「建築探訪 97」-Tokyo/芝浦

SHIBAURA HOUSE

2010年には建築界のノーベル賞・・とも言われるプリツカー賞も受賞され、金沢にある21世紀美術館の設計でもよく知られた・・SANAAの妹島和世さんが設計された「SHIBAURA HOUSE」(2011) を訪ねる。残念ながらこの日は雨で・・写真がイマイチですが・・(上写真) 東南側から道路越しに外観を見る。5階建てのオフィスビルなのですが、隣の10階建てマンションと高さが同じです(1層あたりの階高が平均6mと普通よりかなり高いと言う事) 。

SHIBAURA HOUSE
リビングと呼ばれる1階のスペース・・5m以上あるガラス張りの広い空間が、通りと繋がる様に開かれていました。この日は多摩美大による企画展の展示が行われていました
SHIBAURA HOUSE
ラウンジと呼ばれる2階のスペース。右手の吹抜けは1階から階段を介して2階と繋がり、左手の屋外テラス吹抜けも階段を介して3階へと繋がっていく・・ 
SHIBAURA HOUSE
同じくラウンジと呼ばれる3階のスペース。右手の屋外テラス吹抜けは・・2階から階段を介して3階と繋がり、左手の屋外テラス吹抜けも階段を介して4階へと繋がっていく・・ 充分な天井高さがある各階が、さらに充分な高さのある吹抜けを介して、他階と繋がっていく構成の連続は・・ 建物内における伸びやかな空間の上下関係をつくり出していました
SHIBAURA HOUSE

建物全体が全てガラス張りなので・・建物内における伸びやかな関係は、更に外部に対してもドンドン開かれて行く訳で・・ 部屋と部屋、建物と外部・・という空間を隔てる物が全て取り払われてガンガンに開かれていく・・ SANAAらしい空間。(上写真) 10mほどの高さがある・・3階の屋外テラス。上部4階の傘が見えるフロアが・・この建物を運営されているオーナーのオフイスとなっています。(室内だけど日差しがキツイので日除けの傘・・寛容なオーナーに拍手)

「建築探訪 96」-Tokyo/ 青山 3

塔の家
道路の向かいにあるワタリウム美術館側より、西南側外観を見る

青山の外苑西通りに面した “小さな住宅” ・・ 写真左のマンションは「そこまで近く建てるか!!!」と驚くほどの近接ぶり・・この「塔の家」(1966) を設計されたのは東孝光さん。

塔の家
(左) 西側より外観を見上げる。地下1階、地上5階の計6層からなる住宅・・駐車場も1台分を確保・・ 敷地面積は、なんとわずか6坪ほど!!! 
(右) 南側より外観を見上げる。左手の街路樹は、この家の為に植えられた様に・・いい感じで建物に寄り添っています。
塔の家
建物の外壁を触る・・

この建物は内外共にコンクリート打放し仕上げ。内外コンクリート打放しの住宅といえば、すぐに安藤忠雄さんの名前を思い浮かべますが・・安藤忠雄さんが「住吉の長屋」で一躍名を知られる様になるよりも10年も前の作品・・ ANDO建築の代名詞である磨き上げられた様な、均一なコンクリート打放しも綺麗ですが・・この東さんの荒々しい肌理のコンクリート打放しも・・ 味があってgoodです。

(左)  竣工した1966年頃の様子・・まわりにはまだ高い建物もなく、まさしく「塔の家」・・ 
(右) 各階のプランを見る

5階の子供部屋はベッドの大きさから図ると3帖程度、4階の寝室も4.5帖程度、2階の居間も4.5帖程度・・家族3人、延20坪程度の家、内部には仕切りはなく、階段を介して縦に繋がった1室空間・・やや広い階段の踊り場に住んでいる様な・・約50年前に生まれた究極の都市住宅。必要最小限で都市に生きる・・”TOKYO”でしかありえない住宅・・余分なものを持たずに都市で暮らす・・現代にも通じる、こんな潔さが心地良いです。

「建築探訪 95」-Sweden 3 / Stockholm

復活の礼拝堂

森の墓地」の共同設計者であるシーグルド・レヴェレンツが設計した「復活の礼拝堂」(1925) ・・墓地内では「森の礼拝堂」に続いて2つ目に出来た礼拝堂。

(上写真) 礼拝堂へと向かうアプローチより北面を見る 。

復活の礼拝堂
礼拝堂へと向かうアプローチ

礼拝堂へと向かうアプローチを振り返ると・・一直線に道が開けています。その軸線の突き当たる先には “瞑想の丘” があり、その先には墓地入口があります。墓地入口から歩いて来る人は・・丘を超えて、背の高い樹々に覆われた長い小路を、遠くから見える小さな礼拝堂の、その姿を一直線に見つめながら・・かなりの距離を歩い来る事になります。

復活の礼拝堂

正面から見ると、コリント式の柱が12本並んだポーチ・・かなり古典的な神殿風の意匠なんですが・・横に廻って西面を見ると・・礼拝堂の本体となる建物の外観は比較的シンプルフラットな感じで・・無装飾の大きなヴォリュームがポーチ部分とは対比的で面白い・・屋根は置屋根の様に見えます。

復活の礼拝堂
長方形平面の礼拝堂内部・・シンメトリーな空間。突き当り中央に棺台。右手にある南窓から良い感じで光が差し込んで来ていました。

「建築探訪 94」-Sweden 2 / Stockholm

森の礼拝堂

森の墓地」にある礼拝堂・・ 柿葺きの大きな屋根が印象的な「森の礼拝堂 (1920) 」は墓地内にある5箇所の礼拝堂の内、最初に出来た・・最小の礼拝堂。

森の礼拝堂
大きな寄棟屋根で覆われた建物の・・半分近くは列柱に支えられた半屋外のポーチ部分・・ その姿はヴァナキュラーな農家ともどこか似ている感じ・・
森の礼拝堂
軒先には黄金の天使像・・ 棟には丸太・・
森の礼拝堂
高さを抑えたポーチ部・・ 支える柱はシンプルなトスカーナ式
森の礼拝堂
約10m角の正方形平面の礼拝堂内部。中央に棺台。床は棺台に向かって微妙に勾配が付いています・・

この建築の見どころでもある・・一度見たら忘れられない内部空間・・高さを抑えたドリス式の8本柱で支えられた・・白く塗り込められた半球型の天井・・ そこに居る人々やそこで過ごす時間を覆い尽くす、空間を支配するその大きな半球の頂部には・・トップライトからの抑制の効いた光が・・清らかな静かな追悼の空間は・・アスプルンド初期の代表作。

「建築探訪 93」-Sweden 1 / Stockholm

森の墓地

世界遺産にもなっている「森の墓地 (Skogskyrkogårdenスクーグスチルコゴーデン) 」を探訪・・ストックホルム市中心から10kmほど南へ (電車で10数分) ・・ 設計者は1915年に行われたコンペティションにより選ばれた・・グンナー・アスプルンドとシーグルド・レーヴェレンツの共同設計。広い墓地内には火葬場が1ヶ所、礼拝堂が5ヶ所、約10万の墓石 。

(上写真) 墓地入口より南を望む (時間は正午過ぎ) 。聳え立つ “聖なる十字架” を遠くに見ながら・・緩やかな起伏の敷地を少しずつ歩み・・墓地/礼拝堂/火葬場へ・・来訪者の気持ちを整えるために準備された・・ 設計者の見事なアプローチ計画。
十字架を超えた左側には、三礼拝堂と火葬場がある「森の火葬場」が位置しています。

森の墓地

広い芝生広場の中、真っ直ぐに伸びる割石敷の参道・・緩やかに上ってゆく参道のはるか先には “聖なる十字架” 。参道より右側は右前方の丘に向かって起伏がつけられ・・その先には “瞑想の丘” 。建築と自然が一体となった見事なランドスケープアーキテクチャ・・20世紀以降の建築としては世界遺産の第一号。

森の墓地
参道際にそびえ立つ大きな花崗岩の十字架・・この墓地計画の要となるシンボリックな存在
森の墓地
参道を見返す。十字架のすぐ横にある・・右側へと続く階段は、参道際にある墓地と「森の火葬場」を分けるところに位置しています
森の墓地
“瞑想の丘” より「森の火葬場」がある東側を望む。「森の墓地」の広大な敷地のほとんどは 森・・ 墓地入口から火葬場と丘を含むこの辺りだけが開放的な広場となっています
森の墓地
広大な敷地のほとんどは森・・その森の中に眠る墓の数は約10万・・樹々の間から陽が差しこんできます・・
森の墓地
自然と共に静かに眠る故人の墓へ・・ 森を散策しながら参る・・
森の墓地
墓石は極めて簡素・・小さく低く・・控えめな感じ・・
墓石の横に寄り添って座り、まるでピクニックをするかのようにお参りをされていました
森の墓地
三礼拝堂がある火葬場・・「森の火葬場」 への入口となる・・ロッジア前にある “睡蓮の池” 
森の墓地
列柱に囲まれた開放的なロッジアより “睡蓮の池” を見る・・その向こうには “瞑想の丘” ・・  

1915年、まだ無名だった若き建築家アスプルンドが30才の時に始まった「森の墓地」の計画は・・1920年に最初の礼拝堂が完成。1925年に2つめの礼拝堂が完成。1940年に主要施設である三礼拝堂がある火葬場・・「森の火葬場」が完成。

森の墓地
「森の火葬場」の完成を見届け・・その3ヶ月後にアスプルンドは55才の若さで亡くなります・・計画開始から25年が経っていました・・アスプルンドの死後は、1935年頃から共同設計を解消していたレーヴェレンツが再び計画に戻り・・計画を完成させます。(上写真) 「森の火葬場」のすぐ北側、参道際にあるアスプルンド(1885-40)の墓

建築家としての力をこれから発揮できるという50代で惜しくも亡くなったアスプルンド・・そんなには多くの作品を遺す事は出来なかったが・・建築家アスプルンドの事実上のメジャーデビュー作であり、最後の作品であり・・ 建築家としての生涯を賭した「森の墓地」・・・  1915から1940年という建築デザインの流れが大激動した時代の中で・・ 古典的なもの、近代的なもの、ヴァナキュラーなもの・・様々なデザインスタイルの激しい変遷を受け入れながらも・・ 訪れる者の心に強く訴えかける時代性を超えた場所/建築として・・見事にまとめ上げた北欧近代建築の巨匠・・アスプルンドの最高傑作。

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