「建築探訪 121」-Finland 13 / ALVAR AALTO 8

アアルト自邸

ヘルシンキ中心部から北西に5kmほど離れた住宅地・・建築家自身の設計による「アアルト自邸」(1936)。(上写真)アクセスとなる道路側より、窓はほとんどない北側外観を見る。漆喰塗りされた煉瓦壁と塀の・・白をベースにして、濃茶色の板張りヴォリュームと木製扉がアクセント的にコラージュ。左手の背丈ほどの塀は、建物本体ではない外構としての塀ですが・・きっと建物と一体でデザインを考えていたのではないかと・・goodです、効いてます。残念ながら足場が架けられていて・・フィンランドはこの時期どこでもメンテナンス中・・

アアルト自邸

煉瓦に塗られた漆喰を補修中・・結構はがれています、何年ぶりに塗り替えているんだろう・・聞きたかったなぁ。屋根は、表から見ると矩形なんだけど、裏から見るとバタフライ型・・専用事務所を近くに建てるまでは、こちらが住居兼用の事務所でした。

アアルト自邸
庭側より南側外観を見る。1階の正方形の大きな窓がダイニング。2階のテラスに面した大きな開口部のところが「プチ・リビング」
アアルト自邸
リビングを見る。本棚の向こうにはダイニング。ソファテーブルの上には、白地に金色の縁取りが上品な・・アアルトデザインの吊り照明器具。庭に向かう開放感のある大きな開口に、小さな腰壁を付ける・・アアルトらしい構成
アアルト自邸
ダイニングを見る。木桟が付いた・・明るめの絶妙な加減の茶壁がチャームポイント。壁色とバランスの取れたアアルトデザインのオリジナル照明器具・・こちらはモダンな感じ、形がオモシロイ
アアルト自邸
ダイニングから南側を見る。大きな窓の向こうには、庭の景色が広がる。北側外観とは一転、開放的な南側。大きな窓の一部に縦長換気窓・・いつもいつもの “アアルト窓” です
アアルト自邸
ダイニングとリビングの間にある造り付けの収納家具・・さきほどの「絶妙な加減の茶壁」と向き合って配色されているのでしょうか・・キレイです。棚上にはアアルトがデザインした、有名なガラスの花瓶が飾られています
アアルト自邸
吹抜けのあるアトリエを見る。机上には図面が何枚も・・今も仕事が行われているかの様な雰囲気。正面奥の階段は書庫に繋がる。正面、アトリエの中2階へと上がる急勾配な階段は・・暖炉の上に設置されていて・・効率的&オモシロイ
アアルト自邸
1階から階段を上がった所、2階の各個室へと至る前に、暖炉とソファのある共用スペース・・動線的には “大きな踊り場” なんだけれども、程良い広さの落ち着く”プチ・リビング “といった感じで・・goodです。ブラインドが設置された南面の大きな腰窓の向こうにはバルコニー
アアルト自邸
2階収納庫・・帽子、コート、鞄・・出掛けてたアアルトが帰ってきている様な・・
アアルト自邸
鞄には「ヘルシンキ行き」のフィンエアーのタグが・・アアルトのサインも!!  アアルトは1976年に亡くなるまで・・40年間、この家で暮らしたそうです
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「建築探訪 120」-Finland 12 / Jyvaskyla

クオッカラ教会

ユヴァスキュラという町にある・・フィンランドの若手建築家による現代建築を探訪。アンッシ・ラッシラ + テーム・ヒルヴィランミ設計による「クオッカラ教会」(2010) 。屋根、壁、鐘楼ともに暗色のスレート張りで統一した外観は彫刻的な佇まい。(上写真) 西側より外観を見る。西側の1階部分には教会の事務スペースを配置・・街と教会のコミュニケーションを促進。

礼拝堂が在る2階メインフロアは外観で見ると、1階事務スペースの上・・ちょうど三角形部分のヴォリュームに配置。平面形は矩形なんだけれども・・微妙に歪んでたり、出入りがあったりしていて(屋根面に現れている折れ線を見ても分かりますが)・・それが単純ではない少し動きのある外形に結びついているのかなぁ・・

クオッカラ教会
外部階段で2階まで上がりアプローチ。軒先のライン、屋根面の折れ線、壁面のくぼみ・・ 真っ直ぐにしてしまいそうな所を、真っ直ぐにしていないのが・・現代的な建築に仕上げるポイントなのかなぁ・・
クオッカラ教会
外壁のスレート張り詳細。以外と厚みは無いんですよね・・ちよっと表面が欠けているところもあったり・・
クオッカラ教会
礼拝堂内、祭壇方向を見る。大きな空間ですが木造です。礼拝堂内は外観の形状そのままの三角形空間ですが・・頂部を丸くした三角形空間。その頂部のトップライトから差しこむ光が効果的。正面祭壇の左側にある側窓も効いています。祭壇正面を飾っているイコンは・・現代アートのようにも見える、若々しい感覚の解釈によるイコン。
クオッカラ教会
屋根を支えているメインは・・頂部を丸くした三角形空間なりに曲げられた集成材木梁。床、壁、天井の内装部分だけに限らず構造材、家具まで・・ほとんど木材。フィンランド建築らしい・・木材を多用した建築。
クオッカラ教会
そして何と言ってもこの “グリッド状フレーム” ・・これが効いています。これも梁と同じく・・頂部を丸くした三角形空間なりに曲げられています・・シェル状の木製格子フレームとなっているのですが、写真で見るよりも厚みがあるので・・きっと構造的にも効いているのでしょうか

床、天井、壁、構造材、家具まで・・そのほとんど木材なんだけれども、漂白っぽいテイストで仕上げされているせいか・・全体としては、しつこさのない気持ちの良い・・現代的な雰囲気になっています

「建築探訪 119」-Finland 11 / ALVAR AALTO 7

アルヴァ・アアルト設計の「アカデミア書店」(1969) を探訪。ヘルシンキ中央駅からすぐ・・賑やかな中心街の角地に建つカーテンウォールのオフィス建築。外観を見て分かる通り、隙間なく隣接する煉瓦造の古いオフィスビル群と・・外形ラインはピタッと揃えられたカタチ。表から見ると地上6階。表から見えない書店部分は3階建て。

窓詳細を見る。銅製のカーテンウォール。左側に隣接する赤煉瓦の建物(サーリネン設計)との関係性には・・アアルトも色々と考慮したんでしょうが・・対比的な感じもしますが、どうでしょうか。

アカデミア書店
玄関扉を見る。この建具は真鍮製だろうか・・なんとも言えない艶光沢がgood、素材の持ち味の勝利・・さらに効いているのが、この丁番・・カッコイイ丁番だ。引手と共にこれもアアルトのオリジナルデザイン物なんだろうか・・
アカデミア書店
以前に紹介した、他のアアルト建築で2連はありましたが・・これは3連の “アアルト引手“。 1つはもちろん、2つでも3つでも使える必要長さにしばられない・・ひとつでショートからロングまで対応できるデザインの引手。
アカデミア書店
この建築のメインは、何と言っても・・この”天窓“。水晶のような形をした”天窓” が・・天井にドラマティックに突き刺さっているんです。上階のぐるりと張り廻された白大理石の腰壁が・・階下から余計なものが見えない様に、視線をうまくコントロール。(上写真)3層吹抜けの空間を1階より見上げる。改装工事中につき1階店内の半分は、仮囲い(上写真の左側)で覆われた状態・・残念。
アカデミア書店
(左) 2階カフェ部分より、建物中央の吹抜けを見る。(右) 2階より “天窓” を見る。水晶のような天窓は3基。
アカデミア書店
2階より “天窓” を見る。ダイナミックで個性的な・・”天窓” はとても大きい。やはり腰壁の存在が効いてい・・2階腰壁よりも3階腰壁が・・セットバックしているのも効果的。
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「建築探訪 118」-Finland 10 / ALVAR AALTO 6

アアルトのアトリエ

ヘルシンキ郊外にある「アアルトのアトリエ」(1962)を探訪・・
建築家アルヴァ・アアルトが自身で設計したアトリエ・・通りから塀越しに建物の東面を望む。中庭を抱え込んだ・・L字型プランの建物。通りに面している部分のヴォリューム(アアルトの仕事部屋)の通り側には窓は無く・・寡黙な表情を見せています。

アアルトのアトリエ
ぐるりと廻ってきて・・スタッフの作業室であるドラフティングルームや食堂、事務室などが並ぶ・・北側のヴォリュームを見る。1階中央部に玄関扉。2階の水平連続窓部はドラフティングルーム
アアルトのアトリエ
煉瓦に白塗装の外壁・・
アアルトのアトリエ
大きな窓面に挟まれた、2階ドラフティングルームを見る。北側に面した右手から、左手の南側ハイサイド窓に向けての傾斜天井
アアルトのアトリエ
傾斜天井と円弧壁で構成された・・アアルトの仕事部屋を見る。奥に行く程だんだん・・部屋の巾が広くなっていく&天井が高くなっています。右手の中庭に面した腰窓と、部屋の突き当り面のハイサイド窓の開口バランスが気持ち良いです。緑の蔦が茂る突き当り面の左側、階段を数段あがった所に出入口扉
アアルトのアトリエ
出入口扉のある所から・・アアルトの仕事部屋を見返す(見下ろす)。アアルトデザインの様々な種類の照明器具が吊られています
アアルトのアトリエ
L字型の建物に囲われた、傾斜のついた中庭を見る。荒削りな石が・・段状に緩やかに円弧を描きながら、屋外劇場の様に・・配置されています。左手がドラフティングルーム、少し窪んだ所で折れて、右手がアアルトの仕事部屋。左手から右手へ向けて、ひと繋がりの1枚屋根は・・どんどん高くなっていってます
アアルトのアトリエ
中庭に面したアアルトの仕事部屋のヴォリュームを近くから見る。大きな円弧を描く壁の足下・・建物基礎部分にも細やかなデザイン、小さな円弧が幾つもつながり・・大きな円弧へと
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「建築探訪 117」-Finland 9 / ALVAR AALTO 5

フィンランド国民年金協会

アルヴァ・アアルト設計の「フィンランド国民年金協会」(1956) を探訪・・
ビジネス地区、三方を道路に囲われた、三角形敷地に建つ、800人の職員が働くオフィスビルとして計画された建物。平面は中庭を囲んだ台形型。
(上写真) 北東より正面外観を見る。道路なりに雁行させた構成と水平連続窓がファサードの特徴。とても大きな建物です。

フィンランド国民年金協会
雁行する外壁を近くから見る。煉瓦壁&金属部材の構成。
フィンランド国民年金協会
水平連続窓の詳細を見る。遠目に見ると帯状の構成なんだけど・・近くで見るとポチ窓でもある・・FIXガラスとFIXガラスの間は換気窓。 アアルト建築ではお馴染みの “アアルトらしい窓” ・・「縦長換気窓+嵌殺し」の連続構成
フィンランド国民年金協会
建物の下層部を抑えた感じにするのも・・他の建物と同じアアルトの好む手法。トーンを抑えた・・石、タイル、銅板、ブロンズによる構成
フィンランド国民年金協会
フィンランド国民年金協会
経年変化して・・なんとも言えない味わいが出てる銅板。比較的小さなモジュールの金属製スパンドレル
フィンランド国民年金協会
北東側、建物正面のエントランス部を見る。”下層部の抑え” がよく効いています。小さな庇の出がある、その下部・・格子、扉✕4、表示板が並んでいるところが玄関
フィンランド国民年金協会
ダイナミックな4つのスカイライトがある「メインホール」・・もともとは、この建物の為にデザインされた造付けの “執務ブース” がずらりと並んでいて・・来館した市民の為の受付相談スペースでしたが・・いまは多目的ホールといった使い方の様です。 オリジナルの “執務ブース” は、別の場所に1台だけ展示されていまいた
フィンランド国民年金協会
(左)スカイライトを見上げる。(右) スカイライトは2重になっていて・・その間の空間に照明器具や日除けスクリーンが設置されている
フィンランド国民年金協会食堂
まだ10時半位なんだけれども・・何故か賑わっている? 食堂。
フレックスタイム制の為、早朝に出勤した人が今頃お昼ご飯を食べるのだそうです。
左側ガラス窓の向こうには中庭。柱はガラス面より控えた位置&テーパーを取った形としているので・・庭に対して開放的な雰囲気の食堂となっています
フィンランド国民年金協会食堂
特注タイル(アアルト建築ではお馴染みなんですが凸状の管状タイル。フィンランドの有名な陶器メーカーARABIA社製)・・”アアルトタイル” を何色か組み合わせた・・ 食堂の壁がgoodでした!!!
フィンランド国民年金協会食堂天井
食堂の天井は・・放熱板の機能がある金属製パネルが張られています
フィンランド国民年金協会
(左) 図書室を見る。整然と天井に並んだ正円形の天窓と、書棚に囲まれ一段窪んだ閲覧室の構成は・・アアルトの初期傑作でもある「ヴィープリの図書館(1936)」を思い出さずにはいられない。(右) 格天井で仕上げられた会議室を見る
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「建築探訪 116」-Finland 8 / Helsinki

サノマハウス

ヘルシンキの中心地にある現代的なオフィスビル・・ フィンランドで最大手の新聞社 “サノマ社” の本社ビル・・「サノマハウス(1999) 」。設計は、Jan Söderlund and Antti-Matti Siikala。外部に突出してきている壁面支持材・・存在感があります。ガラスキューブな建物ですが・・建物が面している方位により、外装の構成が少し異なっています・・

サノマハウス
隣に並んで建っている・・金属板張りの有機的なフォルムの「ヘルシンキ現代美術館(1998)」に対して・・ ガラス張りのキュービックなオフィスビル
サノマハウス
正方形プランの対角を結んで出来た・・三角形のアトリウムロビー。ガラス面を支えている支持材が、内部には出てこないので・・内部はスッキリ開放的
サノマハウス
アトリウムロビーの吹抜けに面して並んだ・・メタリックでシャープなエレベーターが壮観・・SF映画やCM撮影の背景に最適?
サノマハウス
1階アトリウムロビーより、吹抜けのある地階を見る。新聞社用の食堂でしょうか・・こちらは外観やアトリウムロビーのメタリックな感じとは対照的・・ 木製で落ち着いた感じのインテリア

「建築探訪 115」-Finland 7 / ALVAR AALTO 4

アアルト大学ショッピングセンター

アアルト大学(前ヘルシンキ工科大学)探訪の最後は・・「ショッピングセンター」(1961)。上写真の奥には、キャンパスの象徴である講堂が見えています、その左手には図書館。ここはキャンパスへの入口となる場所です。矢印のようなユニークな形をした、建物の白い壁面を・・南側より見る。

アアルト大学ショッピングセンター
ちょっと視点を下げると・・軒先が緩いアールの連続となっている事が分かります
アアルト大学ショッピングセンター
西側の建物正面から見る。生協のような感じで、幾つかの店舗が入っています。銅板葺き屋根のタテハゼが、それぞれのスパンで放射状に広がっていて・・何かの模様の様に見えます。この建物のちょっとオモシロイ雰囲気を作リ出しているのは・・ 屋根の微妙なニュアンスの付け方・・

軒先が緩やかなアールになっている事と同時に、屋根自体も短手に・・緩やかなムクリを付けています。スパンごとのリズムを強調している縦線2本(縦樋?)も効いています。白い壁面と対比させる様に、軒裏/建具/腰壁の色は黒色とし・・バランスの良い落ち着いた調子がgoodでした。

「建築探訪 114」-Finland 6 / Otaniemi

オタニエミ工科大学付属礼拝堂

「オタニエミ工科大学 付属礼拝堂」(1957)を探訪。設計はヘイッキ&カイヤ・シレン夫妻。オリジナルの建物は1976年の放火により焼失してしまっているので・・現在の建物はその後の再建。(上写真)アプローチより見る。

オタニエミ工科大学付属礼拝堂
南外観を見る。東西両サイドの煉瓦壁が、この建物の大枠を限定しているフレームとして効いています
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
周辺の森と建物前庭を隔てる”丸太塀”。地面に立てたH鋼の間に、荒々しい丸太を落とし込んだ、校倉的な構成がオモシロイ
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
建物前庭からエントランス部を見る。左手には”丸太塀”と同じ構成による鐘楼。
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
木と鉄で組まれた梁が支える木造屋根と2つのガラス面によるシンプルな構成・・心に響く小さな祈りの空間。東西の煉瓦壁が外部からそのまま内部まで続いています。床も煉瓦・・煉瓦と木を中心とした簡素な構成
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
ハイサイド光が差し込む、南に面した大きな開口部・・その下には高さを抑えたエントランス。エントランスの先に丸太塀が見えています
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
祭壇を見る。超シンプルな構成の建物以上に、何の飾りもアイコンもない祭壇。祭壇に向かって祈る人々の視線の先に在るのは、ガラス面の向こうにある小さな十字架と木立のみ・・この辺のシンプルな宗教感/感性/感覚は、他のヨーロッパ圏の国々とはかなり違っている気がします・・ 日本人と同じく”木の文化”を長年培ってきた国だからなんでしょうか・・ なんとなく親近感を感じるフィンランド。第二次大戦の同じ敗戦国でもあったり
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
オタニエミ工科大学付属礼拝堂
この建物の大きなチャームポイントである・・印象的な屋根を支える”架構”。スチール斜材の存在が効いています