年である1960年という時期を考慮すれば、かなり古めかしい仕上がり様とも言えますが・・ 厳選された素材による構成は美しい
セントマークス教会
とても50年程前に出来た建築とは思えない・・もっと昔からここに在った様な感じ・・時代性を超えた存在感がある建築・・ (上写真) やや天井が低い側廊部の正面を見る。雁行して建ち並ぶ煉瓦壁の間・・縦長窓から強い光が差し込んできます
セントマークス教会
側廊部にスタッキングされていた椅子。T字型の背と座面が一体になった成形合板の作りは・・アルネ・ヤコブセンのデザインによる「T-chair」。70年代に入るとT-chairは廃番になっていたそうなので・・竣工当時のものだろうか?  建築によくマッチしています
セントマークス教会
祭壇横の窓を見る。窓枠が消えた開口部は、ガラスがない様に見せる納まり・・光が綺麗に差し込んできます。シーグルド・レヴェレンツという建築家について、詳しい資料や書籍はそんなに多くはなく・・建築家自身の著書などもあまり眼にした事もないのですが・・レヴェレンツという建築家はきっと寡黙で、無駄な事は口にせず、黙々と仕事に没頭している様なタイプの人だったんだろうなと・・ 訪れた建築の印象だけからの勝手なイメージ・・
セントマークス教会
教区ホールのエントランス部には大きな木製の庇。右側の中庭を挟んで建っているのは教区事務棟・・ もっともっと紹介したい部分や興味深い詳細は色々と在るんですが・・ とりあえず、これくらいで
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「建築探訪 99」-Sweden 4 / Stockolm

森の墓地ビジターセンター

森の墓地 内にある・・「ビジターセンター」(1923) で休憩。もともとは墓地管理のためのサービス用の建物・・1998年に改修され、カフェテリアと展示スペースとして利用されています。ピラミッド型のとんがり屋根を並べた愛らしい外観・・大屋根を冠した、ややノスタルジックなデザインは・・森の礼拝堂 にも通じます。

森の墓地ビジターセンター
外観の形がそのまま内部空間になっているカフェテリア。板張りの内装やペンダント照明が今時な感じ・・日本で最近多く見られる北欧デザインショップっぽい・・というか北欧です
森の墓地ビジターセンター
展示スペース。設計者であるグンナー・アスプルンドや、シーグルド・レーヴェレンツに関するもの・・もちろん世界遺産でもあり、計画開始から25年という長い年月を掛けて完成した力作・・ “森の墓地” に関する模型やパースなども展示されています。

「建築探訪 98」-Tokyo/蒲田

森山邸

SANAAの西沢立衛さんの設計による「森山邸」(2006) 。1~5坪程度の小さな白い箱が10個・・ 敷地内に散りばめられた様な不思議な・・それまでになかった斬新なプランの集合住宅です。(上写真) 北側道路から見たところ・・箱と箱の間は土のままで庭のような、路地のような・・

森山邸
10個の独立した箱で・・3軒が住まうかたちの集合住宅なので、複数の独立した箱とその箱間の屋外スペースが自分の住居エリアとなる・・個性的な住まい方。(上写真) 東側道路から見たところ・・
森山邸
北側道路から見たところ・・

敷地を囲う北側道路と東側道路は3~4m程度の狭い道路。その道路に2階建ての住宅が、門扉塀もなく境界いっぱいまで・・向かいあって建つ形の住宅街の中・・ 建物ヴォリュームに対して比率の大きい開口。大開口の上、更にカーテンブラインド等もないので、生活空間が道路側に向かって・・まるでショーウインドウの様にOPENな状態。住まう方にそれなりの覚悟が必要な住まい。

森山邸
北東側から外観を見る。 確かに、これまでのコミュニティや風景とは全く違う形式が・・いたって普通のどちらかと言えば懐かしい様な下町的な感じの住宅街の中に・・ 提示されていました。関係性や多様性というキーワードは建築に限らず・・どんなジャンルでも、今やコンテンポラリーなテーマとして重要な視点なんでしょうね・・

「・・窓を大きくすると、周りが見え始め、動的関係が生まれる・・閉鎖的で一様な世界から、いろいろな生物が関係し合う、より多様な生物世界となっていく・・明るく開放的で透明であることが僕には必要であった・・今までのコミュニティがつくり出してきた風景とは形式的に違う、これからの風景に繋がっていく・・」  by西沢立衛

「建築探訪 97」-Tokyo/芝浦

SHIBAURA HOUSE

2010年には建築界のノーベル賞・・とも言われるプリツカー賞も受賞され、金沢にある21世紀美術館の設計でもよく知られた・・SANAAの妹島和世さんが設計された「SHIBAURA HOUSE」(2011) を訪ねる。残念ながらこの日は雨で・・写真がイマイチですが・・(上写真) 東南側から道路越しに外観を見る。5階建てのオフィスビルなのですが、隣の10階建てマンションと高さが同じです(1層あたりの階高が平均6mと普通よりかなり高いと言う事) 。

SHIBAURA HOUSE
リビングと呼ばれる1階のスペース・・5m以上あるガラス張りの広い空間が、通りと繋がる様に開かれていました。この日は多摩美大による企画展の展示が行われていました
SHIBAURA HOUSE
ラウンジと呼ばれる2階のスペース。右手の吹抜けは1階から階段を介して2階と繋がり、左手の屋外テラス吹抜けも階段を介して3階へと繋がっていく・・ 
SHIBAURA HOUSE
同じくラウンジと呼ばれる3階のスペース。右手の屋外テラス吹抜けは・・2階から階段を介して3階と繋がり、左手の屋外テラス吹抜けも階段を介して4階へと繋がっていく・・ 充分な天井高さがある各階が、さらに充分な高さのある吹抜けを介して、他階と繋がっていく構成の連続は・・ 建物内における伸びやかな空間の上下関係をつくり出していました
SHIBAURA HOUSE

建物全体が全てガラス張りなので・・建物内における伸びやかな関係は、更に外部に対してもドンドン開かれて行く訳で・・ 部屋と部屋、建物と外部・・という空間を隔てる物が全て取り払われてガンガンに開かれていく・・ SANAAらしい空間。(上写真) 10mほどの高さがある・・3階の屋外テラス。上部4階の傘が見えるフロアが・・この建物を運営されているオーナーのオフイスとなっています。(室内だけど日差しがキツイので日除けの傘・・寛容なオーナーに拍手)

「建築探訪 96」-Tokyo/ 青山 3

塔の家
道路の向かいにあるワタリウム美術館側より、西南側外観を見る

青山の外苑西通りに面した “小さな住宅” ・・ 写真左のマンションは「そこまで近く建てるか!!!」と驚くほどの近接ぶり・・この「塔の家」(1966) を設計されたのは東孝光さん。

塔の家
(左) 西側より外観を見上げる。地下1階、地上5階の計6層からなる住宅・・駐車場も1台分を確保・・ 敷地面積は、なんとわずか6坪ほど!!! 
(右) 南側より外観を見上げる。左手の街路樹は、この家の為に植えられた様に・・いい感じで建物に寄り添っています。
塔の家
建物の外壁を触る・・

この建物は内外共にコンクリート打放し仕上げ。内外コンクリート打放しの住宅といえば、すぐに安藤忠雄さんの名前を思い浮かべますが・・安藤忠雄さんが「住吉の長屋」で一躍名を知られる様になるよりも10年も前の作品・・ ANDO建築の代名詞である磨き上げられた様な、均一なコンクリート打放しも綺麗ですが・・この東さんの荒々しい肌理のコンクリート打放しも・・ 味があってgoodです。

(左)  竣工した1966年頃の様子・・まわりにはまだ高い建物もなく、まさしく「塔の家」・・ 
(右) 各階のプランを見る

5階の子供部屋はベッドの大きさから図ると3帖程度、4階の寝室も4.5帖程度、2階の居間も4.5帖程度・・家族3人、延20坪程度の家、内部には仕切りはなく、階段を介して縦に繋がった1室空間・・やや広い階段の踊り場に住んでいる様な・・約50年前に生まれた究極の都市住宅。必要最小限で都市に生きる・・”TOKYO”でしかありえない住宅・・余分なものを持たずに都市で暮らす・・現代にも通じる、こんな潔さが心地良いです。

「建築探訪 95」-Sweden 3 / Stockholm

復活の礼拝堂

森の墓地」の共同設計者であるシーグルド・レヴェレンツが設計した「復活の礼拝堂」(1925) ・・墓地内では「森の礼拝堂」に続いて2つ目に出来た礼拝堂。

(上写真) 礼拝堂へと向かうアプローチより北面を見る 。

復活の礼拝堂
礼拝堂へと向かうアプローチ

礼拝堂へと向かうアプローチを振り返ると・・一直線に道が開けています。その軸線の突き当たる先には “瞑想の丘” があり、その先には墓地入口があります。墓地入口から歩いて来る人は・・丘を超えて、背の高い樹々に覆われた長い小路を、遠くから見える小さな礼拝堂の、その姿を一直線に見つめながら・・かなりの距離を歩い来る事になります。

復活の礼拝堂

正面から見ると、コリント式の柱が12本並んだポーチ・・かなり古典的な神殿風の意匠なんですが・・横に廻って西面を見ると・・礼拝堂の本体となる建物の外観は比較的シンプルフラットな感じで・・無装飾の大きなヴォリュームがポーチ部分とは対比的で面白い・・屋根は置屋根の様に見えます。

復活の礼拝堂
長方形平面の礼拝堂内部・・シンメトリーな空間。突き当り中央に棺台。右手にある南窓から良い感じで光が差し込んで来ていました。